皆で小説を書こう配信 まとめ   作:二 貂理

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第二十九回 河童

 日本には、河童なる超メジャー妖怪が存在する。

 もはや説明はいらないと思ってたんだけど、調べてみると地域によって特色がありすぎるので、改めて言っておくことにする。

 

 河童。日本の川に住むとされている、超メジャー妖怪。

 外見的な特徴としては、全身緑色で二足歩行。背中に大きな甲羅を背負っていて、頭の上には一枚の皿。短いくちばしに、手足に付いた水かき。ざっくりと言えば、そんな妖怪。

 

 キャラクター的な特徴としては、相撲が好き、キュウリが好き、頭の皿が乾くと死んでしまう、尻子玉を抜いてくる、等々。

 平和度合いが乱高下したのだけど、こればっかりは伝承によって異なるから仕方ない。河童の中にも、キュウリ食べて幸せ派閥と滅びよ人類派閥がある。

 

 と、まぁざっくり言えばこんな妖怪。さて、ここまでで分からないことは?—――尻子玉って何、か。うん、そういえば説明をすっ飛ばしてた。何分何なのか分からない物体だから、無意識に説明を避けていた。

 

 と言うわけで、もう一回説明パートに戻ると、だ。

 尻子玉ってのは、こう。なんか架空の臓器で、河童はそれを狙って人間のお尻から手を突っ込むとかなんとか言われてる。

 ちなみに、架空、ってある通り抜かれたらどうなるかも、何で尻子玉を狙うのかも、そもそもなんなのかもまるで不明。それが、尻子玉。

 

 な?分からないだろう?

 

 さて、話を戻そう。

 そんなメジャーなのだけど深堀りすると意味わからない妖怪であるところの河童の説明は、以上である。

 

 それでは、そうしてこの場の全員の河童への認識を統一できたところで、本題へ移行する。

 

 そう、本題。ようやっと本題。

 そんな本日の本題はなにかというと、だ。

 

「お願いします!どうか、どうかこの通り!」

「いや、この通り!じゃなく」

「スッポンの甲羅くらい柔い心とののしって頂いてもかまいません!」

「うん、例えがあまりにも分かりづら過ぎる」

「尻子玉を!尻子玉を分けてください!!」

「うん、もう何言ってるのかまるで分からない」

「でないと私、今月の税を納められないんですぅ!」

「うん、さらに何言ってるのか分からなくなったね」

 

 尻子玉を寄越せ、等と言いながら表れた珍生物が目の前にいるのである。

 

 亀って美味しいらしいけど、河童も美味しいのかな。

 

 

 

 =〇=

 

 

 

 休日だったので、ふとした思い付きで釣りをしていた。

 なんてことはない。本当に思い付きで、ちょっと川まで歩いて、釣糸を垂らしている。

 何か狙った獲物がいるわけでもないので、かからないことにストレスを感じることもなく。一部を除けばキャッチアンドリリースくらいの感覚で、無為に時間を過ごす。

 わるくない。なんなら、むしろいい。これくらいの時間の過ごし方が心安らぐってもんだ。

 

「っと、何かかかった」

 

 なんて考えていたら、竿に重みが。何がかかったかなぁ、とワクワクしつつ、釣り上げにかかる。これは、バスかな?どうしよ。

 

「この辺のルールだと、どうなんだっけか」

 

 針がかかったまま宙ぶらりんにして考える。が、考えたところで答えは出てこない。ならば調べてしまえとスマホを取り出そうとしたところで。

 

「あのー、この辺りはリリース禁止ってよく言ってますよ」

「あ、そうなんですか」

「はい。と言っても、わたしも聞くだけなんですけど」

 

 と、教えてもらってしまった。

まぁ、禁止ならば仕方ない。どこぞにでも埋めて帰ろうか、と考えて。

 

「で、もしかして要らなかったりしますか?」

 

 と、俺にとって都合のよさそうな会話が飛んでくる。

 

「まぁ、はい。そうなりますね」

「よければ、頂いたりとか……?」

「構いませんよ。むしろ助かります」

「やった!」

 

 どうやら、貰ってくれるらしい。ありがたい申し出をされたので、針を外しながら声の主を探す。

 ありゃ、いない。どこだろう。

 

「あ、こっちですこっち。下です」

「下……?」

 

 下と言われても、川釣りに来たのだからそちらにあるのは川だけなわけで。そんな方を見ても何かいるとは、

 

「…………うん?」

「あれ、声だけ聞こえて見えないタイプの人?おーい、こっちこっち」

 

 なにやら視界にとらえたソレが奇怪な動きでこちらの気を引こうとしだしたので、ちゃんと見えている事を伝えた。

 

