再び眠りに就いた幼い少女を見下ろし、改めて首を捻る新堂。
「親戚か。ユイに似てる訳だ!しかし始めて聞いたな」
長い付き合いで初めての親戚の出現に、まあ、いてもおかしくはないかとブツブツと言いながら部屋を出る。
新堂は天涯孤独の身であり、そんな人物が会いに来る事はあり得ない。
帰宅するや玄関ドアの前で蹲っている少女を発見し、大いに驚いた。
追い返す訳にも行かず、さらに体調が悪そうだったため様子を見る事にした訳だが。
「何にせよ、迷子じゃなくて良かったよ」
この時はまだこの程度にしか考えていなかった。
翌朝。部屋に様子を見に行くと、少女はすぐに目を覚ました。まだ咳き込んでいる。
「熱は下がったな。その咳、どうも気に掛かる。病院に……」
新堂がそこまで言うと、涙目で激しく拒絶される。
「いやーっ!」
「まるでユイだな!痛い事はしない。肺のレントゲンを撮るだけだよ?」
「いやだぁ……っ、うわ~ん」
「参ったな……そんなに泣くなよ」
小さくため息を零し、しばし考える。
「分かったから、もう泣くな。その顔でそこまで泣かれると弱いよ」
「……え?」
「いや、何でも。それにしてもユリちゃんはユイにそっくりだな。良く言われるだろ」
「ま、まあ……」
やけに大人びた回答に、新堂は少々面食らう。
「腹、空いただろう。朝食を用意したから食べなさい」
「ありがと!お腹ペコペコ」
おかしな咳は続いているが、それ以外は元気そうだ。しっかりとした足取りで自分について来る少女を見て、新堂は幾分ホッとした。
出された食事をペロリと平らげ、椅子の上で足をブラブラさせる。まるで届かない事が珍しいとでも言うように。
そんな姿を見れば当然、行儀が悪いと取られる。
「ユリちゃん」
「なぁに?先生」
「熱は下がったけど、まだ咳が続いているから、あまり騒がないで」
「騒いでないけど?」
答えるや椅子から飛び降りた。そしてダイニングを出て廊下を走って行く。
「ユリちゃん!今先生が言った事聞いていたか?」
「うん!」
「……こりゃダメだ。確かにユイの親戚だな、あれは」
確信に至る新堂だった。
向かった先はユイの部屋。そこにはクマのぬいぐるみが置かれている。
追いついた新堂がクマを抱きしめる彼女を見て納得する。
「そうか、それが気になってたんだな。それ抱いて、大人しくしててくれ?まなみに返さなくて良かった」
「は~い!クマ太郎、やっぱりカワイイ。何だかデカくなった?」
「なぜそいつの名前を?」
「あっ……その、ユイに聞いてたの」
どこか焦った様子の彼女だが、新堂は気に留めない。
「そうか。さて、咳のお薬を飲もうか」
「ねえ?先生、最近キスした?」
唐突にマセた質問をする子供に、新堂は目を丸くする。
「んなっ、何を言い出す?さてはユイのヤツが変な事教えたな?」
「ねえ!したかしてないか。嘘はなしよ?」
ユイはここぞとばかりに問いただす。子供のふりをして真相を暴こうという訳だ。
大きく息を吐き出し、新堂はベッドに座るユイの前にしゃがむ。
「最近というのは、どのくらいの範囲だ」
どうやら真面目に答える気のようだ。ユイはきっぱりと答える。
「この二、三日」
「それならイエスだな」
「ウソ……」
ユイはショックを隠せない。何せ自分には彼とのキスはここ数日記憶がないからだ。
最後にキスをしたのは、ジンとの一件で記憶が戻った日のみ。あれから一週間以上経つ。
「どうかしたか?」
「先生、それって、金髪の人?」
「金髪?……」
彼がそのまま黙り込む。
口元に手を当てて固まる姿は、何かを思案している時の癖だ。
これを見てユイは確信する。この二、三日中に金髪、つまりベルモットとキスをしたと!
