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『第三文明圏』、それはフィルアデス大陸南方のパーパルディア皇国を中心とした列強国郡である。もちろんこれに属さない、『文明圏外』も存在する。それはフィルアデス大陸北方だけでなく、世界各地に点在する。その内の一つを紹介しよう、その名も『フェン王国』だ。
フェン王国はフィルアデス大陸の東方約210kmのところに位置する国家である。縦150km幅60kmと言ってもよく分からない人も多い、簡単に言えば勾玉を逆にしたような島だ。なお対称的な形でほぼ勾玉のような形をしたガハラ神国も存在するがここでは省略する。なお、日本国は東方約500km、大日本帝国が東方約1,000km、ロデニウス大陸が南方約1,500kmに位置する。
この国は70万人弱しかいない上に、魔法を持たない。しかし、文明圏外では五本指に入る陸軍力を持つ。それは何故か、この国は教育として『剣』、ではなく『刀』を習う。孤児であろうと庶民であろうと、刀に秀でた者は尊敬され国から勲章を貰える。逆に皇太子であろうと貴族であろうと、刀を扱えない者はバカにされる(だからといって左遷や重労働などはなくその他の道を勧められる)。刀と共に生き、刀と共に死す、それがこの国の当たり前である。正確には十武道という様々な武芸が存在し、そのなかで有名なのが剣術である。
王宮武士団、それは国内で『剣豪』の勲章を持つ中でも剣王が認めた10人のみが入れる最強の集団である。その中の一人、十士長『アイン』の話を少ししよう。
彼は王宮武士団に入る目標はもともと無かった。確かに彼は刀が好きだっが、建築の方が好きだったため推薦を断りそちらの道を歩もうとしていた。その目標を変えたのは母だった。それは雪が降り積もる寒い日だった。アインがまだ学生だった頃、母が夕食の支度中に、前々から気にしていた前髪を切るため散髪屋に訪れていたのだ。家を留守にしていた時に事件は起きた。川の近くを歩いていた0歳の赤ちゃんを背負っていた女性が手を握っていたはずの、3歳の子どもが川に落ちたのだという。その助けの声を聞いた母は夕食の支度を中断し寒い川の中に飛び込んだのだ。
母は子どもを助けたあと、岸に上った時に急激な温度差で心臓発作を起こしたのだ。アインは戻ってきたときに、母がみんなに囲まれて倒れているのが見えすぐに近寄ったがすでに冷えていた。何度も女性に謝罪されたが、子どもが助かってよかったと女性に言い、早く帰ってお風呂に入れて上げてくださいといい、冷たくなった母を抱き上げ家の中に入った。家の台所には作り途中の料理があった。そこにもう亡き母の姿がうつった。アインは後悔して何度も泣いた。泳ぎが得意だった自分が行けば母が助かったかも知れない、自分が昨日もしくは明日散髪屋に行けば助かったかも知れない、どれだけそう思っても抱いている母は冷たかった。
それを機にアインは変わった。建築の道ではなく王宮武士団にいくことを目指した。それはあの一瞬母が見せてくれた誇りを胸に焚き付け、修行を行った。王宮武士団は、軍であると同時に、国の治安機能を担っている。王宮武士団の項目にも『王宮武士法第2条第1項 王宮武士は、個人の生命、身体、財産の保護に任じ、犯罪の予防、鎮圧、犯罪者の逮捕、その他公共の安全と秩序の維持をもってその責務とする。』という一文がある。母はこれを行ったのだと
アインはその時、理解したのだ。
フェン王国 王宮第六道場
王宮にいるのは剣豪たちだけではない。いくらなんでも剣王に認められた10人の剣豪だけでも足りないし、他の剣豪たちは王宮仕えとも限らないため、素質のある者を集め訓練しているのだ。
「アイン、ちょっといいか」
「はい、なんでしょう。マグレフ殿?」
アインの上司、武将マグレフが話しかける。
「剣王シハンがお呼びだ」
剣王シハン、フェン王国の君主である。
「え、私をですか?」
十士長、剣王シハンに認められた剣豪とはいえ一番下っ端である。
「いや、私もだ。というより、全員が呼ばれている。訓練中に邪魔してすまないが」
「いえ、大丈夫ですよ。全員、今日の訓練はここまでとする!速やかに道具を片付けて退室せよ!最後の者は鍵を忘れるな!」
「「「はい!!」」」
