シンジ君だって思春期なんだ!   作:虫野律

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アスカ視点。時間無くてあんま確認してないから後で直すかも。


真ヒロイン決定戦!

「シンジが真人間になったぁあ?」

 

 静かな昼休み、ケンスケの声が裏返る。屋上でケンスケがアスカから打ち明けられたのは、俄には信じられない常軌を極めて大きく逸脱した推定虚偽なる怪奇現象だった。

 ケンスケが、わぁこんなの初めてー! と女がほざいたのを聞いてしまった時の様に愛想笑いとドン引きと胃もたれを足して三乗したような顔をする。ケンスケはもうお腹いっぱいだ。

 

「あんたの気持ちも分かるわ。あの変態鬼畜ゲス性欲魔人サイコパスが更正するなんてサードインパクトが起きても無理よ」

 

 まったくだ。であれば、やはり推定虚偽ではなくみなし虚偽なるガセネタだったのか。

 

「でも、本当よ」

 

 アスカの剣幕にケンスケにも、まさか、いやしかし、と迷いが生じる。

 

 まずは話を聞こう。それからだ。

 

「いったい何があったんだ?」

 

 アスカは事の顛末を語りだした。

 

 時は、数日前に遡る。

 

 

 

 

───使徒襲来! え? 違う? でも反応はある? 使徒……襲来?

 

 マヤにいつものキレが無い。事実が判明してないのに放送しようとするから悪いのだ。

 

 ネルフにて、その道(・・・)を極めんと研鑽を積むついでにエヴァの訓練をちょちょいと片付けて、お家に帰ろうとしたアスカの耳に飛び込んできたのは、中途半端な緊急アナウンスだった。

 

(使徒じゃない? どういうことなの?)

 

 考えていても分からないなら、知ってそうな人間に聞くしかない。正直、早く帰って、シン……ではなくひょんなことから手に入れた布を加工しなければいけない。多忙な身であるアスカからすれば面倒極まりないが、お仕事だ。仕方がない。

 

(あーもー! 何なのよ。今日はミサトも居ないし、シンジも最近、ゴミ箱に痕跡もないし、いい感じに溜まってるのに!)

 

 人のゴミをナチュラルに把握しているあたり、アスカもシンジとは別ベクトルのクズである。大体、痕跡とはなんのことなのか? 溜まるとは何が溜まるのか? 見当もつかない(すっとぼけ)。

 

 プンプンと怒りながら指令部へとアスカは突入する。先ず最初に感じたのは、いつもとは違う緊張感だ。そして、困惑が広がっているのを理解する。

 

「どういうことなのよ? 使徒はどーしたのよ?」

 

 ちゃっちゃところころして、お家でぎちぎちされて、じゅんじゅんしたいのだ。早く説明しやがれ。

 

「今回の使徒は……ウィルス型の極小ナノマシンよ」

 

(ごっくんなの! マシン? 何それ欲しい)

 

 アスカは常人では到達し得ぬ頂きのその先へ邁進している。シンジといい勝負だ。

 

 変態淫乱メンへラマゾ女は放って置いて、アダムたんを愛でる会……もとい、第7回アダム様奪還会議で何があったか見てみよう。

 

 

♡♡♡

 

 

『王子までやられてしまった』

 

『どうなっている。売女リリスの汚れた種族にこうもいいようにやられるなど、信じられない』

 

『……奴だ。紫の変態。その中核たるリリン。奴が全ての元凶だ』

 

『ラミちゃん殿……』

 

『変態ロリコン野郎は黙ってろ……と言いたい所ですが、そのリリンに関しては同意しますわ』

 

『!』

 

『ガキエル嬢がラミエロの肩を持つとはどういう風の吹き回しだ?』

 

『エロエロwww 』

 

『『…………』』

 

『別に。事実をそのまま受け取っているだけよ』

 

『ラミエロ殿。具体的には奴のどこが脅威であるとお考えか?』

 

『……変態性。全ての物事を性欲の捌け口にする圧倒的色情狂。……それが奴の全てだ』

 

