アイドルとは即ち決闘者   作:ムーさん@南条P

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遅くなりました(土下座)
お、お命だけはお助けください(震え声)


第10話 かっとビングだぁ!!

 

 

「さーて、準備は整った訳で、これからステージ攻略の時間だよっと!」

 

手札とフィールドを眺めながら紗奈はぺろりと緊張で乾いた唇を舌で舐め、不敵な笑みを浮かべる。

 

「まずは装備魔法《団結の力》をビックバイパーに装備!団結の力は自分フィールドのモンスター1体につき800ポイントの攻撃力をあげるカード!これでビックバイパーの攻撃力は3200上昇するよ!」

 

「おー!めちゃくちゃ上がりやがります!」

 

「すっごーい!!」

 

みるみるうちに膨れ上がる攻撃力に、年少二人は目をキラキラとさせて驚く。

そんな無邪気な二人に紗奈はにこっと笑いさらに続ける。

 

「それだけじゃない!オプションの攻撃力は、フィールドのビックバイパーの攻撃力と同じになるんだよ!

これで私のフィールドのモンスター4体とも攻撃力は4400!!」

 

「そ、そんな攻撃力!やべーでごぜーますよ!!」

 

4400、ホープの攻撃力を容易く越えてきたこの状況におろおろと観客の仁奈は薫の顔を見る。だが、彼女の顔はまだこの事態をどうにか出来ると思っていたのだ。

 

「バトルだ! ビックバイパーでホープに攻撃!!」

 

「その時にホープの効果発動!オーバーレイユニットを1つ消費して、その攻撃を無効にするよー!ムーンバリア!

そしてぇ、モンスターの攻撃が無効になったから、ホープ剣カウンターが1つ乗って、ホープの攻撃力が3000にあーっぷ!」

 

「けど!それじゃあまだまだビックバイパーたちの攻撃力には及ばないよ!オプションで第2打!!いっけぇ!!」

 

「それも通さないよー!さっきオーバーレイユニットで墓地に送った達磨落師を除外して、ホープの効果発動!オプションの攻撃を無効にするでございまーっ!」

 

「うっそ!マジ!?」

 

2度目の攻撃も無効にし、ホープ剣スラッシュの効果で攻撃力を3500まで上昇させた薫はニヤリと笑う。

しかし、そんな薫の表情に紗奈のチャレンジャー精神が高揚していった。

 

「なら、もう一度!2体目のオプションで第3打!!」

 

「ホープ剣スラッシュをオーバーレイユニットの代わりで墓地に送って、攻撃を無効にするよーっ!まだ、通さないもん!!」

 

「くぅ!硬いなぁ!でもまだまだ、ホープの攻撃力を上げてた装備魔法はいなくなったし!最後のオプションで第4打ぁ!」

 

「最後のオーバーレイユニットで、効果発動!その攻撃を無効にするもん!!」

 

ホープに残った最後のオーバーレイユニットも惜しげなく使い、このターンの攻撃を全て防いだ薫はふぅ、とそこで息を大きく吐いた。

4000を越える攻撃力の怒涛の4連打、318プロにいる北条加蓮でさえ、そう易々とは出来ない芸当である。それを目の当たりにした緊張は計り知れないだろう。

攻撃を終えた紗奈は手札から一枚を伏せてターンを終える。

 

「か、かおるのターンっ!!ドロー!」

 

自分のターンを迎えたものの、ここであの布陣をどうにかしないことには、薫に勝利はない。

頼みの綱であるホープにオーバーレイユニットはなく、自身の効果で次に攻撃を受ければ無条件で破壊されてしまう状態…、一方の紗奈はオプションとビックバイパー4体のなかから2体でも攻撃を通せば勝てるという状況。手札の枚数こそ悪くないものの、それでも誰が見ても紗奈が有利と思うだろう。

 

「か、薫はカードを2枚…伏せるでございまー…す」

 

「なら、私はリバースカードを使うね。本体狙いで勝つ、なんてさせないよ!《安全地帯》発動!対象はビックバイパー!これでビックバイパーは戦闘、効果で破壊出来ないよ!」

 

「っ、ぅ…た、ターンエンド…!」

 

