皆で小説を書こう配信 まとめ   作:二 貂理

15 / 76
第十三回 花粉・爆発・宇宙人

 花粉症。

 それは、人体で発生するアレルギー反応の一種。

 植物の花粉が目や鼻の粘膜に触れ、免疫が過剰に反応する現象をさす。

 主だった症状は、鼻水、くしゃみ、鼻づまり、目のかゆみ等。酷い人は頭痛や発熱も見られる。

 日本においては「杉」の花粉によるスギ花粉症が最も多く、毎年春になると猛威を振るっている。

 

 何故って?その理由は、(たぶん)至極単純。日本には杉の木が多いからだ。

 多ければその分、発生する花粉も多くなる。その上風が吹けば「あれ?空気黄色くなった?」と聞きたくなる程の花粉をまき散らすのだ。いくら耐性があったとしてもそんなもの貫通する。火は氷に強いが、焚火に1トンの氷を落とせば問答無用でかき消すことができるように、量は圧倒的不利をも覆すだけの力を持つのだ。

 

 なんでそんなにも詳しいのか?別に詳しいわけじゃない。ただ自分が熱が出るタイプのスギ花粉症で、苛立ちのあまり調べたことがあるだけだ。はっきり言って調べながら殺意を抱いた。

 

 うん?じゃあなんでそんなことを話し始めたのか?あー、それは、うん。そんな事実を思い出すような事態が目の前で起こってるから、と言うか。何というか。その事実を今まさに利用しているからというか。

 

『はっくしょん!ふぁ……ふぁーっくしょん!』

『鼻、鼻から水が、貴重な水分が……!』

『❘ふぁなが、あながつまっていひできな《鼻が、鼻が詰まって息できない》!』

『頭が、ぼーっと、する……』

 

 目の前で、それらの症状に苦しんでる奴らがいるから、と言うか。

 

『くそっ……おい、お前!』

「ハイハイ、なんですか?」

「何故—―何故❘地球人《ちきゅうじん》は、こんなにも単一植物を増殖させた!」

『いや知らないっすよ。ホントバカだと思います』

 

 目の前にいる、所謂グレイ型の宇宙人ってヤツらが全力で苦しんでくれているから思い出した、というか。

 

 宇宙人にも花粉症は発症するらしい、と言う事実から「花粉症って何だっけ」に考えを飛ばした結果こうなった、みたいな状況である。

 

 いや、何言ってんだ自分。頭おかしくなった?

 

 

 

 =〇=

 

 

 

「はー……なんだって、山なんか」

 

 愚痴をはきながら、一歩ずつ足を進める。そう重装備と言うわけでもなければ険しい山道というわけでもないのだが、それでも山を登るという行為にはそれなり以上の負荷が発生する。上り坂を歩くという行為が既に疲れるのに、山道であることがさらに負荷を増している。

 

 そして、何よりの極めつけは。

 

「息が、苦しい……」

 

 そう、息が苦しい。マスクをしているので正直辛い。水泳やら何やらのスポーツでもしていれば苦しい思いをしなかったのかもしれないが、あいにくとそういうわけでもない。口の前に一枚存在する隔たりは、確かに俺の呼吸を妨げていた。

 

 うん?「外せばいいじゃん」だって?いや外せる物なら外したい。けれど、そういうわけにはいかない事情がある。多少息苦しい程度なら耐えたくなる程の事実が。それは、

 

「花粉、絶対やばいもんなぁ」

 

 で、ある。そう、現在春真っただ中。最悪の花粉シーズン到来である。その中山道を防具無しで歩くなんてことをすれば、死以外何も待ってはいない。あまりにも莫大な群れを成すスギ花粉は、兵器と言っても差し支えのない威力を発揮するのだ。

 

「はぁ……ったく、何で山なんて登ってるんだろうなぁ」

 

 再びのため息。思考が一周した気配を感じたが、むしゃくしゃするのは事実なので何周したってかまうものか。

 なお、大学の課題の関連である。課題って最悪だな、滅べばいいのに。こちとら休日だぞ春休みだぞなんだって課題のために山を登らないといけないんだ。

 

「あーあ」

 

 腕を頭の後ろで組み、空を見上げながら。

 

「せめて、何か面白いことでも起こらないかなぁ」

 

 イノシシと遭遇、くらいでいい。それなり程度の話題性さえあれば、十分面白いから。

 などと考え、足を一歩踏み出し。

 

「うん?」

 

 踏み出せない。いや、厳密には踏み出してはいるのだけど、何も踏まない。階段で足の向かう位置がちょっとズレた、みたいな。定位置まで来てるのに空振りしてる感覚。

 何かと思い、下を見る。浮いていた。

 

「……うん?」

 

 疲れているのだろうか、と。疲れのあまり地面がちゃんと見えていないのだろうか、と。

 というわけで、改めて一歩。そもそも、蹴る地面がない。

 

「おっとー?」

 

 理解から遠ざかって言う感覚。意味不明な現象が起こりすぎていて、単純な事に思考が止まっている。

 

「なんだ、コレ?」

 

 理解が出来ない。が、下を見る限りどうやら浮いているらしい。

 意味不明すぎて、空を見上げる。

 UFOが現れた。

 

「ん?」

 

 眼をこすり、目薬を差してもう一度空。

 空飛ぶ円盤が現れた。

 

「あー、これアブダクトとかってやつだ」

 

 あっはっはー、なるほどなー。

 

「どういうことだよ」

 

