皆で小説を書こう配信 まとめ   作:二 貂理

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第三十六回 ぬらりひょん

 最強の妖怪、と言われた時。あなたは何を思い浮かべるだろうか。

 例えばそれは、ある狐の大化生かもしれない。九つの尾を持ち、男を手玉にとり。挙句の果てには死してなお呪いを振りまく石になった玉藻の前。

 

 例えばそれは、死した人間の執念。志半ばにして命を落とし、無念を核としてこの世にしがみ付き、眠りを妨げるモノに呪いを振りまいた平将門。

 

 そんな、討伐したり死後鎮めたりするのに多大なる労力をかけた者たちを思い浮かべる人は、まぁ一定数いるだろう。事実、それも一つの最強だ。

 

 だが、最強には別の形がある。これまでに上げてきたような個としての最強ではない、軍団としての最強。ひいては、軍団を率いるモノ、という最強の形だ。

 

 数えきれないほどの妖怪を従える、百鬼夜行の主。それこそが、最強の妖怪を名乗るにふさわしいのではないか。

 日本という国に存在するあらゆる妖怪を代表する、いわば日本妖怪界の顔と言える妖怪になるのではないか。

 

 私は、そう考えるのだ。

 

「そういうわけなので、それっぽくしてくれないと困るんです」

「いやー、んなこと言われてもなぁ。ワシ、ただのじいさんだし」

「大妖怪ぬらりひょんが何を言ってるんですか」

「や、大妖怪っつってもな?ワシがやれること、人んち入り込んで茶ぁすするだけよ?無理だって」

「そこはほら、百鬼夜行の総大将パワーでなんかそれっぽく」

「何を言うとるのか、この河童は」

 

 などと言いながら、目の前で茶をすするぬらりひょん。つられて私も湯呑を手に取り、すする。

 熱いけど美味しい。うん、日本のお茶だ。

 

 

 

 =〇=

 

 

 

「ねーおじいちゃん、ひゃっきやこーってなにー?」

「ん-、百鬼夜行ってのはな……」

 

 と。

 私と総大将の会話を聞いていたのか、総大将の膝に座る女の子が声を上げた。

 妖怪の総大将の膝に座るとは、中々に根性の座った子だ。

 

「おい河童、なんか書くもんねぇか」

「メモ帳とボールペンしか……」

「んならそれでいいや」

 

 いいそうなので、かばんから取り出して渡す。ぬらりひょんがボールペンとメモ帳持ってる。なんだこれ。

 

「百の鬼が夜を行く……っと、こんな字を書くんだ」

「おにさんがいるの?」

「鬼に限らず、妖怪が、だけどな」

 

 妖怪の類を一纏めに鬼とか呼称するのは、日本あるあるだ。

 

「ようかいが……百人?ようかいもふじさんのてっぺんで、おにぎり食べる?」

「おにぎり?」

「あー、ほら。友達百人できるかな、って」

「あー、あったなぁそんな歌」

 

 有名な曲だ。小学校に上がる際の心情?を歌っている曲。

 冷静に聞いてみると、「友達が100人出来たら」の話をしているのに、「富士山の頂上で100人でおにぎりを食べる」という1人神隠しにあってしまう曲なのだけど、まぁ、うん。その辺りは言葉のあやって奴だろう。

 

「まぁ、おにぎりじゃぁないが皆でいっしょに何か食べたりはする。楽しいぞぅ」

「みんな仲良しこよしなんだね!」

 

 楽しそうに話しているので、思う所はあったが口には出さないことにした。うん、皆楽しんでるのは事実だし。

 

 ちなみに。

 日本の昔の感覚で「百」なんてのは「すっごく多い」程度の意味合いなので、100人どころじゃないのだけど。それもまぁ、ややこしくなるので言わない。

 

「じゃあ、おじいちゃんと友達になったら、100人でおにぎり食べれる?」

「あん?」

「ともだち100人あーるてぃーえー達成できる?」

「や、友達作りはRTAとかで考えるものじゃないから」

 

 つい口を出してしまった。

 

「いやぁ、無理じゃねぇか?」

「どうして?わたし、おじいちゃんのともだちとともだちになれない?」

「それは、分からん」

 

 こんな小さな子供相手だと、ごはんって考えるような妖怪もいるわけで。

 

「ただ、間違いなく言えるのはな」

「うん」

「ワシの友達100人と友達になったら、ワシもあわせて101人になっちまう」

「あ、ほんとだ!おじいちゃん頭いい!」

「そうだろうそうだろう」

 

 女児に褒められて得意げになる妖怪の総大将、見たくない。

 

「……というか、今更なんですけど」

「おう、どうした?」

「何してるんです?総大将」

「この家の奥さんに頼まれてな、買い物行ってる間の子守」

「妖怪の総大将が何やってんですか……」

 

 妖怪の総大将が人間に頼まれて子守をするとか、信じたくない。

 

「やー、だってしょうがねぇだろ。普段から茶ぁ飲ませてもらってるんだ、それくらい聞かねぇと」

「いや、聞かねぇと、じゃなくて。あなた勝手に入り込んで勝手に茶を呑む妖怪でしょう。何普通にご馳走になってるんですか」

「や、いつもちゃんと勝手に入り込んで勝手に茶を飲んでるぞ?」

「何でそんな人に子守頼んだんだこの家のおくさんは!」

 

 さすがにそれはやっちゃだめだと思う。妖怪でもわかる。

 

「結構よくあることだぞ?勝手に茶呑んでると、何か頼まれるの」

「怖いんですけど、一応聞きましょうか。何頼まれるんですか」

「例えば、今やってるような子守だろ?」

 

 まぁ、うん。さっきも聞いたし。

 

「あとは、皿洗いだとか」

「皿洗い」

「掃除とか」

「掃除」

「洗濯物回収したり」

「洗濯物」

「そんなことをしてるな」

「妖怪の総大将ですよねあなた!?」

 

 そして人間、不法侵入者にそんな事を任せるな。ありえないだろう。

 

「ちなみに一番きっついのは庭の草むしりだ。もう体がジジィだからよ、あれ腰にくるんだよ……」

「あなたジジィじゃなかった瞬間あるんですか?」

 

 と言うか、ぬらりひょんが草むしりとかしないで欲しい。ホントに。

 

「ちなみに、この後も草むしりあるぞ。3丁目の田中さんちで」

 

 得意げな顔で言われたので、1発ぶん殴りたくなった。

 

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