仮面ライダー~生まれ変わりし戦士~   作:スタノヴァ

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後半

○8

 

「ッラァァァァァァァァァァァッッ!!」

気合の入った叫びをあげ拳をチェーンソーに突き出す。

その力によって繋がっていたパイプを折り紀美野に触れる前に吹き飛ばした。

その直線上に研究員が存在し彼が両断されてしまう。

それを認識しながらも仮面ライダージョーカー・・・・・式森和樹は老人を睨む。

 

「誰だ、なんだ貴様は!」

老人の叫びに和樹は左手を上につき出しこういった。

 

「俺は仮面ライダー・・・・・・ジョーカー。」

 

仮面ライダー。それは戦士達の名称、和樹が最初の生で得た戦うための力。

様々な戦士たちとの出会い、そして継承によって彼の中に生き続けている正義の力。

和樹は数十体に到達する化け物たちを前にしても臆することなく堂々と名乗った。

 

「貴様が今回の連続集団失踪事件の黒幕か。」

 

赤い複眼が光る。

それは怒りを表しているかのように仮面の下からギラギラとした視線が感じられた。

それに老人、・・・・・ジェネラルド博士は後ずさる。

それに気づいた老人はハッとしそして顔を憤怒に歪めた。

醜い皺くちゃな顔が更に歪む。先程の悦は無く激しい憎悪によって。

 

「ならば何だ?警察に突き出すか?この私を?崇高な大魔導師であるこのジェネラルド・ヴァンドゥ・リジターナ博士を!?」

次第に荒々しくなる口調を抑えきれず老人は口汚く罵る。

 

「貴様のような下等生物であるような愚かな存在が私を捕らえるだと?!思い上がるな!!」

ジェネラルドは呪文を唱えると一斉に檻と純白の部屋のロックが解かれそこから化け物・・・・改造された被検体が飛び出してきた。

 

「やれ!その者を殺せ!!相手は一人だ、さっさと片付けろ!!!」

ジェネラルドは被検体たちに命令した。

彼らに意志はない。記憶も無ければ知性もない。

ならば何故彼らはジェネラルドの命令を聞くのだろうか。簡単な話だ、彼ら全員の頭の中に特殊な装置を取り付けられている。

それを魔術を用いて操作し簡単な命令ならば反応できるようにしたのだ。

彼らは完全な怪人と成り果ててしまったのだ。

怪人たちは中央の診察台へとにじり寄る。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・そろそろだな。」

和樹がそう呟くと突然彼らの頭上、天井の一部が崩れた。

それの直撃と土煙で怪人たちは怯む。ジェネラルドも例外ではなく目に手をあてて収まるのを待った。

そしてジェネラルドはそれを見て目を疑った。

何と空には機械仕かけの人形、ロボットが飛行していたのだ。

それはゆっくりと着陸し和樹の傍に降りる。

バイク型自動変形ロボ、『オートバジン』は無言で和樹を見た。

和樹は拘束されていた紀美野を抱きしめオートバジンに手渡す。

 

「お前はこの娘を。コイツ等は俺がやる。」

和樹から紀美野を受け取ると無言で頷き先程開けた穴まで戻る。

 

「させるか!!」

ジェネラルドは魔術を発動し炎を放とうとし、

ッタァァァンッ!

銃声が響き老人は腕を抑えた。

ジェネラルドが視線を向けると銃口を向けた和樹がジェネラルドに向けて構えている。

これによってオートバジンは無事に脱出していった。

 

「殺せ!あの男を殺してしまえ!!」

ジェネラルドの怒号と共に怪人たちは一斉に襲いかかる。

和樹は拳を握り締めその怪人たちの波の中に飛び込んだ。

高々と跳んでからの一撃は落下地点の怪人を軽々と吹き飛ばした。そして屈んだ状態から足払い、これによって押しつぶそうとしていた怪人等は自身の体重を抑えきれずに倒れてしまう。だがそれはほんの数体に過ぎない。

地に伏せた怪人を踏みつけて更に怪人たちが飛びかかってくる。

和樹は一人の怪人を掴みそれを一本背負いの要領で投げる。

ビュッ!!

鋭い音が和樹の側面から聞こえた。

咄嗟に顔を引き後方に跳ぶ。着地と同時に襲いかかってくる怪人たちに回し蹴りを食らわし怪人の死角から脇を狙って拳を放つ。

キュィィィィィィィィィィィィィンッ!!

先程のチェーンソーと同じような音に和樹は反応し壁を背にし振り返る。

視線の先には両腕を変形させて生物的な腕から機械的な武器へと変貌していた。

あるものは剣を、あるものはノコギリを、あるものは銃に似た武器を。

それだけでは無い。

ここまで和樹がここまで潜入してくる際に倒してきた研究員と同じ格好をした者達もゾロゾロと集まってきていた。

 

「数で押されるか。・・・・・・・・」

 

それを確認しドライバーを一旦元の位置に戻す。

そしてジョーカーへと変身するメモリ『ジョーカーメモリ』を抜き取り変わりに赤色のメモリを取り出した。

『ヒート!!』

それをスロットに装填し発動させる。

するとジョーカーの黒い鎧が炎に包まれ赤く、紅く染まっていく。

その吹き出した炎によって近くにいた怪人たちは炎に包まれてしまい地を這って藻掻く。

 

「仮面ライダー・・・・ヒート。」

 

