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接触
中央暦1639年1月24日午前8時……
クワ・トイネ公国軍第六飛龍隊
その日も快晴であった。ワイバーンをと呼ばれる飛竜を操り、飛竜隊の一員である竜騎士マールパティマは、眠そうながらも公国北東の哨戒を行っていた。ここ連日、ロウリア王国軍の活動が活発になっており、何か行動を起こした場合に迅速に行えるようにしているため、ほぼ休みなしに飛び続けているのだ。
「ふわぁ~」
彼と彼の相棒である飛竜はすでに三日間以上、哨戒をしている。休憩は食事の時に下に降りるくらいで、それ以外は常に飛行していた。空が好きで飛竜隊に入隊した彼も、さすがに眠くなってきており、目の隈がとても濃いように見える。今日の哨戒が終われば休日が来るので、なんとか頑張っているが限界がかなり近いようだ。その時だった。その眠気を一気に吹っ飛ばすことが起きたのは。
ゴゴゴゴゴゴ………
突然、彼に強い風圧と経験したことのない耳鳴りが起きた。それだけではない。ミシミシと骨が軋む音がし自身が着ていた鎧の一部にはヒビも入っている。
「な、なんだぁ!?」
すぐにその風圧がした方を見ると巨大な未確認騎が飛んでいた。いや未確認騎にしては翼が羽ばたいていない。竜とはまた別のものだろう。たが領空に入られたのは確実だ。すぐに彼は通信魔法具を使い司令部に報告した。
「我、未確認騎を発見。直ちに捕縛に移る、現在地……」
高度差はほとんど変わらないように見える。すぐに彼は未確認騎に近づこうとするが、どれだけスピードを出しても近づいた感じがしない。それどころか離れているように感じる。彼はその異常さに気づき、再び司令部に報告した。
「未確認騎の捕縛に移ろうとするが、追い付けない!速すぎる!目標は……、マイハーク!本土マイハークに向かい進行中!繰り返す!マイハーク方向へ進行中!」
報告を受けた司令部は蜂の巣をつついたような大騒ぎになり、司令部につけられた避難を知らせる鐘が大きく鳴り響いた。港に船を泊めそこで漁をしていた船員も、買い物をしていた民間人も問わず、全員が大騒ぎになり避難区域への押し入りが来ていた。軍がなんとか押さえ込んでいるものの、いつ暴動が起きるか分からない状況まで来ている。その時だった。耳障りな音が聞こえたのは。
空を見上げると、ワイバーンよりも大きい飛翔体が悠々と侵入している。軍ではすでに第六飛竜隊が飛び立っている。そして運が良いのか、悪いのか未確認騎の正面に向かい合った。そして直ちに捕縛準備のための威嚇ブレスを行った。どの隊員もがやったと思った。だがその未確認騎はその炎の中、更に高度を上げていった。すでにワイバーンは最高高度4000mに到達している。これ以上、高度を上げようとすれば人も飛竜も命の保証がなく、誰もがその未確認騎をただ見つめるしかなかった。
「我、未確認騎を確認。捕縛準備のための威嚇ブレスを実行するも、まるで効いていないかのように更に高度を上げ、追跡は不可能である」
第六飛竜隊の報告を聞いたマイハーク防衛騎士団・団長イーネは空を見上げた。少し前に侵入してきた未確認騎はマイハークの上空をずっと旋回していた。飛竜による地上攻撃手段はブレス(火炎弾)以外みつかっていない。過去に岩や矢による攻撃手段が検討されたことがあったらしいが、ワイバーンが飛べず不可能と、過去の演習報告書に書かれていた。目を凝らせば報告にあった白い機体に赤い丸が見えるのが分かる。イーネはある可能性を危惧していた。飛行機械。列強の一角、ムーが所持するものだ。魔法とは別の機械というもので繁栄している国である。そして未確認騎を見ていると、それは北東へ向かい帰っていった。その瞬間イーネは驚いたように跳び跳ねた。
「バカな!北東には海しかないのだぞ!」
彼女が驚くのは無理もない。未確認騎が帰っていったのは北東方面、大東洋と呼ばれる大きな海しかないのだ。かつて未発見の大陸を見つけると言い旅立った冒険者は一人も生きて還ってこなかった。代わりに還ってきたのは見るも無惨な亡骸だけだった。
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クワ・トイネ公国 政治部会
