(Fate 二次創作) 『臨終編』   作:段差滝脈動

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⑨準備

 

 昼寝やアーチャーとの雑談で時間をつぶしていると、夕方ごろに筆川さんが使い魔が情報を伝えてきた。

 鳥箱さんが吸血鬼の居場所を突き止めたらしい。さっそく乗り込みたいところだが、何か確認することがあるらしい。俺はまだしばらく待機していてくれと言われた。

 今日の朝から、なんとなく避けようとしていたのかもしれない。この時間になってしまったがアーチャーと話をしよう。勝利を目指すための話を。

 

“アーチャー。本当はもっと早く話さなければいけないことがあるんだけど”

 

“なんでしょうか?

 

“アーチャーは俺が令呪一個を使うまでは従うと言ってくれたけど。もう使っちゃったんだよね。……もう俺に対する愛想は尽きた?”

 

“マスター。前言を撤回します。今でもマスターにお仕えする方針をかえようとは思いません。……それでは、さらに一つ令呪を使用するまで私は基本的にマスターに従う。そう宣言しておきます”

 

“ありがとう、アーチャー。あと、アーチャーの方から俺に指示することもあるだろうから、俺にできそうなことを伝えておくよ”

 

“私からマスターに指示とは……”

 

“よくない?”

 

“いえ、素晴らしい考えです。必要になることがあるかもしれません”

 

“ええと、それじゃあ俺にあるのは……令呪に加えて、監視ぐらいはできる使い魔二体。持ち込んだ術式を使えば、普通の結界や術式は十ぐらいは破れそうだけど、サーヴァントの魔術に効果があるかわからないな。時間をかければ地脈から魔力を吸うこともできる。転移術式を使ったら魔力の消費が大きいから、それを補えると思う”

 

“なるほど、……折を見て再び久雄様と相談した方がいいかもしれませんね”

 

“忘れないようにするよ”

 

 話しておくべきことは、こんなところだろう。緊張をといてベッドに寝っ転がる。話しておきたいことは、いくつか思いついた。

 

“あと、戦うことになる吸血鬼、知り合いかもしれない”

 

“私も、その吸血鬼だと思います”

 

“俺の記憶を見た?”

 

“……はい。マスターが寝ているときに無意識下で流れてきたためか、見えました”

 

“俺もアーチャーの記憶を見たかもしれない。……それで少し気になったことがあるんだけど。今日のプリンはカウントしないで、それ以前にプリンを食べたことはある?”

 

 アーチャーはプリンが好きだと言っていた。しかし、俺が夢に見たものがアーチャーの記憶だとしたら、アーチャーはおそらくプリンを食べたことがない。

 

“私は、……あなたのアーチャーは食べたことがありません。しかし、私はいくつかの減少や故人がまとめられて形作られています。そのためか、プリンに対しては好きだと感じています”

 

 アーチャーも思うところがあったのか、やたら丁寧に答えてくれた。

 ……どうも真剣な話題が続いて疲れる。俺は少し仮眠をとることにした。

 

 

 

 その後、久雄くんと夕食を作って食べた。食事の時だけ留が来た。人数分準備をしといてよかった。留が来なかったら、俺が食えばいいだけだったけど。

 ……今日は早く寝よう。

 

 

 

 何も夢に見なかった。しばらくぶりに爽やかに目覚めることができた気がする。

 

 

 

 朝、筆川さんに談話室に集められた。俺とアーチャー、久雄くんとバーサーカーさんで吸血鬼を打ち取ってくるように言われた。その上で問題が、

「その吸血鬼が令呪を持っていて、サーヴァントを召喚しているみたい。それに死体から魔術刻印をはぎ取って所持しているみたいで、それを回収してほしいの。……筆川のおじさんは、そう言っていたけど。当たり前だけど、自分の命を優先して。吸血鬼が従えているサーヴァントはアサシンかキャスター。何がおこるかわからないわ」

 

 筆川さんの言葉に久雄くんと顔を見合わせる。

 

「留も二人に協力してあげて。私はやることがあるので何かあれば使い魔に話しかけてね」

 

 俺たちが困惑している間に筆川さんは出ていってしまう。事態について行けない。落ち着いて一息入れるために、お茶でも入れようか。給湯室を借りてお湯を沸かす。

 でかいやかんで麦茶を入れて、久雄くんと留の前にコップを置く。

 

「ありがとうございます」

 

「ありがと。あんまり考えたくないけど、吸血鬼を何とかする話を始める?できれば今日中に決着をつけたいところだけど」

 

 留はいきなり本題に入った。麦茶に一口つけてからでもいいじゃないか。……まあ別にいいけど。

 

「筆川さんは何も協力してくれないの?」

 

「結界や使い魔での監視があるから動けないみたい。聖杯を守らなければいけないし」

 

 聖杯!この屋敷にあるのか?