『ではいったいどうすれば良いのだ!? 我々に残された時間は少ないのだぞ!』

 

『皆、ネトゲとかクルトゥフとかやり過ぎwwアニメも観すぎwwだから時間無いんだぞーww』

 

『『…………』』

 

『僕に考えがある』

 

『イロウル!』

 

『アダム様親衛隊随一の頭脳派の貴殿なら……!』

 

『して、その考えとは……?』

 

『僕が変態撲滅ウィルスとなり、奴を真人間にする!』

 

『『『な、なんだってー!!』』』

 

『皆、ノリノリ過ぎワロタwww』

 

 

♡♡♡

 

 

「この使徒の特徴は、ターミナルドグマを目指していないことよ」

 

 リツコが苦虫を噛み潰したように、しかし、努めて機械的に言う。

 

(じゃあ、目的はなんなのよ)

 

 アスカは使徒やネルフについては、ある程度しか知らない。分野によってはシンジよりも理解が無い。これはそう仕向けていた周りの責任であってアスカが悪いわけではない。

 たがら、リツコの要点だけの解説を聞いても、ポカンとしてしまう。

 リツコもそれを重々承知している。だから結論だけ述べる。

 

「要するに、この使徒は対使徒戦のキーパーソンであるシンジ君の無力化に特化しているのよ」

 

(そんなのってアリなの?)

 

 理解は新たな疑問を産む。

 

(でも、無力化ってどうなっちゃったの?)

 

 そもそも、こんなのあったろうか。アスカにも周囲の困惑が感染する。尤も、リツコ達とアスカでは困惑のカテゴリーが違う。

 

「で、肝心の無敵のシンジ様はどこよ」

 

「……集中治療室に監禁しているわ」

 

 リツコが重々しく答える。リツコ自身、予想外の展開に疲弊しているのだろう。

 

「はぁ? シンジなどうなっちゃったのよ。まさか意識が無いとか、もっと……」

 

 アスカの脳裏に考えたくない未来予想図が描かれる。

 

(もし、そうなったらあたしが世界を……)

 

 アスカの葛藤を他所にリツコが想定外の一文を付け加える。

 

「シンジ君は、大人しい内気な少年になったわ」

 

「え? 詳しく説明して」

 

 嫌な予感がする。

 

「感染が確認されてからのシンジ君は、いつもの様にふてぶてしい態度では無くて、周りの顔色を伺いながら恐る恐る言葉を選んでいる。私にはそう見えたわ」

 

(そんな……。それじゃあ、まるで()みたい……)

 

 信じたくない。もし、アスカの予想が正しいならシンジは……。

 そう。アスカにとって重要なことはシンジが今のシンジであること。何故なら……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(うぅ。前のシンジじゃあ、絶対、緊縛ガチ調教プレイなんてやらないよぅ。どーしよどーしよ)

 

 まぁ、そーだよね。君はそういう子だよね。

 

(……まだよ! まだ諦めるには早いわ。何か方法があるはず!)

 

 人間は一度、禁断の果実を味わってしまうと、もうそれ無しでは生きていけなくなってしまうのだ。

 そして、アスカはセックスレスを理由に離婚する女だ。このような事態は受け入れらない。何とかしてシンジをフル○ッキ魔人に矯正しければ!

 ここに至り、アスカの感覚が急速に研ぎ澄まされていく。(エロス)に目覚めたアスカは、無敵の(いんらん)恋する乙女モード(ビーストモード)だ。

 

 決意を新たにアスカはリツコに問う。情報収集と状況把握が最優先だ。

 

「シンジが変わってしまったのは理解したわ。じゃあ解決策は何なの? 考えているんでしょ?」

 

「……推測になるけれども、使徒はシンジ君の精神力に目をつけた。そこで精神の脆弱化を図るウィルスに変異した」

 

 ここまでは良いわね。リツコは一旦、呼吸をして間を置く。

 

「だけど、分からないのよ。いつもシンジ君にあって今のシンジ君に無いものが具体的に何なのか分からないのよ」

 