「やっぱしてたじゃん……!ウソつき!うわ~ん!」
「何なんだ、一体?落ち着いて、ユリちゃん」
「ゴホゴホっ、ゴホゴホっ」
「ほら、興奮するから咳が酷くなった。こうなったら注射だな」
「いやぁ!注射、イヤだぁ~、うわぁ~ん!」
増々泣き声が大きくなる。
堪り兼ねた新堂が声を荒げた。
「うるさい!静かにしろと言ってるだろう!」
さすがのユイもピタリと泣き止む。
「ああ……済まん、つい。ユイを相手にしてる気になってしまった」
その判断は正しい。実際目の前の女はユイである。
その後ユイは金髪、金髪とうなされるように呟き続けた。
「また熱が上がったのか?うわ言が酷いな。こうなったら眠らせて病院に……」
こんな言葉にユイが反応する。
「熱、ない。うわ言じゃない!先生が金髪とキスしたのが悪い」
「は?誰が金髪とキスしたって?」
「先生に決まってるでしょ」
「してないよ。誰がそんな事言った?」
「さっき言ったじゃない!」
「確かに金髪は近づいて来たが、キスはしてない。俺がしたのはユイとだ。いつも寝る前にしてるから」
新堂がどこか照れたように打ち明ける。
「は?」
今度はユイが首を捻る番だった。
「分かったぞ。ユリちゃん、ユイに頼まれたんだろ。ここ最近妙に馴れ馴れしい金髪が付き纏って来てたから。しかし何でそれが分かった?」
「キス、してないのね?本当に!」
「ああ。俺はユイ以外とは絶対にしない。って、子供相手に何を言ってるんだ、俺は……」
ユイの目にまたも涙が浮かぶ。今度のは嬉し涙だ。
「先生ぇ!大好きっ!」
「ユリちゃん?ちょっと……」
「ああ、ゴメン、なさい」
思わぬ真実が明かされて、ユイは嬉しくて堪らない。だがそれを表現できずにもどかしい。
「ゴホゴホっ」
「ほらまた。先生はちゃんと答えたぞ?次はユリちゃんの番だ」
「いいよ。質問、どうぞ」
「質問じゃない。注射だ」
再び二人の格闘が始まったのは言うまでもない。
もちろん勝者は新堂だ。
「うえ~ん……痛いよぉ」
「もう終わった。さあ、今日一日は安静にしてね」
一人になった部屋で、ユイは泣きながら微笑む。
「新堂先生、大好き。私もちゃんと信じてたよ?」
*
ユリと名乗るユイの親戚が来て一日が過ぎた。
一旦下がった熱はまた上がり始め、咳も続いている。つまり薬が効かないという事だ。
案の定病院行きを猛烈に嫌がった彼女に降参して、書類整理をしようと書斎に入ったが、どうにも集中できない。
「なぜ俺が折れる必要がある?やはり調べよう。眠った隙に連れて行けばいいじゃないか」
連絡が付かないユイへのイラ立ちを、親戚と名乗ったあの少女へ向けている気がしないでもない。
医者としての使命感と思う事にして行動に移す。
病院での検査は特に異状はなかった。
だが驚いた事に少女の血液型は、俺やユイと同様のとても希少なものだった。ここまでは、ユイとの血の繋がりも考えればあり得る話だ。
だがこれは?
俺がユイに施したオペと全く同じ個所に痕跡を見つけたのだ。それはもちろん一つではない。
その全てが一致しているなんて?