さっきまでとは打って変わって弱気な声を漏らして宣言する薫。さっきとは状況が大きく違うからだ。

紗奈のオプション軍団は、フィールドにビックバイパーが存在しなくなったとき、一網打尽に破壊される。だから薫はビックバイパーを破壊するだけで突破口を開けるはずだった。

が、紗奈の発動した永続罠、《安全地帯》はそれを許さない。このカードは、フィールドのモンスター1体を対象に、そのモンスターが戦闘と効果では破壊されなくなるようにするカードだ。これにより、《地砕き》や《地割れ》のようなモンスターを簡単に破壊してしまえるカードによる強引な突破は出来なくなったのだ。

 

「ふふーん♪さぁて、行くよ!伏せカード3枚、今度も防げるかな?」

 

「ぅ…!」

 

伏せられている3枚のカードをチラリとみれば、また乾いてきた唇を彼女は舐める。安全地帯がある限り、サンダーブレイクや、ミラーフォースのような破壊効果での除去…さすがにミラーフォースであればオプション軍団が壊滅するが、それでもビックバイパーは残る。

その状況、弱気に振る舞う薫を見て、紗奈は攻め時と確信した。

 

「行け!ビックバイパー!攻撃だ!」

 

「その攻撃に、リバースカードを発動!《星遺物を巡る戦い》!」

 

「えっ!?」

 

紗奈が攻撃し、ビックバイパーが光弾を放とうとした瞬間、薫のフィールドにいたホープが姿を消した。

そして、それと同時にビックバイパーの攻撃力が、オプション軍団の攻撃力がみるみるうちに下がっていく。

 

「《星遺物を巡る戦い》は、自分のモンスターをエンドフェイズまで除外して、その攻撃力だけ相手モンスターの攻撃力を減らすよ…!」

 

「なんだって!?それじゃあ、ビックバイパーたちの攻撃力は…1900!?」

 

ビックバイパーデッキの弱点の1つを突かれた形となった。

安全地帯などでビックバイパーを守っても、その攻撃力自体を下げられた場合、このデッキは攻める力を大きく削ぎ落とされるのだ。

 

「けど!まだ攻めれない訳じゃない!ビックバイパーの攻撃対象を薫ちゃんに変更、ダイレクトアタック!!」

 

「ひゃぁぁっ!?」

 

「まだまだ!オプション軍団でダイレクトアターック!」

 

「きゃぁぁあっ!?」

 

都度4回、攻撃力1900のモンスターによるダイレクトアタックの連打によって、薫のライフは風前の灯、400まで大きく減らされてしまった。

 

(…防御手段は…引けなかったけど、ブラフに伏せておこう…攻撃力は1900に下げられたけど私のライフはまだ減ってない。それに薫ちゃんの手札は次のドロー含めて2枚、私のエンドフェイズに帰ってくるホープしかモンスターはいない…なら、凌げる!)

 

「私はターンエンドだよ、エンドフェイズに薫ちゃんのフィールドにホープが戻る、だよね?」

 

「そ、そうだよー!」

 

紗奈のエンド宣言と同時に、薫のフィールドにホープが帰還する。

紗奈の思考の通り、薫の手札は少ない。ドローフェイズに引いてもたった2枚。

対して紗奈のフィールドには攻撃力が下げられているとは言え、攻撃力1900の、いわゆる下級ラインを持ったモンスターが4体並んでいる。ホープの攻撃力はそれを上回るが、オーバーレイユニットがないホープでは壁にもなれないのだ。

 

「か、かおるの、ターン…!」

 

その事は薫も分かっている。そして、この状況から勝てる道筋があることも。

しかしその為にはあるカードを引かなくてはならない。残り30枚近くある、山札の中から、そのカードを抜き取るように、選び取るように、ドローしなくてはならない。

もし引けずにターンを流せば、敗北は必至…、ドローの為にデュエルディスクに伸ばした小さな手がカタカタと震えていた。

もし引けなきゃ負ける、引けなきゃ、とネガティブな感情が彼女の手を引き留めていた。

そんな彼女を見て、仁奈が思いっきり声を上げる。

 

「かおるちゃん!思い出すでごぜーますよ!プロデューサーの言葉を!」

 

「せんせーの、言葉…。」

 

