皆で小説を書こう配信 まとめ   作:二 貂理

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『蟹坊主
 謎かけをしてくる坊さんの妖怪。
 間違えたり、詰まったりすると、殴り〇してくる。
 当てられると逃げる。
 金剛杵をぶつけられて〇ぬ』

『影女
 女性の形をした影。完。
 よくふすまに映る。あと壁。窓』


第三十回 蟹坊主・陽キャ影女

 蟹坊主、ってー妖怪に会った。

 蟹坊主が何かって?ん-、アタシもよく分かってないから、ネット見ながらでい?

 なんかこー、分かりづらい問題出してきて、答えられないと殴ってくる妖怪だって。

 そのくせ、当てられると逃げてくっぽい。ウケル。

 

 あと、当てられた時ヴァジュラ?ってので退治されてることもあるっぽい。弱点なんかな?

 

「ねぇ、その辺どうなの?ヴァジュラ弱点なん?」

「その手にあるものでヴァジュラを調べて、画像を探してみると。弱点云々関係なく痛いと思いますが」

 

 試しに調べてみた。金属の塊。うん、これで殴られたら誰でも痛いね。

 

「それに加えて、祭具ですから。妖怪にとっては重ね掛けに」

「え、じゃあこれアタシにも効くじゃん」

「効くのなら今すぐにでも入手してきたいですねぇ!」

 

 あ、なんか悔しそうにしてる。オモロ。

 

 

 

 =〇=

 

 

 

 きっかけは、特に意味もなく歩いていた時だった。

 今日はどこに現れよっかなー、なんて考えながら歩いていると、何故かお寺が目に入った。

 まー、いちおー妖怪だし?普段なら絶対近付かないんだけど、なんでかその日は妙に気になって。まーなんも予定ないし、って寄ってくことにした。

 

「うっわー、ぼろっちいお寺だなぁ。だからやな感じしないのかな」

 

 入ってみると、何というか。ギリギリ整備されてると言い張れっかなー、くらいのライン。

 こんくらいならアタシが立ち寄ったくらいで目くじら立ててこないっしょ、と。それくらいの気軽さで踏み込んで、好き放題うろつく。

 

 と。

 

「足八足」

 

 なんか、後ろから話しかけられた。

 

「え、坊さん?」

「横行自在にして眼、天を差す」

 

 アタシの驚愕、ガン無視。わー、なんだコイツ。

 

「時如何」

「や、なんて?」

 

 意味わかんない。ので、聞き返した。

 

「……」

「や、だからなんて?」

「足八足」

「オッケー、説明はなしね」

 

 聞いても無駄か。ってか、雰囲気からしてコイツ人間じゃなさげ?となるとこの問答に応えるまでは何も出来ないししてこない、ってことになるんだけど……

 

 うん、分からん。なんつってた?このお坊さん。

 

「え、っと……」

 

 まず、聞かれたことを思い出す。なんか顔の辺りを拳が通って行った気がするけど、そんなことはいいや。

 

「足八足。足が八本で……」

 

 もう2、3回拳が飛んできたけど、まぁ、うん。無視無視。

 

「横行自在……字のトーリなら、横向きに移動できる?」

 

 当てる場所を変えてみたのか、お腹のあたりとかにも飛んでくるようになってきたけど、やっぱり気にしない。

 

「んで、眼、天を差す。天ってことは、上?上……」

 

 なにも思いつかないので、試しに空を見上げてみる。うん、何もない。なーんもないんじゃ、なんも分からん。足八足、八本足……横歩き……

 

「あ、分かった。蟹だ」

「や、分かった、じゃなくてですね」

 

 驚くことに、当てたら口を利いてくれた。何そのボーナスステージ。

 

「え、なんで殴れないんです?」

「いやだって、アタシ影女だし」

「影って黒いものなのでは!?」

「だって黒一色とかダサいじゃん。おしゃれくらいするって」

「おしゃれで影女のアイデンティティを捨てられたんですか!?」

 

 言い方が酷い。個性の発現と言ってくんない?

