「転校生。ちぃとツラ貸せや」
熱血ロボットアニメの主人公が良く似合う男、鈴原トウジがシンジを屋上へ呼び出す。いいぞ、トウジ。そのクズに熱い鉄拳をお見舞いしてやってくれ。
シンジは今週の始めから学校に通っている。ちなみに学校でのシンジは初回と基本的には同じだ。たが、外面を取り繕うことを覚えたので、多少、周りからの印象は良いようだ。
「転校生、歯食い縛れ!」
「トウジ!」
トウジのマブダチこと相田ケンスケの待ったが入る。止めるなケンスケ。トウジの正義を思う存分、奮わせるんだ。
「ケンスケ。ワシはこいつをしばかなきゃならんのや」
せやせや。
「先ずは、理由を聞かせてくれ」
ケンスケの最もな質問が飛ぶ。ほくそ笑むシンジ。
このクズが今度は何をしたのか?
簡単に言うとケンスケを買収した。代金は綾波の写真。このクズ、基本的に綾波に対して独占欲という物がない。まして写真位どんな写真であれ好きなだけどうぞ、と言った感じだ。
(綾波の写真でケンスケを買収した甲斐があるってもんだ。ケンスケの奴、欲望とプライドの狭間で暫く悩んでて笑ったわ)
人が葛藤してるところを嗤う。ひねくれ者だ。これは仕方がない。思春期には良くあることなので見守るべきであ。
ところで何故独占欲がないか? それは……。
(どうせ。あのクズ親父も使ってるだろうし、今更さらじゃん?)
誤解である。少しは実の父親を信用したらどうだろうか。親父は別の穴があるので大丈夫なのだ。ゲンドウも良い年なので、あっもこっちもとはいかないのだ。
(それに、あんまりにもユルくなってしまえば、サクッと殺せばすぐに新品だ。ラミちゃんの時も、シャムちゃんの時も、他にもいくらでも力及ばず泣き別れ演出が可能だ。昔は絶望したけど、この世界、実に希望に満ちている!)
悪魔かよ。もはや、庇うことは出来ない。トウジ君だけが頼りだ。しばくと言わず抹殺してもええんやで。
「わこうたか! ケンスケ! わこうたらさごうてろ!」
「……すまない。シンジ」
(ちょ、お前!? もうちょい粘れよ!)
「死にさらせや!」
大振りの右フックを何とかかわすとトウジが更に怒りだす。
「避けんなや!」
「いや、避けるよ! 何で僕が殴られなきゃいけないのさ!? 納得いかないよ!」
まぁ、そこは分からんでもない。トウジの妹が戦いの巻き添えになって怪我をしたのは、常識的に考えてそんな危ない所に幼子を行かせてしまった親や監督者の責任だ。
(ぶっちゃけ覚えてたけど、面倒だから回避はしなかった。それにトウジを止める魔法の言葉がある)
嫌な予感しかしない。というか気づいていたとなると弁護が難しいぞ、おい。
「妹さんがどうなってもいいの?」
完全に悪党のセリフである。トウジ頼むから悪魔の言葉など無視してくれ。
「……どういうことじゃ?」
またもや、ほくそ笑むシンジ。心なしか先ほどより凶悪度が増したスマイリーだ(*゚∀゚)
「エヴァでの戦闘が気に入らないと言う理由で貴重なエヴァパイロットに傷害を負わす。これはどうみてもネルフに対する敵対行動だ」
お、おう。せやろか?
自信満々に言いきるシンジを見ているとそんな気がしてくる。
「所でトウジ、君の妹が入院している病院はどこの病院かな?」
シンジの言わんとするところを察したのだろう。トウジの先ほどまでの威勢が鳴りを潜める。
スマイリーシンジ( ´∀`)
「そうだよねー。ネルフの病院だよねー。転院するにしても結局はネルフと何らかの繋がりが有るところしかないよねー? ここ新東京ではねー?」
取り敢えずねーねー言っとけの精神は完全にイテマエ打線系女子である。……閃いた! 失礼。
……。
「せや。転校生のいう通りや」
「ついでにさ、僕ってネルフ総司令の息子なんだよね。ところで君の親父さんも
「……」
シンジは、ぐっとトウジの胸ぐらを掴み引き寄せる。上目遣いにトウジを覗き込むマジキチスマイリーシンジ(・ω・)
「だから、仲良くしようよ? ね?」
「……はい」
トウジ陥落!
