「さてそろそろ行くか・・・!」
平塚先生はそう言って会計を済ませに行く。
先に外にいろとの事だったので先に店を出る。
しばらくして会計を終えた平塚先生が戻ってくる。
「えっといくらっすか?」
「いやいらんよ。コレは私からの依頼料だと思ってくれたまえ。少なくとも危ない橋を渡らせてる訳だしな。」
「はぁ・・・。ならお言葉に甘えて、ご馳走様です。」
「うむ。ではいこうか。川崎が働いてると思われるエンジェルラダーに。」
ホテルロイヤルオークラ最上階に位置するバー。エンジェルラダー天使の階はこの辺りのバーでは高級な部類に入るバーだ。
電話の中で出てきたエンジェルという単語が入り、なおかつ朝までやっている店である。
「しかし君は目こそ疲れた大人のようだとは思っていたが、服を整えて髪をあげると成人にしか見えないな。」
小町の全身コーデによって服を決め、髪型もあげといた方がいいとの事小町によって上げられたいわゆるオール小町ファッション。
それだけで大人に見られるのであれば要望は満たしているだろう。
「まぁ大人っぽい格好でといわれたんで。」
「そうだったな!まぁ合格だ。」
そう言いながらしばらく歩き、目的のホテルロイヤルオークラに到着した。
「堂々としておけ比企谷。そわそわしてると逆に目立つぞ。」
「・・・うっす。」
エントランスでエレベーターを待ちながら平塚先生から言われてしまう。ぶっちゃけ慣れないしキョドるなってのが難しいと思いつつ返事をする。
「なんなら腕でも組んでみるかね?」
「エスコート出来る自信ないんで・・・。」
そうかと笑いながら俺達はエレベーターに乗り最上階へ。
「おわっ・・・。」
入口の扉をくぐると所謂ブルジョワが飲んでるバーって言われたら想像される世界が広がっていた。
もはや入口からレベルが違うよな。「何名様ですか」「お煙草はお吸いになりますか」なんて無粋な事は聞かない。これが格か・・・。
「正面のカウンターだ。行くぞ。」
平塚先生について行きカウンターへ。
そこに立っているバーテンダーさんはとても同い年とは思えない見た目をしている。
カウンターへ着くと川崎はあまりこちらを見ずにナッツとコースターを差し出す。
「探したよ・・・川崎。」
平塚先生のその言葉を聞いて、顔を上げる。
「平塚先生・・・。そちらの人・・・。」
「彼は比企谷八幡。君の弟さんに君の事を相談されているそうだ。」
「弟・・・、大志が・・・。」
大志・・・弟の名前が出た途端雰囲気が少し変わる。
例えるなら俺がはじめまして大志と会った時みたいな。
「っす。はじめまして。」
とりあえず挨拶をして様子を疑う。
川崎はふぅとため息をつき、先程とは変わって気だるげな雰囲気を醸し出している。
恐らくバレちゃったかとかそんな事を考えているのだろう。
「何か飲みますか?」
「私はジンジャエールを貰うよ。」
「そっちの人は?」
「・・・・・・同じのを。」
とりあえず飲みたいものが浮かばなかったので同じ物を頼む。
恐らくだがMAXコーヒーはない。いくら千葉でもな。
すぐに川崎は飲み物を出してくる。
それを1口飲むと平塚先生は話し始めた。
「前に少し素行について話した事があったな。実はあの辺から深夜帯に生徒がバイトをしているという事が職員会議で上がってな・・・・・・。」
「それで、なんですか・・・。私の事を問題にして処分するんですか。」
「いや、君にも色々事情があるのだろう。こちらとしてもあまり大事にしたくない。今のうちに何とか辞めて・・・。」
「ここ辞めたとして別の店で働くことだって・・・。」
「その通りだ。だが私も次は目をつぶれない、当然だがな。」
今回の接触はさしずめ最後通告と言ったところだろうか。
問題である深夜帯のバイトさえ辞めれば今回不問にするという平塚先生なりの優しさだろう。
「比企谷、君も色々聞いてきたんだろう。何か言う事はないか。」
「いや、まぁ俺は教師ではないっすから、誰が何をしようと自由だと思うんで・・・。」
「そうか・・・。」
まぁ実際なんで金がいるのかとかその辺は個人や家庭の問題だ。
第三者がおいそれと関わっていい問題じゃない。
「とりあえず伝える事は伝えたからな川崎。行くぞ比企谷。」
いつの間にかグラスを空けていた平塚先生が会計をし場を後にしようとする。俺もそれに続きグラスの中身を飲み干す。
「あっすんません俺ちょっと御手洗に・・・。先に行っててもらっていいっすか?」
分かったといい先に出ていく平塚先生を見送る。
「どうしたの?トイレはあっちだけど。」
「いや、まぁアレは方便というか・・・。とにかくだ。明日少し時間くれないか?通り沿いの〇ックに5時半で」
「は?なんで・・・。」
「少し話がしたい。大志の事でな。」
一気に怪訝な表情をする川崎。
「それは明日話す。じゃあな。」
ちょっとという川崎を無視して俺も店を出る。
まぁ色んな意味で俺が居ていい場所じゃないしな。