 

「んで?当てたんだけど、なんかあるの?この手の妖怪って、当てたらご褒美ある系っしょ?」

「待ってください」

「それかあれ。正体あらわになって負け犬になるヤツ」

「いやですから、待ってくださいって」

 

 お坊さんが妙に手ぶり付で「まぁ待て」と言ってくる。あんまりにも動作が人間ポイ。ん-、待つか。

 

「えっと、殴りましたよね?」

「殴られましたね。びっくりしました」

「本来なら、そこでタヒんでおしまいなんですよ」

「いやでもほら、アタシ影女ですし」

 

 影が殴れるかって、ムリでしょ。

 

「でも、言い淀んだ時点で殴れないと私のアイデンティティに関わるんですよ」

「人を殴ることがアイデンティティって、どーかと思うよ?」

「妖怪にそれを言いますか」

 

 ん-、それはそう。何も言い返せない。

 

「ですので、リベンジをさせて下さい」

「メンドイからパスで」

「リベンジをさせて下さい」

 

 なんだこのお坊さん、みょーに押しが強いな。

 

「はぁ、じゃあ、どうぞ?」

「はい。では」

 

 一つ咳払いをして、口を開く。

 

「優雅に泳ぐ者ながら、その頭部は常に割れている。如何に」

「出血多量じゃね?ってか、泳いじゃだめじゃね?」

「如何に」

 

 あ、うん。聞かねぇんだったコイツ。

 さて、なんだろうか。せっかくだし、頑張ってアタシを殴っているお坊さんを眺めながら考えてみよう。

 

 最初が正体当てる系だったし、てーことは今回のもなんかの生き物を抽象的にしてる?

 

 試しに殴りから蹴りに変えてスカってるお坊さんを眺めつつ、思い付きを口にする。

 

「優雅に泳ぐってことは、川とか海とか系の」

 

 ガキか、ってくらい砂やら石やらを投げてくるのを眺めながら、優雅に泳いでそうなのを考える。クラゲ?

 

「んで、頭が割れてる」

 

 うん、ここが分かんない。割れてるわけなくない?生き物として欠陥にもほどがない??

 

「つーことは、なんか比喩とか裏があるわけで……」

 

 影なら光だろ、ばりにスマホの光で照らしてくる。それ自分でも試したことあるけど、照らされた場所がきえるだけなんだよね。ほら、影だし。

 

「比喩、行動がそう見える系……あ」

 

 いよいよパッと打てる手が無くなったのかタックルの準備してる。ウケルなぁ。なんで殴りが当たらないのに、体当たりなら当たると思うんだろ。

 

 と、タックルすかってすっ転ぶのを見てもいーんだけど。可哀想だから、言ってあげることにした。

 

「正解は、クリオネ!」

 

 ドロン!と、音がした。

 モクモクと砂煙が立っていた。

 消えると、坊さんが消えていた。

 

「逃げやがったあの坊主!」

「あ、いえその、違うんです」

 

 改めて声が聞こえた。うん?

 

「えっと、こっちですこっち」

「うん……あ」

 

 下の方から声がしたので覗き込む。なんか、砂の上でちっさいのがぴちぴちしてた。

 

「え、なんで?」

「おそらく、クリオネと応えられたので……」

「……は?」

 

 え、蟹坊主って正体を当てられるとそれを表す、って類じゃないの?

 

 

「その、我がままなんですけど。もう一問、付き合ってもらえたり……」

「あ、うん。どぞ?」

 

 正体がクリオネはいやだろうし、しゃーない。付き合ってやるか。

 

 なお、この後。

 蟹坊主は懲りずに悩んでいる影女を殴ろうとし続け、問を出し続け。

 その度に別の動物の姿になってはもう一問を要求してくるんだけど。

 

 ま、楽しいからいっか!

 

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