皆で小説を書こう配信 まとめ   作:二 貂理

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第四十五回 雪女

 雪女、という妖怪がいる。

 あ、知ってる?うん、だよね。日本の妖怪有名どころと言えば河童、天狗、雪女の3体、みたいなところあるしね。

 

 じゃあ、説明は省略。いらない説明に使う時間も文字数もないのです。

 えぇ、省略省略。大胆にバッサリ切り落としていきましょう!

 

 え、切り落とすのはダメ?普段とテイストを変えると構成が面倒?そんなご都合知らないんだけど……まぁ、いっか。

 んじゃ、普段と近しい構成で。ただ、内容は普段からちょっとずらして。俺の置かれてる状況の説明でも。

 

 告白した相手が、雪女だった。

 

 ……何っいてるんだ、って?うーん、そっか。じゃあ、もうちょっと補足。

 

 告白した同級生が、雪女だった。

 

 頭を抱えないで欲しい、まだ話の途中なんだ。

 うん、話の途中。おーけー?

 よーしよし、じゃあ続きだ。

 

 もう一度言うと、告白した同級生が雪女だった。なんでわかるかって?

 

『やめといた方がいいよ。私、雪女だから』

 

 って返されたからだよ。

 好きな人が「雪女です」って言ってるんだ。じゃあ、雪女なんだろ。

 ついでに、目の前で花凍らせてクシャってやるやつ見せてもらったし。

 

 んで、話を戻すんだけどさ。

 それでも!って言ったら、こう返されたんだよ。

 

『そうじゃなくてね。雪女には、タブーが多いんだ。だから、深く関わっちゃうと、死んじゃうんじゃないかな』

 

 って。さすがにそれは、それでも!とは返せなかった。

 好きな人と一緒にいるために命でも、って言うと美談に聞こえるけど。要はそれって、自分を殺した罪を押し付ける、ってことだもんな。

 

 だから、俺はこう返したんだ。

 

『じゃあ、そのタブーを全部回避できるようになったら付き合ってくれ』

 

 どうなったか、って?

 なんだコイツ、って目で見られた。

 

 ちょっとゾクッとした。

 

 

 

 =〇=

 

 

 

「じゃあ、タブーの説明をします」

「はい、せんせー!」

 

 告白の直後。

 タブーについて教えてくれ、って言ったらこういう流れになった。放課後で誰もいないし、ちょうどよかったんだろう。

 

「まず、前提なんだけど。これから話すことに、理由はありません」

「ないんすか」

「ないんすよ。手を離したら物が落ちるくらいの、法則だと思って」

 

 それはどうにもならないのでは?

 なんて考えながら唸っている間に、黒板にはいくつかの法則が並んでいた。

 

 ・子供を抱いてくれと言われ、受け取るとめっちゃ重くなって雪に埋もれてしまう。

 ・男の精気を奪う

 ・子供の生き胆を抜く

 ・顔を見ると食い殺される

 ・言葉を交わすと食い殺される

 ・返事をしないと谷底に突き落とされる

 ・呼びかけに背を向けると谷底に突き落とされる

 ・「水をくれ」と言われ水を与えると殺される

 

 あれ?

 

「せんせー!」

「はいなんでしょうか」

「今がっつり話してるし、呼びかけに答えてるのに無事なのはどうして?」

 

 物が落下するくらい当たり前の事象って話なのに、今こうして会話が成り立つのはなぜなのか。

 

「あー、私まだ雪ん子だから」

「雪ん子?」

「そう、雪ん子。ここで登場してる子供のことね」

 

 黒板の一部を指で叩きながらの説明。

 なるほど、雪ん子。つまるところ、厳密にはまだ雪女じゃないのか。

 

「と言うわけで話を戻すんだけど、私にはこれだけのタブー……というか、日常的に関わる中で死のリスクがあるの」

「精気を奪うってのも?」

「めっちゃわかりやすく言うと、サキュバス的なあれだから。命アブナイ」

「わーお」

 

 ギリギリ雪女怖いが勝った。

 

「さて、コレを見てどう思った?」

「何をどうしても詰みなのがありませんか?」

「よく気付きましたね、あるんですよ」

 

 うん、だよね。

 話しかけられた時、返事をしても死。しなくても死。背を向けたら死。

 さらに言えば、顔を見ても死。

 

 うーん、見事に逃げ場がない。詰んでいる。

 

「高校生の告白に対してここまで考えるのは重いというか、まぁぶっちゃけ学生時代のお遊び、とかで開き直ってもいいとは思うんですけど」

「思うんですか」

「はい。20になったらこうなっちゃうので、だったら自由にできる今の内に、

って」

 