 

「吸血鬼がどこにいるかは私が知っている。使い魔で今も監視しているし。問題は移動かな。自転車使って片方は二人乗りしてもらうとして、……山の中に入ると歩きになるし、移動に一時間はかかるかな」

 

「僕、自転車乗れないです」

 

「俺がこぐよ。大丈夫。それと留は守るサーヴァントがいないし、とりあえずこの屋敷に居てよ。念話はできるようにしてほしいけど」

 

「私が同行しないとまずいでしょ」

 

「使い魔をつけてくれ。吸血鬼まで先導してもらうから」

 

「……、私の言うことに従うならそれでもいいかな」

 

 ありがたいことにアーチャーが問題を指摘してくれた。

 

“マスター、魔術刻印の回収を行う必要がありますが”

 

“……アーチャーありがとう”

 

「いや、全員で一緒に行動しよう。俺たちじゃ魔術刻印を扱えない」

 

 二人が不思議そうな視線を向けてくる。

 

「本当に回収を狙うの?……私はそれでいいけど」

 

「まあ、はじめから諦めることはないじゃないか」

 

「わかりました。いつ出発しますか?」

 

「……留さんはいつがいい?」

 

「一時間後に出発しましょう」

 

 話がまとまったので、一度分かれて荷物の準備を行う。使い魔、術式、護符。後は、令呪と……

 

“アーチャーの転移は何人まで運べる?”

 

“令呪でつながっているマスターの他に一人だけしか運べません”

 

“そっか。アーチャーは自分の判断で行動して、俺は吸血鬼やサーヴァント相手じゃ役に立たないだろうし”

 

“承知しました”

 

 後は……話すべきだろうか?……悩むぐらいなら行ったほうがいい。

 

“アーチャー。留や久雄くんが危険な状態になっても、いざとなったら俺とアーチャーを優先してくれ。その時に俺が何を言っても無視していいし、何なら殴って黙らせてもいい”

 

“……表現に問題がありますね。その言葉は、……マスターが私のことを信頼しているとおっしゃったのだと受け取ることにします”

 

 これでいいだろうか。

 

 十分余裕をもって玄関に行くと、既に久雄くんが待っていた。

 

「はやいね、久雄くん。そう言えば久雄くんは、何か持っていくものはあるの?」

 

「いいえ、だから準備もすぐに終わってしまって」

 

 ソファに座っている久雄くんの横に座る。

 

「それなら、俺ももっと早く来たほうがよかったかな」

 

「僕も今来たところなので……」

 

 あったばかりの時は久雄くんに視線をそらされることもあったが、今日あたりからようやく目を合わせて話をしてくれるようになった。少し嬉しい。

 

「何もないってのも不安じゃないか?荷物を片づけたら、まじない除けの護符が二つあったから、一つ持っておいてくれよ」

 

 手のひらサイズの護符を久雄くんに押し付ける。

 

「ありがとうございます。……嬉しいです……留さんにもあげるんですか?」

 

「あー、そっか。まあ渡したほうがいいか」

 

 留のことは考えてなかった。俺よりよっぽど装備が充実していそうだし。でも、サーヴァントはいないのか。

 残りの護符に魔力を使い、指で守の字を書いてやる。何の意味もないおまじないみたいなものだ。

 

「……到さんは僕たちのこと考えてくれますね。頼りになります」

 

「そうそう、年上には格好つけさせてくれよー。どんどん頼りにしてくれていいからな」

 

「は、はい」

 

「久雄くんにがっかりされないように、無事に帰れるように、俺も頑張るさ」

 

“マスター。冗談はほどほどに”

 

“わかっているよ、アーチャー。話せるのも、仲良く話せるのも最後かもしれないじゃないか、少しぐらい見栄を張ってもおおめに見てほしいな”

 

“勝利を諦めるようなことが無ければ、私から言うことは何もありません”

 

“俺にも目的があるし……諦めるなんてそれこそ無い話だよ”

 

“失礼しました。夢を経た今、私があなたに疑念を抱く、ということもおかしな話でした”

 

“俺も見ているから、アーチャーの疑いはもっともだと思うよ。俺も少しは発言に気を遣うようにする”

 

「あのう、……到さん?」

 

 俺がアーチャーと念話するために黙り込んだので、久雄くんに心配されてしまった。念話はほどほどにしないと。

 意図せず放置する形になってしまった久雄くんに、あれこれ話題を振ってみる。久雄くんは丁寧に答えてくれた。そうこうしていると、留がやってきた。

 

「渡しとく。周りの金属をはがすと三分ぐらい私に話しかけられるから」

 

 そういって、留が久雄くんと俺に金属線を巻いたガラス球のようなものを渡してきた。ありがたく受け取る。

 お礼に護符を留に渡す。

 

「なにこれ?」

 

「まじない除けの護符、無いよりかはましだろうと思う」

 

「?……ありがとう」

 

 怪訝な顔をされた。

 

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