 伝えて、目頭をもんで。もう一度、そちらを見る。

 

 全身緑、甲羅を背負って皿を頭に乗せた、怪生物がいた。

 

「あ、じゃあそのお魚を」

「あー、はい」

「食べますので、投げて頂ければ」

「……はぁ」

 

 一瞬理解が追いつかなかったが、くちばしを見て水族館のペンギンを思い出した。確かアイツらは、投げられた魚を器用に受け止めて食べていた気がする。

 尾っぽをつまんで、狙いを定めて落としてみた。口で器用に受け止めて、丸飲みにしている。

 わーい、(声から推測して)女性に餌付けしてるよ、俺。1ミリも嬉しくねー。

 

「いやー、助かりました。ここ暫くお財布が軽くて、あまりご飯も食べれてなかったものですから」

 

 河童の世界にもあるのか、財布ってか、通貨の概念。

 

「今もせめて税だけでも納めて、なんとか最低限の保護を受けられるようになりたいなぁ、と探しているとことなんですよ。」

「河童の世界にもあるんだ、税の概念」

「ありますよ。竜に納めるんです」

 

 急に男の子大好きワードが飛び出してきた。竜、そうか。竜いるのか。いるんだぁ。

 

「じゃあまぁ、頑張って」

「はい!そこでなんですが、ここで出会ったのも何かの縁ってことで、協力して頂けませんか?」

「協力ってのは、その税として納める物探しを?」

「はい!」

 

 思いの外図々しい河童だった。まぁ、うん。

 

「それはめんどそうだからやだ」

「お願いします!今時川遊びする子供がいないから、全然集まらないんですよぅ!」

 

 おい待て、急に話が物騒になったぞ。

 

 

 

 =〇=

 

 

 

「お願いしますよー!」

「いや、うん。なんか物騒そうだし」

「全然物騒じゃないです!ただちょっとお尻の穴から腕突っ込んで尻子玉抜くだけですから!」

「今の言葉に物騒じゃない要素一つもなかったんだけど」

「妖怪の腕ですから、死んだり傷ついたりはしないです!河童ですから!」

「それが説得力のある説明になる理由がまるで分らない」

「ただちょっと廃人になるだけで!」

「よし、今この瞬間からお前は人間の敵だ」

 

 廃人を作るのに協力してくれとは、どういう領分だこの河童。

 

「くぅ、なんで尻子玉を抜くことにこんなにも非協力的に……!?」

「廃人になるって聞いたからかな」

「廃人になるだけじゃないですか!」

「それをだけと呼ぶ人はいないかなぁ」

 

マジでなんなんだ、この河童。

 

「くっ、何で現代の人間はこうも

ノリが悪いんだ……!」

「そんな会社の上司が言う「今時の若い子は付き合いが悪い」的なことを言われても」

 

 付き合いいい悪い関係ないだろ、それ。

 

「ぐぬぬ……あ、そうだ!ならこれ、これを見てみてください!」

「あぁん?」

 

 甲羅へ手を回しごそごそしたと思ったら、スマホっぽい何かを取り出した。え、そこリュックサック的な役割果たすの?

 

 等と困惑しながら受け取り、その画面を見る。めっちゃ白い球体が映っていた。

 なんだろこれ、綺麗だな。真珠……にしては大きいし。

 

「それが尻子玉です!綺麗でしょう?」

「うん、それはそう。綺麗だ」

「そうでしょうとも、そうでしょうとも!」

「これが税として働くの?」

「はい。綺麗なだけの物体じゃない、ってことですね」

 

 いやまぁ、にしたって出所が出所である。意味が分からんしな。

 

「おや、この綺麗な物体を見てもまだ乗り気ではない。」

「まぁ、抜かれた人廃人になるって聞いてるし」

「赤の他人が廃人になっても困らないでしょう?」

「うん、困りはしないだろうけど」

 

 もしかして、これが人間と妖怪の価値観の差、ってやつなのか。

 

「くっ、これは強敵だ……なら、画面を横にすっとしてみるといい!」

 

 何やら自信満々なので、次の一枚へ移る。

 

「産地表記用に取った、尻子玉採取後の尻だ」

 

 一瞬で目をそらした。バカか、バカなんじゃないのか、コイツ。

 

「どうですか、私厳選のお尻と尻子玉の写真セットは!素晴らしいアートたちでしょ私のスマホ―!?」

 

 なんて汚ねぇもん見せてきやがる、の意で投げ飛ばした。

 

 割らなかっただけ、感謝してほしいものである。

 尻のドアップと尻子玉のセット写真コレクター。うーん、どうしようもない変態であった。二度と会いたくないなぁ。

 

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