やはり俺の青春バンドはまちがっている   作:小野こまっち

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始まりの歌#1

青春とは嘘であり悪である。

青春を謳歌せし者たちは常に自己と周囲を欺き、自らを取り巻く環境のすべてを肯定的にとらえる。

彼らは青春の二文字の前ならばどんな一般的な解釈も社会通念も捻じ曲げて見せる。

彼らにかかれば嘘も秘密も罪科も失敗さえも青春のスパイスでしかないのだ。

仮に失敗することが青春のあかしであるのなら、友達作りに失敗した人間もまた青春のど真ん中でなければおかしいではないか。

しかし彼らはそれを認めないだろう。全ては彼らのご都合主義でしかない。

結論を言おう。青春を楽しむ愚か者ども砕け散れ!

 

目の前に提示された俺のレポートを指さし、目の前にいる平塚先生はゆっくり煙草に火をつけながら口を開いた。

 

「たしか私は中学生活を振り返ってというテーマでレポートを出せと言ったはずだが?」

 

「いやだから振り返りましたって。」

 

「あのなぁ、このテーマでこの文を書いてくるなんて君は馬鹿なのか?もしくは新手の犯行声明か?」

 

「なかなかない2択ですね。どっちでもないっすけど。」

 

「はぁ・・・。なぁ君は何か趣味とか続けてることとかはないのか?」

 

「そうっすね・・・。人間観察とか、強いて言うならベースですかね?」

 

数年前、とある日常系軽音部アニメが流行った時俺も例に漏れず推しの楽器を買った。それがベースだったわけなんだが。

まぁそこそこの金を出したので辞めるに辞めらられず今に至る。

 

「ベースか・・・、なるほどな。とにかくレポートは再提出だ。だが提出はすぐじゃなくていい。」

 

・・・ん?たいがい再提出というのは近日中ってのがセオリーなんだが、すぐに提出しなくていいってのは・・・?

 

「はぁ・・・。というと?」

 

「君のレポートは青春についてがメインだろう。だが情報に偏りがあると感じたのでな、君には青春をしてもらおうと思ってな。」

 

「ちょっと何言ってるか分からない・・・。」

 

なんだその年末の風物詩の1番最初の場面みたいなセリフは・・・。

 

「まぁアレだ。なにごともやらずに批判するのは良くないだろう?1度やってならいくら批判しても私は文句を言わんよ。」

 

「まぁ確かに。」

 

俺も1度も見てないアニメを批判するのとかは良くないとは思う。まぁ1回見て叩くけど。

 

「というわけで君には部活をしてもらおうと思ってな。確か君は部活には入ってなかったよな?」

 

「ええ、まぁ。でも何部なんですか?」

 

まぁ何部だろうと入る気はないんだが。

 

「まぁこれから案内するよ。」

 

ちょうどその時、俺達のいる応接室に入って来たのが・・・。

 

「遅くなりました、平塚先生!そいつが例の・・・。」

 

「ああそうだ。比企谷は確か関わりなかったな。3年の英語を担当してる橘Fタンポポだ。こっちが例の比企谷八幡。」

 

たまに廊下とかで見かけたことはあるけどそんな名前だったんだなこの人。しかしタンポポって・・・。なんていうか似合ってないっていうか・・・。

 

「おい?比企谷とかいったな。お前今失礼なこと考えてただろ?その死んだ魚みてーな目がさらに濁ってたぞ。」

 

「ひぇっ・・・。何も思ってないでしゅう。」

 

「それくらいにしておけ橘。今から部室に案内を頼む。」

 

「わかりました。じゃあ行きましょうか。」

 

***********

 

廊下を歩きながら俺はさっき答えを聞きそびれた質問をした。

 

「あの・・・。結局今から何部に行くんすか?」

 

「なんだ、平塚先生から聞いてないのか?金属理化学研究部。通称メタりかだ。」

 

メタ?なんかどっかで聞いたような・・・。いやないわ。百歩譲っても多分学校関係ないわ。

 

「着いたぞ比企谷。」

 

そう声をかけて、ドアを開けて中に入っていく橘先生。

 

「橘先生、いつも言っていますがノックをしてください。」

 

「まぁまぁいいだろ。雪ノ下、入部希望者だぞ。」

 

「そこの死んだ魚の目をした男ですか?」

 

おいおい初対面で罵倒かよ。

しかも皆して死んだ魚とかアレだな食べたら頭が良くなりそう。

 

「比企谷、コイツがメタりかの部長、雪ノ下雪乃だ。雪ノ下、こっちが比企谷八幡だ。」

 

「入部するのは構いませんが、彼と組むんですか?それに由比ヶ浜さんの意見も聞かないと・・・。」

 

「まぁいいじゃねぇか・・・。」

 

その時、勢いよく扉を空けて女子生徒が入ってくる

 

「やっはろー!アレ?ヒッキーじゃんなんでいるの?」

 

「おお、ちょうどいいところに来たな由比ヶ浜、新入部員の比企谷だ。ベース出来るらしいぞ。そろそろお前らもそろそろ練習も飽きただろ?」

 

「先生!まだ決まった訳では・・・。」

 

「うーん・・・、まぁいいんじゃないかな?そろそろ活動したいし!」

 

「いや・・・まだ俺は入るとは言ってないんすけど。」

 

「ちなみにこの部の副顧問は平塚先生だ。入らない素振りを見せたら報告しろと言われているぞ。」

 

うわぁ、読まれてやがる。あの人サイドエフェクトでも持ってんのか?実力派エリートなのか?

まぁつまるところ俺はこの部に入り青春しなきゃ行けないってわけだ。

まったく、俺の青春は予定を間違えたらしい。


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