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中央歴1639年5月1日 クワ・トイネ公国ギムより東方約30km地点
息を荒く吐きながら、歩いている集団がいた。彼らはエルフ種エルフ族に分類されるもの達で、自分たちの村から東へ約10kmほど歩いていた。理由は聞くまでもない、ロウリア王国軍から逃げるためだ。ではなぜギム陥落後より二日後でありながら、村から10kmしか歩けていないのか、その理由は『エルフたちの村は外界との交流が少ないゆえに、ギム陥落の報が遅れてしまったのだ』。
その中に一人の少年がいた。少年の名はパルン、パルンはまだ幼い妹『アーシャ』と共に疎開をしていた。親はというと、母は病気により早期に他界、父は軍の召集により予備役のため軍務に。父は『パルン、妹のアーシャを頼んだぞ。お前はお兄ちゃんなんだから』と笑ってパルンに言ったあと、家を出発していった。
疎開集団の速度は一向に早くならない、それどころか少しずつ遅くなっている気もする。無理もない、子供から老人、中には妊婦もいるのだ。それに周辺を警戒するためさらに神経を使う。とはいえ武器を持ち周辺警戒をしているのは軍務を逃れた若者、わずか10名。小さい村とはいえ200人近くいるのだ。それでもあと25km、あと25kmを完走すれば味方の軍事基地に到着する。その時、足音が聞こえた。だが人間ではない、まさか……
「ロウリアの騎馬隊だ!」
後方で叫び声が聞こえる。パルンは振り替えると約3km後方にロウリアの騎兵隊が見える。その騎兵隊は父からよく聞いていた、ロウリア王国ホーク騎士団所属第15騎馬隊、別名として『残虐なる騎馬賊』といわれるほど荒れており、それを指揮する隊長『赤目のジョーヴ』に目をつけられたら生きては還れないといわれほどだ。
村人たちは先ほどよりも速度を上げ走る、だが相手は馬だ。馬の最高速度は約90km近く、エルフを人間と同じだとすると平均速度は約45km、2倍近く速いため追いつかれるのも時間の問題だった。
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ロウリア王国ホーク騎士団所属 第15騎馬隊
隊長である赤目のジョーヴは舌なめずりをした。
「獲物……発見」
200名位の女や子供が無防備に草原を走っている。まるで襲ってくれといわんばかりに。ギムでは市民を疎開されておりいい思いができずイライラしていたところだ。
赤目のジョーヴにどす黒い感情が駆け巡る。
ロウリア王国東部諸侯団所属の中でも精鋭と言われ、一騎当千を謳われるホーク騎士団、その中にある第15騎馬隊は特に荒くれ者の集まりだ。彼らの先祖は犯罪者でありながらロウリア王国拡大期に活躍し、爵位を賜った特殊な貴族たちだ。
特に隊長のジョーヴは先祖の血を濃くひいており、残虐な性格である。気に入らないことがあれば信用している部下でさえ戦場で殺し、戦死扱いにするほどに。
「さて……
ジョーヴは静かに剣を掲げるとこういい放った。
「さあ、亜人共を皆殺しにするぞ!獲物だ!突撃ー!」
「ヒャッハァーー!」
第15騎馬隊は奇声を上げ、エルフの集団に向かい突撃した。
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少年パルンは妹のアーシャの手を引き走った。
「大丈夫だ、何があってもお兄ちゃんがまもってあげるからな。心配するなよ!」
「うん、お兄ちゃん!」
自分たちを殺しにくる悪魔の集団。一体僕たちが何をしたというのだ。なぜ、神様は僕たちを見捨てるのか。せめて……せめて妹だけでも守らないと!
パルンは一つ思い出したことがあった。小さい頃、お母さんからよく聞いた神話を。
『パルン、昔の昔、ものすごく昔の話をしようか。私たちが想像もできないほどの昔、まだ国という概念もなかった時代、エルフ族は魔族というのと戦っていたのよ。けどね、魔族はとても強くてエルフ族はエルフの神がすむ神林にまで追い詰められたの。けどそれが魔族の狙いだったの。魔族がしようとしてたのは神森を殲滅すること、もちろんみんな必死に抵抗したわ。けど、多くのエルフが還らぬ人になってしまったの。その中には歴戦の戦士たちもいたわ、それほどまでに魔族は強かったの。エルフの神(緑の神)は創造主である太陽神に祈ったの。それに答えるかのように太陽神は使いを送ってくれたのよ。太陽神の使い達はね、空を飛ぶ神の船や、鋼鉄の地竜を使って、雷鳴のような轟きと共に大地を焼く強大な魔導をもって、魔族を焼き払ったわ。主力軍を焼き払われた魔族は、神森より撤退したわ。先祖のエルフ達は助けてもらったお礼に、金銀財宝を太陽の使いに渡そうとしたのだけど、決して受け取らずに神の船に乗って去っていったらしいわ。その結果、私たちエルフ族は救われ、この世界の各地に散らばったわ。数多くあった神の船、そのうちの一つは故障して、この地に残っているわ。その神の船は、時空遅延式保管魔法をかけられて、クワ・トイネ公国内の聖地リーン・ノウの森の祠の中に大切に保管されているのよ。私が元気になったら連れていってあげるわ』
お母さんは本当にあった話だといっていた。だからこそ僕は祈る。
(太陽の神様!もし僕の声が聞こえてるのなら、今助けてください。僕は生贄になってもいい、せめて妹のアーシャだけでもお願いです。僕たちを殺そうとしてくるロウリアの魔の手からお助けください!)
