戦争をやめましょう。帝国軍の完全消滅をもって!ーいや、ダメでしょ。 作:依存
それでもお付き合いいただけると幸いです。
よろしくお願いいたします。
「
「ぇひっ!?静かにしてっ!捕まっちゃう!」
いつものお姫様らしくない悲鳴をあげて、身を隠そうとしている
その様子を見ている彼は笑う。
「もうー心配性だね
そう言い、彼はキッシングの顔を覗き込もうとする。
彼女の伏せた顔を覗こうと姿勢を低くするが、彼女はそれを許さない。
「絶対大丈夫じゃない!」
「怖くないよー?」
「怖い!」
「じゃあ、怖くなくなるようにしようかー」
そう言って強引に彼は彼女の手を握り締め、彼女を牽引していく。
キッシングはなにも言えなくなったようで、俯き、彼の背中に隠れるようにして、彼に追随する形で足を前に出す。
それを見た彼は、微笑み、そしてお姫様の速度に合わせて前進するのだった。
彼らの居る天帝国の中心である帝都。
そこは毎日沢山の人で賑わっている。
天帝国と対立している国の名前をネビュリス皇庁といい、目下100年に渡る戦争を繰り広げ中の<戦時>であるが、この街には戦争のせの字すら見えない程の平和ぶりであった。
城壁が鉄で出来た近代的城塞都市だからこそ、中に居る人間は戦争を忘れられるのだろう。
もしかしたら、彼らは戦場を一切知らないのかもしれない。
内部でテロや暴動の尖兵を赦さないほど徹底したセキュリティシステムは、マスコミが100年の歴史で一人も"憎き敵、星霊使い"を侵入させたことがないと唱っている程である。
侵入したとしても各セクション毎に設置された監視カメラや対星霊シールドの無料配布及び治安維持部隊の設置等、絶対に"敵である星霊使い"を逃がさないという気迫が伝わってくる。
そんな"星霊使い"を倒すシステムが張り巡らされた帝都を、二人の"星霊使い"が白昼堂々と歩いていた。
少女の名前をキーネと言い、青年の名前をラーイと言った。
そして二人ともれっきとした"帝国人"であり、"星霊使い"ではないただの人間として、生まれたときから登録されていた。
そして事実、星霊使いの身体から発せられる星霊エネルギーは、今、彼らの身体にないのだ。
__________
帝都の監視を普通に受けて、堂々とゲートを抜ける。
"帝国での"俺の名前の一つ、ラーイ。
キッシング・ゾア・ネビュリス9世の"帝国用"の戸籍の二番目の名前、キーネ。
ラーイ、キーネはどちらも帝国領土内で生まれ、生まれてからも帝国で育った、れっきとした帝国人として戸籍が存在する。
いままでは帝国外辺へ『留学』していたことへとなっており、案外簡単に入れた。
もし、ネビュリス皇庁の人間だとバレたら、帝都にいる"戦闘狂"達と戦闘だったから、危なかった。
「なんか目がゴワゴワする。変。」
そんな見えない脅威にビクビクしながらも可愛い少女、キーネ(キッシング)は俺に声をかけてくる。
「外すなよー、眼鏡」
さて、何を隠そう、キッシングの星霊エネルギーの源、星紋は彼女のその瞳に刻まれているのだ。
ちなみにこの星霊エネルギーの源、星紋は千差万別、十人十色、同色皆無、つまり一人に付き一点物の形、色をしている。オーダーメイドである。
そして、星紋の位置も人それぞれだ。
俺の星紋は白だし、位置は左太腿から左腰にかけての物。まあ、普通だ。
だが、彼女は別格。
キッシングはネビュリスの純血種。
初代ネビュリスは、星を全て火の海に変えるほどの力を持っていた。
彼女はそのネビュリスの血を引くため、端的に言うならアビリティが物凄く高い。
瞳の中にある。それ自体が異常な星紋。
溢れ出る星霊エネルギーを抑えるための眼鏡は、キッシングのためだけに開発されたものだ。
おおよそ十二年。あの日、キッシングが産まれたときから研究員が開発していた最新型の眼鏡だ。
十二年に渡る時間と、何十人という数の研究員、そしてそれをバックアップするための資金。
ーーーどれをとってもたかが眼鏡一つに掛けるモノではない。
ちなみにノーマルだとしても、エネルギーが抑えられなくて暴走しちゃうくらいなので、普段は眼帯をしているのだけど眼帯は普通に外を歩くには怪し過ぎるので、却下した。
というか眼鏡かけたキッシングがくそ可愛い。え?どうでもいいって?気にするなよ。
まあ、そのメガネのお陰でキッシングは帝国の星霊検知器の検査を無事に抜けたのだ。
え?俺?
俺はサ□ンパスみたいな星霊エネルギーを隠すためのシールを貼って、普通に抜けたよ?
コイツ(サ□ンパス)もなんか凄い叡知の結晶らしいね。百枚造るのにかかるコストは中規模国の1年の国家予算並らしいよ。
ゾア家の管理備品に埋もれてたからちょっとの間借りただけ。
使いきりだから、返せなさそうだけど、、、
まあ、知らん。
さーてっと!ここまで来たし遊ぶぞー!
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帝都第二セクター、帝都最大の商業区と呼ばれている場所に向かうべく、俺達は意気揚々(一名は全く意気揚々としていないが)と大通りを進むのであった。
周りに人が増え、歩くのもやっとのような道。
背の低いキッシング__キーネ__はすぐに埋もれて見えなくなりそうなほどであった。
手を繋いだまま、自分たちの目の前にいる人を押し退ける。人口密度の高い帝都の商業区で当たり前の光景。
だが、それすらも一介のお姫様には荷が重すぎたようだった。
「.............................おしまい。」
「キッシング、、、まだ続くよ。」
苦笑いと共に彼__ラーイは隣の少女と歩みを止める。
「もう帰りたい」
「ホームシックかよ」
「そう」
「そうか。残念。甘い食べ物沢山買ってあげるよ?」
隣の少女___キッシング、、、もといキーネは、ちょっと悩んだようだった。
「............................いい。」
「可愛いストラップもあるんだ。クマさんのお人形なんだけどいらない?」
「...................」
返事はなかった。そんな彼女に対して、彼は勝ちを確信すべく、王手となる言葉を彼女に放った。
「新しい拳銃も欲しいよね?」
と
「いらない」
「いや、けんj」
「いらない」
「いやいや、小さめの銃なら欲s」
「いらない」
「ライフルなら」
「いらない」
「対戦車ロケッ」
「どこに売ってるの?それ。」
「核ミサイr」
「いらない」
「可愛いフォルムのものとかは?」
「可愛いの基準は貴方と私で違います。」
「せ」
「いらない」
「み」
「いらない」
「」
「いらない」
彼は、彼女に負けたのだ。
彼は、彼女の返答に、ほんのちょっと。ほんのちょっとだけ、傷ついて。
ほんのちょっとだけ_____泣いた。
号泣だった。そこは主要道路でも市場でもなかったのが幸いだったが、それでも周りの人達はほんのちょっとだけ距離を置いた。
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結局キッシングは彼の"お買い物"に付き合うことになり、彼の気分が台風の渦中から雲一つない晴天になったのは、余談なのかも知れない。