皆で小説を書こう配信 まとめ 作:二 貂理
「ぶえっくしょい!」
あまりにも酷いくしゃみと共に目が覚めた。肌寒さを感じて、自然と体が丸まる。掛け布団を求めて足を動かすも、それらしきものは引っ掛からず……
「って……こたつ、じゃん」
諦めて目を開けると、炬燵の中にいた。布団を上げると、その中は真っ暗闇。電源なんて入っていない。
「どこのバカだ、この12月にこたつの電源を切ったのは」
「手元を見てみろ」
「ん……あ」
そこには、楕円状のスイッチがあった。試しに親指で押してみると、「切」の文字が「入」に変わる。
「なるほど、この事件すべて解決した」
「これで解決してなかったら大問題だ」
「俺にはわかったぞ、犯人が」
「オマエが知らなかったことが問題なんだよ」
全ての言葉があまりにも辛らつに打ち返される。
「というかだな、お前もお前だぞ。テスト明けに遊びに来た友人に毛布の一枚くらい恵んでもいいだろ」
「『何言ってんだこたつ様は万能寝具だぞ~?』
つって拒否したあげく自分で電源を切ったバカに恵むものは何一つない」
なるほど、確かにそんなバカへ恵むものなど存在しない。また一つ納得させられてしまった。
「しっかし、そんなバカみたいなことをこの俺が言うわけなくないか?寝落ちした友人を見捨てた冷たい男がいるんじゃないのか?」
「こたつの上を見ろ」
ようやく体を起こし、天板の上を見る。
そこには、所狭しと並べられた酒瓶があった。
「え、何、昨日ここで大宴会でも行われた?」
「4割はオマエだ」
「マジか」
また一つ、この状況を納得せざるを得ない証拠が飛び出した。ビールにワインに日本酒にウヰスキー。こんな種類ちゃんぽんして大量に飲めば、酔いもする。人間だもの。
「あれ、じゃあ残りの6割は?」
「オレが飲んだ」
なんでこいつしっかり寝巻に着替えてベッドで寝てるんだよ。ザルってレベルじゃねぇぞ。
「ま、いいや。メシにしようぜ」
「一応人の家だってわかってるか?」
「分かってる分かってる」
「はぁ……シーフードか味噌、醤油、塩」
「シーフード」
言うが早いか、円筒状の容器が2つ投げ渡される。お湯を注いで3分で完成するお手軽料理。酒を呑んだ翌日と言えば、やはりラーメンだろう。
それぞれ蓋を半分開けてお湯を注ぎ、スマホでタイマーセット。と、目の前にカップが置かれる。
「なんだ?」
「アイス。糖分補給と、出来るまでのつなぎ」
「糖分補給だ?」
「酒飲んだ翌日は、塩分水分糖分」
「ラーメンでよくね?」
「こたつに暖房にアイス」
「神の発想じゃねぇか」
そうと決まれば、否はない。エアコンのリモコンを手繰り寄せ、設定温度を2度上げる。蓋を開け、スプーンを刺して一口。
うん、至福。
=〇=
「よっし、勝った!」
「あー、今の入らないかぁ」
アイスとカップ麺を食べて、そのままこたつを出ることもなくゲームを始めた。お互いに殴り合って殴り飛ばす、みたいなゲーム。そうがっつりやっているわけでもないのでノーガードの殴り合いにしかならないのだが、思いの外面白い。
「っと、もう昼か」
「早いなぁ。なんかある?」
「だから当たり前のように……いや、もういい」
こうして諦めるセリフを聞くのも何度目だろう。
「そうだな、餅でいいか」
「なんで餅なんてあるんだよ」
「朝レンジに放り込めば済むのは楽だぞ」
「確かにそれは楽だな」
手間は冷食と変わらないけど、ちゃんと食べてる感があるし。盲点だったな、餅。
「砂糖醤油でいいか?」
「海苔もあれば最高」
「あー、こないだ手巻き寿司した時のがあるはず」
「何楽しそうなことしてんだ、呼べよ」
「なんだってせっかくの寿司を分けてやらないといけないんだ」
ちゃんと酒くらいは持参するっていうのに。ケチなやつだ。
「あ、黄な粉とかねぇの?」
「ない。一人暮らしで買っても消費しきれないだろ」
「えー、せっかく餅食うんだから買ってこようぜ」
「余らすに決まってんだろ……砂糖ならあるから、それでいいだろ」
「大豆は?」
「わざわざ砕く気か?」
「すり鉢とすりこ木もあるといいな」
「今時そんなものある家があるかよ」
きっと探せばあると思うんだ、毒虫すり潰してる暗殺家業の家とか。いつまでも厨二心は忘れない。
「なんにせよ、ない。諦めろ」
「ちぇー……じゃあ代用品とか」
何か一つくらいあるだろう、と。そんな想定で冷蔵庫を覗き込む。
んー……まぁ黄な粉がいけるなら、甘い物全般いけるだろ。
「……何並べてんだ、オマエ」
「ん?はちみつにココア、バニラにコーヒーに」
「よし、つけた餅は全部食えよ?」
頑張って詰め込んだ。
=〇=
「ぐおぉ……腹、腹が」
「昼にあんなもん食うからだ」
「減った……」
「健康そうで何よりだな」
甘ったるくて詰め込むことにはなったものの、別に体調に不調をきたすようなモノではなかった。
そういう意味で言えば、何ら問題はなかったのだろう。
「というわけで、夕飯はまだかね」
「安心しろよ、今できたところだから」
と、そう言ってこたつの中心に置かれる土鍋。ホカホカと湯気を立てるその香りに、つい体が前のめりになる。
「おでんか?」
「正解。つっても、全部テキトーに投げ入れただけのな」
「味さえ染みてりゃ十分だろ」
言いながらこたつを出て、冷蔵庫を開ける。昨日の残りの日本酒を取り出して、テキトーに注ぎレンジへ。
「昨日あれだけ飲んでまだ飲む気かよ」
「おでんだぞ?あったりまえだろ」
「休肝日って言葉知ってるか?」
「じゃあお前はいらないのかよ」
「いるに決まってるだろ何言ってんだ」
ほら、結局飲むんじゃねぇか。
「にしたって、この量のおでんに日本酒ちょっとかぁ」
「安心しろ、俺の買いだめがまだあと3本ある」
「おっ、ナイス。勿論熱燗で行けるやつだよな?」
「1本は冷やすヤツだけど、残りは行けるヤツ」
「よっし、ナイス。なんか冷蔵庫にあったアサリも酒蒸しにしようぜ」
「料理酒は残ってないぞ」
「いいだろ、普通の日本酒で」
おでんもそうだが、その味の違いが分かるような舌は持っていない。楽しく美味い物を飲み食いできれば、それでいいんだ。
「ついでだし、我慢大会よろしくこたつと部屋の温度上げようぜ」
「芸人のアツアツおでんみたいなことでもするつもりか」
「そこまではいわないけど、いっそ外からも中からも体をあっためようかな、と」
「バカだ、真性のバカがいる……」
翌日。
血行が大変良い状態で熱燗を3瓶空けて、今度こそ無事二日酔いになった。