これは酷い。何が酷いって色々あるけど笑顔が一番酷い。まさに外道とはこの事か。
「それから、ケンスケ」
「は、はひぃ!」
正直、びびってたケンスケはスットンキョンな声を上げてしまう。
「……君には失望したよ」
シンジは徐にゲンドウポーズをとろうとして椅子が無いことに気がつく。そんなことより、何より良心がない。
(人間椅子……魅力的な響きだ。だが、男に座るのはごめんだ)
トウジをちらりと見て、うっっざい顔でため息をつき首を振る。
なんやこいつ。
「ケンスケは綾波の写真もう要らないんだね」
シンジの言葉を聞いて焦り出すケンスケ。うん、まぁ、ケンスケはこんなもんだよね。
「ここに綾波の寝顔を写した写真がある」
「……!」
ケンスケは息を呑む。
「ケンスケの為にとリスクを犯して入手したのに残念だ」
訓練の帰りに寄っただけで実際はノーリスクである。シンジはまた、うっっっざい顔で首を振る。
ビリビリ。
ケンスケの目の前で写真を破り捨てる。
こらこら。ちゃんとお片付けしなさないよ。
「あぁ……」
ケンスケは精も根も尽き果てそのまま昇天しそうだ。
たっぷりと間を取ってからシンジがまた口を開く。
「もし、だ。君に罪を悔い改めるつもりが有るのなら……」
悔い改めるつもりが有れば、シンジを即刻ポリスメンにつき出すべきである。
「綾波の写真・寝顔+パジャマちょい乱れバージョンを特別に贈呈しよう」
「勿論! 僕はシンジのマブダチさ!」
まさに即堕ち2コマ。ケンスケはチョロいんだって、はっきりわかんだね。トウジの微妙な顔が哀愁を誘う。
こうして男の友情(?)を深めたシンジは、なんやかんやと日常系男子中学生の生活を満喫して、触手怪人こと、シャムシエルとの決戦の日を迎えた。
途中のIDカードイベントはどうしたかって?
届けに行ったら普通に○らぶる熟読してて話しかけづらかったから、そのまま帰ったとさ。
シンジは弱い相手とか弱ってる相手にはイキり陰キャの本領を発揮して好き放題だけど、元気な相手には引き際を心得た紳士なのだ!
監視カメラも気になるしね! しょうがないね!
『シンジ君。距離を取りながらパレットライフルで攻撃して』
まずは、安全圏からの様子見の指示だ。
(このイカ怪人どうやって倒したんだっけ?)
パレットライフルをテキトーに撃ちながら、シンジは前回の記憶を呼び出そうと頭を捻る。
……が、ダメ。シンジまたしてもアガれず。
この男、エロい方面や子悪党方面には鋭い閃きを発揮するが、それ以外ではバカシンジそのものである。
世界はもうおしまいである。
『シンちゃん、避けて!』
ボヤっとしてバレットライフルをやる気無さげにポチってたら、案の定、シャムシエルの射程距離に入ってしまっていた。
勿論、避けて等言われても無理な時は無理である。
(あ、閃いた!)
シャムシエルの鞭打をしれっとATフィールドで防ぎ、何かを閃く。腐っても逆行シンジ君の端くれ。ATフィールド位は任意に展開可能だ。そんなことより、今度は何を閃いたのか?
(ATフィールドを手裏剣みたいにして飛ばそう!)
何言ってんだこいつ。
(まず、手の平に小型のATフィールドを出します)
なんかやり出したぞ。
(そして、それを円盤状にして高速回転させます)
きゅいーん。気円斬かな?