和樹・・・仮面ライダーヒートがそう告げるとその両腕に炎を灯しそのまま両腕を前方に突き出した。

一気に約1500度の火炎放射が怪人たち、並びに研究員たちに襲いかかる。

彼らは目の前の黒い敵が一瞬で紅く染まったことに驚愕し身動きがとれなかった。

それが命取りとなる。

鉄をも溶かす炎に怪人たちは腕が炭化し行動不能となっていくが軽い武装を施した程度の研究員では耐えられず魔術を発動する暇もなく炭となっていく。

そこまで戦闘し和樹は気づく。

この場にジェネラルドがいないという事に。

 

「くッ!?」

追いかけていったか!と和樹は舌打ちを打つ。

今から追いかけようにも未だに10~20の怪人が襲いかかってくる。

中には手足を欠損した者もいるがそれでもお構いなしに立ち上がり若しくは這いずってこちらに近寄る。

 

「コイツラ、痛覚を持っていないのか?それともそれすら理解できないほどに知能が失われているのか。」

 

和樹は今この場に存在する怪人たちが元は誘拐された少年少女達ではと思っていた。

ソレを証明するモノは多々有り、ジェネラルド博士等が行っていた研究のデータを垣間見ていた。

そして長年の経験からによる直感が彼らが被害者であるという事に直結したのだ。

今の和樹には彼らを元に戻す力は無い。

仮に魔術的変化を元に戻しても肉体に埋め込まれ弄られた機械等は取り除けないだろう。

時を戻す術を持たない限り・・・・・

倒すに倒せない、そのようなジレンマが和樹を襲うとき一人の怪人が前に出てきた。

その姿は先程の炎に巻かれて身体のあちこちが炭化していたが外見から思うに蝶型怪人であろうと理解した。

その怪人はガラガラな声で、だが和樹に伝わる声でこういった。

 

『ゴ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ロジ、デ・・・・・・・・・・ボ、・・・ロジデ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ゴロジデ・・・・・・・・・・・・・・・・・』

 

そう告げた怪人はその虫のような複眼から緑色の涙を流していた。

それだけでは無い。

その後ろにいた怪人達も、ポット内に閉じ込められて身動きが取れない怪人達もが大量の涙を流していたのだ。

その涙からは自身のどうしようもない悲しみが、絶望が激しく伝わり和樹は無意識に震えた。

キツく握る拳が激しく震える。恐怖からではない、果てしない怒りから握った拳が解けない故の震えだ。

和樹はその願いを、・・・・

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

無言で頷いた。

自身が出来るたった一つのことをする為に和樹はベルトのメモリを抜き取る。

そしてベルトのサイドに付いているスロットに装填する。

『ヒート!!マキシマムドライブ!!』

機械音が部屋中に響く、同時にヒートの身体が炎に包まれる。温度は1000度を超え2000度、3000度と上がっていく。

和樹の足元が融解していき近くにいた怪人はその熱に焼かれて一瞬にして灰になった。

 

「まだだ、まだ足りない!!」

 

そう叫んだ和樹はもう一度スロットのスイッチを押し発動する。

『ヒート!!マキシマムドライブ!!』

二度目のマキシマムドライブによって深紅に染まったボディが見えない程の激しい炎に巻かれていく。

ゆっくりとヒートは上昇して纏っていた炎が徐々に下へ向かい両足に計りきれない程の熱量が移動していく。

そして、・・・

 

「ヒートエクスプローション!!!」

 

そのまま一気に落下し地面を蹴りつける。

その莫大なエネルギーはその衝撃と共に研究場を爆発させていった。

 

『・・・・・・・・・・・・・・ァ・・・リガド・・・・・・・』

 

消えゆく彼らからそのような声が聞こえた気がした。

 

○9

 

怪人の群れから脱出した紀美野はロボット、オートバジンが開けた穴から一気に地上まで戻っていく。

オートバジンによって救出された紀美野はあんまりにも急な展開で思考を放棄していた。

ただ硬い機械の腕にしがみついているのに必死だった。

鉄臭い地下の空気から新鮮な空気に変わる。ソレを肌で感じながら紀美野は地上にたどり着いた。

 

「―――――――――ッ、アキ?」

 

暫く呆然としていたがふと先程まで傍にいた少女のことを呼ぶ。

どうしてこうなったのか、最早彼女には何も理解できなかった。ほんの数日前は笑顔で笑いあっていた友達の変わり果てた姿を見て何を信じていいのか分からなかった。

一体誰のせい?誰がこんなふうにしたの?思考が廻りだした時にはその問答を繰り返し続けていた。

そして先程までいた地下の場所の上には廃れてあちこちが壊れている廃工場が視界に入った。

 

「あ、あの!待って、待っててば!!」

 

機械の肉体(ボディ)を叩いて静止を呼びかける。

十分に離れたと判断したオートバジンはその静止の声を聞く。

 

「下ろして!」

 

無言を貫くオートバジンは静かに紀美野を下ろした。

彼女の足が地に着くと同時に紀美野は先程の廃工場に向かって走り出そうとした。

それを瞬時に察知し紀美野腕を掴む。

 

「離してよ!あそこにはアキがいるのよ!」

 

必死にその腕から逃げ出そうと藻掻く(もがく)がその動きにもオートバジンが対応し引き止める。

紀美野はあの場所に残してしまった変わり果てた親友に意識を取られすぎていた。余りの展開で正しく現状を理解していなかったのだ。紀美野の親友を変わり果てた姿に変えた元凶が今まさに「紀美野を狙っている」ということを理解できないでいた。