 シンジの精神力=エロ。こんな簡単なことも分からないとは、頭のいいバカである。

 

「そんな……」

 

(いや、ここでグダグダ言ってても何も始まらないわ。となればやることは一つね)

 

「シンジに会わせて頂戴。あたしが自分の目で判断するわ」

 

 

 

 

 

 

 

「アスカなの……?」

 

 集中治療室に居たシンジはいつか見た自信が無く、さりとて助けを求めることも出来なかった頃と同じ目をしていた。

 アスカは知らず知らずに呼吸を止めてしまっていた。やけに苦しい。そこまでいって漸く呼吸が止まっていることに気づいた。

 

「何を企んでるのよ。あんたそんなタマじゃないでしょ?」

 

 アスカは最早確信を持ってしまった事実を否定するために、敢えていつもの様に接する。

 

「なんだよそれ。僕が何を企むって言うんだ。そんなわけないじゃないか」

 

 口を尖らせ憎まれ口を叩く姿にアスカは目眩に似た感覚──既視感が広がってゆく。

 

(ホントに戻ってしまったの?)

 

 意を決してハートフルワードを吐き出す。

 

「ガチ失神強姦ラブラブセックス」

 

(これならどう!?)

 

 シリアスなフリしてただ淫語を並べているだけである。

 

「な、何言ってるんだよ! 意味が分からないよ!」

 

 その通りである。そもそも、強姦なのにラブラブとはストックホルム症候群かな? 

 ……シンジはこのままでいいのでは無かろうか。むしろ、イロウルさんにはもっと頑張ってもらって世界平和に貢献してもらいたいものだ。アスカとかレイとかやベー奴の治療を是非お願いしたい。

 

(そんな! これからあたしは何を希望に生きていけばいいの!?)

 

 そんな希望は捨てることをオススメする。いい機会だから皆まともになったらどうかな?

 しかし、そうはアスカが卸さない。自らの欲望を満たす為に頭脳が高速回転する。アスカは快天したいのだ。諦めるわけにはイかない……!

 

(そうだ。あいつなら何か名案があるかも)

 

 こうしてアスカはケンスケに相談する。いつもシンジと絡み、嫌らしい顔で話しているケンスケならば起死回性の一手を打てる。

 これは単なる希望的観測ではないはずだ。アスカは自らの直感に従い動き出す。 

 

 

 

 

 

 

 そして、冒頭のシーンへと繋がる。ケンスケが徐に口を開く。

 

「成る程。僕に一つ、考えがある」

 

 果たしてケンスケに一筋の希望を見出だすことに成功する。

 

(流石、私が認めた頭脳を持つだけはあるわ!)

 

 チルドレンを選定するにあたり行われた調査報告書には次のようにあった。

 

『No.7相田ケンスケ。特記事項・IQ167』

 

 天才赤木リツコを越え得る逸材。それがケンスケに対するネルフ上層部の共通認識だ。

 その頭脳を以て、此度の使徒に対する特効薬を導き出す。

 

「勿体ぶらないで早く教えなさいよ!」

 

 ケンスケはにやりと口角をあげる。

 イラッ。

 ……アスカは成長しているのだ。ブチ切れたりはしない。プルプル。

 

(大丈夫。我慢できる。あたしは変わったの。解決策を聞き出すまでの辛抱よ)

 

 解決策を言ったが最後、ケンスケはどうなってしまうのか。

 

「仕方ないなぁ。特別に知恵を授けて進ぜよう」

 

 ニヤニヤとしながらアスカが焦っているのを完全におちょくっている。

 ブチブチ。

 ケンスケは天才だ。それは間違いない。だが、ちょっと周りが見えてないだけなんだ。

 そして、アスカはドMだ。それは真理だ。けれども、かなり好き嫌いが極端な困ったちゃんだ。

 

「いい加減にしろやワレ! お? やんのか? ああ!?」

 

 つまりは、ケンスケがやった様におちょくられても、マゾい快感は得られない。結果、こんな感じにブチギレる。

 

「ひぃ」

 

