「あっつ・・・。」
夏祭りが始まって数時間、時刻は昼12時。太陽は真上に上り、買ってきた焼きそばを食べる元気すら奪っていく。
「八幡よ、食欲がないようだが大丈夫か?食べねばこの暑さにやられてしまうぞ。」
「分かってるよ・・・。」
無理矢理焼きそばをかきこみ、ラムネで流し込んでいく。店番も残り2時間ちょっと。もうひと踏ん張りだな。
「しっかし売上良くないな。一応新しい戦隊物とか並べてるんだが。」
新しい戦隊物である「賭博戦隊ギャンブラー」は、来週から始まる新しい戦隊物だ。
主人公のスロットレッドは、スロットで生計を立てるギャンブラーという設定で、番組スタート前から色々話題になっている。
そんなレッドのお面も入荷しているのだが、イマイチ売上が芳しくない。
「まぁ話題にしてるのは、我々大きいお友達くらいだからな。我は個人的にいけると期待してるのだが・・・。」
「まぁ全員ギャンブラーやその関係者はなかなか攻めてるよなこの時代で。予告とかで見るけどあんま浸透してないのかもな。メインターゲットの子供に。」
実際売れるのは現行の作品のお面がほとんどだ。まぁ時期が悪かったとしかいえないよなぁ・・・。
「時に八幡よ、歌詞は出来たのか?」
「いや、俺のより由比ヶ浜の2曲目の方が早く形になりそうだ。なりそうなんだけどな・・・。」
「どうした、何か不安要素でもあるのか?」
「いや不安って程でもないんだけどな。」
材木座に新しいの事を歌詞を話す。少し考え混んだ後、材木座は話し始めた。
「けぷこん・・・。現物を見た訳では無いからなんとも言えないが、自分で作ったということなら何とかするのではないか?それに苦手だから、似合わないからと避けていてはそこに成長はない。と考えることも出来るだろう。」
「かもな・・・。一応部活だしな。」
「ほむん!まぁやってみたら案外・・・、な可能性もあるだろうしな!さて少しでも売り上げを伸ばすぞ!」
そう言って呼び込みを始める材木座。案外こいつなりに色々考えることはあるのかもしれない。
とりあえず売るか・・・お面。
午後になると、気温も上がり、人通りも増えてきた。
特に小学生や中学生らしき集団が増えてきたような気がする。
それに比例して、売上は午前中と比べ伸びてきた。
そして店番も終盤に差し掛かった時・・・、
「八幡?・・・何してるの?」
浴衣姿ではあるが、見覚えのある顔と雰囲気。
自然教室で出会った少女、鶴見留美だった。
「久しぶりだな、見ての通り店番だよ。どうだ1つ・・・。」
「いらない。」
渾身のセールストークも綺麗にお断りされ、そうか・・・。としか返せない。
深夜の通販番組見るだけじゃ、営業トークは不可能なことが証明されてしまったな。
「そういや、1人で来たのか?」
「別にいいでしょ。」
地雷を踏んでしまったらしい、俯いて返答してくる留美。
「まぁその・・・なんだ。祭りは1人でも楽しめるように出来てるから。効率考えれば1人のがいいまである。」
「何それ。八幡はもう少し気の利いた事とか言えないの・・・?例えば一緒に回るか?とかさ。」
気の利いた事か・・・。そう言われても今の俺に出来るのはお面売ることと、祭りを回る事をお断りする理由を説明するくらいだ。という訳で国語学年3位の豊富な語彙力を生かす時がきたらしいな。
「何かの縁だ一緒に回るか?・・・と言ってやりたいところだが、15時からステージ出なきゃならなくてな。リハとかもあるし、自由になるのは16時過ぎくらいだ。流石に誘えないだろ。」
「そっか・・・。じゃあね八幡。」
そう言って留美は去っていった。
まぁなんだかんだ1人で祭りを楽しむのは大変だからな。
知り合いがいたら行動を共にしたくなる気持ちもわかる。
いや、冷静になると仮に一緒に祭りを回ってたら、いくら高校生と小学生とはいえ普通に事案なのでは?
雪ノ下や由比ヶ浜にバレたら普通にアウトまである。
そんなことを考えつつ留美の小さな背中を見送りながら、店番に戻った。