ナナリーの親友兼専属メイド   作:赤いUFO

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ナナリーのリーエンに対する態度を少しフランクに直しました。

自分はルルーシュよりもスザクの方が好きだったりします。
ギアスの男性キャラで1番好きなのはジュレミアですが。


演説

「終わったのよ、ナナリーちゃん」

 

「う、うん……ありがとう」

 

 着替えを手伝ってもらったナナリーがリーエンに礼を言うと、どういたしまして、と返した。

 

「ようやくエリア11────日本に行けるんだもの。しっかりとおめかししないとね!」

 

「……うん」

 

 シュナイゼルの後ろ楯を得て就いたエリア11の総督。今日はその出発日だ。

 これから異母姉であるユーフェミアの後を継ぐ日。

 その責務の重さに強張っている

 

「大丈夫よ。日本に行けばスザク先輩や他にも皆フォローしてくれる人がいるから。だから、ナナリーちゃんはやりたいようにやってみれば良いのよ」

 

 優しい声音で告げるリーエンにナナリーは笑みを浮かべる。

 しかしそこで自分の手の甲に触れているリーエンの手がふるえていることに気付く。

 

「リーエちゃん?」

 

 それに気付かれていたことに恥ずかしそうに手を離す。

 

「はは……気付かれちゃったか。ゴメン、ちょっと緊張してて。実を言うとね。昨日、カノンさんに拳銃を渡されてて。いざとなったら、ナナリーちゃんを守れって」

 

 メイド服のスカートの中。太股には小さな拳銃がホルダーに収められている。

 その事を今知ったナナリーの息を飲む音が聞こえた。

 

「これは本当に本当の最終手段だけどね。護衛にはスザク先輩たちも居るわけだし。でも、うん。やっぱり、少し怖いかな。自分の手の届くところに人殺しの道具があるのは。一応、訓練も受けてたんだけどさ……」

 

 あはは、と気不味そうに笑うリーエンにナナリーが難しい顔をする。

 しかし、そんなナナリーにリーエンは気にするなと笑った。

 

「今は日本も矯正エリアで前にも増して治安が悪いけど。ナナリーちゃんが頑張ってくれれば、あたしも拳銃(こんなもの)使わずに済むし。それまでの辛抱なのよ?」

 

 だからがんばれ、と応援するリーエン。

 そう言って手を握るリーエンにナナリーはこれから行おうとする事への覚悟をより明確にする。

 

 ナナリーの乗る車椅子を押して日本へと向かう飛行船へと乗る。

 この飛行船を操縦し、指揮するブリタニア軍人に挨拶すると彼らはズレもない機械のように合わさったタイミングで敬礼をした。

 

「ナナリー皇女殿下! 貴女様をエリア11までお送りする任務を承り、光栄であります! 短い間ですが、どうか空の旅をお楽しみください!」

 

 きっと皇族への忠誠心と職業意識の高い人物なのだろう。

 目と足が不自由なナナリーを侮ることなく皇族の1人としてしっかりと対応している。

 

「はい。私は見ての通りですので。ご迷惑をおかけすると思いますが、どうか宜しくお願いします」

 

 手を差し出すナナリー。

 責任者であるブリタニア軍人はその手を握り返した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっぱり、皇族御用達の飛行船は違うね。全然耳鳴りとかで苦しくならないのよさ」

 

「そうなの?」

 

「うん。前に本国から日本に行った時にはあたし、耳鳴りが酷くてめっちゃ苦しんだのよさ。体質的なものかもだけど」

 

 あれは辛いよー、と当時の事を思い出して遠い眼をするリーエン。

 その様子は見えずとも雰囲気は伝わり、ナナリーはクスリと笑った。

 しばらく空の旅に興じているとリーエンから提案する。

 

「ナナリーちゃん、お茶飲む? 最近はちょっと淹れられるようになった気がするのよ?」

 

「じゃあ、いただこうかな……」

 