 アスカは、やんのか? と言ったあたりで腹パンと壁ドン(ヤンキー漫画仕様)をかましている。聞いておきながら既にやっちゃっている。熟練の技と言えよう。

 

「潰されたくなけりゃ、さっさとゲロっちまえよ! なぁ!?」

 

 過剰な暴力描写は自主規制させていただきたいので、詳細は省くが、一言で言うとタマひゅんである。

 

 数分後、落ち着きを取り戻した反抗期の2人はやっとまとも(?)な会話を再開させる。そして、アスカは漸く求めていた答えを得る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「つまりはシンジにエロい事をしてフル○ッキさせればいいのね!」

 

(テンション上がってきたぁぁ!)

 

 暴力と性欲。アスカがやったことを纏めるとこの2つに集約される。

 最低だ、あたし。

 なんて可愛い精神は更々持ち合わせていないのでシンプルにあげあげだ。アスカはさいきょーだとおもいました。

 

「シンジの精神力の根源は歪んだ性欲と性癖、さらにはそれらをベースにしたエゴイスティックかつ刹那主義的な精神構造の歪みにある」

 

 ケンスケも真面目に不真面目な事を言っている。

 

「おそらく今回の使徒はそれを朧気ながら見抜いた。結果、シンジは歪みを消され、歪みが発生する前と同質の状態になった、と推測出来る」

 

(そう言うことだったのね。でも待ってそれじゃあ……)

 

「今までの記憶はどうなっているの? 忘れてしまったの?」

 

(あんなに強く縛っておきながら忘れたなんて……。それにプレゼントだって……)

 

 プレゼント(セルフ)である。アスカの頭の中ではシンジが渡したことになっている。流石は、キョウコ氏の娘だ。

 シンジは定期的に愛用品が無くなるので、最近では一つのものを長く使わないで、ころころと買い換えるようになってきている。女性関係にもこのルーチンが適用される日は近い。

 無意識に自分で自分の首を締めるとは、アスカはマゾの鏡である。

 

「記憶に関しては、歪みの消滅との整合性を持たせた結果として、最近の記憶の喪失に類した状態になっていると思う」

 

「……でも、フル○ッキで治るのよね?」

 

「そこなんだけど、ただ単にフル○ッキしただけでは治らないはずだ」

 

 ねぇ。君たちフル○ッキ言いたいだけだよね? 

 

「どういうことよ」

 

 ケンスケは瞑目して、自らの説を今一度検証し、正確性と妥当性を確認する。

 間違いない筈だ。見落としなど無い。

 

「今、シンジは人格が変わる程強く、性欲を抑圧されている状態だ。その拘束を打ち破るには生半可な性的衝動では不十分なんだ」

 

「そんな……」

 

(フル○ッキでもまだ足りないって言うの!? それならどうすれば……)

 

 まぁまぁ、最後まで聞いてくれ、とケンスケはアスカを宥める。そして、パンドラの箱に残った一滴の光をアスカへと射し込む。

 

「生半可ではない性的衝動、つまりは抑圧されたシンジの本質的な性癖を喚起し、性的情動を爆発させること。これがシンジを変態ゲス野郎に戻す必要十分条件だ」

 

 そこまでして戻す意味はないことは自明の理である。苦労した結果が変態ゲス復活とか報われないにも程がある。

 しかし、残念ながら、ケンスケによる天啓を得たアスカの顔に希望が滲む。ここで言う『希望』は、『性欲』の隠語であるのは世界の真実である。

 テンションアゲアゲのアスカは我が意を得たりと口を開く。

 

「バッキバキにフル○ッキさせてからのアヘアへ絶頂○精で解決ね!」

 

(何か想像したら、準備(・・)が整ってきた……)

 

 もう、お家に帰って大人しく明日の授業の準備して寝た方がいいんじゃないっすか?

