皆で小説を書こう配信 まとめ 作:二 貂理
鍵、というモノがある。
というモノがある、なんて仰々しく言う必要は無いか。誰だって知ってる。
鍵。金属製の、指でつまめるサイズ感のアレを思い浮かべる人が多いんじゃなかろうか。家やら自転車やらで使うやつ。
最近だと車が電子キー?になってたり、ICカードで鍵を開け閉めできてしまうらしいが、今回はそれはないものとする。
金属製の鍵。さして回せば開け閉めできるそれ。俺は詳しくないからよく分かっていないのだが、単純な仕組みなのだと言う。
「こんなもんで安心するなんてアホの思考」なのだという。
「どうだ?開きそうか?」
「あー、もうちょっと、もうちょっとのはずなんだ……」
「そのもうちょっとからどれくらいたったか、教えてやろうか?」
「いや、いい。どうせすぐ空くし……」
少なくとも。
今目の前でこれだけ苦戦しているのを視れば、効果はあるんだなぁ、と思うのだけど。
=〇=
「聞いてくれよ。俺、万能のマスターキーゲットした」
「ここは病院じゃねぇぞ」
「頭の病気じゃねぇよ」
「中学校でもない、大学だ」
「厨二病でもねぇよ」
となると尚更何ってるんだなんだけど、という思いを視線に込めると、ポケットから何かを取り出した。
「あー……錠前と、針金?」
「や、クリップ伸ばしたのと持ち手分だけ伸ばしたの」
「針金と変わらんだろ」
紙を止めるクリップだったものかどうかなんて、心底どうでもいい。
どっちにせよその機能はもう果たさないんだから、針金でいいだろ。
「んで、それは?」
「だから、万能のマスターキー」
ふーむ、つまり。
「ピッキングの事を言ってる?」
「おっ、正解。よく分かったな」
「この組み合わせで分からん奴いるのかよ」
「それもそうか」
言いながら、錠前のロックをかける。
「や、最近勉強したんだけどな」
などと言いつつ、錠前の鍵穴にクリップ2本セットを挿入する。
「限って、この中に入ってるピンがつっかえる?感じになって回らないらしいんだよ」
「曖昧なのかよ、そこは」
「うっせぇ。で、鍵を刺すとそれがいい感じの位置になって、回るようになるとかなんとか」
それを複数個所やるのにギザギザしてるんだとさ、と。伸ばした方のクリップをこちょこちょ動かしながら、伸ばしてない方のクリップを回す。
「だから、こうして針金で所定の位置に動かせれば、鍵は開くわけだ」
と。明らかに伸ばしていない方が回ったところで、伸ばした方の針金をさらに刺し込む。
「ま、1か所じゃないから順番に位置調整してかなきゃなんだけど」
と。更に奥、もう一個奥、と2段階動かしたところで、伸ばしてない方のクリップが大きく回る。
引っ張ると、錠前部分が外れていた。
「とまぁ、こんな感じであけれるわけだ」
「だから、万能のマスターキー?」
「おうよ」
「バカなん?」
おっと、つい口が悪くなってしまった。反省。
「バカとはなんだバカとは」
「おもちゃあいただけで本物もあけれる、って発想がバカのソレじゃなかったらなんなんだよ」
どうしようもなくバカの発想だろう。
「何言ってんだ、色んな鍵試したけど同じ要領であくんだぞ。研究室の鍵もあけれたし」
「何やってんだオマエ」
どうしよう、変なことに巻き込まれる前に絶縁した方がいいかな、コイツ。
「ともかく。これで好き放題鍵をあけれるようになったんだよ、俺は」
「いやいやいや、んなわけないだろ」
「いーや、あるね」
「ねぇよ」
「あるって」
=〇=
で、俺の部屋で試すことになった。
かれこれ1時間は続けているのだが、何か進んでいるようには見えない。
やっぱり、新しいマンションの鍵は優秀なんだなぁ、うんうん。
それより劣ってる大学の研究室は、大丈夫なんだろうか。劇薬とかあるよね。
「もういいだろ、何時間続ける気だよ」
「あくまで」
「おいバカやめろ、俺は今日どこで寝るってんだよ」
「自分の家で寝ればいいだろ」
「そのカギ穴返してくれないとあかないんだよ」
針金が刺さっている以上、当然鍵なんて刺さらない。諦めてくれない限り帰ることもできないわけだ。迷惑だなオイ。
「あーあ。暑いし、早く家に帰りたいなぁ」
皮肉めに言ってみる。
すると、パキッ、という軽い音が聞こえた。
「……パキ?」
「ほら、空いたぞ」
と。我が家のドアを開ける同級生。
いや、うん。そこはいい。よくないけどいい。
問題は、さっきの音が何だったのか、だ。
「えっと、その手に持ってるのは?」
「
「壊してあけることを鍵をあけるとは言わねぇんだよ」
「んじゃ、俺残りの鍵もあけてくるから」
「待て待て待て、それ以上俺の家の鍵を壊そうとするんじゃない」