「これはどういう事だ?……偶然、というには出来過ぎだろ!」
浅い息を続ける少女を見下ろしながら呟く。
そして左手中指を手に取る。
ユイのそこは、俺と出会う前に負った骨折により指先が変形しているのだが……
「ここもだ。子供の骨折でこうはならない」
再び、あまりにもユイに似すぎたその少女を見やる。
思い返せば言動も初めからユイそのものだった。
少し前まで記憶自体が幼児化していた事もあり、何の違和感もない自分が恐ろしいのだが。
「幼児化……か。そう言えば、あの少年がそんな事を聞いて来たな」
あれは一年程前だったか。ユイの射撃シーンを目撃された口止めのために呼び出した時だ。
「工藤新一。あいつは絶対何かを隠してる」
聞いてみる価値はある。
まだ眠っている少女を自宅へ連れ帰り、元通りに寝かせてから車に乗り込む。
「自宅も連絡先も知らない。今時の小学生も携帯を持っているだろうが!この時間なら学校か」
また待ち伏せをする事にした。
校門付近で、愛車クワトロを路肩に停車させ様子を窺う。
少しして案の定メガネの少年が一人、校庭を横切ってこちらに一直線に走って来るのが見えた。
「予想通りだな!」
「やっぱり新堂先生だ。前にも言ったけど、こんな事して不審者と間違われるよ?」
「新一君。君に用事があったんだ。連絡先を知らないので、この手しか思いつかなくてね」
「アハハ……」
「君なら目敏く見つけてくれると思っていたよ」
「もちろんさ。それで、僕に用事って、ユイさんの事、だよね」
「話が早くて助かる」
「緊急なら学校早退してくるけど、どうする?」
「その必要はない。放課後にでも訪ねてほしい」
「分かった。なるべく早く行くよ」
「待ってるよ。では」
手短に会話を終えて速やかに車を発進させる。
「ユイの事、か。緊急だと言って連れ去れば良かったか?なあユイ。おまえは本当に……」
急いで自宅へと戻る。
部屋を見に行くと、少女は目を開いていた。
「起きてたか。済まない、少々出ていた。気分は?」
「先生、熱い。熱くて苦しい……。アイス食べたい」
「アイスか……。もう少し早く分かれば買って来たのに。よし分かった、作ってやろう」
「スゴイ、手作りアイス?」
「そうだよ。少し待ってて」
少女は嬉しそうに微笑んで再び目を閉じた。
キッチンで材料を揃えてボウルに流し入れ、氷水で冷やしながら混ぜて行く。
「簡単だし無添加だし、これが一番だな。砂糖は控えめっと……」
我ながら手際がいい。あっという間に完成し部屋に運ぶ。
「どうだ?」
「うん、美味しい。先生、お菓子も上手だね」
「も、?」
「だって、お食事美味しいもの」
「……ああ。ありがとう。ユリちゃんは日頃お母さんのお手伝いはするのかな?」
「あんまりしなかったなぁ」
「しなかったって、これからすればいいだろ」
「……別々に住んでるから」
「お母さんはどこに?」
「イタリ……」
ここまで言って少女は口籠る。
「ユイの母親もイタリアにいる。もしかして、姉妹で住んでるのか?」
「そ、そう!ユリはお父さんといるの」
熱のせいか、頬を赤く染めて答える。
「お父さんは好きか?」
「キライ」
「ん?」
「あ……好き、ううん、やっぱりキライ」
「ああ、分かった、もういい。アイスで少しは楽になったかな?」
少女は何も答えなくなった。
頬に触れるもやけに熱い。心拍も早く発熱は続いている。
「もっと何か冷やすものを持って来る。そのまま寝てて」
高熱の子供相手に探りを入れるなど、どうかしている!今はこの苦痛を和らげてやるべきなのに。
それにしても、工藤新一が来たところで何が変わると言うのか。この問題があっさり解決するとは思えない。急に自分の行動が愚かに思えて来た。
「俺も案外他力本願だな!自分で何とかしろって話だろ?」
苦笑しながらキッチンに戻り、冷凍庫から保冷用のジェルを数個取り出す。
原因が分からない以上、解熱剤が効かなければ打つ手はない。
医者でありながら、こんな手段しか取れない自分が嫌になる。
そして時刻は四時を回った。
玄関チャイムが鳴り響き、足早に向かう。
「新堂先生、お待たせ」
少年の後ろから、もう一人顔を出した。
「こっちは灰原。俺のクラスメイト。同席させてもらってもいい?」
「ええと……」
「とにかく関係者だから!ね、いいよね?」
「そういう事なら」
初対面の少女に若干戸惑いながらも受け入れる。
軽く頭を下げて挨拶をして来る少女は、どこか大人びた雰囲気だ。それはユイよりも!