「ほい来た!」

 

 部屋に備え付けられている器具で紅茶の準備をするリーエン。

 今まで咲世子など、紅茶を淹れるのが上手い人達に出してもらっていたナナリーからすればリーエンの淹れたお茶は可もなく不可もなく、と言ったところ。

 それとは別にこうして気を使ってくれるのは純粋に嬉しかった。

 リーエンがナナリーの専属に任命され、周りからやっかみを受けていることも知ってる。

 それでも自分の側に居ることに嫌気を差さずに居てくれる。

 以前と変わらぬ態度で

 紅茶を淹れながらリーエンはナナリーに話しかける。

 

「そういえばさ。ナナリーちゃんは、エリア11。日本の総督に就いたら、どんなことをしたいの?」

 

「どんな……」

 

「うん! 一足先に聞いてみたい」

 

「私は……」

 

 ナナリーがリーエンの質問に答えようとした時、艦内が慌ただしくなる。

 即座にリーエンがブリッジに連絡を入れた。

 

「何かありましたか!?」

 

『敵襲だ! おそらくは、黒の騎士団による!』

 

 通信相手の答えにリーエンは「うそ……」と声を漏らす。

 それを聞いていたナナリーは何を思ったのか、通信に割って入る。

 

「分かりました。私も、今からそちらに────」

 

 

『いえ、皇女殿下はそちらに居てください。いざという時は、こちらからその区画ごと脱出させますので』

 

「ですが!」

 

 ナナリーが何かを言う前に向こうからの通信が切れてしまう。

 それに小さく息を吐くナナリー。

 そんな彼女の手にリーエンが自分の手を重ねた。

 

「ナナリーちゃん。ここは、軍人さん達に任せよ。大丈夫! あの人達はプロなんだから。すぐに恐い人達を追っ払ってくれる筈なのよ」

 

「う、うん……」

 

 自分の不甲斐なさを恥じ入るようにナナリーはリーエンの手を握った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから少しずつ艦内の揺れが激しくなり、リーエンの表情にも焦りが生まれる。

 そして閉ざされていた扉が開かれた。

 

「ゼロ……」

 

 リーエンがポツリと呟く。

 黒の騎士団のトップ。仮面の男、ゼロが立っていた。

 彼は開かれた扉の外からゆっくり中へと入ってくる。

 反応したのはナナリーよりリーエンの方が先だった。

 

「止まってっ!?」

 

 ナナリーの前に出たリーエンは、スカートの中に隠してある銃を取り出し、ゼロへと構える。

 

「こ、これ以上ナナリーちゃんに近づいたら、う、撃つのよさっ!」

 

 震える声と銃口。

 ゼロも、それに応えるように懐から銃を取り出した。

 

「銃を下ろしたまえ。その勇気は称賛に値するが、私は常々言ってきた筈だ。撃って良いのは、撃たれる覚悟のある奴だけだと」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 仮面の奥でゼロ────ルルーシユは険しい表情でナナリー()の前に立つ少女を見る。

 

(何でリーエンがここにいる!)

 

 ナナリーと共にアッシュフォード学園から消えたリーエン。

 ルルーシユはてっきりリーエンは殺されているか、実家に戻ったのだと思っていた。

 少なくともナナリーの側で侍従をしているなど想像の外だった。

 

(どうする? リーエンにギアスをかけて従わせるか? しかし、それはあまりにも不自然だ)

 

 普段なら、ギアスをかけて自分に服従させるか、この場で自害させるルルーシユだが、ナナリーがこの場に居ることで躊躇いが生まれる。

 もしもリーエンがナナリーの後ろに隠れて震えているだけならこの場で裏切らせることも出来ただろう。

 しかし彼女はいち早くナナリーの前に出て、守ろうと泣きそうな顔で銃を向けてくる。

 そんな相手が裏切るのは不自然だし。それをヒントにナナリーがユーフェミアの死の真相に気付く可能性がある。

 そうなれば、ナナリーがルルーシュ(ゼロ)に着いていく事はまず無いだろう。

 それに兄として、勘違いながらもナナリーを守るために脅威(ゼロ)に立ち塞がるリーエンには感謝の気持ちもあった。

 急いでナナリーを連れて脱出しなければいけないこの状況でルルーシュの思考が鈍る。

 そこで、リーエンが先程問いに答える。

 