腐乱臭と錆びた鉄の臭いに紛れて何かの臭いが近づいてきているのを紀美野は理解する。

 

「フフフ、・・・・・私はついている。大切な実験材料に逃げられたと思ったら私の迎えを待っていたのだからな。」

聞きたくない声を耳にし彼女の身体が怯み上がった。

直様オートバジンは背に隠しタイヤ型の大きな盾を全面に出す。

 

「主人を待つとは本当に可愛い被検体(ペット)だ。さぁ一緒に戻ろうではないか。」

 

「・・・・・・・・・・・・・ぁ、アンタなんかと、戻るわけ無いでしょ!アキを元に戻してよッ!!」

紀美野は震えながら叫ぶ。

ジェネラルド博士は首を傾げていう。

 

「アキ?・・・・・・・・・あぁ、君が抱きしめていた被検体P-99のことか。」

ジェネラルド博士は納得したように軽く頷きそして口にする。

 

「彼女は今までの実験体の中で唯一の成功体なのだ。肉体を開きその中に動力源となる魔力宝玉によって魔力消費を抑えてナノマシンによる肉体改造と機械化をしている。それによる拒絶反応は現れずにいる、本当に素晴らしい被検体だったよ。」

恍惚とした表情で紀美野に語りかけるジェネラルド博士。

それを紀美野は硬い鋼鉄の肉体(ボディ)にしがみつく。その腕に多少だが力が入っているのが分かる。

 

「そして一番の予想外だったのはアゲハ蝶の結晶との適合率が想定よりも上位にあったことだ。」

両手を大きく広げて大げさに言う。

ジェネラルド博士に気を取られていた紀美野は気付かなかったが彼の後ろとは違う出口から白衣を着たマスクをつけた男たちが数人出てきたのをオートバジンは認識した。

 

「本当に素晴らしいかったぞ?肉体から臓器と子宮をいう邪魔なモノを取り除き生命生存装置を付けた。その後にアゲハ蝶の結晶を植え付けた時、遂に人間と結晶体の行き来を可能とした生命体として完成したのだ!!その時の興奮を君は分かるかね?いや分かるまい!!あの時の私の興奮は言いようのない「そんなことが聞きたいんじゃないわよ!!」―――?」

 

「私が言ってるのはアキを元に戻せって言ってるの。あんな化け物な姿に変えられて!さっさと元に戻してよッ!!」

――――――――――――・・・・・・ククク、ははッひゃぁっはははっはっはっはっははははははははははははははは!!!??

数秒の硬直からタカが外れたようにジェネラルド博士は嗤いだす。

可笑しくて、愚かしくて堪らないようだ。そして・・・・・彼は残酷な現実を告げる。

 

「元に戻す?何を?どうやって?無駄だよ、既にアレは脳までも改造してある。それにだ、内蔵の殆どを摘出されて研究所のパイプで辛うじて生き残っている彼等はもうマトモに生きていけんよ。」

 

「ど・・・どういう」

 

「考えてみたまえ、特に訓練も精密な調査をしていないでその肉体に機械を埋め込めたのだぞ?それも人が生きるために必要な機能が欠損しているな。仮に魔術で元に戻してもそのボロボロな肉体では1年も生きられん。」

紀美野はその説明を受けて次第に涙が流れていった。

 

「それに、どうせ魔術の知識も無い君達では人生というものを浪費して終わるだけだろう?ならば我らの偉大なる研究の柱となれることに光栄に思うべきだ。」

そこで言葉を止めジェネラルドは指示を出した。

 

「捕えろ。あの機械は破壊して構わん、そろそろあの下等生物も私の実験体によって押しつぶされているだろう。」

男達は無言のまま頷き・・・・・

 

バァァァァァァァァァンッッッ!!

男達の後方から激しい破裂音と爆風が吹き出す。

廃工場の傍にいた男達はその爆風によって吹き飛ばされ、ジェネラルド博士も爆風を受けたが何とか魔術を使用し耐えた。

オートバジンは紀美野を脇に掴み後方へと飛ぶ。

・・・・・・・・・

・・・・・・

・・・

爆風が収まり紀美野が顔を開けるとそこには巨大な黒煙が登っている廃工場跡と呆然としたジェネラルド博士の姿が目に入った。

 

「そ、・・・・そんな?あぁぁぁッッ!!私のッ!?私の研究がぁぁぁぁぁぁぁぁあああああぁぁぁあぁぁッッ!!?」

膝を付き激しく頭を掻き毟り発狂するジェネラルド博士。

大声を上げたジェネラルド博士を見ていた紀美野だったが視界の端で黒煙が形を変えていくのを視認した。

黒煙が突如大きく広がったと思うと一気に霧散して中から黄緑色に近い鎧を身に纏い首に白いマフラーが靡く(なびく)。

それが宙に浮いておりそのままゆっくりと大地に着陸した。

 

○10

 

「き、貴様が、貴様がやったのかッッ!!?」

グッと起き上がったジェネラルド博士は傍からでも分かるほどの殺意と覇気を放って黄緑色のライダーを睨む。

紀美野はジェネラルド博士の背後からしか見ていないがその恐ろしい殺意に再び硬直してしまった。

「・・・・・・・・・・・・・あぁ、地下にあった書類とデータ、そして彼らは俺が眠らせた。後はお前とそこに転がっている奴等だけだ。」

ゆっくりと腕を上げたソレはジェネラルド博士を指差した。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・おのれ。」

