「……これはいったい?」
黒髪の痩せた少年、碇シンジは昔ながらの繋がらない公衆電話へと無意味な愚痴をこぼす。
(ここは何処なんだろう? 違う。
シンジは半ば察していながらも中学生特有の反抗心か、あるいは単なる現実逃避により、正解への思考を遠回りさせている。
「……あれは、戦自の戦闘機……」
空を見上げ呟く。いい加減認めざるを得ない。
(ここはサードインパクトが起きる前の、そのまたもっと前の始まりの日。僕はあの紅い世界から帰って来たのかな)
シンジは逆行したのだ。ただし、逆行するにあたり前もって何かを伝えてくれる人は、残念ながら1人もいなかったようだ。
(僕はどうすれば……)
一度サードインパクトを経験したと言っても、昔より少しだけ経験がある、と言うだけで特殊能力もなければ、金も無い、友達もいない、親も居ると言ってよいか分からない状態だし、シンジはほとほと困り果てていた。
(……この世界では、
おや? シンジの様子が…………?
(でも、彼女達にも前の記憶があるのだろうか?)
記憶は会って話して見ないと判断は難しい。
(……無いといいなぁ)
え。無い方がいいの?
(もしも、だ。もしも彼女達に記憶がなかったとしたら)
ごくり。
(前回の記憶を活かして)
嫌な予感しかしない。悪寒と言ってもいい。
(オナ○女にしてやる!)
碇シンジ。肉体年齢14才。性に目覚める。
ちょっと色々有りすぎてダメな方に性格が突き抜けてしまう。これは酷い。正しい性教育を施さなければいけない! 手遅れになる前に!
なお、周りにまともな大人は居ない模様。
オワタ。完全に世界が詰んでいる。サードインパクト最速RTAが始まってしまう。シンジ君、踏みとどまって皆の幸せを考えよう。
(一番の邪魔者は、やっぱりネルフの監視。これをどう誤魔化すかが計画の肝! まずは、どの程度のマークがされているのかを明確にしなければ……!)
ちょ。お前誰だよ。何故かキレ者風になるシンジ。やはり、思春期の原動力はエロなのか。
(そう考えると綾波の攻略難易度は高くなる。くそ! 初期の綾波なんて頼めばヤらせてくれる女の代表なのに、こんなのって無いよ)
こんなのって無いよは周りの人間のセリフである。人類の希望を一身に背負う少年が闇(エロ)落ちである。悔やんでも悔やみきれない。
(待てよ)
おや? シンジはやはり優しい子で考えを改めたのだろうか。
(綾波が人格的に成長しないように人との接触を前回よりもっと減らして、それでいて僕には従順になるように何とか誘導出来れば……!)
もう矯正は不可能である。サイコパスかのような思考に目覚めるシンジ。
(でも、僕がエロにかまけてたら世界はどうなるのかな?)
確かにそれは最もな疑問である。流石にエロサイコ中学生と言えども世界が滅んだら困る。
(……ま、いっか。どうせ頑張ったところで前回と同じになるに決まってる。それなら、短い間でも好き勝手して楽しんだ方がお得だ!)
