皆で小説を書こう配信 まとめ   作:二 貂理

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第四十一回 『迷い家』『自慢したがり』

 迷い家、って知ってますかい?

 ちょっと、なんだコイツ、みたいな顔しないでくださいよ。可愛い後輩が雑談振ってるだけじゃないですか。

 え?言い方が胡散臭い?あー、それは……狙ってないといえばウソになるような……

 

 って、そんなことはどうでもいいんですよ。話を戻しますよ。

 そう、迷い家です。聞いたことは?ある。よっし、それはなにより。説明が雑で済むんで助かります。

 ざっくり言えばご存じの通り、山の中に唐突にあらわれる、無人の、なんか妙に立派な家。

 んで、そこから何かを持ち帰れば幸福が訪れる、ってされてるやつです。

 

 どうです?知ってるのとズレてたりは……しなさそうっすね。んじゃ、このまま進めますけど。こないだ、それに遭遇したんすよ。

 

 ……ちょっと、やめてください。そんな「頭でも打ったか」みたいな目で見るの。結構心に来るんすよ、それ。

 や、ホントに。コーヒーでも飲む?じゃないんですよ。疲れてません、なんもないですって。直の先輩なんだから、今週自分が仕事してるフリしかしてないの知ってるでしょ?

 

 や、それもそうだな、って納得されるとそれはそれで困る物があるんですけど。まぁいいや。

 

 んで、その時の話なんですけどね―――

 

 

 

 =〇=

 

 

 

「あれ、こんなとこに家なんてあったっけ……」

 

 人気のない山奥を散歩する。そんな場所によっては命知らずともとられうる趣味を持っている身の上として、よく来る山の中はおおよそ把握しているつもりだったのだが。

 その日は、まるで見覚えのない家に出くわした。

 

「ふーむ」

 

 なんだろうこれ、と。とりあえず、考えてみる。

 一番現実的なのは、この山の持ち主が家を建てた、とか。なんかそういう方向性。俺が来てなかった間に新築されたから知らなかった、みたいな。

 ただ、俺先週もこの山来たよな……

 

「家って一週間で建つモノなのか」

 

 技術の進歩に感動を覚えながら、スマホを取り出す。「家 建築 期間」。

 建てるだけでも3~6ヶ月。うん、ないな。

 

「それに、新築にしてはぼろいよな」

 

 いや、ぼろいというのはちょっと表現が間違っているか。正しくは、古い。さすがに築一週間の見た目ではないくたびれ感と、現代に似合わない古い外観をしているのだ。

 

「うーん」

 

 分からない。シンプルに匠の技術で古民家を超リアルに1週間で再現した、という可能性もあるにはあるが、まぁ、うん。無いだろう。

 

「うん、分からん」

 

 となれば、だ。玄関に歩み寄り、インターホンらしきものはなかったため、戸口をノック。三回以上、とかだっけかと思いながらとりあえず四回程。

 

「すみませーん」

 

 聞こえなかった可能性も考え、声も出す。先週なかったのは間違いないのだ。そんな摩訶不思議現象の中なら、急に知らん奴が聞いてきてもおかしくはないだろう。

 分からないのなら、聞けばいい。

 

「反応ないな」

 

 留守、という可能性もある。が、このままよく分からない状態で帰るのもなんだかなぁ、なので。一縷の望みにかけて、再びノック。

 

「すみませーん」

 

 当然、声もかける。と、扉がひとりでに開いた。

 

「あ、すみません急に知らん奴が」

 

 と、まぁ先手を打って無礼を謝ろうとし、言葉の先を失う。

 誰もいなかった。扉を開けた人、なんてものは存在しなかった。

 

「うそん」

 

 ノックの振動で自動的にあいた?いや、流石にそれはないだろう。マンションの共通入り口を遠隔であけるあれ?それならまぁ、めっちゃ不釣り合いだけど、納得は出来る。

 

「……ってことは、入ってもいいのかな?」

 

 なんとなく。

 そう、なんとなく。入ってもよさそうな、と言うか。当たり前に入っていいモノだ、という感覚に襲われ。しかしそれに従って不法侵入する勇気もなく。

 なんとなく、自分の中で納得できる言い訳を準備してしまう。そんな感覚。

 

 とまぁ、長々と語ったが。

 それに従って、俺はその古民家に足を踏み入れた。

 

 

 

 =〇=

 

 

 

「それ、不法侵入だろ」

「まぁ、そうなりますよね」

 

 あの後。

 結局話してる最中に缶コーヒーを奢ってくれたので、二人そろって飲みながら話した。

 うん、まぁなんの反論も出来ない正論。

 

「いやまぁ、今ここにいるってことは大丈夫だったんだろうけど」

「大丈夫だった、んじゃないですかねぇ」

「おい、そこ曖昧なのかよ」

「だって、人いなかったですもん」

 

 オマエ、って目をされたので弁明。

 

「ほら、言ったじゃないですか。迷い家、って」

「言ってたな」

「いわゆる妖怪現象的なアレですよ?不法侵入打逮捕だ、の対象からは外れてるんじゃないかなぁ、って」

 

 んなわけあるか、って目をしてる。

 まぁ、うん。仕方ない。

 

「んで、その後なんですけどね」

「いや、平然と話をつづけるな」

 

 続けさせていただきます。

 

 

 

 =〇=

 

 

 

「なるほど、つまりこれは迷い家ってやつなわけだ」

 

 暫く散策して。

 とりあえず、自分の中でそう結論を出した。

 

 まだ暖かい囲炉裏に湯呑のお茶、体温の残る座布団的な何かに、やはり誰の気配も感じない、その癖生活感はある家。

 これは、そう。昔何かで読んだ、迷い家って奴に違いない。

 

