皆で小説を書こう配信 まとめ   作:二 貂理

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第六十六回 ぽっぷこーん

 トウモロコシ。ふと考えてみると、それはとても優秀な穀物なのではなかろうか。

 日本ではそう扱われることも少ない気もするが、なんと世界三大穀物に数えられている。まさか米や麦と同じジャンルに属していたとは、知りもしなかった。

 

 そして、その視点で見てみると確かに優秀なのかもしれない、という気になってくるだけのポテンシャルを秘めているのだ、トウモロコシは。

 

 まず、茹でて食べると美味い。

 ちょっと食べるのが難しかったり、歯の間に挟まったりするところは難点だが、かぶりつく度に濃縮された甘みが口の中で弾け、広がるのが心地よい。

 

 そして、焼いて食べるのも美味い。

 やっぱり歯の間に挟まったりするのは難点なのだけど。先ほどのジャブジャブと水分が口に広がるのとはまた違った、こうばしさを帯びた味わいは、また一興である。

 

 素材をそのまま食べるだけではない。加工しても美味しいのもまた、トウモロコシの強みであろう。

 

 例えば、映画のお供であるポップコーン。どんな由来があって映画とセットになったかは存じ上げないが、あの軽い口当たりは手が止まらなくなる。

 見た目量があるのに、弾けてるからそうでもない感じがあるところもポイント高めである。

 

 また、コーンフレークもよいものだ。シリアルとか、そんな風に呼ばれる……よね?合ってる?合ってるってコトにしとくね。

 プレーンの物も、特別な味があるわけではないのに手が止まらなくなるし、砂糖なんかで甘く味付けしてあるやつだともう、どうしようもない。

 牛乳をかけて食べると、残った牛乳もご馳走になるもんだから、いやぁ困った困った。

 

 と、食料として非常に優秀で、人類と共にあったと言っても何ら過言ではない存在、トウモロコシ。その事実は、アステカにトウモロコシの神様がいる事が証明している。

 

 が、しかし。そのポテンシャルは食料としての物だけではない。

 

 紙になり、薬になり、果ては燃料への進化まで見せている。まさに、人類を支える穀物と言って相違ないだろう。

 

 そして。さらに、ここでも留まらないのがトウモロコシである。

 

 マヤ文明の神話に曰く。

 人間は、白と黄色のトウモロコシを粉にし、練ることで創造された。

 あるいは、トウモロコシの粉をバク・ヘビの血と混ぜることで誕生した。

 

 そう、即ち。

 トウモロコシとは、人であり。

 人とは、トウモロコシなのである!

 

「ってのが、今回トウモロコシを持ってきた理由になります」

「おぉなるほど、となると思うたか」

 

 チッ、納得させられなかったか。

 

 

 

 =〇=

 

 

 

 事の顛末はこうである。

 ある日、近所の山を散策していたら、廃れた祠のそばに時代錯誤甚だしい格好の性別不詳が座っていた。

 

 不遜極まりない態度に口調で「オイそこの人間、生贄に人間を寄越せ。食う」などと言われた。

 何言ってんだこの精神異常者、と言う目で見ていたら生えていた木を片手で引っこ抜き、もう一度先ほどのセリフを繰り返した。

 あ、やっべ普通じゃねぇやこれ、と大慌てで家に帰り、なんとか代替品を持ってきた。

 

 以上である。

 

「でもですよ、そこの方」

「何故食い下がろうとする」

「先ほどもお話しした通り」

 

 話の主導権を取られてなるものか、の精神で口を動かす。

 大丈夫、コイツは押せば押せると勘が言っている。

 

「はるか昔、神話の時代。神はトウモロコシから人間を作ったのです」

「この辺りの話じゃないだろ、それ」

「それも、数多ある素材の一つというわけではなく、三分の一がトウモロコシであったり、トウモロコシだけで作っていたり」

 

 無視しよう。

 大丈夫、今のところ話を遮っても何も言われない。

 

「即ちやはり、トウモロコシは人間という事ではないでしょうか」

「そもそも植物を人間として扱うな」

「差別ですか?今の時代よくないですよ、そういうの」

「これを差別と呼ぶのは無理があるだろう」

 

 トウモロコシの自認が人間かもしれないじゃないですか……とは、さすがに言えなかった。無理があるし。

 

「でもですよ」

「なんだ」

「人間より美味しいと思うんです、トウモロコシ」

「確かに美味そうな見た目ではあるが」

 

 お、ちょっと揺れてる。

 肉食かと思ったけど、植物もいけるのね。

 

「それに、先ほど申し上げた通り食べ方も多種多彩。人間を食べるより

も飽きないと思うんですよね」

「まるで人間の食べ方を知っているかのような口ぶりではないか?」

「や、さすがにカニバ趣味は……」

 

 おおざっぱに肉の食い方で考えただけである。

 

「それに、穀物って毎日食べても飽きないことも条件の一つだと思うんです。ほら、お米枚に食べても飽きないでしょう?」

「でしょう?と言われても知らぬが」

 

 ならこれから知って頂く方向で。

 

「ではほら、がぶっと一口」

 

 髭をむき、食べられそうなところを差し出す。

 何だこの人間……って目をしながら、諦めたのか受け取り食べてくれた。

 

「……固いが」

「まぁ、生で食べる頃合いの物じゃないですしね。食感最悪だと思います」

「何故食わせた」

「やっぱり人外と言えば人間まるかじりかな、と」

 

 いわんや人間の材料であるトウモロコシを、だ。

 

「が、味は悪くない」

 

 と。皮を地面に吐き捨てながら、思わぬ好感触。

 いいじゃんいいじゃん。

 

「人間食べるの諦めてくれるなら、悪ふざけやめて真面目に調理してお出ししますが」

「悪ふざけと認めたな、キサマ」

「次は飼料用のトウモロコシをお出しするつもりでした」

 

 もちろん、冗談である。

 冗談だからその怖い顔はやめてほしい。

 

「で、どうしましょう?」

「食ってから考える、準備せよ」

「そこはきっぱりしてくださいよ」

 

 うーむ、最初から素直に美味しいの食べさせて警戒を解くべきだっただろうか。

 さて、どうやって取り返していくかなぁ……

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