「覚悟なんて、ない……! (こんなもの)を持ったくらいで、簡単に人殺しが出来るような精神なんてあたし、持ってないのよさ!」

 

「なら、銃を下ろせ。ナナリー総督を悪いようには────」

 

 しない、と断言しようとしたところでリーエンがでも! と言葉を遮る。

 

「ナナリーちゃんは、あたしの大事な友達なの! この子には日本に行って、やらなきゃいけない事があるのよ! だから、それを邪魔するなら……!」

 

 ガタガタと震える銃口から今にも引き金が引かれそうになる。

 今にも撃ちそうなその銃を、ナナリーが止める。

 

「リーエちゃん、銃を下ろして」

 

「ナナリーちゃん、でも……!」

 

「ありがとう。大丈夫だから」

 

 ナナリーに言われてリーエンは銃を下ろした。

 そしてナナリーも閉ざされたその視線をゼロへと向けてくる。

 

「ゼロ。クロヴィスお兄様やユーフェミアお姉様のように、私も殺すのですか? でも、少しだけ待って頂けませんか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 話し始めるナナリー。

 ゼロのやり方が間違っていると思う、と意見する。

 それにゼロは間違っているのはブリタニアの方だと返す。ナナリーもそのやり方を認めるのかと。

 その言葉をナナリーは否定しなかった。

 力で他国を侵略し、服従させる。

 国の名前を取り上げてナンバーを付ける。

 そんなやり方が正しいなどと、ナナリーとて認めたくない。

 誰かの手を借りなければ生きていけない、弱者の立場であるナナリーだからこそ、強くそう思う。

 ゼロは続いてナナリーがブリタニアに利用されているだけだと指摘した。

 

「目と足が不自由な私なら、日本人の皆さんの同情を買えると? 確かにそうかもしれません。ですが私は、自分の意思で日本の総督に志願しました」

 

 ナナリーの断言にゼロが息を飲んだ気がした。

 

「世界はもっと、優しく変えていけると思うんです。だから私は、ユフィお姉様の意思を継ぎ、特区日本を────」

 

「再建するというのか……!」

 

 ナナリーの言葉にゼロが動揺を見せる。

 

「だからゼロ。貴方も、そこに参加して頂けませんか? やり直せる筈です、人は」

 

 ナナリーが手を差し出すと、ゼロはたじろぎ、後ろに下がる。

 ゼロの返答を待っているとその場が大きく揺れた。

 

「きゃあ!」

 

「ナナリーちゃん!」

 

 衝撃で車椅子から落ちそうになるナナリーをリーエンが支える。

 すると、天井に穴が空き、見覚えのあるKMFが姿を見せた。

 

「スザク先輩!」

 

 穴を開けたスザクのKMF、ランスロットが中へと降り立つ。

 

『遅くなってゴメン! もう大丈夫だから!』

 

 ナナリーとリーエンをランスロットの手で優しく包み光の膜のような物が展開された。

 

 ランスロットが飛び立つと、突風に煽られてゼロも飛行艇から外へと出る。

 

「ナナリーィイイイイイイッ!?」

 

 そのゼロの叫びにナナリーが、一瞬ゼロへと顔を向けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 スザクが発艦した艦内に保護されて床に降ろされると、リーエンは抱き付いていたナナリーから腕を放した。

 

「あ────」

 

 床に座り込み、まだ指から外せない拳銃を見る。

 

「リーエちゃ────」

 

 ナナリーが話しかけようとすると、ランスロットから降りたスザクが寄ってくる。

 

