皆で小説を書こう配信 まとめ   作:二 貂理

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第四十七回 酒

 お酒とは、アルコールが含まれる飲み物である。

 

 と、端的に言ってしまえばそれだけの物だ。なんなら、呑みすぎれば体に毒となる、危険な飲み物ですらある。

 

 が。それはそれとして、上手く付き合えば美味しく、楽しい飲み物でもある。

 

 例えば。酒は最古の向精神薬の1種である、と捉えたのなら。飲むだけで楽しい気分になれる、ちょっといつも寄り素直になれる、など。

 普段と違う自分を楽しむ後押しをしてくれるものとなる。

 

 例えば。食前酒というモノには、食欲を刺激する働きがあり。普段より多く、職を楽しむ助力となる。

 また、食べ物とお酒の組み合わせはより強く、食事を彩ってくれる。

 

 例えば。誰かと一緒に飲むお酒は、ちょっと精神のブレーキを外し、普段であれば起こりえない類の時間を引き出す手助けになってくれる。

 限度こそあれ、無礼講という概念も。それを適用させる、言い訳になりうる。

 

 例えば。食事を終え、寝る前の一時。誰にも邪魔されない時間に、ちょっとした物をつまみながら飲むお酒は、一人何もしない時間から罪悪感を奪ってくれる。

 何もしない時間という宝を享受する、一助となってくれる。

 

 ただし。薬と毒は紙一重。

 

 飲みすぎれば、理性のタガが外れる。やってはいけないことをやってしまう。 空きっ腹に酒を入れすぎれば、体は拒絶反応を起こし、食べた物を全て排出してしまう。

 ブレーキが無くなる程に飲んでしまえば、たちまち縁は失われる。 そして、酒を呑まなければ寝られないようになってしまえば。その先に待つのは、緩やかな破滅のみである。

 

 無駄にまどろっこしく言ったのなら。それが、お酒というモノである。少なくとも、わたしはそう認識している。

 

 酒は飲んでも飲まれるな、飲みすぎも、変な飲み方も、してはいけない。

節度を持って楽しむべきなのが、お酒というものである、と。

 

「やっば、旨いなコレ!」

 

 節度を持って。一人で飲んでいる時なんかには、不必要にテンションをあげるようなことはせず。

 

「テキトーな晩酌用にってポチったら大当たりじゃん、これ!」

 

 静かに、ゆったりと一人の時間をかみしめるように……

 

「しっかもこれ、ちゃんとクセ強いからジャンキーなつまみでも行ける……え、最強じゃん。やば、もっと飲も」

 

 自らを律し、食べすぎは勿論、それ以上にペースを乱し飲みすぎるような事もせず……

 

「あ、やっべもうロック空になっちゃった。面倒だしクアトロくらいでいくか」

 

 うん、ダメかもしれないこの化けイタチ。

 

 

 

 =〇=

 

 

 

 風呂を終え、夕食を終え、寝支度も終え。さて何をするかと思った時、お酒が飲みたくなった。

 

 最近通販で届いたウヰスキーがある。

 つまみも、めっちゃ強い薫香の燻製がある。

 氷なんかは、冷たい飲み物が好きだから常にある。

 何より。最後にお酒を呑んでから1週間、休肝日には十分だろう。

 

 そこまで考えて、グラスを取り出した。氷を放り込み、目分量でダブルくらいまで注ぐ。軽くグラスを揺らし、舐める程度に一口。

 

 旨すぎて、即空になった。

 

「いやぁ、まずいなこれ。いやまずくないんだけど。ヤバいなコレ」

 

 なんとなく、そういう意味じゃないとはいえ気になったので修正する。酒のみながらマズいはダメだよな、うん。

 お、意外と物書きらしいじゃないかわたし、なんて思いながら再度口をつける。40度が一気に入ってきて咽た。

 

「たぶん、注ぎすぎたな、これ」

 

 量が多い+氷に押される、のダブルパンチで入ってきすぎたっぽい。慎重に傾けて、湿らす程度の量を飲む。

 

 うん、旨い。クセめっちゃ強いから人選びそうだけど、わたしには合うな。

 

「それに、これくらいの方が強いツマミには合うし」

 

 と。酒が入り、独り言が増えてきたのを自覚しながら、抑えることはしない。うめ~、と感情を漏らしつつ、燻製肉をかじる。

 ありえない程に薫香が強い。袋を開けた瞬間「うおっ」ってなったほどだから当然なのだが、齧ると暴力的なまでの煙たさでぶん殴られる。

 

 これ、超クセのない日本酒とかで洗い流すように飲むのも美味しいだろうなぁ、などと思いつつ。ウヰスキーを一口。

 クセの強いウヰスキーは、奇跡的にケンカをすることなく噛み合った。

 

 あ、うん。なんか言い回し考えるのめんどくさいな。一言でいいや。

 美味い。めっちゃ旨い。

 

「いやぁ、思わぬ当たり引いたなこれ」

 

 酒でリミッターが外れたのだ、ということにして燻製チーズの袋もあける。めっちゃ薫香とチーズの甘い香りが漂ってきた。耐えられずに一口、+ウヰスキー。

 

「うん、そらうまいわな」

 

 ウヰスキーにチーズが合わないはずもなく。一切れの燻製肉とチーズでシングル分くらい無くなった。

 現飲酒量、トリプルくらい。まだいけるな、うん。いけるいける。

 

「なんか面白そうな動画あるかな~」

 

 配信でもいいし、アニメでもいい。何かを見たいというよりは、何かを見ながら飲みたい、という感覚でスマホを取る。

 ぼーっと聞き流せそうな動画を開き、頬杖をつきながらグラスを傾ける。

 時折つまみをかじり、またグラスを傾ける。

 

 うん、最高。

 

 

 

=〇=

 

 

 

「っと、もうこんな時間」

 

 なんて。

 時計を見たら、1時間は過ぎていた。中身なんてなく、だらだらとお酒を呑んで1時間。最高の贅沢だなぁ、なんて考えながら余ったつまみをしまう。燻製ならまぁ日持ちするだろ、というのは酒に侵された脳の戯言だろうか。

 

「んで、残りは……」

 

 目分量で、シングルちょっとくらい。ただ、氷もかなり小さくなっている。10~20くらいだろ、なんて思いながらグラスを傾けた。

 かなりまろやかになった液体が、抵抗なく喉を通り過ぎた。

 

「これはこれで、酒の楽しさなのかね」

 

 ゆったり飲んだ際の特権みたいな物だが。ロックの氷が溶け、味わいの変わった酒もまた格別である。

 中身的には水で割っても同じなのだろうけど、なんかこう、違うのである。

 違うのである!

 

「……もうちょっとだけ」

 

 なんて思いながら。

 それはそれとして、ウヰスキーの濃い味が好きな自分もいるわけで。ほぼ氷が無くなったグラスにシングルの半分くらい注いで、くいッと。

 咽た。それはもう、咽た。盛大に咳き込んだ。40度のお酒をくいッとじゃないんだよ、などと自分にツッコミを入れる。

 

「やっぱ、お酒でもうちょっとだけ、はアウトなんだなぁ」

 

 今にしてみれば、言うまでもない至極当たり前の事なのだけれど。

 その時は、そんな感想すら「バカだなぁ」なんて笑いながら〆にできる。そんな楽しい無価値だったのです。

 

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