相席   作:みずしろオルカ

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 どうも、過去の作品を掘り出したオルカです。

 mixi時代に日記に投稿していた短編を投稿します。

 改行や表現を一部手直ししてますが、大まかな流れは変えてません。

 楽しんで頂ければと思います。


相席 妖夢と鈴仙

 白玉楼の庭師、魂魄妖夢は人里の甘味処である『黒崎屋』で白玉あんみつと玉露で一休みをしていた。半人半霊の彼女の顔には若干の疲労の色が見て取れた。

 

「つ、疲れました……」

 

 買出しが終わって甘味処のテーブルで休んでいる。

 かなりの量になったが、白玉楼までの往復でなんとか運び終えそうだった。

 今は手持ちの小さい袋に収まる程度の量で、最後くらい甘味処で一休みしようとここに立ち寄ったのだ。

 

「買出し後のこの時間が癒しですね」

 

 修行も嫌いじゃない、幽々子様のお世話も嫌いじゃない、庭の手入れも嫌いじゃない。とても大切な時間だし、これからも続いて欲しい。だけど、やっぱりこうして一息つく時間は必要だと思う。

 

 自分の時間をほとんど修行に当ててるし、幽々子様のお世話も半ば趣味の延長線上だ。こんなに楽しくていいのかとも思うけど、やっぱり辛いことの一つや二つは出てくるものだ。

 

「すみません、当店大変混み合っておりまして、相席の方よろしかったでしょうか?」

 

「あ、はい」

 

 気づくと入ってきた時もだいぶ混んでいた店内が満席になっていた。夕方少し手前の時間帯でちょうどオヤツ時なのだろう。

 

 すると、私の向かいの席に来たのはうさぎ耳の見知った人物だった。

 

「あれ? 永遠亭の……」

 

「そういう貴女は白玉楼の……えっと、ああ……確か……名前……が? ちょっと待って、思い出しますから……!」

 

 なにか必死に思い出している。

 まぁ、さほど面識もないし、ウチは病院にお世話になる様な人がいないから仕方がないと思う。

 

「こん……魂魄……?」

 

 喉まででかかっているという状況とはこのことなのだろう。

 頭に指をさして考える仕草は結構可愛らしい。

 

「……魂魄寺妖子?」

 

「誰!? 混ざってますよ!!」

 

 さすがに混ざるというのは想定外でした。

 まぁ、私もしっかりと彼女の名前を覚えているわけじゃないし、怒るのも気まずい。

 

「そういう貴女は……冷やしウドンさん……でしたよね?」

 

「せめて人名で呼んで頂戴!?」

 

 なんか、コントのようなやり取りが終わり、彼女が気まずそうに。

 

「あ、いいですか?」

 

「どうぞどうぞ!」

 

 さすがに立たせっぱなしにするのは気が引ける。

 彼女の顔に見える疲労も相まって座ってゆっくりしてもらいたい印象だ。

 

「あ、改めて白玉楼庭師の魂魄妖夢です」

 

「あ、はい。鈴仙・優曇華院・イナバ、鈴仙でいいですよ」

 

「それじゃあ、私も妖夢でいいです。それで、顔色が良くないんですけど……」

 

 目の前に座った彼女は顔色が悪く、眼の下にクマができていた。

 明らかに疲労が原因だと思われる症状だ。

 

「ええ、師匠が……」

 

「師匠って確か八意さんですよね? 彼女がどうかしましたか?」

 

 彼女の師匠の八意永琳さんは、永遠亭でお医者さんをしている人で、薬を作るのがとても上手いらしい。

 私も親しいわけじゃないけど、聡明で落ち着いた人という印象がある。

 

「いつもの事なんですけど……、あんな薬を何に使うのかわからないわ……」

 

 テーブルにつっ伏すと搾り出すように言葉が出てきた。

 物騒な単語が出てきたが、突っ込まないでおいた方がいいのだろうか。いくらなんでも生死には関わらないでしょうし……。

 

 関わってないといいなぁ、という考えが頭をめぐって好奇心が勝ってしまった。

 鈴仙さんには前にも会ったけど、異変で対峙した時より、明らかに今日はやつれて見える。

 

「……師匠は新薬を作ったら効果を試すんですが、その被験体のほとんどが私で……」

 

「新薬の実験って!? いやいや待って、危ないですよね!? 下手したら死んじゃいますよね、それ!?」

 

 生死とまでは行かなくても十分に危険でした! そりゃもう、生死の境とかじゃなくて限りなくアウトに近いアウトですよ!? アウト以外の何物でも無いですよ!!

 

「あ、大丈夫ですよ。万が一の時は蘇生薬も師匠なら処方してくれますし……」

 

「万が一ってなんですか!? 蘇生薬ってなんですか!? 必要になったことあるんですか!?」

 

 三段ツッコミをしてしまった。いや、まさか一息付きに来た甘味処でツッコミをするハメになるとは思わなかった。

 

「はい、割と頻繁に……」

 

「頻繁なんだ!?」

 

 そりゃ、日に日にやつれて行くのもわかる。

 生死の境どころか、死の領域まで全身どっぷり浸かっちゃってますよ!

 

「あ、この黒蜜団子おいしい……」

 

「いやいやいや!? 鈴仙さん、慣れ過ぎてませんか!?」

 

 ひと通りの私のツッコミと食事をして鈴仙さんは帰っていった。

 ほんの数分の相席だったけど、異様に疲れた。

 

「私も休憩時間ぐらいツッコミ休めばいいのに……」

 

 なんというか、想像以上に私はツッコミ体質なのかもしれないと、気づいてしまった時間だった。

 

「幽々子様に鍛えられたかなぁ?」

 

 頬杖をつきながら食べる白玉あんみつは、鍛錬を終えた後のお水みたいにとても美味しかった。

 

 -完-




 いかがだったでしょうか?

 mixiを楽しんでいたのは、7年以上前なので懐かしさが先立ちます。

 メインの作品の合間に楽しんで頂ければ幸いです。

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