皆で小説を書こう配信 まとめ 作:二 貂理
二貂理ルート 【唯一の救い】バッドエンド
それは、唐突に訪れた。
考えてみれば、当たり前のこと。妖怪と人間、この世の者と、この世ならざる者。そんな立場で何事もなくかかわり続けられることの方が普通ではなく。こうして、追い出されるのが当たり前の結末。
「そもそもとして。妖怪なんて意味不明なものを『なし崩し』で受け入れられる人間の方がおかしいんだもんなぁ」
どうにか逃げ延びた先で座り込みながら、そんな当たり前のことを呟く。ただのイタチが化けイタチになって、偶然出会った人間と仲良くなり、共に暮らす。
なるほど物語としては面白みがあるかもしれない。空想の中で紡がれる世界としてであれば、それは起りえる話なのだろう。
しかし、ここは現実である。
科学の発展とともに、未知が淘汰され。
普通ではない生命体の生息を否定され。
挙句の果てにこの国においては、神ですら。その実在を疑われている。
そんな国で、「化けイタチ」なんてものが存在出来る
はずもない。
そのような「異端」を、受け入れる集団があるはずも
ない。
故に、この結末は正常だ。
わたしの存在は否定され、あってはならぬと、物理的にも概念的にも排除される。
「概念的な方をとってくるあたり、ホントに実在を疑ってるの?って感じではあるけど」
まぁ、そういうことを認識している集団もあるのかもしれない。その辺りは分からないので、気にしない。
いずれにせよ。「二貂理という化けイタチ」の存在を知る人間がいなくなった以上、もうしばらくすれば全部関係なくなるのだから。
「……まぁ、でも」
たった一つ。この結末について、「よかった」と思うことを思い出した。
「記憶を消すって方向でいってくれたから、大丈夫だよね」
最悪の結論だけは避けられた。
その事実で、妥協するとしよう。
=〇=
二貂理ルート 【わからない人】バッドエンド
「貴女は……誰ですか?」
ほんの少しの、短い言葉。だがその一言で、「わたし」という存在が大きく揺るがされる。
「二貂理」という存在を、認識できていない。それはつまり、今起こっている妖怪現象を「認識できない」わけで。「人の認識・人間の定義」によって誕生した❘妖怪
《わたしたち》という概念は、❘認識《それ》を失えば存在を保つことは出来ない。
意識が漂白されていく。内と外の境界が解け、名を忘れ、己を認識できなくなり、自らが何であったかを思い出せない。
「私は……」
この後に続く言葉を口にしたら、もう戻れない。
確証があるのに、どうしてもとどめることが出来ず。
「貴方は、誰?」
自身を認識し、定義づけていたただ一人の❘人間《観測者》。それを否定した瞬間、彼女の痕跡は消滅した。
=〇=
貂理ルート【もう頑張らなくていいんだよ】ノーマルエンド
「そっか。よく、耐えたね」
そう言って。目の前にいる彼女は、徳利を差し出す。何度も何度も干して、つい弱音の蓋を外してしまったお猪口に、その中身を注ぐ。
「君は強すぎるんだ。強すぎたからずっと耐えちゃって、耐え続けちゃって。それでも「不変」じゃないから、限界が近づいてきてた」
対面に座り、決してこちらを見ることはせず。ただ敵意のない声音を、こちらに向け続ける。
「そこにお酒が入って、溢れかえっちゃった」
一瞬の間。たぶん、飲んでるんだろう。こんな話の最中にという思いと重苦しくしないでくれるありがたさが入り混じって、余計に気持ち悪くなった。
「頑張りすぎたんだ。だから、一回休みなよ」
休めるはずがない。だってまだやらなきゃいけないことが残ってて、任されたことで、やらなきゃいけないことで。
「わたしほどに、とまでは言わないけど。ゆったり過ごして回復して。そうしないで倒れたら、任されたことはどうするの?」
詭弁だ。休まなければ倒れるかもしれない。けど休めば何も進まない。どっちも損なら確定じゃない可能性の方に、「どうせ損をするなら、自分が得する損をとらなきゃ」
自分が得をする損。
「どっちにせよ面倒になるのに、損に損を重ねる方が辛いじゃん?だから得するように損をして、」
「それから、また頑張る?」
「や、あんたみたいなのは頑張らずに惰性で乗り切る」