 確かに。

 俺の立場だけで考えてたけど、向こうにしてみれば人とまともに話す事はおろか、顔を合わせることすらできなくなるのだ。

 自由度の高い今の内に、ってのは正解なのかもしれない。

 

「あれ、じゃあなんで断られたの?」

「や、結構本気そうだったので。なんかつられて」

「つられて」

 

 あー……まぁうん。

 結果オーライ、ってことにしよう。

 

「じゃあ、あとはこれにどう対応するか、か……」

「あ、対応していく方向なんですね」

「まぁ、本気で告白したので」

 

 そら、今の気持ちが将来どうなるか、なんてわからないけど。

 少なくとも今は本気なので、それなりにしっかり考える。

 

「とはいえ、うーん……」

「難しいでしょう?」

「うん、難しい。特に、2・3・6・7が」

 

 一回整理しよう。

 

 まず、何とでもなるのが。

 ・子供を抱いてくれと言われ、受け取るとめっちゃ重くなって雪に埋もれてしまう。

 ・顔を見ると食い殺される

 ・呼びかけに背を向けると谷底に突き落とされる

 ・「水をくれ」と言われ水を与えると殺される

 

 次に、どうにもならないのが。

 ・男の精気を奪う

 ・子供の生き胆を抜く

 ・言葉を交わすと食い殺される

 ・返事をしないと谷底に突き落とされる

 

 ってところだと、思う。

 

「あれ、思ったより何とかなる?」

「んじゃないかな、って」

「ふむ……例えば、これは?」

 

 と、「子供を抱いたら~」を指し示す。うん、これはまぁ単純で。

 

「雪の上で子供を差し出さないで下さい」

「あ、なるほどそういう」

 

 うん、これはシンプルな話だと思う。

 吹雪の中~、とかいう状況だから確定死なのであって。そういう場でさえ無ければ、害はないのではなかろうか。

 

「埋もれないだけでめっちゃ重くなりますよ?」

「筋トレ頑張ります」

 

 そこはまぁ、うん。それでいいはず。

 ファイト、俺。ってことで。

 

「なるほどなるほど。じゃあ、この組み合わせは?」

 

 続けて、「顔を合わせる」と「背を向ける」のセット。なるほど確かに、見せられた瞬間はどうしたものか、てなった。だがしかし!

 

「まず、貴女に紙袋をかぶせます」

「オーケー、理解した」

 

 理解いただけたようでなによりだ。

 まぁ、背を向けるまでしなければ良いだけの話だから、手元のスマホを視ながら~とか、ちょっと顔だけを背けていればいいとは思うのだけど。

 一番安全なのは紙袋とかお面とか、そういうベクトルな気がする。

 

「ちなみに、顔を合わせる、だから俺が被ってもいいのでは?と思ってます」

「なんだか、だんだん屁理屈めいてきましたね」

「や、あくまでも現象、ってことはそういうことなのかな、って」

 

 物が下に落ちるのと同じようなモノ、と言っていた。屁理屈だけど、より正確には「重力がある場所で」っていう前提がつく……はずだ。

 ってことは、その辺の前提を崩せば大概何とかなるのではなかろうか。

 

「ってことは、水をくれ、は」

「飲み物は水以外にする習慣をつける、ってことで」

 

 たぶん、これはこれで水でさえなければいいと思う。

 一応ほら、雪=水だから、水は危険そう、って理屈もあるし。うん。セーフセーフ。

 

「その理屈がありなら、この言葉交わす系もチャットでいいことになりますけど」

「あー、なるほどそれだ」

 

 文明バンザイ。

 なんなら妖怪全盛期にはなかった概念だろうから、対象外な気すらする。

 

 となると、あとは……

 

「生き胆と精気が問題か」

「前者はともかく、後者もですか?」

「まぁ、はい。一応その、健全な男子高校生ですので」

 

 それを完全に切り離せ、というのも難しい話なのである。腕組みをしてうんうんと頷いていたら、なんか体を抱くようにしてドン引きされた。

 

「待って欲しい、弁明の機会を」

「一度だけ許可します」

「あなたのことが好きです、付き合って下さい。けどあなたの体には興味ないので安心してください。というのもこの上なく失礼だと思うんです」

 

 体に魅力は一切ない、という発言になってしまう。これは失礼極まりないのではないか、と。

 

「あのですね」

「はい」

「どうしてもセットになるのは解りますし、生存に繋がる欲求の一つな以上、切り離せないのも正しいです」

「はい」

「ただ、そうだとしてもオープンにするのは違うでしょう」

 