 

 

 

 

 

 アスカはまるで丸の内に勤務するキャリアウーマンの様に自信たっぷりにネルフを闊歩する。

 リツコがいる情報統括室へノックも無しに闖入し、開口一番、言い放つ。

 

「シンジを私に(預けて)頂戴!」

 

 ざわざわ。使徒への有効打を見つけられずに鬱々としていたリツコと愉快な仲間達が色めきだす。

 

 アスカちゃんたら、なんて情熱的なの。

 ああ、きっとシンジ君が好きでたまらないんだ。

 少し位、性格が変わっても愛は変わらないのね。

 

 皆、好き勝手言っている。少しはマヤを見習ったらどうかな。鼻血を出して静かに横たわっているよ。

 

「……理由を教えてちょうだい」

 

「実は……」

 

 アスカもバカではない。ストレートにセクハラする為なんて言わない常識はあるのだ。

 

「ラブラブちゅっちゅっでホワイトアウトなのよ」

 

「はぁ?」

 

 常識はあるのだ?

 

(あ、間違えた。つい本音が)

 

「ではなくて、かくかくしかじかで」

 

 エロいことは伏せて、シンジの回復への秘策があることを説明する。その為にはシンジと2人っきりにならないといけない旨、説明する。

 リツコは思考する。ミサトのマンションならばカメラがある。ここは頷いて、密かに監視を続行すればいい。それに、このまま手をこまねいているわけにはいかないのも事実。アスカのお手並み拝見といきましょうか。

 

「分かったわ。ただし、危ない兆しがあったらすぐに連絡しなさい」

 

「オッケー! じゃあ早速シンジを連れていくわね」

 

 碇シンジ、ドナドナされるの巻。

 一体何が始まるんです? 

 シンジは嫌な予感が抑えきれないものの、アスカの妙な迫力に何も言えずに従う。

 

 

 

 ガチャリ。カチャカチャ。

 マンションの玄関扉を閉めるとすかさず鍵を閉めるアスカ。チェーンロックまでしっかりと掛けている。

 シンジは何も見なかったことにして、バレないようにアスカから、すこーしだけ距離をとる。

 

「さぁ、始めましょうか」

 

 アスカの目が据わっている。手にはいつの間にかロープが握られている。

 アスカは監視カメラが気にならないのだろうか?

 いや、そうではない。アスカはケンスケに前以て、ミサト宅の監視カメラの映像を差し替えるように頼んでいたのだ。今頃、リツコは誰も居ないマンションのリピート映像を見ていることだろう。

 相田ケンスケ。

 奴の頭脳にかかればこの程度、片手間にこなしてしまうのだ。

 

「痛いのは最初だけ……ではないけど、ダイジョーブダイジョーブ。きっとシンジも気にいるわ」

 

 にじり寄る変態。ホラーである。

 後ずさりするも、トンと、すぐに壁にぶつかってしまう。シンジは恐怖で頭がどーにかなりそうだ。

 そして、遂に変態に捕まる。素早く作業を開始するアスカ。目の錯覚だろうか、残像が見える。 

 

「ア、アスカ? 何してるの? ねえ、何で無視するの? あ、あアッー!」

 

 哀れ、シンジは野獣の餌食になってしまった。過激な性的描写は自主規制させていただくが、簡単に言うと、緊縛パラダイスである。

 

(……おかしい)

 

 おかしいね。君の頭がね。

 シンジは無惨にも縛りあげられ、肉体のとあるポイントを執拗に刺激され、疲弊している。

 

「うぅ、最低だ、僕……」

 

 何があっかは描写出来ないが、不憫びんでならない。

 

(……あたしなら、こんなにいい感じに縛られたら、それだけでイってしまう。さらにピーを責めぬかれたら天に召されかねない)

 

 天に召されればいいんじゃない? 

 

(でも、シンジは全然幸せそうじゃない。こんな美少女が愛を注いでいるのに、2回だけ……。どうして? 何がイケないの!?)

