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中央歴1639年3月22日
あの会談からもう二ヶ月は経とうしていた。二つの日本との接触は、クワ・トイネ公国とクイラ王国を嵐のように変えていった。食糧や鉱石・原油の輸出により双方はこれまで以上に、お金が回っていた。二つの日本はこれらの引き換えに様々なものを輸出してくれた。
まず日本国からは繋ぎ目が分からないくらい精巧な道路、都市間を大規模流通システムの鉄道、高層建築物のノウハウなどを構築させようとしていた。これらが完成すれば各都市の流通が活発になり、今まで以上の発展をするだろうと経済部から試算の報告が連日届いている。
続いて大日本帝国からは様々な武器・兵器が輸入された。もちろん、それらはあくまで貸与されたものであり、自分たちで開発ができるようになったら返す約束をしている。
陸軍に貸与されたのは三八式歩兵銃と九九式八糎高射砲だ。対人と対空の武器で、陸軍でありながら空軍を撃墜することが可能なのことに、驚いた。
海軍に貸与されたのは
空軍に貸与されたのは九七式戦闘機だ。使用されてはいるものの製造されたのはすでに5年前だったため許可がおりた。なお、ワイバーンなどは対地戦闘用と哨戒用として使用されることになった。
首相であるカナタは顔をにやけていた。その手元には『クワ・トイネ公国のインフラ整備報告書』と『クワ・トイネ公国軍備拡大計画』である。先ほどの内容は全てここに書かれており、ほんの一部にしか過ぎない。
「すごいものだな……、日本国と大日本帝国とやらは。明らかに三大文明圏、いやもしくはそれ以上だ。彼らとの出会いが我々の生活水準を完全に変えてしまった。」
首相のカナタはそんなことを秘書に語りかけた。
「しかし彼らが平和主義者で助かりました。大日本帝国も日本国も最近、戦争になっていましたが、それは経済断交などによる国家存亡をかけた仕方ないものでしたので」
「ああ、それに大日本帝国から貸与された武器や兵器も日本国には
「ですが一部は『新世界技術流出防止法』により中核的技術は貰えませんでしたが、それでもやはりすごいものです」
「……さて、ロウリア王国がそれまで待ってくれるかだな」
「どうでしょうかね……」
変わりつつある景色を見ながら二人は夕日を感じていた。
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ロウリア王国 王都『ジン・ハーク』
ハーク城 御前会議
満月が輝き綺麗な夜、春とはいえまだ肌寒い。王城には松明が大量に挿され、薄暗い会議室でこの国の未来を決める重要な会議が始まろうとしていた。
「王よ、全ての準備はもう整いました」
白銀の鎧を着た黒ひげの男性が進言する。彼の鎧は所々ひび割れているが、それは戦闘によるものではなく異常な筋肉により、鎧が耐えられていないようだ。
彼の名は将軍『パタジン』
「二ヶ国を相手に勝つことは可能か?」
威厳を保ちつつ話すのは大王『ハーク・ロウリア34世』である。ロウリアを統治し続けて34代目の王だ。
「一国は田畑を耕すほどの頭しかなく、一国は不毛の大地でそもそも戦いを知らない。どちらも亜人の集まりしかすぎず、負けることなど全くもってありません」
「1ヶ月前に接触してきた日本国と大日本帝国とやらの情報はあるのか?」
双方の日本はすでにロウリア王国と国交開設をしようとしたが、クワ・トイネ公国とクイラ王国とすでに国交を結んでいたため門前払いを受けていた。また、双方の日本は亜人差別に対し酷い嫌悪感を持っていたので、一度きり来ることは無かった。
「ロデニウス大陸の北東に現れたたかが新興国の二ヶ国です。それにここからも約1,000km以上離れており、脅威とは思えません。
更にスパイからの情報によればワイバーンすら知らない、いわば極度の蛮族と思われます。情報はまだ少ないですが……」
ワイバーンのいない国家など普通はないが、そういう飛竜がいないと空の支援が無いため戦いに勝てる見込みなどない。
ワイバーンのみで騎士団が壊滅することは少ないが、精神的ダメージはとても高い。
「そうか……そうかそうか!やっと我が国の念願なロデニウス大陸の統一か出来るのか!忌々しい亜人共を駆逐し根絶やしに出来ること、私は嬉しく思うぞ!」
「統一の暁には、あの約束をお忘れ無く。クックックッ」
真っ黒なローブを着た男がロウリア王にささやく。男性でも吐きそうな位、気色悪い声でだ。
「解っておるわ!」
ロウリア王を怒声を上げながら、肘付きを殴る。
(ちっ!三大文明圏外だがらってバカにしやがって。ロデニウスを統一したら、フィルアデス大陸も統一してやる!)
