時間作ってチマチマとですが書き込みます!
古いアルバムを眺めながら、赤毛の青年は思い出す。自分がまだ小さな少年の頃、ある宴会の場で初めて出会った、オレンジ色の髪の少女の事を。
久しぶりに帰省した夫婦達の歓迎会……と言う名の宴会に出席した少年は、並べられた高級出前や各家庭の特色が色濃く出た料理を腹一杯食べた後、暇を持て余していた。
大人達に混じって暇を潰そうにも、右を見ればビールや日本酒を片手に下らない話で盛り上がっている男達。左を見れば話が四転六転している女性達。
どちらにも入りにくく、どちらにも入りたくなくない。
「帰りてぇ……」
少年の率直な感想がため息と共に漏れた時、視界の端に何かが映った。
そちらに目を向けると、料理を運んできた手提げカバンや帰省した夫婦の荷物が集められた場所に、小さな人影が見えた。
オレンジ色の髪を短く切り揃えた、近所では見ない女の子。帰省した夫婦の子供。
(名前は確か……りつか。だったな)
藤丸
森少年が一番歳が近いからと近くに座らされたが、立香少女は母親の影に隠れてしまった上、共通の話題も見つからなかったため、今の今までろくに会話も出来なかった。
(……あいつ、あんな所で何してんだ?)
自分に背を向けた状態──さらに詳しく言うなら、荷物が並べられた壁の方を向いた状態──で俯く立香少女。
少女も自分と同じく大人の仲間に入れないから暇だろうに、部屋の隅っこでうつ向いて何をしているのか。森少年は気になって仕方がなかった。
「よぉ。何してんだ?」
「……ふぇ!?」
森少年は別に驚かせるつもりは無かったのだが、『何か』に集中していた立香少女は突然声をかけられ、手に持っていた『何か』を畳に落としてしまった。
「あ、わりぃ……って、これ『FMO』じゃねーか! お前のか!?」
「う……ううん。これはおとうさんの」
『FMO』『フェイント/夢想オーダー』は、大人気ノベルゲームのフェイントシリーズのキャラを自分で操作できるゲーム。
キャラごとに用意された攻撃モーションや大迫力の必殺技で雑魚的を吹き飛ばせる爽快感。難易度を上げれば勝利条件が厳しくなるやり込み要素。子供から大人まで楽しめるゲームである。
「はぁ……こっちはゲーム屋が遠くてよ。一人では中々行けねぇんだ。今度の誕生日に買ってもらおうかと考えてたんだよ!」
「えっと……森お兄ちゃんも……やる? おかあさんの
「いいのか! やろうぜ!」
こうして、共通の話題を見つけた森少年と立香少女は、仲良くゲームで遊ぶことになった。
「すげぇ! キャラめちゃくちゃいるじゃねぇか!」
「うん。えっと……りつかは信長ちゃんで」
「それじゃあオレは……お、名字が同じ奴がいるじゃねぇか。しかも鎧がいかす! こいつに決めた!」
……
「殿様? こいつ信長の事を殿様って言うのか」
「とのさま……カッコいいね」
…………
「森にぃだいじょうぶ!?」
「あぁ! 殿様の敵は皆殺しにしてやるよ!」
………………
「たすけて森にぃ!」
「殿様!? すぐそっちに行くぜ!!」
………………
「かったー!」
「やったな殿様!」
……………………
時間を忘れてゲーム夢中になっていたが、気付けば宴も終わりの様子。酒盛りしていた場所には酒瓶に囲まれながらいびきをかく男や、うつらうつらと船を漕ぎかけている男性。今の今まで話題が尽きなかった母親達は外の暗さに驚いていた。
「立香。もうすぐ帰るから片付けなさい」
「あ……はーい。……もっと遊びたかったな」
「もうそんな時間か……ゲームあんがとな。また一緒にやろうぜ!」
「! 約束!」
「おぅ。オレと殿様の約束だ!」
小指を絡ませ、子供らしくゆびきりげんまんをする二人。その仲睦まじい約束を眺めていた母親は、娘に新しい友達が出来た事を喜んでいるように見えた。
それから、二人は帰省した時は仲良く遊ぶようになったのだが。
「森にぃただいま!」
「おぅ殿様じゃねーか! 久しぶりだな!」
気付けば森少年は立香少女の事を「殿様」と呼ぶのが癖になり、立香少女も「ある日」までは特に気にせず過ごすことになったという。
「立香」と、彼が少し気恥ずかしそうに彼女の名前を呼ぶようになるのは、この時から数えればまだ大分先のお話。ひまわり畑で抱き上げられてから、もう少しだけ先のお話。
書き込み頑張ります!