ボソッと呟いた言葉と共に懐から結晶を取り出し顔に押し付ける。

その瞬間、ジェネラルド博士の身体が発光しその形が変化していく。

各部の形態が別々の姿純粋な生き物と呼べないモンスター・・・・キメラ結晶化。

 

『オノレオノレオノレェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェッッ!!!』

人の声とは違うガラガラとした聞き取りにくい奇声を上げるジェネラルド博士(キメラ)。

そのまま勢いをつけてジェネラルドは突撃してくる。

「ッ?!フッッ!!」

咄嗟に反応した戦士は右手を横に一閃する。すると振った先から風の刃が出現しジェネラルドの肉体を切り裂く。

胸を抉るように右腕を切断した。

 

『Gaaaaaaaaaaaaa!!』

その一撃によって攻撃が逸れて地面を転がる。

蜘蛛の口から粘ついた涎を垂らしながらライダーを睨む、更にその状態から唸り声を上げ・・・・

『GYAaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!』

切り裂かれた腕が抉れた胸から生えるように再生した。

 

「・・・・・・・・・・・トカゲの尻尾・・・いや蟹の再生能力か。少なくとも切った程度では倒しきれないのか。」

紫の血で濡れた右腕を軽く動かしある程度慣れた所でライダーを威嚇する。

 

「いいぜ。とことん相手してやるよ、・・・・この仮面ライダーサイクロンがな。」

両腕に風を纏い拳にその暴風を込めた。

先程と同じように突撃してくるジェネラルド、それに今度は肉弾戦を持ち込もうとする。

サイクロンが懐に飛び込み拳を放つ、それを受け止めたジェネラルドだったが風が巻き起こす回転力によって身体が持ってかれる。

巨体200キロ超をしている怪人でも竜巻級の威力にはなすすべが無かった。そのままバランスを崩し地を転がった。

 

『が・・・GAAAAAAAAAAAAAaaaaaaaaaaaaaaa!!!』

肉弾戦及び接近戦では部が悪いと察したジェネラルドは更に距離を開き魔術を展開する。

風の攻撃には風の魔術を、そしてサイクロンの操る風の力と回転方向を理解しその逆回転の風魔術を行使し10・・・20・・・30と連続で放っていく。

サイクロンは空中に逃げ最初の攻撃を躱し後からの追撃を自身が作り出した風の刃で相殺した。

その攻防が暫し続いたが最後の一撃を放ったジェネラルドは再び魔術を行使しようとして遅れた。これを好機と見たサイクロンは迷わず接近し右のアッパーを放とうとし・・・

ニヤリ

ジェネラルドの顔が急に上がる、そして蜘蛛の口から白く太い一本の超粘着糸を射出した。

咄嗟の回避が成功せず右足にその糸が付着する。

そしてジェネラルドは思いっきりその糸を掴み地面に引き吊り下ろそうした。

 

「・・・ぐぁッ!!?」

素早さで勝るサイクロンだったが単純な腕力ではジェネラルドの方が上手だった。為すすべもなく地面に叩きつけられるサイクロン。

「がはッ!?」

衝撃で肺の空気が一気に口から出る。サイクロンは歯を噛み締めて立ち上がり糸を切断しようとした。

しかしそう簡単に糸が取れず地面や木々に叩きつけられる。

それを二度、三度、と繰り返し行われ次第に引きづられていく。

 

「―――――ッ!この、・・・ならこのメモリだ!」

地面を思いっきり叩きつけ身体を宙に浮かし同時に黄色のメモリを取り出す。

そしてスロットに装填された緑色のメモリ『サイクロンメモリ』を取り出し『ルナメモリ』を装填する。

『ルナ!!』

黄緑色のボディから黄色のボディへと変化していく。

「変わった!?」

紀美野は漸く硬直が解けそれだけを口にすることが出来た。

 

『グァァァァァァァァァァァッ!』

ジェネラルドはサイクロンから変わった事を気にも止めずに再び力尽くで引っ張る。だが・・・

 

「フッ!!」

 

引かれる力に合わせるように足を蹴り出す、するとその足の先が伸びそのままジェネラルドの顔面を蹴った。

常識外の攻撃にジェネラルドは対応できずモロに食らってしまい吹き飛ばされた。

同時に着地したライダーは右手でLを形どり・・・

 

「幻想の戦士、仮面ライダー・・・・ルナ。」

 

そう告げた。

ジェネラルドは立ち上がりもう一度蜘蛛の糸を引こうとしてルナメモリの能力が発動する。

グニャッとジェネラルドの腕が曲がったのだ。

 

「ルナの力、それは相手にも通用する。今お前の肉体から両腕の感覚を奪った。」

そう言ってルナは離れた距離から拳を飛ばす。

中距離からの接近戦という矛盾の戦闘スタイルでジェネラルドを殴り続けた。

右ストレート、左アッパー、更に回し蹴り。

攻撃を受けてよろけるジェネラルド。逃げ出そうとした両足の感覚を変化させて棒立ち状態にしたのでそう動けない。

両手を伸ばしジェネラルドの頭を掴む、そして今度はコチラの番とでもいうように振り回す。ハンマー投げの要領で振り回して木々にぶつけ、その後投げ飛ばした。

その時には足に付いた糸は取れており拘束は解除された。

 