(最後に、おめぇの席ねぇからぁ! の精神で拒絶を遠くに飛ばします)
…………バチん。
(あっれぇ? 何か思ってたのと違う)
シンジの気円斬は、フリスビーの様に飛び刃面から着弾したりはせず、円の平面からシャムちゃんにぶつかっていったのだ。シャムちゃんからすれば、うちわでバチコーンとヤられた感じだ。
(もしかして、ATフィールドって内側と外面があったりするのか)
心の壁だからね。特に君の場合は内心と外面の差が激しいからね、然もありなん。
(それで、拒絶を飛ばそうとすると外面の面からぶつかっていくのか。仮にフリスビーみたいに飛ばしたいなら、拒絶と受容の中間みたいな気持ちを飛ばさないといけないってことなのだと思う)
そんな器用なマネ、このシンジには不可能である。シャムちゃん、アダムたんまで待ったなし。次回の世界線にご期待下さい。
「やばーい? 詰んだかな」
『シンちゃん、諦めないで。まずば鞭の攻撃範囲とパターンをこちらで解析するから、防御と回避に専念して頂戴!』
エリート軍人にして、エリート公務員のミサトからの指示が飛ぶ。アル中はアルコールが切れてなければそこそこまともなのだ。
「うーん。でもせっかくだし、上手い具合に飛ばせないかな?」
ミサトの指示はガン無視である。これは懲罰物である。
シンジは諦め悪く再度、手のひらに気円斬(笑)を作りだす。今度は右手に一つ、左手に一つ。確かにこれをカッコ良くシュパッとやりたい気持ちはわかる。
さて、突然だが、綾波レイは今何をしているか。
お家で、○らぶるの精読?
それは寝る前の日課であって今している訳ではない。
無口キャラを確固とするために鏡の前で表情チェック?
それは朝の日課であって今している訳ではない。
答えは…………。
「レイ! 急に走り出してどうしたの!?」
青春じゃないっすか。
綾波レイはシンジのフォローの為に零号機に乗り、後方で待機していた。お仕事だからね、仕方ないね。
華麗なフォームで走り抜ける零号機は、シンジからやや離れた地点でステップを踏み、跳躍。空中で3回転を綺麗に決め初号機の上に……。
衝撃。此だけの大質量の物体が跳んだり跳ねたりしたら、そらそうなるわ。
それにしても初号機と零号機のこの体勢、既視感が……?
(こ、これは○らぶるの十八番、顔面騎乗!)
人造人間同士の濃密な絡み。R18に行くべきか、悩みどころだ。
(ってなんでやねん!)
シンジの鋭いツッコミと共に気円斬×2が龍玉よろしく綺麗に飛んでいくではありませんか。
人造人間の恥態に頬を赤らめていたシャムちゃんのくりくりの可愛いコアをスパっと四分割。
あ、やべ。
こんなこと考えてるかは分からないが、シャムちゃんはボンっとかわいい爆発音と共に散ってしまった。なむなむ。
(もしかして、綾波の合ってるけど、間違っている変態行動への「違う! でもその調子!」という気持ちが拒絶と受容のバランスを絶妙に整えた?)
ええぇ。
突然、シンジのコックピットに綾波からの映像が入る。
気のせいだろうか。綾波がどや顔をしているような……。あなたはそんな子じゃ無かったよね?
「……あ、切れた」
綾波はシンジにどや顔を見せつけるだけ見せつけたら通信を一方的に切ってしまった。なんというマイペース。これはシンジと良い勝負である。流石はマッディなサイエンサーユイの血を継いでる2人なだけはある。
こうしてシャムシエルを粉砕したシンジとレイ。2人は世界を救うことが出来るのか!?
なお、巨大ロボット(とトウジは思ってる)同士のくんずほぐれつを間近で見ていたトウジは、何か感じいるものがあったようだ。
ほう、これはなかなかどうして……。
皆、思春期だからね。仕方がないね。