 脳みそは理解することを放棄した。

 

 

 

 =〇=

 

 

 

『よし、これで私達の言葉は分かるな?』

「あ、はい。分かります。はい」

 

 あの後。手術台らしきものに横にされ、何かされたらしい。それまで何言ってるか分からなかったグレイ型の言葉が分かるようになっている。

 何これ怖い。

 

「それで、えっと……皆様は?」

『ああ、地球の外から侵略に来た者だ』

「あ、そうですか。地球を侵略に。これはまた

遠路はるばるようこそです」

 

 いや、ようこそですじゃない。

 

『君には、この星の王との翻訳をしてもらいたく、今回改造させてもらった』

「おうしれっと改造認めやがった」

『事前の同意を得られていないことは、申し訳無く思う』

「違う、そこじゃない。俺が言ってるのはそこじゃない」

 

 しれっと宇宙人がいることとか、その宇宙人が侵略に来たこととか、あと改造されたこととか。あまりにも情報量が多すぎて、もう理解がおいつかなくなってきた。

 

『差し当たってなのだが』

「あれ、もしかしなくても話聞いてない?」

『この周辺の案内を依頼したい』

 

 依頼?依頼って言った?

 一方的に拉致って改造して数で囲んできた挙句、依頼って言ったよね、コレ。恐喝の間違いじゃなくて?

 

『出来るか?』

「出来ますよ?」

『よし、ありがとう』

 

 命が惜しかったので屈服することにした。

 理解することを放棄したともいえる。

 

『聞いたな!総員、着陸準備!』

『着陸完了しました!』

『よろしい!』

 

 着陸まで秒じゃん。はっや。こっわ。

 

『それでは、これより地上調査へ移る!

調査部隊のみ私についてきて、その他は艦内待機!……開門!』

 

 などと、とんとん拍子で話が進んでいき、扉が開いて……

 

 

 

 =〇=

 

 

 

『総員撤退!』

 

 数十分後。

 これが指示として早いのか遅いのかは分からないが、あれだけやる気満々そうに見えたのに迷いなく撤退準備を始めた。

 うーん、せっかく杉の木が効くって分かったのに、逃げられてしまう。残念。

 あと俺を忘れていてくれなかったのも残念だ。

 

『隊長、どうしますか』

『どうするもこうするもない。何もできない以上、今回は撤退するほかないだろう』

 

 撤退。そうか撤退するのか。

 そのついでに俺を開放してくれないかな。別に誰にも話さないからさ。というかどうせ信じてもらえないから話したって無駄だし。

 

『一時帰星!火炎放射器の類を持ち込むか、進攻時期を変更するか。上へ打診する!』

『了解しました。その地球人は?』

『連れて帰る。下手に情報を漏らされても困るからな』

 

 いや漏らさないですって。

 

『かまわないね?』

「はい、問題ありませんよ?」

 

 いやまあ命は惜しいので逆らう気はないですが。当たり前ですよね、そんなの。

 

『理解が早くて助かるよ。艦内であればある程度好きに過ごしてもらって構わない』

「あ、自由貰えるんですね」

『何かしようとしたところで、どうせ何も出来ないからね』

 

 なるほどそういう。確かにこんなところ、何か仕様としたところで何も出来そうにない。

 結局は機械だろうから壊せばいいんだろうけど、ここまで言う以上壊しようはないのだろう。

 うーん、どうしよう。なんともマズそうな気がするのだけど。

 

『離陸準備、出来ました』

『よろしい。では、作戦中断、帰星開始!』

 

 なんかそれっぽいことを言い出し、パイロットらしきグレイがハンドル?レバー?を握る。その動きに従ってUFOが動いていそうな振動は来る。おー、悔しいけどちょっとかっこいいな。

 

「隣、いいですか?」

『あ、はい。どうぞ』

 

 興味ありげに覗き込み、隣の席をゲットする。

 

「これ、今まさにあなたが操作してるんですか?こう、オートパイロットとかじゃなくて」

『はい。フルオート化も可能なのですが、なんだか性に合わなくて。古臭い考え方だと前いたところはクビになりましたが』

 

 宇宙も色々と世知辛いらしい。人力から機械への移行というのは、どこでも起こる問題のようだ。

 

「それでも?」

『はい。重力も気体の密度も違う他星のソラを、感覚で理解しながら飛ぶ。この感動は、手動でこそですから』

『彼は優秀でね。下手に機械に任せるより、よっぽど信頼できる』

 

 なるほどなるほど、そういうものなのか。いやぁ、うんうん。

 

「それは、助かりました」

『はい?何が、』

「えい」

 

 さっき一瞬降りた際に拾っておいた杉の枝を、目のあたりで振る。

 激しく振るのではなく、ゆっくりと、ふぁさっと。そこについたものを払い落とすようにして、振る。

 

 さっきの人たちの超過剰反応を見る感じ。目もがっつり効くんじゃない?

 

 

 

 =〇=

 

 

 

 後日談。

 この後、無事UFOは墜落。

 墜落地点を爆心地として杉林を吹き飛ばす自体へと発展した。しばらくの間謎の墜落物の話題と爆発とともに広がった❘死の黄色い風《超大量のスギ花粉》がありとあらゆる話題をかっさらう事態となる。

 

 また、これは余談だが。

 墜落物から回収された生命体と思われる遺体数十体について。『全ての個体に地球上には存在しない物質が含まれる』ことから『宇宙人の墜落事故』として、永遠に語り継がれていくこととなるのであった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。