「んなわけあるかい」

 

 と、直感的に出た結論に理性が反論を示す。

 まぁ、うん。こうなるのも分かる。というか、きっとこれが正しい。妖怪なんてものはいないのだと、成長と共に学んでいくのが人間というモノであり。その果てにたどり着くのが、夢も希望もない我々社畜という大人なのである。

 ……とまでは言わないが。まぁ、そんな感じの存在として。そんな直観は否定するのが流れという物だろう。

 

「モノのはずなのに、なんかしっくり来てるんだよなぁ」

 

 ないはずなのに。

 なぜか、俺の中では「これが迷い家だ」という結論を受け入れてしまっている。

 

「……そういう妖怪現象、なのかな」

 

 もしかして。そう直感的に認識してしまうのまで含めて、迷い家という妖怪現象なのだろうか、と。

 そんな荒唐無稽な考えまで浮かんで来た。

 

 仕方ない。

 考えても結論が出ないようなことは、受け入れてしまうしかない。そういうものだ、ってことで良しとしよう。

 

 これは。ここは、迷い家だ。

 

 結論付けると、なんかすっきりした。

 

「迷い家、ってことは……」

 

 そう。「何かを持ち帰ると幸福が訪れる」。それが、迷い家のざっくりとした本質。

 何盗んで帰ろう。

 

「あんまりでかいのは、目立つし持ち帰りづらいし……」

 

 と、すぐに目に付くようなものは除外する。

 

「かと言って、誰が使ったかも分からない湯呑とかは、なぁ」

 

 なんとなく。生理的になんかヤダ、というヤツだ。昔読んだのではお椀とかを持って帰ってた気もするのだが、それはそれである。

 なんかやだ。であるのなら、無理。

 

「何かないかなー、っと」

 

 というわけで。いたし方なく、家探しをすることにした。箪笥の棚とかを引っ張り出して、何かお手軽なものはないか、と。

 

「お」

 

 と。3か所目くらいで、よさげなサイズ感の物を見つけた。

 薄い木の板に葉っぱの絵柄を刻み、穴をあけて紐を通したモノ。歴史感じる的な観光地ではまれに見かけるキーホルダーとか、なんかそんな感じの物。

 

 パッと持って帰れるし、持ち運ぶにも難はない。なんなら身に着けていることも出来る品物。

 うん、丁度いいじゃん。

 

「貰っていきますね、これ」

 

 ポケットに入れ、棚を再び戻して立ち上がる。もう用はない。

 玄関に向かい、玄関を出て。そのまま帰ろうとして、最後にもう一度みておこうかと振り返って。

 

「消えてんじゃん。マジかよ」

 

 すっかり、跡形もなく消えていることに気付き。妖怪現象ってやつはホントにあるんだなぁ、と実感するのだった。

 

 

 

 =〇=

 

 

 

「ってことがあったんですよ」

「ほーん」

「いや、ほーんて」

 

 なんて軽い返答なのだろう。

 

「んで、これがその時持ち帰ったキーホルダー?根付け?なんですけど」

「はいはい」

 

 と、あれ以来なんとなくポケットに入れて持ち歩いているのを取り出し、テーブルの上に置く。何故か触れようとはせずに、器用に眺めていた。

 

「で?続きとしては、コレを持ってからマジでいいことがあるんですよ、的な?」

「あー、まぁそうですね」

 

 おかしい。先輩が物理的にちょっと距離をとった。

 

「つっても、大したことじゃないんですけど」

「うん?」

「例えば、こう。なんか最近よく自販機の当たり引くなー、みたいなのとか」

「そういえば、最近なんでか2本持って帰ってきてたね」

 

 そう。毎回じゃないけど、5回に1回くらいの確率で当たりを引くのだ。嬉しいんだけど、呑みたい気分じゃない時に当たっても、ちょっと困る。

 

「なんかまぁ、そんな感じのプチ幸運が重なるんですよね。最近」

「……プチ、だなぁ」

 

 なんでか先輩が頭を抑えた。どうしたんだろう、期待外れだったとか、そんな感じかな。

 

「と、そんなよく分からないことがあって、よく分からない物を持って帰ってきました、みたいな話なんですけど」

「あー、うん。ちなみになんだけどさ」

「はい?」

 

 脈絡のない質問タイム。が、まぁ、うん。コーヒー代分くらいはそういうのにも付き合おう。

 

「先輩も買いませんか、みたいな結びだったりする?」

「しませんよ。一個しかないんですから」

「あ、うん。じゃあ一緒に行きましょう的なのとか」

「ないですよ。別日に行ってみたりもしたんですけど、たどり着けなかったので」

「そっかぁ」

 

 今度は両手で顔を覆った。

 どうしたんだろう、今日の先輩忙しいな。

 

「いや、うん。いいか、一旦」

「はい?」

「いや、こっちの話」

 

 勝手に悩んで勝手に解決してる、この先輩。すご。

 

「ただ、な」

 

 と、解決しながらも言う事はあるようで。そんな言葉が出てきた。

 

「はいはい」

 

 ので。良い後輩として素直に聞いておこう、という方針に動き。

 

「変な宗教にはまったか、コイツ。とは思ってる」

「あー」

 

 納得してしまった。

 確かに、なんかこう、妙に宗教っぽい。カルトチックな何かに嵌った後輩の図だ。

 慎重にもなるわな、うん。

 

「先輩」

「うん?」

「ちがうんです」

 

 納得とまではいかないけど、少なくとも変なカルトには嵌ってない、と納得してもらうのに1週間かかった。

 

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