mixi時代は色々と日記を書いていましたが、基本的に料理日記になっていました。
今はキッチンが使い辛い事が多いので炊飯器とグリル鍋で作れるものだけですね。
残念です。
それでは、二作目どうぞ。
永遠亭の主、蓬来山輝夜は暇人だ。
たまには外食でもするかと、人里の外れにある甘味処に来ている。
甘味処「黒崎屋」、人里の中で少しだけ本通りから外れた立地のこのお店は、里の人だけではなく、友好的な妖怪たちも利用していた。
時間はお昼時だったようで席もほとんどが埋まってしまっていた。運良く最後の席を確保できたが、何分一人で使うにはいささか心苦しいモノがあった。
「すいません、当店大変混雑しておりまして、相席の方よろしいでしょうか?」
「あ、はい。どうぞ」
流石にここで断れる様な人間ではなかったようで、彼女は相席の申し出を受け入れた。
知り合いと来ているならともかく、今は一人なのだ。話し相手も欲しかったようでなんの抵抗も無く受けれいている。
「こちらになります」
「サンキューだぜ!」
店員に連れてられて来たのは彼女もよく知る人物だった。
霧雨魔理沙、白と黒のエプロンドレスみたいな服を着ていて黒いトンガリ帽子、ウェーブのかかった金髪とその独特の喋り方が印象的な少女。
「あ、永遠亭の引きこもりニート」
「うるさい、白黒キノコ魔法使いモドキ」
二人は知り合いだった。とある異変を起こした側と収めた側。
それ以来の顔見知りというところのようだ。
「おお、店員さん。おしるこ一丁よろしくだぜ!」
店員に注文をすると輝夜と対面する形の席に腰掛ける。
輝夜は既にお団子を食べている。すると魔理沙は、そのうちの一本を勝手に取ると口に運ぶ。
「うん、なかなかに美味しいぜ」
「なに人の勝手に食べてるのよ! まったく、アナタのおしるこ貰うからね……」
させないぜ、と言いながら団子を二個同時に口に運ぶとハムスターのように口を膨らませてモグモグと食べている。
「それにしても珍しいぜ。あんたが永遠亭から出てくるなんて……」
「私だって外ぐらい出るわよ。あなたこそ珍しいじゃない。ほとんどお菓子他人の家で食べてるじゃない」
「毎度、霊夢のとこで食ってるからな。ただ、いつもせん餅だから飽きたんだぜ」
「アナタ、他人にたかっておいて飽きたって……」
他にも紅魔館に住んでいるパチュリーという魔法使いと、魔法の森に住んでいる人形遣いのアリスという人の下にもお菓子をたかりに行ってるとよく聞く。
「ウチにも薬品いつくか盗みに来るし……。そのたびに、永琳に御仕置きされてるのにね」
「いや、最近紅魔館やアリスの家に行き辛らくてなぁ」
珍しい、という感想が輝夜の頭をよぎった。
魔理沙が行きにくいなどよほどの理由がないとそうはならない。さほど仲のがいいとも言えない輝夜が傍若無人というイメージを一瞬で抱かせる彼女だ。
それが、行き辛いと言わせるなんてよほどのことがあるのだろう。
(たぶん、来るなって二人に言われてるんだろうなぁ)
二人の家には魔道書が大量にあり、決して安くない代物だ。それをポンポンと盗まれては二人も困るだろう。
「いやぁ、片方に本を借りに行くともう片方にも来いってすっごい剣幕で迫られるんだぜ」
「え?」
予想が外れたのが意外だったのか、目を見開いている。
来るなと言われるのはわかるが、来いと言われるのは予想外だろう。
魔理沙が来れば十中八九魔道書が取られる可能性は高いはずなのに……なんで?