「・・・・・・・終わらせる。『ジョーカー!!』」

もう一度黒いメモリ、『ジョーカーメモリ』を手に持ち『ルナメモリ』と取り替える。

 

『ジョーカー!!』

再び黒い鎧の戦士、切り札のライダージョーカーになる。

未だにジェネラルドは叩きつけられたまま起き上がれない。元々は魔術師、しかも老化によって肉体が弱っていたのだ。結晶を用いた強化でも元のスペックが低い状態ではそう持つまい。

フラフラと木に手をかけて立ち上がる。

震えるように弱った異形の声が響く。

 

『・・・・何故だ?何故、私の邪魔をするのだ。私の魔術は研究は・・・・・・人類の、新たなる進化の為に・・・・・・・』

まるで子供が嘆くように、ジェネラルドはそう呟いた。

 

「・・・・・・・・違う、それは違うんだ。貴方がやろうとしているのは進化なんかじゃない、ただ死を逃れようとしていただけだ。恐怖から逃れようとしていただけなんだ。貴方が築き上げてきた全てが消えてしまうのが、貴方が生きた証しが消えるのが怖かっただけだ。」

ジョーカーは静かに、それでいてはっきりとした口調で答える。

赤い瞳には先程までの怒りの色は無く、唯々哀しみが浮かんでいた。

 

「死は怖い、誰だって怖い。自身が消えてしまうように感じ、皆との絆が途切れたように感じる。辛く切なく、冷たい・・・・・・・けどそれでいいんだ。だって人は死ぬために生きているんだ、必死に生きて必死に足掻いてそれで尚未来を掴もうと手を伸ばし穏やかに永眠(ねむ)る。それが人だ。」

 

『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・嫌だ。私はそんな在り来たりな人生を、凡人と同じ人生を歩みたくない。私は大魔導師だ!選ばれし者だ!そんな私が何故こんな惨めに散らなければならないのだ!有り得ない、あってはならない!絶対に絶対にッ!!』

 

そう告げたジェネラルドの背についている甲羅が突如として割れた。そしてその中から数枚の半透明な羽が生えて激しく羽ばたかせる。羽の動きが見えなくなった時には空高く飛び上がろうとしていた。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

ジョーカーは無言で『ジョーカーメモリ』を引き抜き右腰に付いたスロットに装填する。

『ジョーカー!!マキシマムドライブ!!』

右手の拳に力を込める。そこにジョーカーの力が集まり黒と紫の中間辺りのような色の発光が妙に禍々しく、雄々しく感じた。

 

「・・・ライダーパンチ。」

小さく告げたジョーカーはジェネラルドに向かって跳ぶ。

それを察知したジェネラルドは魔術で迎撃したが、どれだけ攻撃を当ててもジョーカーは止まることは無く、・・・

 

「オラァァッッ!!」

遂にその拳はジェネラルドの顔面を殴りつけた。

意識が持ってかれそうになったのを辛うじて耐え踏ん張ったジェネラルドだったが既に飛ぶことは出来ず落ちていく。

 

『グゥゥゥッッ!?ガ・・・・・・・・・・・・・・・ガアァア!!』

呻き声を上げるのみが響き地面をのたうち回る。

シュタッ!と静かに着地したジョーカーは唯ジェネラルドを見据えていた。

 

「・・・・・・」

やっとの思いで立ち上がったジェネラルドは自身の傷の回復も出来ず徐々に壊れていくのを感じた。

もう持たない、この体ではもう戦えない。そう実感したジェネラルドは最後の力を振り絞り目の前の男に尋ねた。

 

『・・・・・・・オ・・・・・・・マエハ、・・・・・ナニモノダ。ナンダ、・・・ナンナノダ・・・・・・・・』

自身の残りの魔力回数を何重に使用し最後の魔術を発動しようとする。

これは賭けだ。これで全てを終わらせようとジェネラルドは魔術の準備をする。

そして、それに気づかないジョーカーでは無く、コチラも最後の一撃を与えようとスロットのボタンを押した。

 

『ジョーカー!!マキシマムドライブ!!』

 

「・・・・・・俺は、俺は仮面ライダーだ。そう・・・覚えておけ!ライダーキック!!」

 

高らかに空を跳び空中から勢いよくジェネラルドに向けて蹴りを放つ。

その足に集まるジョーカーの力がジェネラルドの肉体を蹴り、強靭な筋肉を引き裂き核となっている結晶を打ち抜いた。

パリンッ!とガラスが割れるような音が響くのと同時にジェネラルドは数メートル先まで吹き飛ばされ、・・・・・

バァァァァァァァァァァァァァァァァァァァンッッ!!

エネルギーの過剰増幅によって爆発した。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・特別になんて、なってもいいことなんてないさ。有るのは永遠と続く虚しさと孤独だけだ。」

憐れむように何かに耐えるようにそう呟いた声は誰にも拾われることは無かった。

 

 

○11

 

・・・・・・・・終わった。

漸く、あの悪夢のような出来事が完全に終わったのだと紀美野はそう実感した。

友達が目の前から連れ去られ外道な人体実験の被検体として解剖されそうになり化け物の親玉に自身が壊されそうになり、そして目の前の仮面ライダーによって全てが片付けられた。

・・・・・・・・あれ、そう言えば皆は?