国の各代表が政策を行うために集まる会議で、首相であるカナタは悩んでいた。いや、カナタだけではない。ここにいる皆が頭を抱えていた。それは昨日マイハークで起きたことが書かれた『未確認騎領空侵犯報告書』である。内容は以下の通りだ。
○ワイバーンよりも巨大な未確認騎であること
○ワイバーンよりも速い速度で高高度を飛んでいること
○マイハーク防衛隊騎士団長イーネ曰くムー国の飛行機械に似ていること
○国籍は不明で白い機体に赤い丸が描かれていること
これにカナタは頭を抱えていた。
「皆のものはどう思う。意見を聞きたい」
情報分析部が手を挙げる。
「この報告書にはムー国の飛行機体ではないか?と書かれているが違うと断言できる。そもそもムーの飛行機械に描かれているのは五つの花弁を持つ桜と呼ばれている花だ。それにムー国の飛行機械は約350km、今回の飛行機械は600kmを遥かに越えている。ムー国ではないのだが……」
「だが、何だ?」
「ムー国の遥か西方、文明圏外に新興国が突如出現。付近の国家を潰し回り、まるでこの世界の覇権を握るかのように第二文明圏のすべての国家に宣戦布告したと、諜報部に情報が入ったそうです。彼らの武器・兵器は不明です」
会場にわずかな笑いがおきるが、次の一言でみんな再び黙った。
「ですがその国がそのような行いをしたのは列強レイフォルの保護国『パガンダ王国』が、その国の皇族を処刑宣言しバカにしたからです。結局、処刑はされませんでしたがそれで怒ったらしいです」
「それはその国……名前はなんと言うのだ?」
「グラ・バルカス帝国、別名として第八帝国を名乗っています」
「そうか、それはグラ・バルカス帝国側を一方的に責めるわけには出来ないな」
カナタはそのグラ・バルカス帝国に哀れみを見せた。
「しかしそのグラ・バルカス帝国はムー国から更に西の方にあり、ムー国までの距離が我が国からでも2万km以上も離れています。ここまで来れる可能性ははっきり言って皆無です」
結局会議は振り出しへ戻る。解決の糸口は見つからないのだ。飛行機械ではなく飛行魔導も考えられたが、そもそもそんな国がこんな辺境に来るわけがない。首相部は頭を悩ませた。
味方なら接触してくればいいもの、敵であれば偵察も考えられるがこの辺にあんなものを持った国が存在しない。
その時、外交部の若手幹部がドアを勢いよく開け入ってきた。息を切らし服は汗のせいか濡れている。
「何事か!」
外務卿か怒鳴り付ける。
「待て!余程のことなのだろう、話を聞こう。話せ」
「報告…します…」
息切れのせいか上手く話せていない、しかしその内容はだいたい分かった。それが以下の内容だ。
北海に全長200mを優に越える2隻の船が出現、海軍が臨検したところ片方には日本国と名乗る国が、もう片方には大日本帝国と名乗る国の大使が乗っていた。敵対の意志は双方とも無いとのこと。また捜査を行うと以下の事項が判明した。
○日本国及び大日本帝国は、前触れもなくこの世界に転移した
○元の世界との情報が遮断され、哨戒機による哨戒を行い付近に陸地を確認。その際に貴国の領空に侵入したことは日本国並びに大日本帝国共々、謝罪したい
○クワ・トイネ公国と会談を行いたい
とのことだった。外務卿であるリンスイはそのことにこう返した。
「領空侵犯をしておきながらも、会談をしたいと?ふん、舐められたものだな。さっさと追い返せ」
そう言うリンスイにカナタは
「まあ落ち着きなさい。会談はともかく領空侵犯について謝罪をしたいそうではないか。一度、話を聞いてみるのを悪くないと思うぞ」
そう話す。また
「それに転移については真意は分からんが、それを抜きにすれば話に筋が通る。それに海軍が追い返さないところを見ると、丁寧な対応だったのではないか?」
カナタの質問に職員は
「はい、臨検をしたものたちによると見たこともないほど丁寧な対応だったらしく、とても心地よかったと言っています」
「片方は帝国がついているのにも関わらず、傲慢な態度をとらないとはどこぞの皇国とはえらい違いだな」
カナタはそう考えリンスイに言った。
「私は会談をしてみたい、リンスイはどう思う」
「職員の話を聞き考えが変わった。会談しても良いと思う」
政治部会は日本国と大日本帝国と会談をする方針で固まった。
グラ・バルカス帝国は日本と原作通りか、仲良くするか検討中です。