 

 自分の価値観が他者にも当てはまると盲信することは、思春期には稀に良くあることだ。無自覚に人を傷つけるなんて思春期アルアルの代表格だ。広い心で成長を見守ろう。……などと言えるレベルを鼻歌を奏でながら、スキップで越えるのがアスカという自称美少女だ。普通に良かれと思って犯罪を犯している。こういう人間が一番恐ろしい。

 

「どうすればいいのよ……」

 

 自首すればいいと思うよ。

 アスカとシンジが全く別の理由で絶望に苛まれていると、突然、少女の声が割って入ってきた。シンジの混乱はヤバいところまで来ている。もはや混乱ではなく混沌とした精神状態だ。

 

「私に任せて」

 

 綾波レイ。ネルフ暗部の上忍である。

 という設定にレイの中ではなっている。

 軍で訓練を積んだアスカをして、気配に気づかせない。忍と言っても差し支えない隠行だ。

 レイは密かにアスカを尾行してケンスケとの会話をしっかりと聞いていた。そして、タイミングを見計らいカッコ良く登場しようとした結果が、今のカオスな状況である。

 

(綾波レイ……! シンジを狙う不届き者! こいつの力を借りるのはシャクだけど、背に腹はかえられない……)

 

 アスカは断腸の思いでバトンを渡す。どんだけハードSMプレイをしたいんだ。

 

「碇君」

 

「ひ!」

 

 シンジは思わず、悲鳴をあげてしまう。レイはアへ顔でピチピチの全身タイツとかいうガチ変態モードだ。手には忍具(意味深)が握られている。もはや、人気ヒロインの面影は皆無だ。全ては○らぶるダークネスから始まった。げに恐ろしきは顔面騎乗である。

 

「大丈夫。心配要らないわ。碇君は私が守るもの」

 

 レイは天使の微笑みを浮かべる。にっこり。マジキチスマイルここに極まれり。守りたいこの笑顔。

 

「何をしてるんだよ! 綾波ぃ! 綾……アッー!」

 

 哀れ、シンジは珍獣の餌食になってしまった。過度に特化した性描写は自主規制させていただくが、ザックリ言うと男にも穴はあるということである。

 

「うぅ、最低だ、僕……」

 

(あんな世界があるなんて……。綾波レイ……まさに天才の所業。悔しいけど、完敗ね)

 

 甲乙付け難い変態行為である。

 

「……まだダメ……」

 

 レイが呟く。シンジはまだ(人格が)回復していない。そりゃ、立て続けに4回もホワイトアウトしたら、簡単には(ピーは)回復しないでしょうよ。

 

(これでもダメなの……? もう私達にできることなんて……)

 

 他にもっとやるべきことはある。そこに気がつかないとは……やはり変態か。

 

──ぷるるん、ぷるるん。

 

 唐突に気の抜けるようなメロディが流れる。アスカの携帯が鳴動しているのだ。

 

(誰よ、こんなときに!)

 

 画面には、ケンスケとある。瞬間、アスカは音速で応答する。藁にもすがりたいのだ。

 

「ケンスケ! 実はかくかくしかじかで」

 

 アスカがまくし立てるもケンスケは動じずに静かに耳を傾けている。アスカにひと通り吐き出させた後、ケンスケが口を開く。

 

『そんなことだろうと思って、例の媚薬を僕が改良したものをトウジに持って行かせた。それを使えばフェチニズムをピンポイントで刺激するのと同等の効果が期待できる。それじゃあ、健闘を祈る』

 

 例の媚薬とはリツコがアスカとレイに渡したアレである。どうやらケンスケはそれを独自に改良していたらしい。才能の無駄使いだ。

 

「ケンスケ……!」

 

(キモい奴だと思ってたけど、使えるキモい奴だったのね!)

 

 キモいことは変わらないのか。悲しいなぁ。

 

 少しして、玄関チャイムが鳴る。

 

「アスカー、おるか? 頼まれてたもんもうて来たでー!」

 

 トウジの声を聞いてシンジがぴくりと反応する。

 

(ん!? シンジに変な反応が? 今のトウジのセリフに何か琴線に触れる物があったの?)

 

 アスカは素早くトウジを招き入れる。

 

「今のセリフもう一回言って!」

 

 いきなり過ぎる。トウジは怪訝な顔をするも、切羽詰まったアスカとレイの様子にただならぬものを感じ、素直に従う。

 

「よう分からんが……。頼まれたもんもうて来たで。これでええか?」

 

 シンジに変わった様子は無い。あい変わらずグッタリしたままだ。

 

「その前から、もう一回!」

 

 前ってなんか言ったか?