「ユイさん……じゃなかった、ええと誰だっけ?」
「私に聞かないでよ」
リビングに通した二人はこんな言い合いを始めている。
構わず二人の座るソファの前に陣取り話を進める。
「新一君に灰原さん。来てくれてありがとう。この二日間ユイと連絡が取れず、替わりに彼女の親戚が家に来てるんだが」
淡々と話し始めた俺を見て、二人が居住まいを正した。新一が聞いてくる。
「それでその子は?いないの?」
「高熱で寝込んでいてね。薬がどれも効かなくて困ってるんだ」
「高熱?何で……」
新一は灰原と目を合わせて息をのむ。
「個人差って言っても、そこまで違うものか?」
「分からないわ。でも実際彼女にそれが起こっているなら、そうなんでしょうね」
二人の会話に割って入る。
「済まないが、私にも分かるように説明してくれるかな?」
ここは控えめに行こう。子供を怖がらせるのは趣味じゃないので!
「ああ……どっから話せばいいんだ?」
頭を掻いて悩まし気な新一を差し置き、灰原が俺に向かって口を開いた。
「あの、新堂先生は、どこまで把握されていますか」
「どこまで、というと?」
「例えば、高熱の原因とか」
「話を聞いていなかったのかな?困っていると言ったんだが」
「ああ、ごめんなさい!それじゃあ、……やっぱり工藤君から言ってよ」
灰原は伏し目がちになって横の少年に言った。
小声で灰原が、やっぱりこの人ニガテ、と囁いたのも見逃さなさい。
「別に問いただしている訳じゃない。悪気はないんだ、済まない」
「いいえ……そういう意味では!」
灰原は一転慌てたように返して来た。
「君達はやはり小学生には見えないな」
「そりゃそうさ。特にこっちの灰原はなぁ」
新一が砕けた口調で言う。
「工藤君ってば!」
「初めから子供と話しているつもりはない」
俺が改めて言うと、二人はもう一度目配せをした後にこちらを見た。
「回りくどいのは好きじゃない。率直に聞く。新一君は以前私に、幼児化の話を持ち出したな」
「ああ。したね。あの時はまさか、こんな事になるなんて思ってなかった。本当に、そんな事は思ってなかったんだ」
心底後悔したように言うその姿が痛々しい。
世の中には様々な病が存在する。中でも、老化現象を早めるものやその逆、若返りの症例。
それらはほとんどが脳障害によるもので、原因も治療法も解明されていない難病だ。
「まさか現実の話だったとはな!」
「本当に……ゴメンなさい」
「謝るな。どうせまた、ユイが首を突っ込んだんだろ?」
「それだけじゃないよ。ユイさんが有名すぎたせいだ」
「それで。今ここで高熱にうなされているのはユイなのか?」
「断定した訳じゃなかったんだね」
「当たり前だろ!信じられるものか!」
思わず本音で訴えてしまった。
「うん、分かるよ。痛いくらいね。それで先生はどう思う?」
「まだ何も。君達はそういう病なのか?だとして、こんなに急激に悪化するのは考えにくい」
何せ今朝は至って普通だったのだから!たったの半日だぞ?