彼らは王宮に歩を進めた。
フェン王国 王宮
アインとマグレフが着いた時にはすでに全員が集まっていた。一人ずつ紹介しよう。
マグレフ 階級:武将
担当武芸:
経歴:現在、剣王に認められた剣豪の中では最強である。薙刀や槍などの中距離での戦闘に長けており、知識も豊富で現場指揮官としては最高レベル。
モトム 階級:執権
担当武芸:
経歴:現在、剣王に認められた剣豪の中で側近に仕える人物。弓による長距離攻撃と馬による翻弄に長けているが、剣豪の中では一番高齢であるがゆえに体にガタがきている。最近、息子もしくは孫が代わりになってくれれば嬉しいと思っているらしい。
アイン 階級:十士長
担当武芸:
経歴:現在、剣王に認められた剣豪の中では最も若い。刀や
マツヨ 階級:くノ一
担当武芸:忍術、手裏剣
経歴:現在、剣王に認められた剣豪の中で唯一の女性。忍の家系に生まれ、忍術や手裏剣など隠密などのスパイ活動に長けている。絶賛恋人募集中。
キサラギ 階級:僧兵
担当武芸:棒術、杖術
経歴:現在、剣王に認められた剣豪の中で最も背が高い。坊主頭に布などを巻き付け、棒や杖といったい突きによる戦闘を得意とする。見た目からは想像もつかないほど、臆病である。
レッカ 階級:道化師
担当武芸:鎖鎌術、分銅鎖
経歴:現在、剣王に認められた剣豪の中で一番のお調子者。何故かピエロみたいな格好をしているが、本人どころか他の人もその格好をよく分かっていない。鎖鎌や分銅鎖など奇妙な戦闘方法を得意とする。休みの日は外でショーをやっている。
テッケツ 階級:暗殺者
担当武芸:含針術、十手術
経歴:現在、剣王に認められた剣豪の中で素性が知れない人物。人を騙すことを得意とし、含針や十手による騙す戦闘方法を得意とする。敵以外には基本的に騙すことをせず、敵の情報を集めてくる。
フウガ 階級:番人
担当武芸:もじり術、捕手術
経歴:現在、剣王に認められた剣豪の中で唯一役人を兼任する人物。役人としてでもあるが敵を殺さず捕まえることを得意とする。見た目はどうみても盗賊である。
ノモキ 階級:師範
担当武芸:柔術、居合術
経歴:現在、剣王に認められた剣豪の中で最も多くの弟子を持つ。敵を組伏せたり見えないような斬撃による戦闘を得意とする。見た目はどこにでもいそうなおじさん。
クシラ 階級:提督
担当武芸:水術、砲術
経歴:現在、剣王に認められた剣豪の中で唯一の水軍。水上での戦いと新たにできた砲術による遠距離攻撃を得意とする。普段はずっと海にいる。
アインは本当に驚いた。普段は召集されてもこない人たちもきているからだ。それほど、重要だと言うことを彼は理解した。
「剣王様がお見えになる。全員、気を引き締めよ」
剣王シハンが中に入ってきた、全員に緊張が走る。剣王は所定の位置に座った。そして口を開いた。
「パーパルディア皇国と紛争………最悪戦争になるかもしれん」
「「「!?」」」
全員に驚愕が走る。パーパルディア皇国は第三文明圏最強の国であり、そして列強四位のの国なのだ。その技術力の差は圧倒的でしかもこの最近動いてなかった5年でさらに拡大しているという。
ここにどれくらい絶望的な国力差があるか記述しよう。
人口 約600万人対約8,500万人
戦船 斬り込みバリスタ搭載船32隻対魔導戦列艦2,400隻+竜騎母艦400隻、その他準主力船1,000隻以上
陸上武器 刀対フリントロック式マスケット銃
ワイバーン 0騎対800騎
ワイバーンロード 0騎対700騎
装備の差が全く違う。こちらの主力の歩兵武器は近接武器しかない。それに対し、あちらは遠距離武器だ。それにフェン王国が一番不利なのが魔法通信だ。この国には魔法がない。理由は文献に書かれていたらしいが、紛失している。そのため遠距離間での情報交換ができない。それ以外にも問題がある。この国にはワイバーン、というより空を飛ぶ生物が住み着いていないのだ。それは隣国のガハラ神国に風竜というワイバーンよりもさらに上位種にあたる生物だ。ガハラ神国は神通力というもので風竜を18騎、味方につけている。
そんな緊迫の中でアインは一歩前へ出た。
「発言、よろしいでしょうか」
「どうしますか、陛下」
「よいだろう、話せ」
「はっ!」
アインは口を開いた。
