皆で小説を書こう配信 まとめ   作:二 貂理

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第六十一回 闇

 これを読んでいる諸兄は、闇というモノへどのような印象を抱いているだろうか。

 例えば、照明一つついていないトンネルのような。先を見通すことも出来ない不安な空間であったり。

 例えば、何をしているのかも分からない。かと言って、触れたくもないような怪しいなにがしかの存在であったり。

 

 そういった……見ることのできない状況や見てはならない状況を、想像するのではないだろうか。

 

 ……もしかしたら、いわゆる厨二病チックな想像をする方もいるのかもしれないが。今回はそれはわきに置いておく事にして。

 そういった物をこそ、闇と呼ぶのではないかと考える次第である。

 

 さて。しかし、だ。

 どうやら君たち人類というのは、そう呼ばれていた物をこそ暴き立ててきた。暴き立てずにはいられない生き物らしい。

 

 光りなき夜の帳を。

 命奪う祟りの正体を。

 踏み入れてはならぬ禁足の法則を。

 誰にも知られぬ未踏の世界を。

 そして。未だ()に満ちる海の底、宙の果てさえも。

 

 足を踏み入れ、開拓し、闇を剥ぎ取らなければ気が済まない。それが君たち人類という生き物なのだと。そう感じて仕方が無いのである。

 

 

 

=〇=

 

 

 

「ここが噂の廃鉱か」

「うっわー、ホントに真っ暗……」

 

 明らかに人が入る事は想定されていない道を進み、たどり着いたその場所。

 かつて荒くれ者が隠れ住んでいただとか、祟り神が封じられた場所だとか。10人に聞いたら10人が全く別の回答をしてくるような曖昧な場所の事を、俺達は廃鉱と呼んでいた。

 

「スマホのライトくらいじゃ、全然奥が見えないですよ、これ」

「あぁ、これだけ暗ければ立ち入り禁止にもなるだろうな」

 

 麓の村で話を聞こうとした際。てんで一貫性が無かったにも拘らず、危ないから探したり、近づいたりしてはならない、という部分だけは全員共通だった。

 

 ここに来るまでも危険な山道で、辿りついたとて中がこれだけ暗いのでは。危ないから近づくな、となるのが普通だろう。

 

「まぁ、そうは言っても、だ」

 

 と。

 ポーチから取り出した懐中電灯をつければ、完璧とまでは言わずとも安全に進めそうなくらいにはなった。

 

「こうして、気を付けて進めば大丈夫だろう」

 

 進む先と足元、頭上くらいは照らせている。ヘルメットをかぶり足元の比重を増やせば、安全に進めるくらいにはなるだろう。

 

「よし、行くか」

「はい、先輩」

 

 歩き出す。

 先に道はあるのか、毒や病気を持ってそうな生き物はいないか、怪我をしそうな危険なものはないか。

 そういった事に一つ一つ注意しながら足を進めていく。どうしても進みは遅々としたものになるが、焦っても仕方がない。

 

「ちゃんとついてきているか?」

「はい、大丈夫です」

 

 はぐれていないか、時折お互いに声をかけながら歩を進める。

 今のところ、光景には何の変化もない。ゴツゴツとした岩肌が前方に伸びているだけだ。

 

「洞窟、だな……」

「洞窟、ですねぇ。この先に何かあるといいんですけど……」

「本命は信仰の跡。そうでなくとも、何か痕跡のようなものがあれば儲けものだが」

「前者だったら最高なんですけど、それはそれで勝手に入ってよかったのかー、って話になるわけですが」

「そんなもの、いいわけないだろ」

 

 デスヨネー、と気の抜けた声が返ってきた。何を今更。

 

「仮に何かを信仰している跡地、あるいは現役の場所だったとして。信者以外が土足で踏み行っていいはずがない」

「忘れがちですけど、信仰ってそういう物ですからね」

「そもそも、立ち入り禁止と場所すら教えてもらえなかったような場所だ。探索しました、の時点でアウトだろう」

 

 何故、を教えてもらえなかったことは何の言い訳にもならない。入った時点でというか、探した時点でアウトだ。

 

「でも、気になりますもんね?」

「うむ、そればっかりは止められない」

 

 立ち入り禁止の謎の洞窟。

 そんなものがあると言われたら、気にならない方が無理な話だろう。

 

 バミューダトライアングルも、ジャックザリッパーも、ヴォイニッチ手稿も。謎には人を惹きつける、魔性の魅力があるのだ。

 

「あっ、先輩。あれ」

「うん?」

 

 と、一人納得していたら。後ろから声をかけられた。

 

「どうした?」

「今、先の方に何か見えたような……」

「ほうほう?」

 

 妙に気になることを言われてしまった。そこまで言われては、と前方を見る。

 が、特段なにかあるようには見えない。

 

「何もないように見えるが」

「いえ、なんというかこう、一瞬何かが見えたような気がして」

「一瞬……生き物の影か?」

「生き物……んー、生き物と言えば生き物だった気もするんですけど、何かが違うような……動いてるようにも見えなかったですし……」

 

 何ともとりとめのない事を言っている。うーん……?

 

「あっ、ほら。その先、壁の方」

 

 言われて、進行方向にある壁にライトをあてる。いくらか道が蛇行しているので、行き止まりというわけではない、が。

 

「俺には、ただの壁に見えるが」

「いやでも、何かあるように見えません?」

「あれじゃないのか、シミュラクラ現象とかの」

「人の顔に見えてるわけじゃないですってば」

 

 いや、初耳だが。何に見えてるんだ。

 

「近づきすぎなんじゃないですかね。もうちょっと後ろから見るような感じで」

「ふむ」

 

 一歩二歩程度後ずさりし、再度眺めてみる。別段、印象は変わらない。

 これは、彼女が違和感を感じだしたくらいの場所まで戻るべきだろうか。

 

 そう思い、足元の悪さも加味して一度振り返る。彼女を追いこして少しするくらいのところまで足を進め、再度振り返り。

 

「なぁ、最初に違和感を感じたのって」

 

 

 

=〇=

 

 

 

 それから、暫くたった日の事。

 山を散策していた人が、偶然ソレを発見した。時間経過ゆえだろう、腐敗が進んだ男性の遺体。

 当然、警察へ通報され、調査は行われたが、何一つとして判明する事はなく。明確な結論がつけられる事はないまま……闇のまま、この一件は終わった物として片付けられた。

 

 何故そこで死んでいたのかも。

 何故そんなところにいたのかも。

 一緒にいたとされる大学の後輩の行方も。

 全て、闇のままに。

 

 ……

 …………

 ……………………

 

 闇というのは。

 見えない物の事であり、分からない物の事であり、理解できない物の事であり。何より、見てはならない物の事。

 であるのなら、だ。

 

 それを見てしまったらどうなるのかなんて、簡単な事だろう?

 

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