輝夜は自分の皿を守るように寄せると、団子を一本取って口に運ぶ。三色団子のピンク団子がモチモチとしてて輝夜本人も満足気だ。
「いや、パチュリーの所で本を借りると、アリスから呼び出しがかかって、次にパチュリーから呼び出しが……って感じでずっと続いてるんだぜ」
「それは、また……」
わかりやすい攻防戦である。
輝夜は二人とも魔理沙のことが好きだ、ということを紅魔館のメイドである十六夜咲夜から聞いていた。
メイド曰く「パチュリー様は魔理沙のことが本当に好ましく思っていらっしゃるようで、同じ好意を抱いているアリスの事を敵視して居るんですよね」
パチュリーの喘息の薬を貰いに来た時に話を聞いたらしく、輝夜と永琳の二人が知っている状況だ。
「おかげで魔術書がたくさん集まったけど、倍の時間がかかるんだぜ」
「倍の時間?」
「おう、なぜかその後のお茶会の時間が増えていくんだぜ。アリスの時よりもパチュリー、パチュリーの時よりアリス、って増えていって……」
魔理沙の肩が震えている。
流石に、このまま進めばどうなるのか理解しているのだろう。
火を見るよりも明らかだ。
「いずれ丸一日監禁されるわね」
「やっぱりそう思うか!?」
一種のホラーだ。無限ループって怖いよね? とは似て非なる恐怖。
彼女たちにとっては相手よりも有利に立ちたいという欲求からの行動だが、結果がもはや確定している。
「監禁されたら何されるのかしら? 妄想が膨らむわね」
そう言う輝夜の頭の中には人に言えない妄想が繰り広げられている。
キラキラと輝いているその姿は妙に生き生きしている。
「いや、妄想の中の私がどうなってるのか知りたいぜ……」
「え? 三角木馬とムチ、どっちがいい?」
「両方あるのか!?」
涙目で抗議する魔理沙。流石に妄想とはいえ、監禁コースは彼女にも堪えたようでフルフルと震えている。
しかも、自分のことを好意的に捕えてくれている人に対して、無下にもできないと魔理沙の良心は訴えている。
二人の魔法使いも魔理沙のことが好きなだけでライバルがいるから暴走しているだけなのだろう。
「まぁ、永琳に二人から危ない薬の発注受けたらあなたに連絡が行くように言っておいてあげる」
「おお、助かるぜ……。で、その永琳やあのウサギをつけずになんで人里に来てるんだお前?」
魔理沙の疑問も最もだ。輝夜は永遠亭の頂点、月のお姫様だ。
護衛も付けずに人里に降りてくるなんて永琳や鈴仙からすればとんでもないことだろう。
「いえ……。最近永琳が……」
「あの薬師がどうしたんだ?」
今度は輝夜の体が震えている。
「永琳が、私に教養の講義を……」
「教養? 勉強嫌いってだけで逃げ出したのか?」
「いや……、その……、夜の教養を……」
「…………」
さすがの魔理沙も開いた口が塞がらないようだった。
夜の教養など言い換えずともわかろうものだろう。性教育とも言えるその意味は普通であればそのまま知識としての教育で済む。しかし、その中でも実地となれば輝夜の怯えようはよくわかる。
「……夜伽の技術は実践でこそ磨かれるって、永琳が……」
もう両手で顔を被ってしまった。
魔理沙の状況を細部にわたって妄想できる輝夜の想像力がマイナスに作用している。
自分の行く末を詳細に頭に描かれてしまって完全に彼女のテンションを下げてしまっていた。
「あー、その……なんだ……。ガンバ!」
「せめて、なにかアドバイスを頂戴!?」
魔理沙は困ったような表情をしている。
帽子を自分の隣の席に置くと考え込むような仕草をして一言。
「私から言えることは……振り向かずに逃げろ。わき目を振らずにこの店を出て街に紛れるんだぜ」
「え?」
このアドバイスもなんとも微妙なものだ。
人間、目で確認する。それゆえに、自らの危機を見ようとする傾向があるのだ。
そして、今回の場合は見ないで逃げろ、なんとも難しい話だ。そんなことを言われたら思わず振り返ってしまう。
「あら、姫様。こちらにおられましたか……」
笑顔の永琳が立っていたのだった。
しかもその表情は満面の笑み。
「え、永琳……」
「ささ、まだ本日の予定は終わっておりませんよ? 早くお屋敷に戻りましょう」
にこやかな表情の永琳に引きずられるように連れて行かれる輝夜。
その表情は売られていく子牛を連想させる。
「魔理沙、助けて……」
「……ごめん」
「うーらーぎーりーもーのー……」
フェードアウトしていく輝夜の声に目をつぶり、ブツブツと祈りを捧げている。
やがて、二人の姿は人混みの中に消えていった。
彼女がどうなるかは、話の内容から考えても、魔理沙が慣れない祈りを捧げるほどだろう。
「あら、魔理沙。奇遇ね?」
ビックーンっと、全身を硬直させる。
魔理沙にとっては聴き慣れた、それでいて今会いたくはなかったであろう声。
ギギギギ……っという効果音が聞こえてきそうな動作で声のする方向を見る。
「あ、アリス……」
「今日これからウチに来てちょうだい。見せたい魔術書があるのよ」
「い、いや、今日は遠慮……」
「ささ、時間が惜しいわ! ここの代金は私が払っておくから、早く私の家に行きましょう!!」
ガシッと魔理沙の奥襟を掴むとズルズルと店の外へと引き摺って行く。
ギャアァァァァーーーー!! さーらーわーれーるーっとドップラー効果を残し、二人は店の外へと出て行ってしまった。
後には、二人分の料金が置かれたテーブルが残るだけだった。
終わり
いかがだったでしょうか?
相席の短編は合計で4話ありまして、その中で過去に『黒崎パーキング』というサークルに投稿していた作品の後日談的な作品が1話あるので、全て投稿するかは検討中です。
懐かしい物です。
他の作品に関しては執筆を続けていますので、お待ちいただければ幸いです。
それでは次回もよろしくお願いいたします。