店を出て、待っている平塚先生と合流した。
「さてと、遅くなってしまったな。送っていこう。」
どうやら平塚先生は車で来ていたらしい。そう言えばBARでもアルコールは頼んでなかったな・・・。
「すいません。BARの方の飲み物まで奢ってもらって。」
「あぁ気にするな。これも依頼料に含んでおいてくれたまえ。君はそれだけの成果を出してくれたのだから・・・。」
「はぁ・・・。じゃあ有難く。」
チラッとお釣りを見たが明らかに少なかった。
たかがジュースだが一体いくらしたんだろう。
「ありがとうな比企谷。」
「どうしたんすか急に・・・。」
比企谷家に向かう車内で唐突に感謝されてしまった。
咄嗟のことで反応が鈍い俺に対して平塚先生が続ける。
「いや、前にも言ったがな。私1人ではここまでは辿りつかなかったからな。君にも色々事情はあったのだろうが、それでも、な。」
平塚先生の言葉には答えられなかった。
*
「ではまた学校でな。残りの夏休み有意義に過ごしたまえ。」
そう言い残して去っていった先生の車を見送り家に入る。
リビングでは何やら小町が電話をしているようで・・・。
「うん、そうなんか出かけてて・・・、あっ今帰ってきた!」
アレか?なんか俺が居たら話しにくい相手なのか?
まさかまた別の男?大志ですらお兄ちゃん認めた覚えないですからね!
と心の中の老舗旅館の女将が届かぬ小言を言っている。
「お兄ちゃん!大志君が変わってくれって。お姉さんの事聞きたいみたい。」
なんだ大志か・・・。まぁいい丁度連絡しようとしてたとこだ。
小町から携帯を受け取り、話を始める。
「電話変わった。えーっと、とりあえず何から話せばいいか・・・。」
「あっ!ライブハウスの件は小町さんから聞きました。」
「そうか。実はさっきもう1件の方のBARに行ってきてな。」
そこから先程までの事を大志に伝える。
と言っても川崎が実際に働いていて、今の彼女が置かれている状況を伝えるだけだが・・・。
「姉ちゃん・・・、そんな事になってるなんて・・・。」
「とりあえず今回はお咎め無しって感じだが次は無いし、辞める前に他の教師に見つかってもアウトだ。今んとこはだけど。」
「そうですよね・・・。姉ちゃん一体何に金使う気なんだよ・・・。」
現在朝まで働いていて、今日の口ぶりではまだ金が足りていないから職を変える可能性を匂わせていた。
そうまでして金が必要な理由がまだ見えてこない。
「・・・少し話は変わるんですけど、やっぱり大学受験って塾通ったり夏期講習行ったりした方がいいんですかね?」
「・・・?まぁ行ったら絶対合格する訳じゃないが、個人で頑張るのにも限界あるからな。人によっては有利にはなるだろ。それがどうかしたのか?」
「いや、今日借りてた漫画返しに姉ちゃんの部屋入ったら机の上に夏期講習とか塾のチラシとかが置いてあったんで・・・。ほら、明狼って進学校だし・・・。」
まぁ大志の言いたい事は分かる。
一応明狼は県内でも上位の進学校である。
当然、進路の多くは大学になってくる訳で・・・。
「うち姉弟多くて、俺の夏期講習や塾のお金を出すのも親は苦労したみたいだったんで・・・。」
その言葉を聞いて、ある可能性が浮かんでくる。
今の時点で確かな証拠はないため、本人に確かめるしかない訳だが・・・。
「そうか・・・、まぁその辺含めて話し合うといい。駅前の通り沿いの〇ックに川崎を呼び出した。時間は明日の5時半、来れるか?」
「行きます!いや、行かせてください!」
「そっ・・・、そうか。じゃあ明日、待ってるわ。」
「はい!お兄さん、色々ありがとうございます。」
大志とのやり取りを終えて電話を小町に返す。
サラッと流したけどアイツまたお兄さんと呼んだな。
マジで明日、事がすんだらしっかり教育してやらねば・・・。