ふとアキを始めとした仲のいい友人達がどうなったのかと頭の中によぎった。

そして、つい聞いてしまったのだ。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・アキは?アキ達は何処にいるの?」

 

分かりきっているのに知っているのに、知らない振りをして声にだした。若しかしたら皆は助かったのかもしれない、人の姿を取り戻してまた笑みを浮かべているのかもしれない。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・だが、帰ってきた答えは残酷な現実だった。

 

「・・・・・・・・・・・・・・彼らはもういない。俺が・・・・全員殺した。」

「・・・・・・・・・・・・・・」

その言葉に顔を下に向けて静かに震えた。右手で左腕を強く握り必死に泣くまいと堪える。

分かっていたのだ。あの男が言っていたようにもう元通りにはならないだろう、それくらい理解していた。でも、どうにもならないのだ。やるせないしどうにも言い表せない、どうしてこんな目にあったのか。私達は一体何をやったというのだ?理不尽だ、理不尽すぎる。

 

「・・・・・・・・・・・・言い訳はしない、彼らの息の根を止めたのは俺だ。俺には彼らの想いを留めることは許されない。だから、君に彼らの声を、想いを聞いて欲しい。」

そう告げたライダーは魔力を行使しそれを解き放った。

それは雪のように白く暖かな光でそれは紀美野の周りに降りかかりそして、・・・・・・

 

『・・・ユウ。』

 

「・・・・・・・・・・ぇ?」

紀美野が声の先を見ると光の形から少女の形を型取り、半透明の女性、アキとなる。

 

「・・・アキ?どうして・・・・」

『・・・へへへ、何というか・・・・・その、私ね。死んじゃったの。』

照れたような笑みのまま自身の死を淡々と語るアキ。

 

「・・・・・・本当なんだ。」

悲しみを宿した声で発する。

つい先日まで笑いあっていた友の死という現実を未だに理解出来ないでいた。

いや、分かりたくないだけだったのかもしれない。理解したくないのだ、すれば彼女等との絆が消えてしまいそうで・・・・こんな残酷な別れでそれを失うのが怖くて仕方がなかった。だが、それももう終わりだ。

目の前にアキがいるのだから、・・・・・魂の状態で。

 

『あのね、・・・・そのなんていうかさ。この後ででいいんだけど・・・・・・お母さんにさ、『ごめん』って言っておいて。』

笑みを浮かべながらそういう言葉を聞いた紀美野は静かに涙を流していた。

『あとさ、弟達にさ私みたいにバカみたいにならないようにって伝えて欲しいんだ。それとお父さんにハゲジジイっとか言ってゴメンtって・・・伝えてっ・・・・・・・・・・・』

 

言葉を紡いていくと段々と涙ぐんでいく、それを見て紀美野は堪えていた涙を抑えきれずに流してしまった。

『・・・・・・・・・・・・どうしてっ、どうして私は死んだの!?まだやりたいことがあったのに!恋もしたかったし友達とももっと遊びたい!・・・なんで?!どうしてこんなことになってしまったの!!』

ボロボロと涙を流して次第に号泣していくアキ。紀美野はそんなアキを抱きしめようとし、・・・・・通り過ぎていった。

 

「あ、・・・ぁぁぁっ!うぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!?」

それを体感した紀美野はうめき声を上げながら崩れていく。

もうこの世にいない友を抱きしめて慰めることすら出来ない弱い自分を恨んだ。

もしかしたら魔法を使用すればと思ったが無学の上特殊であろう霊との接触なぞ自身では到底無理な話だった。

無力な自身を恨み友に駆け寄ることすら出来ない自身が情けなくなり紀美野は大粒の涙を止められなかった。

 

『・・・・・・・・・・・・・・・・・ありがと。』

そんな彼女に声をかけたのは死人のアキだった。

『ありがと、私の為に涙を流してくれて。悲しんでくれて、本当に嬉しかった。・・・・私ね、死ぬまでの殆どは覚えてないのだけどとっても苦しい所にいた気がするんだ。そしたらユウが来てね。傍にいてくれて、抱きしめてくれて。・・・・・暖かかった。』

そう言葉を紡ぐ彼女は徐々に影が薄くなっていき輪郭がぼやけていった。

 

『・・・もし、だけど。・・・・私が生まれ変わってまたユウと出会った時も、友達になってくれるかな?』

アキは穏やかにそれで尚綺麗な笑みを浮かべていた。

瞳には涙の跡もあるがもう陰鬱を雰囲気はない。心の底から紀美野に向けて感謝の想いを伝えていた。

 

「ぅぅぅぅっ、・・・・・・・うん、うんっ!!なるよ、また友達になろう!」

そうグチャグチャにした顔で必死に笑みを作り浮かべた。

涙を止めることができずにいるがその言葉が、想いが真摯に伝わりアキも嬉しそうに頷く。

『それじゃ、私はもう行くから・・・・またね。』

そう言ってアキは軽く腕を振って静かに薄れていく。

「うん!・・・・・・・・・・・・ま、またね!?」

光の向こうに消えていくアキをしっかりと目に焼き付けるように涙を拭った。

そして完全に輪郭がぼやけた所で紀美野は大きな声で、・・・

 

「必ず!必ず会おうね!!」

届いたかどうか分からないが確かに想いが伝わった。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

消えゆく少女とそれを見届ける少女を見守りながら静かに空を見る。

遠くからサイレンの鳴る音が聞こえる。

あまり長居はできないな。

そう認識したライダーは静かにその場を去ろうとし・・・・・・

 