最低な回答が出てしまった。
「出来るわけないじゃん、そんなこと」
「そう?案外やってみれば、何とかなるかもよ?」
そんなわけはない。できっこない。無茶だ。
3つの単語が頭の中をぐるぐるして、この後のお酒の味は覚えていない。どれだけ飲んだのかも、今となっては定かではない。
「こんな味だったんだな、このお酒。いやぁ、まっずい」
久しぶりに寄ったコンビニで見かけたソレ。つい魅かれるように買ってしまったそれを飲みながら。文句を言い、笑い続けた。
=〇=
テンルート【マリーゴールド】トゥルーエンド
マリーゴールドの花言葉:「悲しみ」「変わらぬ愛」
黄色:「健康」
オレンジ」「予言」
⇒「悲しみ」「予言」
「ゴ主人―、この花何?」
「ん?あー……マリーゴールド、かな?」
帰り道。ふと見かけた花が妙に気になって、ゴ主人に尋ねる。
「ふぅん、どんな花なの?」
「目の前にあるそんな花」
「いやそういうことじゃなく。というかそれでいいなら
わざわざ聞いてない」
「ハイハイ、ソーデスネー」
蹴っ飛ばしたくなった。
「んーと……おーすげぇ、『聖母マリアの黄金の花』だって」
「いや豪華すぎない?」
「思いの外凄かったな。いやぁ、これはびっくり」
気になった花がそんな大層なモノだったとは、偶然は怖い。
「花言葉とか、何かないの?そんな花なら大層なものだったりしない?」
「ここまでくると期待しちゃうよな……えーっと、『悲しみ』『変わらぬ愛』」
「かっゆ」
「露骨にいやそうな顔をするんじゃない」
いやだって、「変わらぬ愛」って。なんだ「変わらぬ愛」って。いや異名的にはそういうのがついてもおかしくないのかもしれないけど。
「これはオレンジのマリーゴールドだから、「予言」もあるっぽいな」
「「変わらぬ愛」の「予言」をして「悲しみ」をもたらす花、ってことでいい?」
「びっくりするほど最悪の解釈が飛び出したな」
きっとヤンデレストーカーさんが「貴様に逃げ場はない」って宣言するときに使う花なんだな。マリーゴールドこわ。
「もうちょっとこう、花言葉らしいおしゃれな感じの解釈はないのか……」
「いやぁ、ちょっと思いつかないですね」
「最悪じゃねぇか」
「そういうゴ主人はどうなのさ」
「……「悲しい」出来事の「予言」をして、それでもなお「変わらぬ愛」を貫くと宣言する花?」
「それ本人たちは幸せでも周りに多大なる不運をふりまくやつじゃない?」
「間違いなく周囲の全てを犠牲にしてでも自分たちの幸福をつかみ取るやつだな」
いやぁ、最悪だ。どっちにせよ結局最悪だ。
「あれだね。わたしたちには「花言葉」なんておしゃれな物は似合わなかったんだよ」
「いやいや、もう少し何か考えてみようぜ。ほら、物書き擬きとして」
「わたしが花言葉を題材におしゃれな小説書いてたらどうよ」
「よっし、酒でも買って帰るか」
しれっと方向転換しやがった。
なんだか腹が立ったのでドロップキックしておいた。
「何すんだこのクソイタチ!」
「なんかむしゃくしゃしてやった。反省も後悔もしていない」
「よし、今日の酒盛りは俺一人でやる」
「略奪は我が流儀」
「おいバカやめろカマイタチを構えるな」
ただの人間が化けイタチ相手に優位をとれると思っているのだろうか。いや無理である。
「はぁ……さて、今日のつまみどうするかね」
「もうおうち何もなかったっけ?」
「ウヰスキー用にアイスがいくらか残ってるけど、もう寒くなってきたからなぁ」
「それは暖房付ける時期からにして、今日のところは買い足しかな?」
「だな。いっそ熱燗で行く方針で、干し貝柱とか?」
「いいねぇ、徳利の中に二三個落とす?」
「どんな香りがつくのか、結構気になるんだよなぁ」
「あ、あとあれ。おでん。そろそろコンビニで出る時期なんでしょ?」
「だなぁ。真冬かってくらいあったまるルートで行くか」
「おー、楽しくなってきたぁ」
肩を並べ、晩酌のことを話し歩く。こうして普段通りの会話をしてみれば、わたし達のマリーゴールドの解釈は自然と浮かんできた。
「これからも「ずっと愛を抱くことはなく」、「悲しみもなく」平坦に過ごし続けると、確信をもって「予言」する」
わたし達の関係性なんて、そんなところだろう。