「ヒッキー。ちょっと時間ある?」
次の日の昼休み、由比ヶ浜が話しかけてくる。
お前そんな堂々とぼっちの席に来たら目立つだろうが・・・。現にざわついてるぞ特にお前のいるグループ。
「なんだ?」
「今日の放課後暇?よければ作詞の作業やらない?1時間くらいでいいから・・・。」
「別にいいけど・・・。お前もう出来たのか?昨日の今日だぞ。」
「最初にオリジナル作ろうって話になった時から少しずつ作ってたの!今日はそれを見てもらおうって思って。」
「分かった。ちょうどなんもないしな今日。」
ちなみに今日の部活は部室の設備点検とやらで休み。さらに学校側で色々あるとかで昼で授業が終わる。早く帰りたい気持ちもあるが帰ってもやることはベースくらいだ。俺も便乗して作業をしよう。
「んじゃ放課後教室で!」
そういって由比ヶ浜は自分のグループへと帰っていった。
*
「遅くなってごめん!お詫びにこれ。」
放課後、職員室に用事があるという由比ヶ浜は少し遅れてやって来た。
そしてその帰りに自販機で買ってきたのであろうお茶をくれた。
「悪いな、いくらだ?」
「いやいや遅れたのはあたしだから別にいいよ。」
「そうか・・・。でもなぁ。」
「ほらほらそれよりさっさと始めよ?とりあえずコレ書いてきたやつ」
そう言って由比ヶ浜はルーズリーフの束を取り出した。
「んじゃちょっと読ませて貰うわ。」
俺が歌詞を読んでいる間、由比ヶ浜は何やらスマホをポチポチしている。
今日は顧問がいない部活が多く、いま活動しているのは強豪の水泳部や外部コーチを雇っているサッカー部くらいだろう。
その声がなかなか心地よい空間を演出していた。
「終わったぞ由比ヶ浜。」
「うんうん!どうだったどうだった?」
「お前この3つあの人聞きながら書いたろ?」
「えっ?!なんでわかったの?」
「なんか聞いたことある気がするってだけだ。サビとかこんなフレーズだったなぁみたいな。」
由比ヶ浜が聞いていたのは少し前に流行った女性シンガーだ。ネットではちょいちょいネタにされがちだが、若い女性からめちゃくちゃ支持されていたはずだ。一時期聞き飽きるほど聞いたため歌詞の1部分を魂に刻み込まれたレベル。
「うーんヒッキーでも分かる位ならボツだね・・・。」
「当たり前だ、書き直しな。あとこの4枚目だが・・・。」
「・・・・・・なんかダメだった?」
「いや、なんか悪くないなぁと思って。細かい所直したら行ける気がする・・・。」
「本当?!じゃあ今から直すよ!手伝ってヒッキー!」
「えーっとまずここんとこを・・・・・・。」
*
「・・・・・・いいんじゃないか?」
「うん・・・・・・、うん!完成したね!」
気づけば俺達は予定より1時間長く作業をしていた。1つを直すと他のところがおかしく見えてきてそれを直しての繰り返しは終りが見えなかったとはいえここまでとは・・・。
「最初よりかなり良くなったよ。ありがとねヒッキー。」
「まぁあとは雪ノ下に任せるとして・・・。」
「あっ!ゆきのんには明日あたしから渡しておくね。」
「そうか・・・、んじゃ頼むわ。さてと予定より伸びちまったな。帰るわ。」
「うん!ほんとありがとね。次ヒッキーが作詞で困った時に今度はあたしが手伝うから!」
「・・・・・・おう。」
由比ヶ浜と別れ、教室を出た俺は帰路についた。
来週にも梅雨明けが予想されているとあって、曇天だが気温が高く蒸し暑い。チャリを漕ぐと制服が張り付いてかなり不快だ。何とかなんねぇかなぁ。
「ただいま・・・っと今日は小町より早いのか。」
いつもいるはずの小町は当然まだ学校だ。その事で朝からグダグダ言ってたな。
そういえば今日は俺のが早いから夕飯作らなきゃいけねぇんだったな。
冷蔵庫は・・・。何だこのメモ?
お兄ちゃんへ
冷蔵庫にはほとんど何も入ってないので
必要な物はスーパーで買ってきてね。
お金は後で返すから立て替えといて!
ps.スーパーの特売は17時からだよ!ついでに
アイスも買ってきてね。
小町
「小町のやつ・・・。」
まぁなんだかんだ言っても何かしらは入ってるだろう。有り合わせで作れば無駄金遣わずに済むしな。専業主夫志望の腕の見せ所だな・・・。
「ってホントになんもねぇじゃん。」
辛うじてあったのは味噌ピー。いや美味いけどこれだけだと流石になぁ・・・。
「買い物行くかぁ・・・。」