 ごもっともである。

 

「大変申し訳ありませんでした」

「やっすい土下座ですね」

「お望みとあれば五体投地も」

「いりません、席に戻って下さい」

 

 着席。

 

「さて、許されたところで」

「執行猶予付きですけどね」

「許されたところで話を戻すんですけど」

 

 もう一度土下座をするわけにもいかないので、押し切る方向で。

 

「えっと、雪ん子なんですよね?」

「はい、現時点では。—――まさか今なら出来るとかいうつもりじゃ」

「さすがにそうではないので冷気を収めてください」

 

 状況があまりにも悪いので、素直に頭を下げることにした。

 

「や、話の方向性は若干シモい方になるんだけど」

「……まぁいいでしょう」

「寛大なお心に感謝します」

「感謝の心は、自販機のジュースで受けとります」

 

 この話が終わったら奢らせていただこう。

 

「その、ご両親はどのようにして?」

「あー」

 

 今目の前に「雪女の子供」がいる以上。というか、伝承の中に雪女の子供が登場する以上。

 何かしら手段があるのでは、というのは間違った思考ではないはずだ。

 

「えっと、ですね」

「はい」

「仮にも女の立場でこんな説明するのは大変アレなのですが」

 

 おっとしまった、再び土下座案件だろうか。

 

「まず前提として。おおよその雪女は、しっかり男側が命を落とすか、それに近い状況になった先に子供を授かるパターンになります」

「ワァオ」

 

 言われてみれば、確かに。

 終わった時、男が生きてる必要は無いのか。なるほど、うん。意味合い違うけど、カマキリとかそうだしなぁ。

 

「で、じゃあ私の場合はどうだったか、というとですね」

「はいはい」

「父親は父親で、大変旺盛な性格かつ体質だった、と」

 

 What?

 

「そう、両親から聞いています」

「なんてこと話してるんだご両親」

「そのおかげか、兄弟姉妹が1人いるのすら珍しい雪女界隈で、何とびっくり5人姉妹の長女です」

「変なことを聞いてしまい、大変申し訳ありませんでした」

 

 再びの土下座である。迷いは無かった。

 

「ちなみに、父曰く。薬もあるから割となんとかな」

「ごめんなさい俺が悪かったです変な質問しましただから許してください!」

 

 もう耐えられない。さすがにこれ以上聞くことは出来ない。

 ただ、まぁ、うん。活路は見えた。なので、これはもう解決、ってことで。

 

「じゃあ最後は、子供の生き胆だけど」

「あー……これは、まぁ」

「まぁ?」

 

 なんか軽い様子だな。結構な大問題だと思うんだけど。

 

「まず前提として、ですけど。これ、他人の話ですからね?自分の子供のことじゃないです」

「あ、そうなの?」

「はい。じゃないと雪ん子の伝承、成り立たないじゃないですか」

 

 言われてみれば、確かに。

 ってことは、偶然出会った子供の生き胆を抜き取るのか。なんだその通り魔。

 

「なのでまぁ、他の子供に会わないようにさえしていれば何とかなるとか」

「なるほど……」

「唯一の問題は―――あ、誕生日何月ですか?」

 

 誕生日。誕生日?

 

「6月だけど」

「なら大丈夫ですね。私は12月なので。先に大人になるのはあなたです」

 

 なんのこっちゃと思いつつ、理解した。なんてことはない、俺の生き胆を彼女が抜き取るケースがあるかどうか、の話だったわけだ。

 

「じゃ、それも解決ってことで」

「なので、まとめると……」

 

 問題点に対し、順繰りに書き込んでいく。

 

 ・子供を抱いてくれと言われ、受け取るとめっちゃ重くなって雪に埋もれてしまう。

  ⇒雪の上で子供を抱かせるな

 

 ・男の精気を奪う(サキュ・・・?)

  ⇒男側、ガンバ。

 

 ・子供の生き胆を抜く

  ⇒誕生日の順番的におそらくOK。

 

 ・顔を見ると食い殺される

  ⇒顔を見ない。紙袋かお面を被る

 

 ・言葉を交わすと食い殺される

 ・返事をしないと谷底に突き落とされる

  ⇒チャットで会話をしましょう

 

 ・呼びかけに背を向けると谷底に突き落とされる

  ⇒顔隠してれば見てもいいので問題なし。

 

 ・「水をくれ」と言われ水を与えると殺される

  ⇒水以外を飲みましょう。

 

「ふむ、解決?」

「これだけの無茶を求めてくる相手からの告白を検討するだけの義理、私に無いと思うんですけど」

 

 うーん、大変ごもっともである。

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