皆で小説を書こう配信 まとめ   作:二 貂理

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第五十四回 ムカデ

 ムカデと言われて、何を想像するだろうか。

 足がたくさんあって細長いうねうねした虫、と答える人は多いのではなかろうか。かく言う俺もその一人である。

 

 ムカデ。百の足、なんて書くくらい山ほどの足を潰れた蛇に生やした、みたいなビジュアルをしている虫。……虫?である。

 いや、蛇ってより蛇腹の方が正しいかもしれない。潰れた蛇腹に細い足がわんさか生えている虫。

 

 はっきりと、俺の感想を言おう。

 大変気持ちが悪い虫である、と。

 

 そう感じる要因は色々とあるのだが、一番は足が多いことだと思う。六本足の昆虫から八本足のクモになっても不気味さが増すのだ。いわんや百本足では、というものである。

 

「えーっと、ムカデ駆除の方法は、と」

「いやいや、わざわざ駆除までしなくてもいいでしょ」

 

 そんなわけで。

 家に現れたムカデを駆除しようとしたのだが、何故か止められている。

 うーむ、解せぬ。

 

 

 

 =〇=

 

 

 

「いやいや、わざわざ駆除までしなくてもいいでしょ」

 

 と。

 どうにか空のプラ容器を被せてムカデを拘束した勇者である俺に対し、妹が冷めた目で言ってくる。

 

「なんでだよ」

「なんでって、逆に何で駆除までいくのさ」

 

 ソファの背もたれから体を乗り出し、逆に問い返してくる。

 ふむ、なんで駆除まで、か。

 

「むしろ見てなかったのかよ、さっきまでのコレを」

「例えば?」

「この見た目でうねうねと爆速で走ってたんだぞ」

 

 認めよう。特段実害があったわけではない。

 が、それはそれとして、だ。

 

 おもちゃの虫みたいな見た目、エナメル質っぽい質感の足という作り物めいた外観のクセに、しっかり走り回るのである。

 大量の足が全て同時に動きながら、体をうねうねと動かしていたことも含め。見た目からくるダメージがでかいのである。

 

「……つまり、実害があったでも今後あるでもなく?」

「そういうことになるな」

「思考回路ゼロ過ぎるでしょ」

 

 ぐっさり刺された。

 仕方ないだろ、考えるの苦手なんだから。

 

「じゃあ、駆除しない理由ってあるのかよ」

「別に実害ないし」

「そしたら、このまま放すか?」

「あ、やめてムカデ毒あるから」

 

 ガッツリ実害あるじゃねぇか。

 毒あるのかよ、ムカデ。見た目的には超納得。

 

「あとは、んー……縁起物だし?」

「縁起物?」

 

 コレが?

 この、プラケース内で足も体もうねうね動かしまくってる、ムカデが?

 

「そう、縁起物。ムカデって絶対後ろに進まないから、武将の間では不退転の縁起物として扱われてたんだよ」

「ほーん、不退転の」

 

 脱皮する蛇が不死の象徴っぽく見えた、みたいな動物の習性にあやかるシリーズなわけか。

 

「でも、それ現代社会に適用するとあんまりよろしくなくないか?」

「まぁ時には逃げることも大切だよね。うん、言いたいことは分かる。けどそうじゃないでしょ」

 

 うん、自分でも自覚はあった。

 

「他にも、神様の……毘沙門天だったかな?の使いらしいし」

「武将繋がり?」

「そんな言い伝え多めの神様ではあるよね、毘沙門天。ルーツは知らなーい」

 

 なんなら頭の上に蛇乗っけてるのもいなかったっけ、毘沙門天。顔がジジイの蛇。

 趣味悪くないか?毘沙門天。

 

「でも別に、実利ないし」

「害もないでしょうが、殺意高いな」

 

 そう言われるとシュンとなる。

 実の兄をサイコかのように言うのはやめないか、妹よ。

 

「でもほら、調べてみたらお湯かけたら簡単に駆除できるって出てきたし」

「大体の生き物はお湯かけたら死ぬんだよ。煮え湯やら油やら、しっかり戦争の道具だからね」

 

 あと見たいだけだろ、サイコか。と。かのようにじゃなくドストレートに言われてしまった。うーん、悲しい。

 

「あと、見た目はともかく益虫チックな面もあるんだよ?ムカデ」

「この見た目で毒持ってて?」

「なんと、ゴキブリの天敵」

「益虫も益虫じゃん」

 

 なんと、アシダカグモの同僚だったとは。そう思うとアシダカグモも見た目はまぁまぁ抵抗感あるし、対G特殊部隊はそういうものなのかもしれない。

 

「そういう事なら、開放するか」

「や、だから毒あるんだってば」

「でも、対G最終兵器の一つなんだろ?だったら多少の毒くらい、」

「最悪アナフィラキシー起こす毒あるから」

「やっぱ害虫じゃねぇか」

 

 そんなレベルの毒なのかよ、危うくこの場で開放するところだった。

 というか、ムカデ用の殺虫剤があるくらいだし。やっぱり害虫だろコイツ。

 

「ゲジゲジなら、ムカデの仲間だけど毒ないんだよねぇ。惜しい」

「もっと見た目のインパクトあるヤツを挙げるな」

 

 何?やっぱり対G特殊部隊って見た目強烈じゃないといけない縛りでもある?アシダカグモにゲジゲジって、深夜に見たら腰抜かすタイプの虫揃ってない?

 

「ま、そういうわけだからさ。ムカデ、外にでも逃がして来たら?」

「そういうわけだからさ、じゃねぇんだよ」

「でも、毒あるからここで開放するわけにもいかないじゃん?」

「毒なくてもさすがに勘弁だよ」

「けど、実害ないのに駆除するのも、じゃん?」

 

 とうとう返事もしなくなった。

 

「ケース被せて捕まえてるだけなんだから、持ち上げたら勝手に逃げるだろうが」

「そんなん、紙の1枚でも差し込めばいいじゃん」

 

 バカなの?という目で見られた。

 ……はい、俺がバカです。

 

 そんなことも思い付かなかった恥ずかしさから。

 俺は背中を丸め、ずこずこと撤退していくのであった。

 

 逃がしてやるんだから、今後逃げずにいられるようなご加護でも下さいよ、ムカデ様。

 

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