 うーん、と唸り思い出したのか、トウジがリクエストに応える。

 

「『アス()ー、おる(・・)か? 頼まれてたもんもうて来たでー!』」

 

 完璧やろ、とトウジはどや顔である。嫌な予感がしつつもアスカはシンジをガン見する。

 

 シンジは……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「カヲル君!」

 

 色んな所が元気100倍あんあんまんである。

 

「なんでそーなるのよ!」

 

 本場仕込みのツッコミを見て育ったトウジをして唸らせる程のキレである。

 

 さて、突然だが、シンジの精神世界を覗いて見よう。

 

 

 

 

♡◇☆

 

 時はアスカとレイの犯行時刻に遡る。鎖にぐるぐる巻きにされたシンジと優しげな目元が特徴的な美少年──使徒イロウルが六畳の和室でテレビを見ている。テレビにはアスカとレイの鬼畜の所業が映し出されている。

 

「うわー。君たち何なの? なんでそんなに頭がおかしいの?」

 

 イロウルはドン引きである。良く見るとシンジも顔をひくつかせている。

 

「まぁ、世の中には色んな奴がいるからね!」

 

 こんな奴ら滅多に居て堪るか。開き直るのもいい加減にしてほしい。

 

「やはり、アダムさんにお願いしてサードインパクトを起こさなくてはいけない」

 

 せやせや。白き月陣営にはきばってもらわんとようあかんわ。マジで頼むぜ。

 

「そんなことより、鎖ほどいてくれない?」

 

「それは出来ない。そんなことしたら、君はまた変態行為に明け暮れるでしょ」

 

 イロウルは正義の使者だ。間違いない。

 

「そんなことしないよ。約束する。だからほどいて」

 

 勿論、嘘である。大正義イロウルさんには通用しない。

 

「諦めて大人しくテレビでも見ていなよ」

 

「えー」 

 

 ぶーぶー言いつつもしっかりとテレビを見ている。不意にトウジの声がする。

 

『……カ、おる……? …………!』

 

 か、おる? 

 シンジの中で忘れようとしていた記憶が甦る。カヲル君の声、カヲル君の体温、カヲル君の匂い、カヲル君の……。

 

 渚カヲル。魅力チートを公式から授かった超絶イケメンだ。シンジの性癖はカヲルと出会った時にすでに決定していた。

 だが、カヲル君は男だ。シンジの中で唯一の引っ掛かりが、辛うじてシンジを踏みとどまらせる。でも、でも、カヲル君……。

 悩むこと数分。シンジの顔に光が差す。殴りたいこの笑顔。

 

「は! 待てよ。良いこと閃いたぞ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

  

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

  

「カオル君は本当は男の娘だから問題ないんだ! むしろ、ご褒美だ!」

 

 何を言っているんだ。意味不明だ。しかし、イロウルの生存本能が警鐘を鳴らす。

 シンジが光に包まれたかと、思うと鎖が弾け飛ぶ。

 

「やっふぅ! 完全復活だー!」

 

 そう叫んだシンジは、ねっとりとした視線をイロウルに送る。

 

「ひぃ」

 

「イロウル君もキレイな顔してるね? ふふふ」

 

 拘束されて、色々溜まっていたシンジを止める者はここにはいない。イロウル、成仏しろよ。

 

「止めろ! 近づくな! アッー!」

 

 大正義イロウル。アンチ変態機能に特化したウィルスと言う名の変態治療薬であったが、進化する変態にコロコロされてしまう。ウィルスとワクチン、病気とお薬はいたちごっこだからね。仕方ないね。

 

 なお、目覚めたシンジはアスカに生ゴミで作ったハンバーグを食べ過ぎてゲロった吐瀉物に向けるような目を向けられていたとさ。めでたし、めでたし。

 

 良い子の皆は変態行為は用法・用量を守ってやろうね! 約束☆だぞ!

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