「1つ!勇気を持って一歩を踏み出すこと!2つ!どんなピンチでも決して諦めないこと!」

 

仁奈の口にする言葉を聞いて、それまでネガティブな気持ちに囚われていた薫の瞳に光が戻る。そして右手を握りしめると、もう一度、震えの止まった手でデッキの上に指を置く。

 

「そして3つ!!」

 

「あらゆる困難にもチャレンジすること!それが、せんせーの、かおるたちの、かっとビングだぁ!!ドロー!」

 

堂々と胸を張って、デッキの一番上のカードを手札に加える。そのカードを見てむふーっと薫は顔を上げた。

 

「魔法カード、《オーバーレイ・リジェネレート》発動!このカードを、ホープのオーバーレイユニットにするよ!」

 

「ホープ復活でごぜーますよー!」

 

(落ち着け、落ち着け…ホープの攻撃力は2500…オプション軍団が攻撃されても600のダメージ…いや、ホープにはあのカードが、それでもまだ半分は残る!)

 

不測の自体でも慌てず騒がず、冷静に状況を分析する紗奈はまだ耐えられると踏んでいた。

薫の場にあるカードの1枚が例えそうだったとしても、8000あるライフを削り切れはしない。そう確信していた。

 

「まだまだもう一回!装備魔法、《ホープ剣スラッシュ》!装備だよ!」

 

薫は残った手札の1枚をホープに装備させ、これで手札はゼロ。ここを防がれれば恐らく次はない。しかし、薫に恐れはもうなかった。

 

「行くよ!バトルフェイズ!ホープでオプションを攻撃!!」

 

「っ、来るか?!」

 

バトルフェイズ、仕掛けてくるならここだ!と紗奈は思わず身構える。

そして攻撃する直前、ホープの周りを回っていたオーバーレイユニットが弾けて消えた。

 

「ホープの効果でホープの攻撃を無効にするね!これでホープ剣スラッシュの効果でホープの攻撃力は3000だよー!そして、モンスターの攻撃が無効になったから!伏せカードオープン!《ダブルアップ・チャンス》!!」

 

(やっぱりか…!)

 

「モンスターの攻撃が無効になったとき!そのモンスターの攻撃力を2倍にして、もう一回攻撃するでございまー!!もう1回!ごー!」

 

「つぅ…!!」

 

2本の剣を携えたホープが宙を舞うオレンジの光に迫る。そしてその刃が光を捉え、打ち据えれば爆炎とともに爆発し、4100のダメージが紗奈に与えられる。

 

(まだ、だぁ…!ライフはまだ半分ある!薫ちゃんのフィールドには攻撃を終えたホープと、1ターン目に伏せられてから使われてない伏せカードだけ…、1ターン目に…?!違う!使われてなかったんじゃない!使えなかったんだ…!!)

 

紗奈は自分の思考の短慮を呪う。あの伏せカードは今まで使う機会が無かっただけ…そう、つまり、守っている時には使えない。言い換えるなら、攻撃している時には使えるカードなのではないかと、今になって思い当たる。

そして、そんな紗奈の考えを裏付けるように薫はその伏せカードを発動した。

 

(トラップ)発動!《かっとビングチャレンジ》!!」

 

薫が発動したカードには、夕陽に向かってジャンプする少年の姿が描かれていた。

そしてそのイラストと同じように薫は手を掲げる。

 

「このターン、攻撃したエクシーズモンスター1体はもう1回、攻撃できるよ!!ホープ、もう1回だよ!ホープ剣ダブルスラーッシュ!」

 

「っ、うぁぁぁぁっ!?」

 

団結の力の効果が下がり、より攻撃力の下がったビックバイパーはホープの振るう2振りの剣でX字に切り裂かれ爆発四散する。

その衝撃を受けて紗奈の小柄な肉体は吹き飛び、ライフが消滅する。

 

「~っ!勝ったでごぜーますよー!!」

 

「やったー!!」

 

デュエルディスクから勝利を知らせる小さなブザーの音によって、勝利を実感した2人は大きくジャンプしてハイタッチする。

その横で爆風で吹き飛んだ紗奈はごろりと仰向けに天を仰ぐ。

 

「さっすがは、伝説の決闘者の…アイドル…一筋縄じゃいかないなぁ…」

 

 

 

 

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