皆で小説を書こう配信 まとめ 作:二 貂理
「いつまで」と鳴く鳥の妖怪。
「タヒをいつまでほおっておくのか」
と言う意味でそう鳴く妖怪。
人間の顔。
曲がったくちばし。
ノコギリのような歯。
体は蛇のよう。
両足の爪は鋭く。
4.8メートルの巨大さな。
怪鳥。
以津真天、と言う妖怪がいる。
読みが分からない諸兄の為に読みを加えるならば、いつまでん、である。こうして見ると、結構そのままな読みだな。
例えば、都で死が蔓延した時。「その死をいつまで放っておくのか」と権力者に注意を促すように鳴き。
人の亡骸が放っておかれると、やはり「いつまでそのままなのか」と促すように鳴く。そういう妖怪。
こう書いてみると、結構いい妖怪である。ちゃんと対処しろ、ちゃんと弔え、面倒がって放置するな、と注意してくれる妖怪なのだから。このご時世にマスコット化されてもいいくらいではなかろうか。
さてそれでは、そんな以津真天という鳥の妖怪の見た目を紹介しよう。
人のような顔を持ち。
ねじくり曲がった嘴を開けば、鋸と見間違う歯が並び。
体は蛇を思わせるように、細長くうごめきまわり。
獲物を捕らえる爪は、鋭くとがっている。
5メートルに届こうかと言う巨体を誇る。
怪鳥の、妖怪である。
うん、ごめん。マスコット化は無理だ。諦めてほしい。そんな見た目のマスコットがいたら、子供泣く。それはもうギャン泣きする。間違いない。俺が保証する。
そもそもなんだよ、人間の顔に曲がった嘴って。しかもその中には鋸と見間違う歯が並んでるって。鳥なら歯じゃなくて砂肝で何とかしてくれ。いや違うそうじゃない。
なんにせよ、だ。
そんな大の大人ですら遭遇したら恐怖を覚えること間違いなしなのが、この以津真天と言う妖怪なのである。
こう書くと、ちょっと心は優しいのにその風貌のせいで人間に嫌われてる感が出るな。
と、話を戻そう。
さて、この以津真天と言う妖怪。なんで急に俺がこんな妖怪について記そうと考えたかと言うと、だ。
「ほら、また手が止まってますよ。全く、いつまで完成にかける気なんですか」
「いや、やってるんです!やってますから!ただちょっと言い回しに悩んだだけで!」
「それを何度繰り返してここまで伸ばして伸ばしてになってきたんですか。いつまでそれを繰り返す気なんですか」
「伸ばしません!これ以上繰り返しませんから!だからお願いだから、とぐろを巻かないで嘴付きの顔近づけないで歯が見えるくらい開かないで!」
なんでか唐突に俺の隣に現れ、創作物の完成を急かしてくる謎の生命体が現れたから、と言うわけなんだけれども。
いや、なんでこんなことを急かしてくるの?
=〇=
「んー……」
画面に視線を向けながら、思いついたセリフを連ねる。
「あー……」
上に戻って流れを見て。違和感を感じてバックスペースを長押し。
「ん-?」
目をつむって天を仰ぎながら、指先だけ動かしてみる。
「ねぇな~」
出来上がった文面を見て、これはないなと消していく。
「はぁ……じゃあ、っと」
最近読んだ小説の影響丸出しだが、端的な言葉だけを並べてみて。
「いや、難しいな……」
単語の集合体、の域をでなかった為、やはり考え直す。
あー、こりゃ今日も進捗0かなぁ。
『……で』
「うん?」
と。諦めてしまおうとしたら、何か聞こえてきた。とはいえ聞き覚えのある声ではない。きっと空耳だろう、と結論付けつつ。こういう聞き間違いや勘違いの類は行けるのではないか、とやはりまた指を動かして。
「どう勘違いさせたらいいのやら」
結局そこの結論が出なくて、やっぱりまた消す。
『……つまで』
「あぁん?」
また何か聞こえていた気がした。
今日はやたらと空耳が多いな、疲れてるんだな、と。
おおよそそんなところが分かったので、作業を終了する。
大した進捗はないが保存して、そのままパソコンの電源も落としに、
『…いつまで』
「やたらはっきり聞こえる幻聴だな」
何やらようやく単語になったけど、これはどの程度疲れてることになるのだろうか。疲れてる時の方が支離滅裂なことが聞こえてくるもの。
『いつまでその創作物を放っておくつもりですか!』
「幻聴じゃねぇなぁ、これ!」
前言撤回である。
こんな俺の状況をそのまんま表した幻聴があってたまるか。
「誰だ!こんな意味不明な事して人を挑発しやがって!どこに隠れてんだ姿を見せろコノヤロー!」
『おや、いいのですか?』
「会話成り立つんかい!」
いやまて、今大事なのはそこじゃない。大事だけど重要ではない。
「会話が成り立つならなおさらだ!姿見せやがれ、何をコソコソ隠れて」
「あ、いいんですね」
「うわっほい!」
唐突に真横に現れた。
人の頭、嘴、蛇の身体、でかい翼を兼ね備えた謎のキメラ的生物が。
え、何コイツ。
「え、っと」
「あ、どうも初めまして。わたくし、妖怪の以津真天と申します。」
「あ、はぁ」
口開くと鋸みたいな歯がわんさか出てくる。え、何コイツ怖い。新種の猛禽類か何か?人語を介する猛禽類ってなんだよ。
「それで、えっと……以津真天さん、でしたっけ。」
「はい、以津真天でございます」
「オーケー」
開いた口元危険な香りしかしないけど。え、何あの歯軍団。鋸みたい、こっわ。
「それであなたは、えっと、何を?」
妖怪に問い詰められる心当たりがないので、逆に聞いてみることにした。
「あぁ、それはですね」
「ハイ」
「創作物をあーでもないこーでもないってずっと悩んでたから、急かしに来てみました」
いや、むっちゃはた迷惑なのですが。確かにずっと進んでないですけど、それはそれとしてはた迷惑なのですが。
「何せほら、私以津真天ですから」
以津真天。いつまでん。
寒いギャグみたいなこと言いだしたなぁ、なんて思いながら横を見る。鋸のような歯が広がっている。いやうん、怖い。
「どうかされましたか?」
「いえ、何かあるってわけじゃないんですが」
ジロジロと見ていたら反応されてしまった。だって、気になるじゃん。怖いもの見たさと言うか、何というか。あの歯どうなってるんだろ、って。
「その、ですね」
「はい」
「来た目的は聞いたのですが、いつまでいるのか、とかは聞いてなかったな、と」
「あぁ、そんなことですか」
「そんなことって」
「いえいえ、単純なことを気になさってるんだな、と思いまして」
そんな単純な事なのか。
もしかして、以津真天って妖怪においては有名な話なのか?だとしたら俺の勉強不足かもしれない。
「勿論、完成するまで、ですよ」
完成するまで、この顔が隣にあり続ける。
想像しただけでぶっ倒れそうになった。
なお、これは後日談なのだが。
恐怖心と戦いながら無事完成まで持っていき。「これで以津真天が出ていく!」と内心大喜びしているところに「また手が止まったら会いに来ますね!」と言われ、恐怖で固まることになるのだけれど。
それは、もうちょっと先のお話である。