「いやーついにこのイカベースもご臨終か!」
「いや笑い事じゃないっすから・・・。」
俺のイカベースはミラーボールを避けたとき近くの棚に当たったのかネックが真っ二つに折れてしまった。
「まぁそのベース音も見た目も悪いし買い換えろという神様からのお告げじゃないかしら。もしくは日頃からのあなたの行いの悪さが原因ね。」
「いやそこまでの金はねぇし、行いはむしろ善良だから。何とか修理出来ないっすかね。」
「・・・コデマリに聞いてみるか。比企谷は今日上がりでいいから今からこの楽器屋行ってこい。どうせ今日は何も出来ないだろ。こっちで話は通しとくから。」
「・・・わかりました。」
「どんな感じか見てもらったらあたしに連絡してくれ。他の奴らは今日はパート練にして早めに上がろう。」
こうして壊れたイカベースを抱えて学校からほど近い楽器屋「小出楽器」へとやってきた。ここって・・・。
「俺がベース買った店じゃん・・・。」
まぁなんとなく住所見た時から察してたけどね。話は橘先生が通してくれてるらしいし、さっさと終わらせて帰ろう。
「すんませーん。」
「いらっしゃいませ。あなたにが比企谷君ですね。タンポポさんから話は聞いてます、早速ベースを見せてもらっていいですか?」
店の奥からでてきたのは身長180cmは越えてるであろう女性、一瞬マジで壁が動いたのかと思った。
「・・・あっはい。お願いします。」
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「えっと・・・。コレどんくらいでなおりますかね?1週間くらいだと嬉しいんすけど・・・。」
「えっと、申し訳ないんですが部品を揃えたり今のところ受けてる修理順番待ちで・・・、最低1ヶ月ほど頂かないと・・・。」
「はぁ・・・、そうっすか。」
「それに比企谷さん。修理代は大丈夫なんですか?だいたいこれくらいかかるのですが・・・。」
「うげっ・・・。マジっすか?」
そこにはまぁなんというか、高校生が出すにはいささか厳しい値段が提示されていた。買い換えるしかねぇかなぁ・・・。
そんな事を考えていると、橘先生から電話がかかってきた。
「あっちょっとすんません。・・・・・・もしもし。」
「どんな感じだ比企谷、何とかなりそうか?」
「修理まで最低1ヶ月だそうです。値段もかなりかかるみたいで・・・。ちなみに部費から経費で・・・」
「おりるわけないだろ。分かった。ちょっとコデマリ・・・。店員のデカい女に代わってくれ。」
「・・・っす。」
スマホを店員さんに渡し、手持ち無沙汰になった俺は店内を見て回る。楽器屋のピックのコーナーってつい見ちゃうよな。基本指弾きしかしないけど・・・。
しばらくして通話は終わったらしく、店員さんに呼ばれた。
「えっと、比企谷さん。とりあえずベースはお預かりします。料金は分割払いということで・・・。」
「はぁ・・・、まぁこれくらいなら。」
最悪貯金とバイトでもすれば払える金額だ。月1で日雇いでも探せば余裕で支払える金額だ。イカは何度でも甦るさ。
「私もメタリカのOGですし、今回だけの特別という事で。」
「そうなんすか?」
「ええ。橘先生とは同級生です。私は主に機材メンテや裏方をしてましたが・・・。」
「そうなんすね・・・。」
その後いくつか書類を書き、イカちゃんは旅立っていった。
世間は広いようで案外収束しているのかもしれない。