「将軍、今回の概要を説明せよ」
ロウリア王は足を組み直し問う。
「はっ!説明させていただきます!今回の作戦総兵力は50万人、内10万人は念のため本土防衛兵力とし、残りの40万人で侵攻を行います。手始めにクワ・トイネ公国の国境都市『ギム』を攻め落とします」
興奮しているのか声がとてもハキハキてしおり、少し早口である。
「兵站に関しては奴らは家畜でさえ旨いものを食っています。現地調達いたします。『ギム』を落とした後は、さっさと首都『クワ・トイネ』を落とします。脆弱な防壁なので簡単に破れると思います。それと並行し、4400隻からなる大艦隊をマイハーク北岸に強襲揚陸し経済都市を制圧します。
食糧をクワ・トイネに頼ってるクイラなど、その供給を止めてしまえば、簡単に干からびます」
さらに彼は続ける。
「それに加え奴らの兵力は5万ほど、我々の戦力の前に勝てる見込みなどなし。圧倒的物量の前に奴らは降伏するでしょう。6年もの歳月を待ったかいがあります」
「クックックッ………、ついに………ついにだ。今宵は今までで最も良い日だ。クワ・トイネとクイラに対し戦争を許可する!」
その後の王城には喧噪が包まれた。
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クワ・トイネ公国 日本大使館
日本大使館は大日本帝国と日本国の共同大使館として使われていた。そこにクワ・トイネ公国外交官が急ぎの用事があるとのことで、立ち会っていた。
「えっと、何か不便なことが起きたのですか?」
「もしかして、我が国の兵器が暴発、もしくは兵士が犯罪を起こしたのか?」
日本国の外務省キャリア『田上』は自分たちが頑張ってやって来たインフラに、何か不便があったのかと思いそう言った。
大日本帝国の駐在武官『栗林忠道』は自国の兵士が犯罪を起こした、または兵器が暴発したのかと思いそう言った。
「いえ、日本国のインフラで不便と感じたことはないですし、大日本帝国の兵器が暴発、或いは兵士が犯罪を起こしたなどは聞きません」
「では、何があったのですか?」
「……ロウリア王国が国境沿いに軍を集結していることが、分かりました」
田上と栗林は驚愕の顔をした。そして二人とも同じことを言った。
「「戦争……ですか………」」
「はい」
田上は問う、なぜ戦争が起きたのかを。返答は屈辱的なものだった。『亜人差別』又は『種族差別』である。栗林もこめかみに怒りがこみ上げているのが見える。
「援軍を出せないでしょうか?」
田上と栗林は難しい顔をした。援軍は一個人で決められることではないため、国家と連絡をしなければならない。
「我が国、日本国は憲法で軍隊を持てないため援軍は出せません。一応、本国に伝えますが……」
「我が国、大日本帝国は私の決断で援軍は出せない。本国にて確認します。良い結果がくればいいものです……」
二つの日本は戦争が無くなり、平和と思った矢先にこれだ。援軍を断り何千万人の餓死者を出すか、援軍を出しクワ・トイネ公国・クイラ王国を救うか、答えは一択だった。援軍を出すことを僅か3週間で決めたのだった。
ついに動き出したロウリア王国、ロデニウス大陸内での争いは如何に!そして二つの日本は援軍を出すことを決める、新たなる戦争の幕開けです。
以前、書かれていた浦風型駆逐艦江風ですがイタリア海軍に引き渡されて、日本には別の江風がいたようです。皆様に謝罪いたします。
次回『ギムの惨劇、そして二つの日本の決断』です。題名からもう分かってると思いますが、お楽しみに!