召喚した少女が世界最強 作:焼肉定食
オルクスの大迷宮に潜り込み数時間が経った後
「それでね。優花先輩から教えてもらったんだ!!」
「ふ〜ん。そういえば園部の家って洋食店だったか。」
和人とユウキと話している。相変わらずの明るさでクラスのムードメイカーとなっていたユウキと和人は後方でのんびりと話していた。
というのも迷宮に訓練しているとはいえ和人にとっては迷宮自体初めてではない。和人は昔色々あって戦争に参加したり、異世界に渡って世界を救ったりしているのでもちろんのごとく迷宮攻略もしたことがあるのだ。
まぁ恵里と鈴は新入りなので攻略したことはないと思うのだが、もしかしたらあの執事や我儘副代表に連れていかれててもおかしくはないだろう。
しかし何でこんなに小さい奴ばっかり俺の周りにいるんだろうな。
ユウキと恵里は140cmくらいの少女であり、鈴に至っては130cmほどしかない。俺が身長が185cmくらいであるので全員見下ろす形になる
それもほぼあれがない。膨らんでいるはずのあれが
すると鈴が急に和人の尻尾に触っている
「ひゃう。す、鈴。尻尾触るのやめろ!!」
「なんか失礼なこと考えなかった」
「考えてねぇよ。マジでこれ変な感覚になるからやめろ!!」
「和人くんそれどんな感覚なの?」
「説明しづらいんだよ。元々猫の尻尾もケモミミも人間にないなんだから。変な感じなんだよ。」
こういう時真面目な委員長かガイア直轄の学校の教師がいてくれたらなと思ってしまう。
遊んでいるように見えるのだが実はこのケットシーは気配感知とテイムにすぐれている種族であり索敵をきっちりこなしている。罠感知能力も多く精霊化を使っている時のステータスは
上田和人 17歳 男 レベル:10
天職:召喚術師
筋力:300
体力:200
耐性:100
敏捷:600
魔力:1000
魔耐:100
技能:召喚魔法・豪運・配下強化・契約魔法・技能共有・弓術[+狙撃]・気配感知・飛翔・言語理解
となっている。まぁ魔力を使って一回変化してしまえばそのステータスを維持できるのでかなり強化されているといっていいんだけど。
そしてビクッと何かを捉える
「後400m先モンスターと遭遇します。」
「お、おう。」
「精霊化便利だね。鈴が使ったらどうなるんだろう?」
「さぁな。案外ノームになったりして。」
「もう。和人くん。そんなことを言ったらダメだよ。」
と他所から見たらいちゃついているようにしか見えない会話をしているのだが、この姿になった和人たちはかなり連携も取れており、勇者パーティーよりも強いのだ。
光輝は少しイラついていた。和人の周辺には和人についてくれる人間がいて自分の思い通りにならない人間が存在していたからだ
そういちゃついているようにも見えるのが自分たちよりも強いのだそりゃイラつきたくもなるだろう。
「てかハジメもすげぇな。ステータスオール10くらいなのによくあんな戦法取れるな。」
というのはハジメの戦い方に素直に感心してしまう
ハジメが碌に使えもしない剣で戦うと思っていた。ところが実際は、錬成を利用して確実に動きを封じてから、止めを刺すという騎士団員達も見たことがない戦法で確実に倒していくのだ。
「僕は錬成しかないからね。こうやって戦うくらいしかできないから。」
「安全第一だしな。まぁ俺も弓で攻撃するし。」
どの口が言うのかと二人の少女からジト目で睨まれるが無視をする。和人のメイン武器を知っている二人にとってはふざけた回答なのだろうけど。
というよりも和人の相棒曰く三代目に当たる能力持ちのせい日々強化し続けているらしいのだが。
時に20層が過ぎ迷宮の各階層は数キロ四方に及び、未知の階層では全てを探索しマッピングするのに数十人規模で半月から一ヶ月はかかるというのが普通だ。
