戦争をやめましょう。帝国軍の完全消滅をもって!ーいや、ダメでしょ。 作:依存
遅い更新ですので、もう一度最初から読み直して頂けると物語も面白いかと思います。
では、どうぞ。
帝都第二セクターにあるレストラン、パウダーベースには、沢山の人がくる。
若いカップル、子供連れの幸せそうな家族、戦場帰りの独身男性、独身女性、ご年配の方々などだ。
彼らもまた、毎日会話を重ねて日々をより充実したものへと変えていくのである。
さて、つまり何を言いたいのかというと_____
________ここに新たな"若い"カップルが来客したってことだ。(まったくもって話に脈絡は無いけれど!)
店のドアに吊り下げられたベルが、チリンチリンと可愛げな音をたてて、来客を告げる。
「いらっしゃいませー!」
一番近くにいた店員はマニュアル通りの対応をするが、彼の顔をみて、直ぐに対応するのを止めた。
それが、この店の暗黙のルールでもある。
何故かって?
何故なら、このお店にはあの彼女がいるから_____
「キーネ、ここだよここ。はいるよー」
「……………うん」
キーネ(キッシングの偽名)を連れてきたこのお店は、『パウダーベース(火薬基地)』。
創業以来一度も赤字になったことがないという、ここ帝都にあるレストラン。
子供から大人まで、カジュアルな格好で気軽に入ることができる憩いの場となっている。なかなか居心地がいい。
サイゼ●アみたいな感じだね!サイゼ●ア知らないけど。
異世界言語かな?((((
扉を開けて、キーネと一緒に中へと入る。
店内BGMと人の喧騒が、情報として脳内に伝わってくる。
「いらっしゃいませー!」
カウンター周りで作業していた店員さんに声を掛けられたが、その後の言葉は続かなかった。
店員さんはカウンターの隅の方へと戻っていったのだ。
キーネと一緒に待っていると店の厨房辺りが騒がしくなり、カウンター奥でエプロンが舞ったのが分かった。
そして一人の少女がカウンターの奥から出てくる。
「わ--!来てくれたの!!!?嬉しいよー!!!」
人懐っこい笑みを浮かべ、こちらに向かってくる元気な少女。
彼女の赤色の髪は、ポニーテールに束ねられ、ボリュームのある髪は彼女の動きと共にふわりと宙を舞う。
「やあ、ネネちゃーん。遊びに来たよー」
キーネに近付きそうな不審な輩が居ないかを横目で確認しつつ、赤髪の彼女__音々に手を振る。
彼女は、”元”天帝国防衛機構Ⅲ師・第九○七部隊所属の機工士であり、士官学校を首席レベルで卒業し様々な論文を発表すると言う偉業をなしとげながらも、十四才で軍を休隊するというなかなか見ることの出来ない不思議な経歴を持っている。
論文を発表する過程で知り合ったが、お互いに銃器や兵器開発等に知識があることで仲良くなったのである。
「久しぶりー!元気だったー!?」
「お陰さまでー!そっちは元気そうだね」
「勿論!イスカ兄が居なくなっちゃったのは残念だけど、後ろばっかり見てられないもん!」
「…………太った?」
「……やけ食いなんかしてないもん!十五キロも増えたとか、そんなことあるわけないじゃん!ラーイくんひどっ!」
「十五キロも増えたの?食べ過ぎじゃない?」
「…………乙女に言うセリフじゃないっ!」
「あはっ、ごめんごめん。で、席どこ座っていいのー?二人なんだけどー」
「二人?」
会話に夢中になっていた音々には後ろの小さな女の子は見えなかったらしい。周りをキョロキョロと見渡す。
「そうそう。キーネって言うの。可愛いでしょ?」
そう言って彼は後ろに隠れるようにしていたキーネ(キッシング)を前に出す。
「キーネー?挨拶しよーよー?」
帝国人が嫌い、もしくは人見知りが発動しているのかキーネ(キッシング)は顔を背けてラーイの左腕に己の未成熟な身体を押し付けるようにして、音々の視線から逃れようとする。
「…………」
「キーネ?」
その仕草があまりにも可愛かったのだろうか、音々は目を輝かせた。
「めっちゃ可愛いねっ!なにこの子!……もしかして彼女?」
「いや、違うよ。預かった近所の子」
「…………」
"近所の子"扱いが嫌だったのだろう。キーネ(キッシング)はしがみついている左腕に噛みついた。
彼の左腕に痛そうな噛み痕が出来た。
「キーネちゃんとラーイくんって仲良いね!あ、席は自由に座ってねー!」
キーネの発する”ザ・お前嫌いオーラ”を察したのか音々は一旦会話を打ち切った。
「……………お前嫌い」ボソッ
「どしたのキーネ?」
最も、キッシングの傍に居た男はその嫌いオーラは分からなかったらしく、普通に「音々ちゃんは忙しいんだろうなー」みたいな雰囲気を醸し出していたが。
席についた彼らは適当に注文を交わし、普通に会話をしていた。
「この女嫌い」
キッシングの放ったセリフは、この女呼ばわりされた音々にも聞こえていた。
それもそのはず 、音々はキッシングの目の前に居るのだから当然である。
わざと聴こえるように言ったのか、無視しているのか。
この場合は両方だろう。負のオーラ(敵意)がタダもれである。
「あははー」
渇いた笑い。顔も引きつっていたが、彼女が齢一四であることを考慮すればまあまあ正しい対応であった。
「"小さくて"可愛いのに。言葉"も"可愛い方が良いよ?キーネちゃん」
「ご心配なく。私"は"ちゃんと可愛いので。」
お互いに煽ってるとしか思えない台詞。
キーネ(キッシング)は帝国人が嫌いなのでともかく、音々も煽ってるのは中々の(危険的な)光景だった。
その仲裁に入ろうとしたラーイは普通に睨まれて蚊帳の外に追い出されたため、諦めて食事を続けていた。
「あ、美味しい…………ヒッ!?