「あ、あの!」

紀美野の声によって足を止める。

「・・・・・」

 

顔だけを後ろの少女に向けて聞き耳を立てる。少女は暫しどのような言葉をかけようか迷い、・・・・・・決意を決めたように顔を上げた。

 

「あ、あの・・・・・・その、・・・・・・ありがとう御座いました。」

「・・・・・・」

 

「アキを、・・・みんなを開放してくれて、助けてくれて、本当に有難うございました。」

 

そう言って頭を下げる紀美野。

それを見てただ無言を貫いたライダーは再び歩みを進めてオートバジンに手をかける。

 

するとその形は変わりバイクとなっていく。それに跨り何かのメモリを装填しそのバイクの形が更に変わる。

前輪とマシンの前半分が黒く、降臨が無く下半身が赤くなったバイクへと姿が変わる。

 

そのままそのマシン、『ハード・タービュラー』に乗り空を翔けた。その時、さり気なく背を向けたままで右手を上げ軽く振った。

飛び立ったライダーの背を見て彼女はもう一度、「有難う。」と呟いた。

 

○12

「・・・・ハァ、・・・・ハァ、・・・・ハァ、・・・・ハァ、・・・・・・・・・・・・クソッ!!」

暗い森の奥深く。敗走しているジェネラルド博士は忌々しげに紡ぐ。

原因は至って簡単だ、自身の最高傑作である結晶がいとも容易く攻略されオマケと言わんばかりにあの黒い戦士に全てを奪われたのだから。

彼の執念は途轍もないものだろう。

「だ、だが、この完成された技術を他の研究者に伝えてそのスポンサーになってくれれば再び権威を取り戻せるだろう!」

ダメージを受けた部位を手で押さえて必死に森を抜けようとする。

「ふ、ふっふっふっふっふ!今に見ておれ、必ずや結晶の技術を確立させてあの黒い戦士・・・をッ――――!!」

愉快そうに嗤いを上げたままのジェネラルドの胸から突如光の刃が突き出た。

そのまま大量の血を吐き出しジェネラルドは地に倒れる。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ふぅ、漸く片付いたか。」

林の奥から声が聞こえる、その声は男性の声であり吐血している老人に歩み寄り語りかける。

吐血と痛みで震えながらなんとかそちらに顔を向けて、・・・・老人は驚愕したような顔でその声のした方向を見る。

そこには白衣を着た黒髪の長身の男がジェネラルドを冷たい視線で見ているのだ。

その端正な顔立ちは女性の視線を釘付けにするだろう、しかし今この場に至ってはその無表情の顔は恐怖を駆り立てている。

ジェネラルドは出せる最大の声でこういった。

「待って、待ってくれ!・・・・・・・・・・・・・・・・・・私は既にこの結晶の形を完成させている。だから他の賢人会議のメンバーにはdッッッ!!!??」

ジェネラルドが言い終わる前に魔法の槍がジェネラルドの足、腕、腰、胸、と刺さっていく。

「がッアァァァァァァァァァァァァaaaaaaaaaaaaaッ!!!」

あまりの激痛によって絶叫するもその声は不自然な程の静かな森の中で響かなかった。

「安心したまえ、もう結界は張っている。外からは決してこちらの声が聞こえることはない。」

致死量の血を流し続けている老人に優しく声をかける。

だがその声には安らぎを感じず淡々と仕事をこなしているかのような機械的な声だった。

そして、・・・・・

ボウッ・・・・・

声すら発せなくなったジェネラルドの肉体に火を放つ。

激痛により恐ろしい形相となった顔は只管に男性を睨んでいた。そんなジェネラルドに男性はこう告げた。

「貴方の築き上げた『結晶』なのだがね、こちらとしては余り価値を見いだせなかったのだよ。今回のような大掛かりな実験をしたにも関わらずできたのが試作品、・・・しかもそれを外部のモノに破壊されてしまった。これ以上我ら『賢人会議』に貴方を在籍させる必要は無しと結論付けてな・・・・・・・・・・・・・・・・・・・もう貴方には居場所がないのだ。諦めてくれ・・・・・・・」

そういって彼は更に火力を上げて火葬に勤しむ。

先ほどの戦闘に魔法を上手く扱えないジェネラルドは必死に体を動かそうとするも血が流れて動きがままならないまま苦しみぬいて、・・・・・・・・・・・・そして完全に行動が停止した。

「・・・・・」

始末が完了したことを確認して彼の焼死体に残っていた結晶を取り出す。

あの炎に焼かれながらも耐えたという事実は評価してもいいだろうと男性は結論づけてその場を立ち去ろうとする。

魔術を発動して転移を行おうとして軽く後ろを振り向き、

「――――仮面、・・・・ライダーか。―――」

そう言い残して今度こそこの場から消え去った。

―――――――――――後には何も残らず焼死体も灰から塵へとなり風に吹かれて何処かへと吹き飛んでいった。

 

こうして、この物語の重要人物は人知れずに舞台から降りていった。

 

 

○epilogue

警察襲撃から数日後、―――連続集団失踪事件は幕を下ろす。

消えた少年少女の遺体は発見できずに終わったが警察等はこれを愉快犯による連続殺人事件として断定、保護された生存者の少女の話によると数人の男達に追われたがとある人物によって助けられ難を逃れたという。犯人と思しき逮捕された白衣を着た男達の身元を調べると共に行方をくらました老人を操作するというニュースが全国に流れ一時期有名になった。