「私は此度の戦いはほぼ確実に負けると思います。我が国の主力武器である刀は近接であるのに対し、パーパルディア皇国の銃は遠距離です。一応遠距離武器としては弓と大砲がありますが、弓では命中率に乏しく、大砲は文明国から貰えたのはたったの1門。それは水軍の船に取り付けられていますが、パーパルディア皇国はこの大砲を100も1,000もございます。我が国に勝ち目はございません」
「………」
「ですが、私はそんな理由で戦いには挑むつもりはありません。例え相手が列強であろうと、私は命をかけて戦うつもりです。私たちは武士です!お国のために戦いお国のために死ぬ!確かに名誉とかそういうのも少なからずあります。ですが今はとにかく国のために戦いたい!私はいつでも戦う覚悟はできています。陛下、発言権を許してくださりありがとうございました」
アインは自分の場所に戻った。そして剣王シハンが口を開いた。
「皆のもの、このような事態に巻き込んで申し訳ない。今、ガハラ神国を中心に救援を頼めないか交渉している。各人、戦の準備をしておいてくれ」
『はっ!!』
そして全員が解散しシハンは自室へと戻った。シハンはすでに返答された国書を見ていた。だがそのほとんどにこう書かれていた。
『相手が列強のため、心苦しいですが辞退します。申し訳ない』と、シハンはやはりと思っていた。
コンコン
「剣王殿、モトムです。入ってもよろしいでしょうか?」
「いいぞ」
「失礼します」
モトムが中に入った。
「モトム、ただいま戻りました。如何でしたか、援軍の件は?」
「各国とも辞退するとのことだ、やはり列強という肩書きが重くのし掛かる」
シハンは再び難しい顔をした。するとモトムが懐から一通の手紙を出した。
「つい先ほどガハラ神国より返答の国書が届きました。こちらを」
「ああ、すまない」
シハンはモトムから手紙を受け取った。だが内心、他の国と同じだろうと思っていた。だが手紙には気になる部分が書かれていた。
『相手が列強のため、心苦しいですが辞退します。申し訳ない。ですがその代わり、彼の国に匹敵しえる国を四つ紹介します。まず、ロデニウス大陸の国家が併合しできた新生オースリ・ロデニウス連合王国、次にムー大陸にてレイフォルより友好国の肩書きを持つグラ・バルカス帝国、最後にロデニウス大陸より東に位置する日本国及び大日本帝国、以上の四ヶ国を次の軍祭に招待してみてはどうだろうか?今年の軍祭にもいつも通り参加するが、彼らもいればいつもと違う軍祭になることは間違いない』
シハンは驚いた。あのガハラ神国が他の国を推薦したのだ。ガハラ神国はプライドは高くないが、文明圏外ではトップに入る実力を持つ。そのため、自分と同等もしくはそれ以上の実力を持つ国以外は軍祭に推薦しない。
「あのガハラ神国からの推薦か……」
「何が書かれていたのですか?」
モトムは国書を受け取っただけで中身は見ていなかったのだ。シハンはこう答えた。
「ガハラ神国がある四ヶ国を推薦した。あの国は滅多なことがない限り他国を推薦しない。しかも、その中の一つには列強第5位『レイフォル』から友好国の肩書きを持つ国もいる」
「パーパルディアとまではいかないが、プライドが高いレイフォルがですか!?」
「ああ」
モトムは驚いた。レイフォルと言えば列強第5位に君臨する最強国家の一つ、そのレイフォルから友好国の肩書きを持つ国は列強の『神聖ミシリアル皇国』、『エモール王国』、『ムー王国』の三ヶ国のみだ。パーパルディア皇国に関しては犬猿の仲である。
「各四ヶ国に対し軍祭参加に対する招待状を届けてくれ。新生オースリ・ロデニウス連合王国と大日本帝国、日本国に対しては全員参加する場合三ヶ国共同で派遣してもらえれば助かる、と」
「なぜ、別々に派遣してもらわないんですか?」
「毎年、何ヵ国も集まるんだ。それにガハラ神国からの推薦だ、途轍もない軍事力を持つ可能性がある」
「了解しました、外国惣奉行に言っておきます」
後にこれが第三文明圏を変える出来事だとは、まだ誰も知らなかった。
フェン王国が武士道といっておきながら、剣を習うのは違和感があったので刀にしました。ただし、日本刀とは別の刀になることをご了承ください。
さて次回の題名は
『軍祭という軍事披露の準備』
です。いつも通り期待せずお待ちください。