5000UAありがとうございます。
まぁなんていうか凄かったよ、雪ノ下のお姉さんは。
バックバンドのレベルは俺達と同等、もしくは1段低いくらいだったかもしれない。
だが、その歌声1つで全てをかっさらって言った。もはや前の4つのバンドだけでなくバックバンドすら、全てが雪ノ下さん1人の前座であったかのような感覚だった。
*
「さて、初ライブお疲れ様。デビュー戦にしてはよくやったんじゃないか?」
ライブ終了後片付けを終えた俺達は、MUSTANGの外に出ていた。
橘先生は空次さんや他校の顧問への挨拶回りがある為後のことは平塚先生に任されているのだとか。まぁ色々大変だよなその辺も。
「・・・ありがとう、ございます。」
「各々思うことはあるだろうが、それは今後に活かせばいいから。今日の所は解散だ。」
こうして解散した俺達は由比ヶ浜提案でささやかな打ち上げとして、飯を食いにいく予定になっていた為、ファミレスなどがある方へ歩き出した。
誰も話すことはなくただただ歩いていく俺達の背中を見ながら平塚先生の呟いた
「全くお前というやつは・・・。」
という言葉は俺達に届く事はなかった。
*
「とりあえず初ライブお疲れ様でした!カンパーイ!」
学生の味方サイゼで行われた打ち上げは、由比ヶ浜の空元気な音頭から始まった。
どことなく重苦しい雰囲気に耐えきれないのか由比ヶ浜が積極的に話を振る。
「今日の演奏今までで1番良かったんじゃないかな?」
「・・・えぇ。そうかもしれないわね。」
「まぁほら最後のゆきのんのお姉さんは別格だったってことでさ・・・。」
由比ヶ浜が、流れとはいえ触れるのを避けていた話題に触れてしまう。
俺達はあのライブでなんとなく手応えを掴んでいたからこそ見せつけられた実力の差。
それは絶望的であると共に、俺達が雪ノ下さんに魅了されていた事の何よりの証明であった。
「そうね。確かに姉さんが別格なのは正しいわ。」
ゆっくりと周りの空気を凍らせていくような声色で雪ノ下は話始めた。
「最近、動画サイトで話題になったSpring Snowって歌手は知っているかしら・・・。」
「ほむん・・・。確か1年ほど前から活動している正体不明の女性シンガーであるな。Whiteって曲がバズったはず・・・。」
その曲なら聞いた事がある。確か去年の冬あたりに流行ったはずだ。
俺もたまに聞いていたし、いい曲だと思う。
そういえば最近メジャーデビューの噂があったはずだ。
詳しくは知らないけど・・・。
「その歌手の正体が姉さんなの。つまりバンドを組んで数ヶ月の私達とはまさに格が違うわ。」
まぁ話の流れからなんとなくそんな予感はしてたわけなんだが・・・。
しかし初めての対バン相手がセミプロとはなかなか豪華だな。
なんて皮肉も言えるわけはなく、俺達の間の空気がさらに重みを増していった。
「ほむん・・・。ならしばらくは姉上のパフォーマンスを超えることを目標にしても良いのではないか・・・。」
この空気をぶち壊すように材木座が話す。
「このまま、目標無く活動するよりはよいと思うがな。投票などがあった訳ではないが、オーディエンスの反応から我らが敗北したのは火を見るより明らかだろう。少なくとも我は負けたまま終わるつもりは無いぞ。」
相変わらず、どこかの漫画のような事ばかり並べる材木座。
しかしこの雰囲気を好転させるには十分であった。
「そうだよゆきのん!あたしたちもあれぐらいのライブやってやろうよ!」
由比ヶ浜がそれに続く。
「きっと今すぐは無理だろうけど・・・。凄いライブしたいもん!みんなで!」
「由比ヶ浜さん・・・。」
どことなく明るくなった雰囲気のまま打ち上げは終了した。
由比ヶ浜と雪ノ下の2人は今日は雪ノ下の家に泊まるそうでゆるゆるゆりゆりしながら帰って行った。
この雰囲気ならもう大丈夫かもしれない。