後ろ向きなのか、前向きなのか、分からない理屈をコネだす。世界の破滅は確定である。
「ごめーん。待った?」
高級車ルノーに乗って葛城ミサトが表れる。アル中女にシンジの正しい性教育を期待するしかない。
「いえ。乗ってもいいでしょうか」
イッちゃってる思考とは裏腹にシンジの言葉使いは丁寧だ。
「もっちろん。早く乗って!」
「はい」
「も~シンジ君堅いわよ。もっとくだけてもいいのよ?」
アル中女は、シンジとの距離を詰めようとしている。見方を変えれば、懐柔しようとしている、とも言える。
「分かりました。ミサトさん」
「お! いきなり年上を名前呼びなんて意外とやるわね~」
(うっぜぇぇ。あんたがぐだけろ言ったんだろうが! マジメンドクセーな)
表面上は取り繕っているが、中身は反抗期の少年そのものである。寧ろ、先ほど迄のエロサイコ思考よりは健全だ。
(ただ、このアル中おばさんのいい加減で情に流されやすい性格は、僕としても好都合だ。僕がマンション内の監視に気づいてショックを受けた体で家出すれば、監視カメラも外される可能性が高い。そうすれば、都合の良いヤり部屋が手に入る。ククク)
黒い。このシンジはもはや真っ黒くろ助だ。クククとか言って眼帯もつけ出すかもしれない。エロくてサイコパスで中二病……逆に健全な中学生らしいと言えなくもない。
「あれは!」
ミサトが焦りを露にする。戦略自衛隊がN2爆弾を使用するのだ。その破壊力は並ではない。並ではない相手と戦っている。使徒とはそれほどの敵なのだ。
閃光。遅れて爆音。ミサトの不安が的中しルノーは回転しながら爆風で跳ばされてしまう。
(そういえば、前回もこんな感じだったっけ)
シンジは冷静さを失っていないようだ。
(死にたくはない。でも、どうせすぐに生きてるのか、死んでるのか、分からなくなるんだ。ちょっと早まったとしても、別にいいや。めんどくさい。エロいことが出来ればハッピーだけど、出来ないで死んでも別にいいや)
色々有りすぎて諦めて、開きなおってメンタル激強シンジ君誕生である。エロい方にしか能力を発揮しなそうなことが悔やまれる。
「ちょっち、手伝って!」
ミサトが車を動かそうとシンジに助けを求める。
「はいはい」
そして、場面は移り変わる。
「お前が乗るのだ。シンジ」
ガラス越しに上から見下ろし、録な説明もせず威圧的にゲンドウが言い放つ。エヴァンゲリオン初号機に乗れ。ゲンドウはシンジにそう言ってるのだ。
(ここで黙ってれば傷だらけの綾波が見れたはずだ! 傷だらけで血の滲む包帯……ぐっと来るものがある! どうしてこんな簡単なことに気がつかなかったのか!?)
むしろどうして気づいてしまったのか。リョナ趣味まで覚醒。もうあの優しくて不器用なシンジはいない。嘆かわしや。
「臆病者の役立たずめ。もういい。綾波を使え」
(やっとだ。はよはよ)
「な! 今のレイでは……」
「我々は負けるわけにはいかない」
「しかし……」
「ミサト。貴女も分かっているはずよ」
(そーゆーのいいから早くしてくんない? マジなんなんこいつら)
シリアスな空気など知ったことか、と言わんばかりのこの態度。前回とは図太さが桁違いである。
(お! やっとお出ましか。ほうほう。ふむふむ。成る程な)
したり顔だが、舐め回すように視姦しているだけである。
(この後どうなるんだっけ。ま、いいや。思わず心配で駆け寄った風を装い近づこう。そして、あわよくば色々触ってやろう。ククク)
綾波に駆け寄るシンジ。本人の希望通りいかにも心配してますといった顔だ。中々役者の才能がある。だが、外道そのものである。重体の少女に対するこの仕打ち。シンジはもう手遅れだ。
(流石にこれだけの監視がある中でことは起こせない。しょうがない。今は綾波の恥態をしっかり脳内フォルダに
保存しよう)
「危ない!」
ミサトの声が響く。鉄骨がシンジの頭上から落ちて来たのだ。
「え……」
周囲の思い描く未来は訪れず、初号機が手をかざし2人を守る。
「これは……」
「イケるわ!」
(ラッキー。守るふりして抱きつけだ。ツイテルゥ!)
平常運転である。命の危機にも全く動揺しない精神力。まともな方に活かしてほしいものだ。
この後、なんやかんやでエヴァに乗ったシンジはシンクロ率79%と中々に高い数字を出して、がむしゃらにナイフを振り回してたら、たまたまコアに当たりました作戦を成功させましたとさ。めでたし。めでたし。
なお、当然、爆発した。天罰である。