皆で小説を書こう配信 まとめ 作:二 貂理
4~10歳の子供の姿。
ボロボロのむしろを着てる。
山中を人間が歩いていると、無言でその後をついてくる。
振り向くと、隠れる。姿を消す。
たまに道案内してくれる。
人間に危害を加えることはない。
・天降女子(あもろうなぐ)
鹿児島県奄美大島の天女伝説。
男性を求めて天から地上に降りて来る説も。
白い風呂敷を背負って現れ、絶対小雨が降る。
地上で男性を見つけると、にやにやとわらって妖艶に誘惑する。
男性負ける⇒命を奪われる。
天女の持つ柄杓から水を飲む⇒命を奪われる。
睨みつけると根負けして命を奪われずに済む。
空から天女が降ってきた。
いきなりこう書くと、自分でも何を言っているか分からなくなる。けれど、事実なのだから仕方ない。
雲一つない快晴だった。それが突如として少し曇り、小雨になって。その中心を、天女が降ってきた。
太陽の光が差し込んでいたならば綺麗に輝いていただろう羽衣。曇り空と雨によってその輝きは失われていたが、対照的に怪しさを増している。雨に濡れ頬に貼り付く髪、重く垂れ下がった羽衣に、雨が目に入らないようにと細められた眼。
獲物を探す獣のような、危ない怪しさを感じた。
地上へ降り立つ。羽衣はその端を浮かせて、地上の汚れを拒絶した、なんて。自分の住む山に対してそんな表現をするのは、卑屈が過ぎるだろうか?
にしても、何で天女がわざわざこんなところに。この辺りに、伝説が生まれるような余地はないはず。ここに来る目的が、まるで見えない……
「あーっ、いい男いないかなぁ」
獲物を探す獣そのまんまだとは思わないじゃないか。
=〇=
視線の先に天女が降臨したと思ったらエモノを探すケモノだった件について。
こう書くと、何を言っているのかまるで分らなくなる。しかし今の時点で考えられる正解はこれなので、そうと受け入れるしかないのだろう。
視界の先で降臨した天女は、男漁りのためにこの地に降り立ったのだ。いやなんてひどい話なのだろう。
「最近いい男に会えてないし、そろそろ魂持って帰りたいんだけどなぁ」
ワルキューレか何かかな?あれおかしいな、ココは日本だったはずなんだけど。いつの間にか北欧の土地になってた?
あるいはあれかな。神話の世界にも留学制度とかあるのかな。日本に異文化交流に来たワルキューレさんだったりします?
「っと、それは一先ず置いといて」
あ、置いとけるくらいには理性のある人だった。
「えーっと、今回のお仕事はっと」
なるほど、どうやらちゃんとお仕事で地上に降りてきた人らしい。聞いてちょっと安心した。うんうん、天女様が男漁りのためだけに地上に来るなんてことはあっちゃいけないよね。
と、そうなってくると不安感が無くなった分好奇心がわいてくる。一体どんなお仕事なのだろうか、と。それが分かるまで、もうちょっとだけ覗き見していよう、と。軽い気持ちでその場に残り続け
「はっ、ショタの気配!」
判断は脊髄で。「ショ」の辺りで嫌な予感しかし無くなり、パッと姿を消した。
「絶対いた!今絶対いた!ショタいた!いたもん!!」
もんて。仮にも天女が「もん」て。
等と思っていると、迷いなくさっきまで僕がいたところに一直線でやってきた。何それ怖い。
「クンクン……」
匂い嗅いでるんですけど。
「この足跡は……」
足跡に頬ずりしそうな距離で見てるんですけど。
「この味は……」
さっきまで触れていた木の触れていた部分をなめてるんですけど。
「間違いない。ついさっきまで、ここにショタがいた!」
間違いない。この天女はただの変態だ。
=〇=
「チクショウ……!なんで、どうしてショタに会えないの……!こんなに何日も通ってるのに……!」
どうしよう、ショタコンの変態天女さんがあれ以来毎日のように降臨しては僕を探して山探しをしてくる。
「どうして……どうして私はボロボロの服を着た幸薄そうなショタと出会えないの!?絶対この山にいるはずなのに!」
なんで見てもいない僕の服装を出してくるんだ。しかも合ってるし。
「絶対、絶対にこの辺りにいるはずなのに!」
いますよ、うん。確かにいます、はい。居るからこそ問題なんですけど。え、特殊なセンサーとか積んでますか?
「どうして、ねぇどうして!?」
雨の中そうやって叫んでいる不審人物に近づきたくないからです。
「もしかして、警戒してるの!?」
そりゃしてますが。
「だったら安心して!私、怪しい人じゃないから!」
確かにそうですね、怪しい天女ですもの。
「だって私、天女よ!?身分の証明としてこれほど強い物もないと思うの!」
確かに、天の使い的ポジションである天女の身分の確からしさは強い気もする。たぶん気のせいだけど。
「だからほら、警戒しないで出てきて!」
いやそれは繋がらないでしょうに。
「そしてその足にすりすりさせて!」
ねぇ神様、その天女駄目だと思うんです。日本って堕天的なシステムないんですか?
=〇=
「…………ダメだ、出てきてくれない」
何日も来て、親しみやすいお姉さんであることは伝えられているはずなのに。この山に確実にいるショタくんは姿を見せてくれない。
もしかしていないのではないかと何度も考えた。全て私の勘違いで、井もしないショタの幻想を見ているのではないか、と。
けれど、それだけは絶対にない。だってこの地に初めて降りてきたあの日。間違いなくショタの香りはしていたし、木からはショタの味がした。
いる。この山には、絶対に、間違いなく。上司が「間違っている、オマエの頭が」と言ってる気配がするけど、まぁ気のせいだろう。
「ホント、どこにいるんだろうなぁ」
考えろ。いるのは間違いない。マイ柄杓を使って川の水を飲みつつ、作戦を考える。
時間が無限にあるなら、山一帯をしらみつぶしにするのだけど。仕事と言う名目で来ている以上、期日が存在する。
いい男探しは仕方ない、今回は諦めよう。その分の時間で、ショタを探し出す。
「地上に留まってしまった人間の魂を連れかえれ」という仕事で来た以上、自由時間には「悪性のモノになるまでに回収する」という条件がついてくるのだから。
=〇=
「後追い小僧」という妖怪がいる。
それは、善良で、安全な妖怪だ。4~10歳くらいの子供の見た目をしていて、山中を歩く人の後ろを無言でついてくる。人間に危害を加えることは、決してない。
さて、そんな彼らの正体。それは、「山」という生と死の境にある場を彷徨う、子供の霊だという。子供の霊が、人間に懐いているのだ、と。だからただついてくるだけの妖怪となるのだ、と。
山道をただついてくるだけなら、いいじゃないか、って?あぁ、勿論構わないとも。少し不気味かも知れないが、それくらいは、許容していただきたいところである。
あぁ、そうだ。ところで君は、送り狼、という妖怪を知っているかな?送り犬、でもいいのだけど。
夜道を歩く人の後ろをついてくる……っていう、妖怪なんだけどね。似ているだろう?
こちらから話すのは、ココまで。似ていないのはどんなところなのか、は君自身が調べてみてくれ。
それでは、これにて。さようなら。
夜道を歩くときは、足元に気を付けて、ね?