「ありがとうございま〜す!」
由比ヶ浜の言葉の後にかなりの大きさの歓声と拍手が起こる。
とりあえず2曲目まで終わりMCに入る。
水分を摂りながら客席に目を向けると、最前に見知った顔を見つけた。
鶴見留美である。
普段の冷めた雰囲気と表情ではなく、食い入るようにステージを見ている。
あいつこういうの好きなやつだったのか?
「さてそろそろ次の曲にいきたいと思います!夏にピッタリな曲です!」
いつの間にかMCは終わっており、曲紹介で我に返る。
この曲は由比ヶ浜のアカペラから入る
自然と起こる手拍子に俺達自身も乗せられていく。
そして中盤、雪ノ下のギターソロへ。
実はこの曲で一番苦労したのがこの部分だ。
基本的に雪ノ下は前に出るタイプのギタリストではない。
そして、音とかリズムは完璧なんだが、なんて言うか華がない・・・、というよりソロじゃなくてもそのルックスは目を引く。
だからこそ、ソロになっても目立ち方の変化量が少ない、と言った方が適切かもしれない。
この2つが合わさり、雪ノ下のソロはかなり仕上がりが悪かった。
だが本番では仕上がりはさほど変わらないが、観客の盛り上がりに助けられていつも以上の物に感じた。
そして曲が終わり、少し間を置いて最後の曲のドラム部分を材木座が叩き始める。
拍手をしていた観客は少し戸惑っている。
そんな中、ドラムをBGMに由比ヶ浜が言葉を紡ぐ。
「え〜っと!ここまで聞いていただきありがとうございます!次で最後の曲になるので、今日の暑さに負けないくらい盛り上がって終わりましょう!ありがとうございました!」
観客の拍手と歓声が起こり、最後の曲が始まった。
*
「明狼学院高等部 Chocolate Frogsでした〜!ありがとうございましたぁ!」
由比ヶ浜の挨拶を終え、袖にはける。
最後はアンコールまで貰った。
当然時間もあるしないんだが、かなり手応えのあるライブになったことは間違いなかった。
そんな俺達を舞台袖で待ち構えていたのが、
「お前ら〜良くやった〜!!」
と言って俺達をまとめて抱きついてきた空次さんだった。まぁ材木座いるから全然腕の長さたりてないんだけどな。
「ふぇっ?!ハルさん!」
「なんなんすかコレ?!」
「初ライブの時はゴタゴタしてて出来なかったからな〜。いいから褒めさせろ!」
「いや流石に暑い・・・。そしてなんでいるんですか?」
「ステージの音響機材の一部をハルさんの店から出してるんだとさ。そんでそれがハルさん流の褒め方なんだよ。私もやられた。」
そう言って橘先生がやって来た。
「まぁ各々反省はあるだろうけどそれは次の部活で話し合うとして、とりあえずよくやったよ。」
「ホントですか?やった〜!」
「とりあえずもうやることはないし荷物置いたら祭りを楽しみな。」
「そうだ!みんな一緒に祭りを回らない?ボクも今は手が空いてるし!」
「いいですね!みんな大丈夫だよね?」
「私は構わないけれど。」
「私も大丈夫だ。」
「我は少し用事があるので・・・、申し訳ありません師匠。」
「なんだ〜?ノリ悪いぞ義輝ぅ〜。」
「俺も少し休憩したいんで・・・。」
「八幡まで〜!いいよいいよ、ノリ悪い男子はほっといて僕達だけで楽しもうじゃないか!行こうぜガールズ!」
そう言って空次さんはステージ袖を後にする。
「ヒッキー大丈夫?ステージ暑かったもんね。」
「んーまぁ少し休めば大丈夫だろ。ほら置いてかれてるぞ。」
「あっ待って〜。お大事にねヒッキー!」
小走りで空次さん達を追いかける由比ヶ浜
材木座はいつの間にかいなくなっていた。
そして少し静かになった舞台袖で1人、俺は余韻に浸っていた。