皆で小説を書こう配信 まとめ   作:二 貂理

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第四十六回 ろくろ首

 わたしはろくろ首だ。

 あ、うん。たぶん今呼んでる人がイメージした姿で合ってる。白い首がめっちゃのびる、女の妖怪。それが、わたし。

 首が胴体から離れて飛び回る~、なんて感じのろくろ首もいるんだけど、そういうマイナーな方じゃなくて、ストレートにイメージする方のヤツ。

 

 ここまでオッケー?ついてこれてる?まぁ大乗不じゃなくても続けるから、何とかしてついてきて。イケるイケる。

 

 さて、そんなわたしなのだけど。イチろくろくびとして、とある悩みがある。個性が薄いのだ。

 

 あ、違うよ?個人としての個性じゃなくて、妖怪としての個性。

 だってほら、考えてみてよ。

 

 化け狐。変化を得意とする妖怪。それによって人を驚かせる。

 それだけではなく、九尾の狐は傾国の美女となり国を傾かせた。

 そうでなくとも、神の使いとして有名である。

 

 化け狸。化け狐と同じように変化を得意とし、こちらは人を驚かせ楽しむことが主眼となっている。

 人を化かす、といえば狸の一強である。

 

 天狗。赤い顔に長い鼻の者、鴉の顔に翼をもつ者など、バリエーションが豊富。

 人に害をなす悪逆として描かれることもあれば、修験者の行きつく先、神の使い、場合によっては神そのものとして登場する。

 

 ろくろ首。めっちゃ首が伸びる。以上。

 

 これである。あまりにも弱い。

 なにせ、ただ首が伸びるだけだ。有名なだけで、あまりにも没個性。

 

 と、そんなわけで。何か個性を得られないか、新たなろくろ首の姿を示すヒントが得られないか、と勉強にきた先で。

 

「ぐふっ、えほっ……」

 

 打ちのめされ、地面にぶっ倒れていたのであった。

 なんでだ。

 

 

 

 =〇=

 

 

 

「うーむ、なぜこうも魅力的なのか」

 

 と。妖怪の友達と並んだ際の無個性さに危機感を覚えたわたしは、動物園に忍び込んでいた。

 首が長い、首が伸びる。ただそれだけの個性しか持っていない。それが、ろくろ首という妖怪である。

 

 が、しかし。そんな没個性感半端ない特徴を持っていながらも、人気な動物がいるのである。

 根強い人気を持ち、注目を集める、異常ならざる動物が、存在するのである!

 

「おー、首伸びとる。亀こんなに伸びるんか」

 

 というわけで、その一角を眺めている。

 亀だ。うにょーんと首を伸ばし、エサに噛みつきながら首を引っ込める。噛みちぎられた植物に口の形が転写されているのは、なるほど可愛らしい。

 

「甲羅からうにょーんって伸びてるの、めっちゃ癒されるなぁ……」

 

 そのうえ、甲羅の中にすべて収納されてしまうのもいい。怖いことがあったらパッと隠れる臆病モノ、って感じがしてめっちゃ可愛い。

 

「首が伸びる、なんていう没個性を甲羅で補ってるのか。コレは人気になるわけだ」

 

 没個性を補うカギ、甲羅に見つけたり。わたしも自分が隠れられるくらいの甲羅を背負えば……

 

「ダメだ、河童と被る」

 

 妖怪の世界にも、既に先達がいた。河童と言えば甲羅、甲羅と言えば河童である。勝ち目なんてあるわけがない。

 

「仕方ない、次だ」

 

 立ち上がり、最後に一枚写真を撮ってから次の目的地へ向かう。本日の本命、それは……

 

「おー、めっちゃ首長いな」

 

 黄色に黒の水玉模様な首長動物。

 そう、キリンである。

 

「うん、首長い。めっちゃ長い。どう見てもバランスが悪いくらいには長い」

 

 確か、樹の高いところに生えた葉を食べるために進化した、とかなんとか。まぁ、それは正当な進化なのだろう。あまりにもバランスが悪いように思うけど、合理的な進化なんだと思う。

 だがしかし、だ。

 

「コレは流石に、首が長いだけでしょ」

 

 それ以外の感想が出てこないのである。大変失礼ながら、何も。

 強いてあげるのなら黄色がめっちゃ目立つ。わたしも白い和服で首伸ばすんじゃなくて、サンバの格好でもして首伸ばしてみようか、と思うくらいには、目立つ色をしている。

 

 が、それだけだ。見落としがあるのかと近づいてもみたが、少なくともわたしが感じられる特徴はそれだけの、没個性側な動物と思う。

 にもかかわらず、結構不動の地位を獲得できるくらいには根強い人気があるのだ、このキリンとか言う動物は。

 

「なんだろ、実はかわいい顔つきをしてる、とか……?」

 

 下から見上げてみるも、真下からではよく見えない。閉園中に忍び込んだおかげで人もいないし、いっか。

 

「うーん、可愛いとは思うけど、特別感があるわけではないしな……」

 

 首を伸ばし顔を近付けてみるも、やっぱりそこまでの特別感はない。

 にもかかわらず、あれだけの人気。やっぱり何かあるのだろうか、と再度顔を近付け、

 

「ゴフッ……!?」

 

 思いっきり、伸びた首に首を叩きつけられた。

 全力でしならせた首を、鞭のように叩きつけられた。

 

「—――そっか」

 

 倒れ込み、ひとしきり咳き込んで。落ち着いたところで、わたしは結論を得た。

 

「わたしに足りなかったのは、今あるモノをどう活かすか、っていう発想だったのか……!」

 

 ただ首が長い、というだけの特徴。それをキリンは、攻撃手段へと昇華した。そんな発想力こそが、キリンの魅力だったんだ!

 

 違うというツッコミが聞こえた気がしたが、きっと気のせいだろう。

 

「よっし、そうと分かればもう一本!」

 

 勢いよく立ち上がり、首を伸ばしながら叩き付ける。当然、キリンも叩き付けてくる。

 そんなことを、翌朝人の気配がするまで続けた。

 

「いや、絶対コレ個性じゃないな」

 

 翌朝。

 めっちゃ痛む首を伸ばし、大量の湿布を貼りながら、全力で後悔した。

 

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