現在、四十七階層までは確実なマッピングがなされているので迷うことはない。トラップに引っかかる心配もないはずだった。
二十階層の一番奥の部屋はまるで鍾乳洞のようにツララ状の壁が飛び出していたり、溶けたりしたような複雑な地形をしていた。この先を進むと二十一階層への階段があるらしい。
すると、先頭を行く光輝達やメルド団長が立ち止まった。訝しそうなクラスメイトを尻目に戦闘態勢に入る。どうやら魔物のようだ。
「擬態しているぞ! 周りをよ~く注意しておけ!」
メルド団長の忠告が飛ぶ。
その直後、前方でせり出していた壁が突如変色しながら起き上がった。壁と同化していた体は、今は褐色となり、二本足で立ち上がる。そして胸を叩きドラミングを始めた。どうやらカメレオンのような擬態能力を持ったゴリラの魔物のようだ。
「ロックマウントだ! 二本の腕に注意しろ! 豪腕だぞ!」
メルド団長の声が響く。光輝達が相手をするようだ。飛びかかってきたロックマウントの豪腕を龍太郎が拳で弾き返す。光輝と雫が取り囲もうとするが、鍾乳洞的な地形のせいで足場が悪く思うように囲むことができない。
龍太郎の人壁を抜けられないと感じたのか、ロックマウントは後ろに下がり仰け反りながら大きく息を吸った。
直後、
「グゥガガガァァァァアアアアーーーー!!」
部屋全体を震動させるような強烈な咆哮が発せられた。
「ぐっ!?」
「うわっ!?」
「きゃあ!?」
体をビリビリと衝撃が走り、ダメージ自体はないものの硬直してしまう。ロックマウントの固有魔法“威圧の咆哮”だ。魔力を乗せた咆哮で一時的に相手を麻痺させる。
まんまと食らってしまった光輝達前衛組が一瞬硬直してしまった。
「ユウキカバー。」
「任せて。」
弓矢を引きしぼり狙撃していく和人と詠唱に入る恵里たち。
ロックマウントはその隙に突撃するかと思えばサイドステップし、傍らにあった岩を持ち上げ香織達後衛組に向かって投げつけた。見事な砲丸投げのフォームで! 咄嗟に動けない前衛組の頭上を越えて、岩が香織達へと迫る。
準備していた魔法で迎撃せんと魔法陣が施された杖を向けた。
しかし、投げられた岩もロックマウントだった。空中で見事な一回転を決めると両腕をいっぱいに広げて香織達へと迫る。しかも、妙に目が血走り鼻息が荒い。香織も恵里も鈴も「ヒィ!」と思わず悲鳴を上げて魔法の発動を中断してしまった。
「こらこら、戦闘中に何やってる!」
「はぁ〜。」
「狙撃!!」
弓を振り絞って矢を放つ和人とユウキのコンビは圧巻だった。的確に一撃から二発程度で敵を殺していく。ユウキ自身も和人の弓矢の扱いには驚いていた。
香織達は、「す、すいません!」と謝るものの相当気持ち悪かったらしく、まだ、顔が青褪めていた。
そんな様子を見てキレる若者が一人。正義感と思い込みの塊、我らが勇者天之河光輝である。
「貴様……よくも香織達を……許さない!」
どうやら気持ち悪さで青褪めているのを死の恐怖を感じたせいだと勘違いしたらしい。彼女達を怯えさせるなんて! と、なんとも微妙な点で怒りをあらわにする光輝。それに呼応してか彼の聖剣が輝き出す
「万翔羽ばたき、天へと至れ――〝天翔閃〟!」
「あっ、こら、馬鹿者!」
メルド団長の声を無視して、光輝は大上段に振りかぶった聖剣を一気に振り下ろした。
その瞬間、詠唱により強烈な光を纏っていた聖剣から、その光自体が斬撃となって放たれた。逃げ場などない。曲線を描く極太の輝く斬撃が僅かな抵抗も許さずロックマウントを縦に両断し、更に奥の壁を破壊し尽くしてようやく止まった。
パラパラと部屋の壁から破片が落ちる。「ふぅ~」と息を吐きイケメンスマイルで香織達へ振り返った光輝。香織達を怯えさせた魔物は自分が倒した。もう大丈夫だ! と声を掛けようとして、笑顔で迫っていたメルド団長の拳骨を食らった。
