皆で小説を書こう配信 まとめ 作:二 貂理
わたしはろくろ首だ。
あ、うん。たぶん今呼んでる人がイメージした姿で合ってる。白い首がめっちゃのびる、女の妖怪。それが、わたし。
首が胴体から離れて飛び回る~、なんて感じのろくろ首もいるんだけど、そういうマイナーな方じゃなくて、ストレートにイメージする方のヤツ。
ここまでオッケー?ついてこれてる?まぁ大乗不じゃなくても続けるから、何とかしてついてきて。イケるイケる。
さて、そんなわたしなのだけど。イチろくろくびとして、とある悩みがある。個性が薄いのだ。
あ、違うよ?個人としての個性じゃなくて、妖怪としての個性。
だってほら、考えてみてよ。
化け狐。変化を得意とする妖怪。それによって人を驚かせる。
それだけではなく、九尾の狐は傾国の美女となり国を傾かせた。
そうでなくとも、神の使いとして有名である。
化け狸。化け狐と同じように変化を得意とし、こちらは人を驚かせ楽しむことが主眼となっている。
人を化かす、といえば狸の一強である。
天狗。赤い顔に長い鼻の者、鴉の顔に翼をもつ者など、バリエーションが豊富。
人に害をなす悪逆として描かれることもあれば、修験者の行きつく先、神の使い、場合によっては神そのものとして登場する。
ろくろ首。めっちゃ首が伸びる。以上。
これである。あまりにも弱い。
なにせ、ただ首が伸びるだけだ。有名なだけで、あまりにも没個性。
と、そんなわけで。何か個性を得られないか、新たなろくろ首の姿を示すヒントが得られないか、と勉強にきた先で。
「ぐふっ、えほっ……」
打ちのめされ、地面にぶっ倒れていたのであった。
なんでだ。
=〇=
「うーむ、なぜこうも魅力的なのか」
と。妖怪の友達と並んだ際の無個性さに危機感を覚えたわたしは、動物園に忍び込んでいた。
首が長い、首が伸びる。ただそれだけの個性しか持っていない。それが、ろくろ首という妖怪である。
が、しかし。そんな没個性感半端ない特徴を持っていながらも、人気な動物がいるのである。
根強い人気を持ち、注目を集める、異常ならざる動物が、存在するのである!
「おー、首伸びとる。亀こんなに伸びるんか」
というわけで、その一角を眺めている。
亀だ。うにょーんと首を伸ばし、エサに噛みつきながら首を引っ込める。噛みちぎられた植物に口の形が転写されているのは、なるほど可愛らしい。
「甲羅からうにょーんって伸びてるの、めっちゃ癒されるなぁ……」
そのうえ、甲羅の中にすべて収納されてしまうのもいい。怖いことがあったらパッと隠れる臆病モノ、って感じがしてめっちゃ可愛い。
「首が伸びる、なんていう没個性を甲羅で補ってるのか。コレは人気になるわけだ」
没個性を補うカギ、甲羅に見つけたり。わたしも自分が隠れられるくらいの甲羅を背負えば……
「ダメだ、河童と被る」
妖怪の世界にも、既に先達がいた。河童と言えば甲羅、甲羅と言えば河童である。勝ち目なんてあるわけがない。
「仕方ない、次だ」
立ち上がり、最後に一枚写真を撮ってから次の目的地へ向かう。本日の本命、それは……
「おー、めっちゃ首長いな」
黄色に黒の水玉模様な首長動物。
そう、キリンである。
「うん、首長い。めっちゃ長い。どう見てもバランスが悪いくらいには長い」
確か、樹の高いところに生えた葉を食べるために進化した、とかなんとか。まぁ、それは正当な進化なのだろう。あまりにもバランスが悪いように思うけど、合理的な進化なんだと思う。
だがしかし、だ。
「コレは流石に、首が長いだけでしょ」
それ以外の感想が出てこないのである。大変失礼ながら、何も。
強いてあげるのなら黄色がめっちゃ目立つ。わたしも白い和服で首伸ばすんじゃなくて、サンバの格好でもして首伸ばしてみようか、と思うくらいには、目立つ色をしている。
が、それだけだ。見落としがあるのかと近づいてもみたが、少なくともわたしが感じられる特徴はそれだけの、没個性側な動物と思う。
にもかかわらず、結構不動の地位を獲得できるくらいには根強い人気があるのだ、このキリンとか言う動物は。
「なんだろ、実はかわいい顔つきをしてる、とか……?」
下から見上げてみるも、真下からではよく見えない。閉園中に忍び込んだおかげで人もいないし、いっか。
「うーん、可愛いとは思うけど、特別感があるわけではないしな……」
首を伸ばし顔を近付けてみるも、やっぱりそこまでの特別感はない。
にもかかわらず、あれだけの人気。やっぱり何かあるのだろうか、と再度顔を近付け、
「ゴフッ……!?」
思いっきり、伸びた首に首を叩きつけられた。
全力でしならせた首を、鞭のように叩きつけられた。
「—――そっか」
倒れ込み、ひとしきり咳き込んで。落ち着いたところで、わたしは結論を得た。
「わたしに足りなかったのは、今あるモノをどう活かすか、っていう発想だったのか……!」
ただ首が長い、というだけの特徴。それをキリンは、攻撃手段へと昇華した。そんな発想力こそが、キリンの魅力だったんだ!
違うというツッコミが聞こえた気がしたが、きっと気のせいだろう。
「よっし、そうと分かればもう一本!」
勢いよく立ち上がり、首を伸ばしながら叩き付ける。当然、キリンも叩き付けてくる。
そんなことを、翌朝人の気配がするまで続けた。
「いや、絶対コレ個性じゃないな」
翌朝。
めっちゃ痛む首を伸ばし、大量の湿布を貼りながら、全力で後悔した。