皆で小説を書こう配信 まとめ   作:二 貂理

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第三十八回 のっぺらぼう

 のっぺらぼう、なる妖怪がいる。

 目、鼻、口がなく、まっ平らな顔をした妖怪。言ってしまえば、た

それだけの存在だ。

 

 ただそれだけの存在なのだが、語られ方がちょっと凝っていて、大人になってみれば面白く、子供の時分

には恐怖をそそられるようにできている。

 こうして語るのは得意ではないので上手くいかないかもしれないが…

 

 夜道を歩いている男性がいる。その最中、ふと目の前を歩いている男性に出会う。

 こんな夜道で何をしているのだろうか、と見てみると、その男性には顔が無かった。

 

 そんなものを見てしまったのだ。恐怖で腰を抜かしそうになりながら慌てて逃げだすと、逃げた先で女性

の後姿を見つけた。

 恐怖を抱いていたその男性は救いを求めてその女性に声をかけるも、振り返った女性にも顔がなかった。

 

 再度慌てて走り出す。しばらく走っていると、タクシーを見つけた。あんなものに出会ってしまったのだ、1人でいるのにも限界を感じ、タクシーに乗り込む。

 

 どうしたんですか、と声をかけられ、安心した男性は先ほどまであったことを話す。

 すると、タクシーの運転手は振りかえってこう言うわけだ。

 

『それって、こんな顔じゃなかったですか?』

 

 ここまで来たら、想像はつくだろう。

 その運転手にも、顔はなかったのである。

 

 以上が、のっぺらぼうのお話。

 何度も何度も怖いシチュを繰り返す表現を「再度の怪」とか言うのだが、まぁこの場ではそれは割愛。

 

 さて、ココまでの話から分かることはなんだろうか。答えはいたってシンプル。

 

「だからさ。全員顔が同じで見分け付かないから、見分け付くようにしようよ」

「いや、その……その時点でこう、自分たちのっぺらぼうっていうアイデンティティ失うんですけご……」

「アイデンティティもなにも、顔が一切見分け付かない時点でそんなものないじゃん」

「そういう話ではなくてですね……」

 

 そう。こいつら、一切見分けがつかないのである。

 

 

 

 =〇=

 

 

 

 これだけの話を置いておいても何も分からないだろうから、簡潔に彼らと出会った時の話をしようと思う。

 

 夜、バイトからの帰り道。ふと、道のわきで蹲っている男性を見つけた。

 面倒ごとに巻き込まれるのは勘弁なのでスルーしようとしたのだが、スルーしたらそれはそれで後味が悪

そうだ。

 というわけで、一声だけかけることにした。

 

「あのー、大丈夫ですか?酔っ払い?」

 

 ちょっと思い返してみると、失礼だったかもしれない。

 

「あぁ、大丈夫です。ちょっと腹痛がするだけで」

「そうです?ならいいんですけど」

「はい、本当に―――」

 

 と。そこで、伏せていた顔をこちらに向けtた。

 

「ありがとうございました」

 

 その顔には、何もないように見えた。

 

「ホントに大丈夫なんです?」

「え?」

「いや、なんか顔色がやけに真っ白に見えるもんですから……」

 

 見えるだけだろう、ということでその場は結論付けた。

 

「あ、はい。大丈夫ですけど……」

「ならよかった。じゃ、俺はこれで」

 

 本人が言っているなら大丈夫なんだろう、ということで通り過ぎた。これが一人目。

 

 んで、そこからしばらく歩いてみて。うつむき気味に歩いてくる女性が視界に入った。こちらに向かって

来ているので、もうしばらくしたらすれ違うだろう。

 

 先ほどの男性のことを伝えるかどうか、一瞬悩んだ。

 けれど、まぁ言っておくことにした。

 

「あのー」

「はい?」

 

 うつむき気味なままだが、立ち止まってはくれた。

 

「この先、なんか体調悪そうな男の人が蹲ってたんで。なんもないとは思いますけど、気になるなら別の道

で行った方がいいかもです」

「あ、そうなんですか。ありがとうございます」

 

 こんなこと言われても困るかなぁ、とは思ったが。まぁ、言われて判断するのはこの人なので。

 

「なんかこう、妙に顔色が白かったんで。唐突に嘔吐されて、靴とか汚れるかもですし」

「それは嫌ですね……」

 

 と。そこで、こちらを向いてくれた。

 

「すみません、助かりました」

 

 そして、一礼。そのまま顔をあげて……

 その顔には、またもや何もないように見えた。

 

「あれ、貴女も顔色悪いですよ?」

「え?」

「早く帰ってゆっくりなさってください」

 

 まさか2連続で顔色悪い人に出会うとはなぁ、と思いながらその女性の隣を通り過ぎた。

 

 そしてさらにしばらく歩いてみて。

 男性に出会った。ちょっとしっかり目な服装の人。なんだろうな、と見ていると、被っていた帽子を取り。

 

「あのー……えっと、お兄さん?」

「なんですか?」

「その、ちょっと聞きたいことがあるんですけど」

「いいっすけど……」

「あ、はい。では―――」

 

 と。そいつはそのまま、こちらに近付いてきて。

 

「この顔について、なにかこう、ないんですか?」

 

 また顔色悪いなぁ、と思っていた顔に、どうやら何もないらしいことを悟った。

 うーん、なるほど?

 

「あれだな」

「あれ」

「見分けがつかん」

 

 体感としては、三連続で同じ顔を見せられていることになるわけだ。

 似てるとかじゃなくて、まるで違いが見分けられないレベルに。

 

「……え?」

「紛らわしすぎる」

 

 ありえないだろう、と感じるわけだ。

 

 

 

 =〇=

 

 

 

「でもさ、こうして3人並んでもまるで見分け付かないじゃん」

「いや、服装でいくらでも見分けつくじゃないですか……」

「服装なんていくらでも変えれるんだから」

「や、それはそうなんですけどね?」

 

 個人の見分けがつかない、というのはまぁまぁ大きな問題だと思うのだけど。

 それこそ、「目元を隠すだけでその写真が誰なのか分からなくなる」

なんていうほどなのだ。顔全部がないとなると、個人の区別はつかないと言っても過言ではないはず。

 

「だからほら、例えば誰かは髪飾りつけるとか」

「それ、服をいくらでも変えられると同じ事では?」

「確かに」

 

 言い負かされてしまった。

 

「じゃあ……書くとか?」

「何を?名札?」

「いや、顔」

「アイデンティティがですね!?」

 

 いいアイデアだと思うんだけどなぁ。

 

「まぁまぁそう言うわず、1回どうです?試しに」

「試しに、で人の顔に落書きできるの怖すぎませんか?」

「でも、それくらいしないと見分けがつかないんですよ」

「つく必要がないんですよね」

 

 次会った時に俺が困るだろうが。

 

 にしても、許可は出そうにない。ふーむ……

 

「えぇい、描かせろ!」

「本音はそれだな!?」

 

 あったりまえだろ。合法的に人の顔に人の顔かけるなら、そんな面白い話はない。

 面白そうだからやってみたい。と言うかやる。何としてもやる。

 

「覚悟しやがれ、ぬっぺらぼうの概念が消失するくらいの顔を描いてやる」

「いらないいらない。微塵もいらない」

 

 なお、この時の後日談としては。

 別日、マジで筆やら何やらを持参したのだが、盛大に顔に墨をぶちまけてしまい真っ黒なぬっぺらぼうを

作りだしてしまったのだが。

 

 面倒なので、それは別の話としよう。

 

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