「へぶぅ!?」
「この馬鹿者が。気持ちはわかるがな、こんな狭いところで使う技じゃないだろうが! 崩落でもしたらどうすんだ!」
メルド団長のお叱りに「うっ」と声を詰まらせ、バツが悪そうに謝罪する光輝。ユウキも香織達に寄ってきて苦笑いしながら慰める。
その時、ふと香織が崩れた壁の方に視線を向けた。
「……あれ、何かな? キラキラしてる……」
その時、ふと香織が崩れた壁その言葉に、全員が香織の指差す方へ目を向けた。
そこには青白く発光する鉱物が花咲くように壁から生えていた。まるでインディコライトが内包された水晶のようである。香織を含め女子達は夢見るように、その美しい姿にうっとりした表情になった。
「ほぉ~、あれはグランツ鉱石だな。大きさも中々だ。珍しい」
「へぇ〜綺麗!!」
「本当に綺麗だね。」
とユウキと香織がグランツ鉱石を見てうっとりしている
グランツ鉱石とは、言わば宝石の原石みたいなものだ。特に何か効能があるわけではないが、その涼やかで煌びやかな輝きが貴族のご婦人ご令嬢方に大人気であり、加工して指輪・イヤリング・ペンダントなどにして贈ると大変喜ばれるらしい。求婚の際に選ばれる宝石としてもトップ三に入る。
「だったら俺らで回収しようぜ!」
そう言って唐突に動き出したのは檜山だった。グランツ鉱石に向けてヒョイヒョイと崩れた壁を登っていく。それに慌てたのはメルド団長だ。 しかし、檜山は聞こえないふりをして、上がっていく
「こら! 勝手なことをするな! 安全確認もまだなんだぞ!」
「鈴、恵里。戦闘準備だけしてろ何か嫌な予感がする。」
「えっ?あっうん。」
「了解。」
「団長! トラップです!」
「ッ!?」
しかし、メルド団長も、騎士団員の警告も一歩遅かった。
檜山がグランツ鉱石に触れた瞬間、鉱石を中心に魔法陣が広がる。グランツ鉱石の輝きに魅せられて不用意に触れた者へのトラップだ。美味しい話には裏がある。世の常である
魔法陣は瞬く間に部屋全体に広がり、輝きを増していった。まるで、召喚されたあの日の再現だ。
「くっ、撤退だ! 早くこの部屋から出ろ!」
メルド団長の言葉に生徒達が急いで部屋の外に向かうが……間に合わなかった。
部屋の中に光が満ち、クラスメイトの視界を白一色に染めると同時に一瞬の浮遊感に包まれる。
すぐ様立ち上がり臨戦態勢をとる和人たち
クラスメイトの尻餅をついていたが、メルド団長や騎士団員達、光輝達など一部の前衛職の生徒は既に立ち上がって周囲の警戒をしている。 転移した場所は、巨大な石造りの橋の上だった。ざっと百メートルはありそうだ。天井も高く二十メートルはあるだろう。橋の下は川などなく、全く何も見えない深淵の如き闇が広がっていた。まさに落ちれば奈落の底といった様子だ。
橋の横幅は十メートルくらいありそうだが、手すりどころか縁石すらなく、足を滑らせれば掴むものもなく真っ逆さまだ。ハジメ達はその巨大な橋の中間にいた。橋の両サイドにはそれぞれ、奥へと続く通路と上階への階段が見える。
それを確認したメルド団長が、険しい表情をしながら指示を飛ばした。
「お前達、直ぐに立ち上がって、あの階段の場所まで行け。急げ!」
雷の如く轟いた号令に、わたわたと動き出すクラスメイト。
しかし、迷宮のトラップがこの程度で済むわけもなく、撤退は叶わなかった。階段側の橋の入口に現れた魔法陣から大量の魔物が出現したからだ。更に、通路側にも魔法陣は出現し、そちらからは一体の巨大な魔物が現れる。その時、現れた巨大な魔物を呆然と見つめるメルド団長の呻く様な呟きがやけに明瞭に響いた。
――まさか……ベヒモス……なのか……