「でもさー何か策あるのお兄ちゃん。」
「ぶっちゃけ無い。バイト先をつきとめて辞めさせたとしてまた別の店で働くだろうからな。それじゃあ大志の方の悩みは解決しないだろうし・・・。」
小町の質問に、スマホをポチポチしながら答える。
「だよねー。アレだよね、ネズミごっこってやつ。」
「イタチな。いくら内部進学だからってある程度勉強はしとけよ。高等部で苦労するぞ」
「まぁまぁ一応夏期講習とか行ってるし。」
「世間の公立行ってる中2はそろそろ受験とか考えて動くやつもいるだろ。」
明狼は私立の中高一貫校なので中等部に通う小町は高校受験とは無縁だが大志は公立中から明狼を目指し勉強を始めたらしい。
「まぁそうなんだけどさぁ。そういえばさっきから何調べてるの?」
「大志が言ってたBARを調べてる。川崎が帰る時間から逆算して営業時間とか、ライブハウスとかエンジェルとか、特定出来そうな要素を入れて検索かければそこそこ絞れると思ってな。」
「なるほどねー。それでどう?多少は絞れた?」
「少なくともネットで出てくる範囲だけどまぁ一応な。」
「どうするの?BARだったら未成年は入れないよね?どうやって働いてるか調べるの?」
「これから考える。」
「お兄ちゃんに基本は任せるけどちゃんと報告してよね。」
「わかってる。」
正直小町が関わってることと、平塚先生の件がなかったら受けたくない相談事ではある。
そもそも渦中の川崎沙希に面識がないのだ。
特定できたとして説得できる自信がない。どうしたものか・・・。
*
色々調べた結果、ライブハウスとBARが併設された店は1件しか無かった、というかその店はよく知ってる店だった。
という訳で俺は日雇いのバイト終わりにここ、ライブ&バー「MUSTANG」へとやって来たのである。
「いらっしゃい・・・、って八幡じゃないか!どうしたんだい?」
「いやちょっと空次さんに聞きたいことがあって・・・。」
「なんだい?バンド関係の事?ベースならボクよりタンポポの方が・・・。」
「いやバンドの事じゃないんすけど・・・、実は・・・。」
空次さんに川崎沙希の事を話す。正直あまり褒められたものでは無いがある程度顔見知りなら多少の情報はくれるかもしれない。
「まぁ協力してあげたいのも山々だけど、従業員の情報を教えるのは色々と・・・ね?」
まぁ当然だよな。個人情報に関わってくる事を教えるのは経営者としてする訳がない。
「・・・・・・八幡。今から少し時間あるかい?」
「ええ、まぁ。」
「少し手伝って欲しいんだ!今日ちょっと人手が足りなくてね。ちょっと機材を運んでもらうだけだからお金とかは出せないけど飲み物くらいなら奢るからさ。」
「えぇまぁそのくらいなら。」
「じゃあ少ししたら行くから、こっちで待ってて!」
俺は言われるままに裏のスタッフルームに通される。
ライブの時にドアは見たが、中ってこうなってんだなぁ・・・。
「お待たせ八幡。とりあえずついてきて!」
空次さんに連れられアンプを運んでいく。
曰く、今日は男性のバイトがおらず困っていたのだと言う。