……ごめんなさい」
_______________________________________
「ほら、帝国人は野蛮です。」
お店から半ば追い出されたようにして出てきたキーネ(キッシング)は ちょっと、、というか、かなり怒っているんだけどどうしたらいいのかなぁ?音々には謝ってきたけど大丈夫かなー?
呪詛吐いてない?…いつものことだけど。
いつもでも困るな。たまにこうなるけど。
なので、対処法は心得てる。
周りにあまり通行人のいないような路地へとキーネを誘導する。
勿論、いかがわしいことをする訳ではない。
怒りを発散させてあげるだけなのだよ。
あ、今のオン叔父さん(笑)っぽい。っと。路地に入ってまあまあな距離来たね。
「キーネ、そんなことないって。帝国にも良いところあるから!」
「そうですかじゃあ殲滅して差し上げませんと」
「キーネ。それはダメ」
路地から出ていこうとするキーネの身体を右腕でホールドする。バタバタと手足を動かしているけど、男の大人(男子高校生)の筋力に勝てるはずもない。
「離してください!殲滅、殲滅したいの!」
「離せる訳ないだろ!俺が困るの!いやマジでオンに怒られるから止めて!」
駄々っ子め!可愛いから許すけど!キッシングはマジギレしてるなー。
可愛い顔が歪んじゃってるよ?どんな表情も可愛いから、別に良いんだけど。
「……………あっ!」
キッシングは間抜けな声を出す。
と同時に眼鏡の奥に秘められた星紋が輝きを増し、紫に輝く。
キッシングが星霊術を行使したのは誰の目にも明らかだった。
宙に棘の形をした物質が形成され、俺に向かってくる。
星霊の自己防衛。それがキッシングの不安定な感情によって暴発したのだろう。
さっきの『……あっ!』という動揺した声は意図してなかったからこそだろう。
若い星霊使いは誰もが一度は経験することだ。
おねしょのようなものだから。
キッシングは若干感情の起伏が激しいからよく暴発するのだろうが、キッシングの術行使は初めて見た。
キッシングの星霊は『棘』。
純血種、しかもゾア家の秘蔵っ子。威力も正確さもそこら辺の雑兵とは比べ物にならない。
例えるならナイフ一本で銃を持った完全武装兵士と百メートル以上先から闘うようなものだ。
要するに生まれつき持っているポテンシャルはかなり違う。
でもね。キッシング。
ナイフ一本でも、玄人なら銃を持った素人にも勝てるのだよ。
___あ、今の台詞格好いい。
っと。キッシングの放った星霊は八本の棘となって俺に襲いかかる。
キッシングは『しまった!』という顔をしているが、その仕草も可愛いと思えるほどに余裕がある。
キッシングを見るのを止めて目標物に目を向けつつ、地面に落ちている煉瓦片や石をサッカーのリフティングのように足で弾いて宙に浮かせる。
キッシングの柔らかい身体を握っていた右腕を回して、その浮き上がった破片をキッシングの星霊『棘』に向けて放つ。
右側二基を石で撃ち落としたのと同時に、残りの空中の棘は左腰にキャリーしていた小型拳銃をドロウして撃つ。
減音器内蔵型の銃から乾いた音が六回して、棘が消滅する。
はい。おしまい。
キッシングは、こっちを見て、自分の星霊が造り上げた棘のあった場所を見て、またこっちを見ながら眼をパチパチとさせた。
俺がカッコ良かったのかな?惚れた?
「……え、、」
「うん、どうしたのキッシング?」
「『棘』を落としたの?」
「うん。」
「………………………きもっ。」
………キッシング。嘘はだめだよ、嘘は。
こんなイケメン紳士がキモいわけ……ない。