皆で小説を書こう配信 まとめ 作:二 貂理
これを読んでいる諸兄は、闇というモノへどのような印象を抱いているだろうか。
例えば、照明一つついていないトンネルのような。先を見通すことも出来ない不安な空間であったり。
例えば、何をしているのかも分からない。かと言って、触れたくもないような怪しいなにがしかの存在であったり。
そういった……見ることのできない状況や見てはならない状況を、想像するのではないだろうか。
……もしかしたら、いわゆる厨二病チックな想像をする方もいるのかもしれないが。今回はそれはわきに置いておく事にして。
そういった物をこそ、闇と呼ぶのではないかと考える次第である。
さて。しかし、だ。
どうやら君たち人類というのは、そう呼ばれていた物をこそ暴き立ててきた。暴き立てずにはいられない生き物らしい。
光りなき夜の帳を。
命奪う祟りの正体を。
踏み入れてはならぬ禁足の法則を。
誰にも知られぬ未踏の世界を。
そして。未だ
足を踏み入れ、開拓し、闇を剥ぎ取らなければ気が済まない。それが君たち人類という生き物なのだと。そう感じて仕方が無いのである。
=〇=
「ここが噂の廃鉱か」
「うっわー、ホントに真っ暗……」
明らかに人が入る事は想定されていない道を進み、たどり着いたその場所。
かつて荒くれ者が隠れ住んでいただとか、祟り神が封じられた場所だとか。10人に聞いたら10人が全く別の回答をしてくるような曖昧な場所の事を、俺達は廃鉱と呼んでいた。
「スマホのライトくらいじゃ、全然奥が見えないですよ、これ」
「あぁ、これだけ暗ければ立ち入り禁止にもなるだろうな」
麓の村で話を聞こうとした際。てんで一貫性が無かったにも拘らず、危ないから探したり、近づいたりしてはならない、という部分だけは全員共通だった。
ここに来るまでも危険な山道で、辿りついたとて中がこれだけ暗いのでは。危ないから近づくな、となるのが普通だろう。
「まぁ、そうは言っても、だ」
と。
ポーチから取り出した懐中電灯をつければ、完璧とまでは言わずとも安全に進めそうなくらいにはなった。
「こうして、気を付けて進めば大丈夫だろう」
進む先と足元、頭上くらいは照らせている。ヘルメットをかぶり足元の比重を増やせば、安全に進めるくらいにはなるだろう。
「よし、行くか」
「はい、先輩」
歩き出す。
先に道はあるのか、毒や病気を持ってそうな生き物はいないか、怪我をしそうな危険なものはないか。
そういった事に一つ一つ注意しながら足を進めていく。どうしても進みは遅々としたものになるが、焦っても仕方がない。
「ちゃんとついてきているか?」
「はい、大丈夫です」
はぐれていないか、時折お互いに声をかけながら歩を進める。
今のところ、光景には何の変化もない。ゴツゴツとした岩肌が前方に伸びているだけだ。
「洞窟、だな……」
「洞窟、ですねぇ。この先に何かあるといいんですけど……」
「本命は信仰の跡。そうでなくとも、何か痕跡のようなものがあれば儲けものだが」
「前者だったら最高なんですけど、それはそれで勝手に入ってよかったのかー、って話になるわけですが」
「そんなもの、いいわけないだろ」
デスヨネー、と気の抜けた声が返ってきた。何を今更。
「仮に何かを信仰している跡地、あるいは現役の場所だったとして。信者以外が土足で踏み行っていいはずがない」
「忘れがちですけど、信仰ってそういう物ですからね」
「そもそも、立ち入り禁止と場所すら教えてもらえなかったような場所だ。探索しました、の時点でアウトだろう」
何故、を教えてもらえなかったことは何の言い訳にもならない。入った時点でというか、探した時点でアウトだ。
「でも、気になりますもんね?」
「うむ、そればっかりは止められない」
立ち入り禁止の謎の洞窟。
そんなものがあると言われたら、気にならない方が無理な話だろう。
バミューダトライアングルも、ジャックザリッパーも、ヴォイニッチ手稿も。謎には人を惹きつける、魔性の魅力があるのだ。
「あっ、先輩。あれ」
「うん?」
と、一人納得していたら。後ろから声をかけられた。
「どうした?」
「今、先の方に何か見えたような……」
「ほうほう?」
妙に気になることを言われてしまった。そこまで言われては、と前方を見る。
が、特段なにかあるようには見えない。
「何もないように見えるが」
「いえ、なんというかこう、一瞬何かが見えたような気がして」
「一瞬……生き物の影か?」
「生き物……んー、生き物と言えば生き物だった気もするんですけど、何かが違うような……動いてるようにも見えなかったですし……」
何ともとりとめのない事を言っている。うーん……?
「あっ、ほら。その先、壁の方」
言われて、進行方向にある壁にライトをあてる。いくらか道が蛇行しているので、行き止まりというわけではない、が。
「俺には、ただの壁に見えるが」
「いやでも、何かあるように見えません?」
「あれじゃないのか、シミュラクラ現象とかの」
「人の顔に見えてるわけじゃないですってば」
いや、初耳だが。何に見えてるんだ。
「近づきすぎなんじゃないですかね。もうちょっと後ろから見るような感じで」
「ふむ」
一歩二歩程度後ずさりし、再度眺めてみる。別段、印象は変わらない。
これは、彼女が違和感を感じだしたくらいの場所まで戻るべきだろうか。
そう思い、足元の悪さも加味して一度振り返る。彼女を追いこして少しするくらいのところまで足を進め、再度振り返り。
「なぁ、最初に違和感を感じたのって」
=〇=
それから、暫くたった日の事。
山を散策していた人が、偶然ソレを発見した。時間経過ゆえだろう、腐敗が進んだ男性の遺体。
当然、警察へ通報され、調査は行われたが、何一つとして判明する事はなく。明確な結論がつけられる事はないまま……闇のまま、この一件は終わった物として片付けられた。
何故そこで死んでいたのかも。
何故そんなところにいたのかも。
一緒にいたとされる大学の後輩の行方も。
全て、闇のままに。
……
…………
……………………
闇というのは。
見えない物の事であり、分からない物の事であり、理解できない物の事であり。何より、見てはならない物の事。
であるのなら、だ。
それを見てしまったらどうなるのかなんて、簡単な事だろう?