「病、だと思ってるの?」
「それ以外考えられん。血液検査では薬物反応は見られなかった」
ここで突然灰原が割って入る。
「あの薬は痕跡を残さないように作ってるから当然よ」
「あの薬?作ってる?どういう事だ」
「もう隠しても意味ないわね。いいでしょ、工藤君」
「ああ。頼む」
その後繰り広げられた灰原という少女の説明は、にわかには信じ難いものだった。
「バカな……」
「やーっぱそういう反応だよなぁ」
言葉にならず固まっていると、再び二人が会話を始めた。
「それにしても変よ。変化の過程で発熱したとしても、もうとっくに収まっているはずなのに……」
「オレの場合、熱ってより心臓がこう、潰されるように痛かったぜ?だけど、その後はこの通り普通だ」
「そう。体中が痛んで、バラバラになるんじゃないかってくらいね。もしくは飲んだ直後に即死よ。あ……ゴメンなさい」
勢いで言ってしまったと見えて、灰原が謝罪を入れて来る。
「別に謝らなくていい」
そう断ってから、思案に耽る。
ここは医者としての立場で応対するとしよう。
「それで個人差、という訳か」
少なからず薬効には個人差が生じるものだ。それは毒であっても同様。
「お分かりいただけたようで何よりです」
灰原は深々と頭を下げて言った。
「その薬の研究を、君が……」
「研究チームに所属していただけです。手掛けていた私の両親が亡くなったので、その後を引き継いだというか……」
ここまで来たら信じてやるしかないじゃないか。
手を上げ了承した事を示してから尋ねる。
「で、こういう例は他にあったのか?」
これに答えたのは新一だ。
「他にっつっても、こうなってるのは俺達だけだからなぁ」
「つまり他の人間は死んだと」
「まあ……そういう事」
「殺害目的の薬品であるなら、致死量の劇薬だ。君達だっていつまでもこの状態のままで済むとは思えない。薬が作用しているのは恐らく脳だ」
「長生きが望めないのは分かってる。でもユイさんだけは助けたいんだ。こんな事に巻き込んで、寿命が縮むなんて……ダメだよ!先生、協力してくれるよね?解毒剤を作るの!」
「それはもちろんだが、何て言ったか……その」
「アポトキシン4869。まだ世には出回っていません。こんな恐ろしい薬、生み出してはいけなかったのよ!」
灰原が両手を顔に当てて嘆く。
「アポ、とはアポトーシスの事か?簡単に言えば細胞の自己破壊、要は自死。トキシンは単純に毒を意味する、か…。なかなかのネーミングセンスだな」
「細胞の自死って上手い事言うね!……って先生、関心してる場合じゃないよ?」
合いの手を入れながらも新一が突っ込む。
「外科医は案外、楽観主義が多くてね。灰原さん、そんなに自分を責めないで」
自然とこんな慰めの言葉を口にする自分がいた。
女性が悲しむ姿は、見ていて気分のいいものではない。
まあ俺はどちらかというと悲観的性格だが、今は伏せておくとしよう。
彼女は淡々としていて情に薄いようにも見えるが、好き好んで人を死に追いやるような人間ではなさそうで、どうにも突き放せない。
それを言えば、ユイの方が悪だ。
少しだけ空気が軽くなったところで、新一が言う。
「とにかく今は、ユイさんの高熱を早く何とかしなきゃだね」
「ああ。ユイは特異体質の気があってね。すぐに薬に耐性ができてしまうんだ。もしかすると、未知の化学物質に免疫が過剰反応しているのかもな」
「そうよ先生、自己免疫反応!それを鎮めればもしかして……」
灰原が思いのほか強い口調で加勢してくる。
「それだ。やってみよう」
こんな単純な事になぜ今まで気づかなかった?幼児化に囚われすぎていた。
その後の処置により、ユイの熱は下がり出した。
「一先ず安心だね」
「遅くまで付き合わせて済まなかったね。君達、家まで送って行こう」
「大丈夫だよ。先生はユイさんに付いててあげて。帰ろう、灰原」
「ええ。新堂先生、今後について話し合いたいので、また来ます。これからよろしくお願いします」
「こちらこそよろしく。では気を付けて」
本来なら、小学生をこんな時間に放り出すのはマナー違反だが、彼等は特別。まあいいだろう。
まさかの展開で、取りあえずは安心か。
「他力本願もたまにはいいだろ?ユイ!」
穏やかに眠る少女、いやユイを見下ろし、安堵の息を漏らした。