それと同時に山奥に魔法を使用した跡が発見され警察では魔法による戦闘が行われたのではと報告されたがそれは大した問題とならず集団失踪事件のみが昼夜問わず世間を握わかし続けた。

 

「・・・・・・・・それじゃ、私は行くから。」

大きなバックを持ち和樹の正面に立つ紀美野。

今回の事件によって警察からの保護を受けた彼女だったが大きな事件だったため世間では彼女の名前と住所が広まってしまいこの街では生きづらくなってしまった。

 

そのため家族で遠くの県へと行き余熱(ほとぼり)が収まるのを待つということになったらしい。

「・・・・そうか、・・・・・あのさ、なんていうか。アッチに言っても元気にね。」

和樹は頭を描きながらそう告げた。

 

引越しの日に無理やり押し入って別れの挨拶を告げるただそれだけだったのだが、暫く塞ぎがちだった紀美野は微笑を浮かべていた。

「ホント変な奴だよなお前。・・・・・・・・私と会話したのだってあの時だけじゃないか。そんなヤツに別れを言いに来るなんてさ。」

「別にいいだろ?それにこのまま送ってったらなんだか何時までも引きずっていくだろうと思ったし。」

「は?余計なお世話だよバァカ!」

 

呆れたような態度で紀美野は和樹を罵倒する。

しかしその表情に苛立ちは無くどこか楽しんでいるようだった。それを察した和樹も「ひどいなぁ。」と戯る(おどける)ように言う。

「・・・・・・・・・・・・あのさ、ちょっと質問だけどさ・・・」

紀美野は少々下を向き言葉を発する。

 

「もしさ、お前が訳の分からない・・・・・理不尽な事に巻き込まれたらさ。どうする?」

戸惑いながらもコチラを見ながら言う紀美野。和樹はそんな彼女の質問に暫し時間をおき、・・・・・・・

 

「どうしようもないだろうな。」

「・・・・・ぇ?」

 

特に何も感じないというように語る和樹に紀美野は声を上げた。それでも尚話を続ける。

 

「世の中にはさ、交通事故で死んでしまう奴もいるだろ?それだけじゃない。持病でベッドから起き上がられずにそのまま死んでいく奴もいる。それだけじゃない、変に言いがかりつけてそのまま痛めつけられる奴もいる。」

和樹は言葉を紡ぎながら紀美野を見ていく。

何を言おうとしているのか理解出来ていない彼女は困惑して聴き続ける。

 

「要はさ、そんな理不尽なことを常に考えていてもどうしようもないんだよ。そんなもんは他人の気まぐれや運の無さによってどうにでも変わってくるんだから。だから今を一生懸命に生きようとするんだろ?何が起こるか分からない、そんなもんだよ。」

「・・・・・・」

紀美野は何かを言葉にしようと口篭るも発せずに俯く。

 

こんなものは感情論だ、それを理解している。だがそれでも紀美野はどうにも納得できなかった。

「・・・・・・・・・・・・あのさ、あの時の最後にアキが来たんだ。」

紀美野が口を開く、その紀美野の言葉をただ静かに聞く。

 

「なんて言えばいいのか分からないと思うけどさ・・・・・あの時、アキは笑ってたんだ。」

「『ありがとう』って言ってたんだ。・・・・・・・・ただ傍で泣いてただけなんだ、でもそんなのでも救われたのかな。」

「・・・・・・どうだろうな。でも、そうやって笑えたのなら・・・きっと救われたんだと思うよ。」

「――――――そっか。」

紀美野は空を見上げながらそう呟く。和樹は同じく空を見上げて視線を逸らした。

 

一筋の涙を静かに流す紀美野から逸らすように―――。

 

その後、互いに言葉を交わさず時間が過ぎ、紀美野の母が迎えにきた。

それに促されて紀美野は母の後についていく。

和樹はそれを静かに見送り、そして姿が見えなくなるまで手を振った。

ほんの、ほんの少しの気まぐれが彼女から大切な友達を奪った。大した大義を振りかざすでもなく下らない理由で人の命が失われていった。

「――――――――ホント、どの世界でもそう奴等はいるもんだな。」

そう小さく呟き拳を強く握り締める。

失ったものはもう戻らない。

ならば、今あるものを全力で守り抜こう。俺は、俺にはその力があるんだ。

だから、もう一度立ち上がろう。

異世界の旅人としてではなく、この世界で生きる一人の人間として、・・・・・

 

この日よりとある噂が日本全国で語られるようになる。

それはどことなく現れ悪事を働くモノ達を倒すというまるで正義の味方のような噂。

鎧を纏い仮面を被り、日夜誰かの涙を拭い続ける戦士、・・・・・・・・仮面ライダーの噂が。




というわけでほぼ短編の話仮面ライダーものでした。
本当はこれを短編としてあげたかったのですが・・・・・文字数が4万文字をオーバーしてしまいこのような形で上げさせていただきました。
この話を作り出したのが去年の12月、そしてできたのが2月の1日という約1ヶ月かかった作品です。
・・・・・・・・・・・・・・・・の割には下手だなとは自分でも思いますが(笑)
この作品では仮面ライダーtheFirstや仮面ライダーWをイメージして書いておりますのでそちら側の曲、(例えばRider○hips)などの曲を聞きながら見ても面白いかと思われます。(実際それらを聞きながら執筆してましたし

それではここで失礼させて頂きます。
本当に有難う御座いました。

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