けど何も起きない、なんで?やっぱりあれは神話だったの……。
ついにロウリア騎馬隊の声も聞こえてきた。もう誰でもいい、助けて。太陽の使いでもなくてもいいから
「神様!どうか僕たちをお救いください!僕が犠牲になってもいいですから!!」
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日本国陸上自衛隊 特別派遣部隊第三戦闘団
日本国は陸上自衛隊から六つの戦闘団を、航空自衛隊から二部隊、海上自衛隊から一個艦隊を派遣していた。その中の一つ、速度を優先した陸上自衛隊の航空部隊が第三戦闘団だ。
「団長、あれがエルフの疎開集団ですかね」
「おそらくな、すぐに第五戦闘団に連絡しろ。エルフたちを発見、ただちに輸送部隊を派遣してくれと」
「団長!3番機より伝達!」
「どうした?」
「エルフたちの後ろより騎馬隊が接近、旗はロウリア王国のものです!」
「何!?」
すぐに団長は双眼鏡を使いエルフたちの後ろを見た。そこには報告のとおり騎馬隊がいた。この時、彼は苦渋の決断をした。
「全機、
「団長!?我々が命令されているのはエルフたちの目視確認です!そこに戦闘許可ははいっておりません!」
「命令違反の罰はすべて俺が受ける。目の前で一般人が殺されるのを黙って見てられない」
「……分かりました。全機、目標『ロウリア騎馬隊』、これを殲滅せよ」
『了解!!』
各機に取り付けられている機関銃を使用可能状態にし、敵騎馬隊に近づいたところで攻撃を開始した。
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パルンは突然の音に耳をふさいだ。彼だけではない、全員がだ。エルフ族は風を感じるために耳が敏感なのだ。そして先ほどの音が聞こえなくなり、ロウリア騎馬隊の方を見ると全滅していた。そしてパルンは恐る恐る空を見上げた。そこには空飛ぶ方舟が存在した。そして彼はあるものを見つけた。それは……
「太陽だ、太陽のシンボルが描かれてる!太陽神様の使いだ!」
すると村人たちの近くの上空で空飛ぶ方舟は止まり、縄を下ろして降りてきた。
「怪我人たちを一ヶ所に集めろ!ロウリア騎馬隊に関しては、武装解除をさせてから死体を埋葬!」
『了解』
奇妙な服装をした人物が仲間と思われる人たちに命令していた。拡声器は使ってないもののとても大きな声でしゃべったので耳がキーンとした。ロウリア騎馬隊を圧倒する魔導、怪我人たちを含めた自分たちを何かの労働力にすると思ったが、彼らは怪我人を一ヶ所に集めたあと白い布みたいなものや、奇妙なものを使い治療していた。
パルンは悪い人たちじゃないと思い、一歩前へ出た。
「助けてくれてありがとう、おじさんたちは太陽神様の使い?」
「(太陽神の使い?神話とはいえ天皇陛下の先祖は太陽神の天照大御神だし、国旗や軍旗も太陽を元にしてるからな。それに子供のいうことだし、日本の組織か聴いているのだろう)うん、そうだよ。ここまでよく頑張ったな」
団長はパルンの頭を撫でながら笑った。
パルンは自衛隊員の手をそっと掴むと、足をつき跪いた。これにはさすがに驚き手を離してしまった。そして彼はこう言った。
「そこまでせんでええ、ワイらは当たり前のことしただけや。君は助かった、それでええ」
その言葉にパルンは心地よさを感じ、ずっと神経を尖らせていたためか眠ってしまった。団長は静かに彼を抱き上げ、膝枕をして第五戦闘団を待つことにした。
第三戦闘団とかは『gate 自衛隊』を模範しています。ちなみに第三戦闘団団長は最後の言葉通り、関西人です。あと、太陽の使いは過去回想として入れました。変な風に感じたらごめんなさい。
さて次の題名は
『龍の咆哮 ①』
です。いつも通り期待せずお待ちください。