「大丈夫だったかい? 2人とも。怪我は?」

 

「はい。大丈夫です。ありがとうございました、スザクさん」

 

「あはは……助かったのよさ……」

 

 ようやく硬直して引き金にかけていた指が弛緩し、銃を床に置く。

 

「やっぱ、恐いのよさ、これ……」

 

 震える手でナナリーの手を繋ぐ。

 それを見てスザクが険しい表情を作る。

 

「撃ってないですよ?」

 

 その言葉にスザクはホッと胸を撫で下ろした。

 出来ればナナリーもリーエンも、そうした荒事から遠ざけたいという願望から。

 それはスザクの甘さであり、優しさだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後、日本に着いて数日後。ナナリーの総督就任の演説が行われることとなった。

 画面の前でナナリーが話を始める。

 

「皆さん、初めまして。私は、ブリタニア皇位継承第八七位、ナナリー・ヴィ・ブリタニアです。先日亡くなられた、カラレス公爵に替わり、この度、エリア11の総督に任じられました」

 

 点字の原稿を指でなぞりながら就任挨拶が続く。

 

「ご覧の通り私は、見ることも、歩くことも出来ません。ですから、皆さんには色々とお力をお借りすることになると思います。どうか宜しくお願いします」

 

 一礼するナナリー。

 その態度にこの映像を観ていた者達は戸惑う。

 

「早々ではありますが、皆さんにお願いしたい事があります」

 

 続いたナナリーの言葉にスザクが驚き、ナナリーを見る。

 だが、続いた言葉は、その驚きを遥かに上回るものだった。

 

「私は、行政特区・日本を再建したいと考えております」

 

 その発言に隣にいたスザクが、なっ! と声を漏らす。

 口にすることすら憚れるブリタニアの汚点。

 

「特区・日本では、ブリタニア人とナンバーズは、平等に扱われ、イレブンは日本人という名前を取り戻します」

 

 その反応はお世辞にも好意的なものではなかった。

 誰もが、今更、という感情が強い。

 そんな中で、ナナリーの演説は続く。

 

「かつて不幸な行き違いがありましたが、目指すところは、間違っていないと思います。日本の方にも、ブリタニアの方にも、等しく、優しい世界を。互いの過ちを認めれば、きっとやり直せる。私は、そう信じています」

 

 ナナリーの演説はそう締められた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここ最近、思ったけど。ナナリーちゃんって意外と行動が積極的(アグレッシブ)よね」

 

「そ、そうかな……?」

 

 車椅子を押しながら言うリーエンにナナリーは戸惑いの声を上げた。

 リーエンはゼロと対峙した時に聞いていたが、それはもっと後の事かと思っていた。

 就任早々あんな宣言をするとは思ってなかったのだ。

 

「驚いたよ。まさかナナリーが特区・日本を」

 

 続くスザクが言葉に確かめるようにナナリーが問う。

 

「スザクさん。ユフィお姉様が目指していたモノ。間違ってませんよね?」

 

「あぁ。間違っていたのは、ユフィじゃない」

 

 移動しながらリーエンはナナリーを見る。

 目も足も不自由な少女。

 ゼロと相対した時、あの場にいた自分がナナリーを守らなければと思った。

 あそこには、ルルーシュもスザクもいないから。自分が、と。

 結果的にリーエンがナナリーに守られる形となり、今日の就任挨拶で堂々として見せた。

 

(すごいなぁ……)

 

 何の打算もなく、リーエンはそう思う。

 リーエンなら今更特区・日本の事なんて口に出来ないし、そもそもエリア11の総督になんて、就任したいとも思わないだろう。

 

 憧れ。尊敬。他にもあらゆる感情が渦巻く。

 それと同時に、自分に対する不甲斐なさにも。

 

(力になりたいのに……)

 

 こんなにも自分は役立たずだ。

 せめて、とリーエンは最後までナナリーの味方で居ようと、改めて強く、強く、そう思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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