皆で小説を書こう配信 まとめ 作:二 貂理
一寸法師、という話をご存じだろうか。
子供の出来ない老夫婦が神様に子宝を願ったところ、身長一寸の子供が生まれた。
そんな一寸法師がお椀の船で京へ行き、そこで出会ったお姫様に恋をしたり、彼女を助けるために鬼と戦ったり。
最後には、鬼の落としていった打出の小槌で大きくなり、お姫様と結ばれた……なんていう、分かりやすい英雄譚だ。
では、ここで問題です。
一寸法師は、どのようにして鬼を退治したでしょうか。
シンキングタイムは、この文字を読むまでです。それは答え合わせ。
一寸法師は、鬼の体内に入り。
腹の中を持っていた針でグサグサ刺すことで、鬼を屈服させたのでした。
めでたしめでたし。
「ってあるんだけどさ。一寸法師、なんで溶けてないんだろうな」
「知るか」
昔話を何だとおもってるのだろう、コイツは。
=〇=
「いやでもさ、おかしくないか?」
「暇だから聞いてやろう、どこが?」
「さっきも言った通り、溶けてないところ」
この上なく真剣な顔で言ってくる。
よろしい、ならばこう返そう。
「昔話に現実を持ちきこむな、重箱の隅をつついて何になるってんだ」
「でもさぁ、おかしいじゃん」
「それを言い出したら一寸の人がいる時点でおかしいだろ」
一寸だぞ。
三センチだ、三センチ。三センチの人間。
しかも、しっかり頭が回るわけだ。
いてたまるか、そんな生きもん。
「いや、そこは平気だろ」
「一応聞こうか、なんで?」
「だって、神様ならなんでもありだろ」
マジで何を言っているのか、さっぱり分からない。神?
「どっから出てきたんだ、神」
「一寸法師」
「だから、どこが」
「スクナビコナだろ?一寸法師って」
なんのこっちゃさっぱりだったので、調べることにした。スクナビコナ。
……よく分からんが、日本神話の神様らしい。ついでに、一寸法師の元ネタとかなんとか。
「神様が元ネタの昔話とかあるのか……」
「元ネタ?……本人だろ、それ」
「もしかして、昔話が史実だと思っていらっしゃる?」
「そんでさ」
スルーされた。
友人の衝撃の新事実について問いかけたら、がっつり無視された。ぶん殴ってやろうかな、コイツ。
「お前なら、知ってるんじゃないかっておもったんだけど」
「なんで?」
「だって、お前の実家酒蔵じゃん」
「……そうだけど、だからなんで???」
理由を説明されてもなんにも分からなかった。
「いやだって、スクナビコナって酒造の神様じゃん」
「酒造の」
「だから、なんか聞いてないかな、って」
もしかして、酒造を一軒一軒教えて回ったとでも思っているのだろうか。
「知らん、話したこともない」
「ちょっと聞いといてよ」
「オーケー、言い方を変えよう。話す事もできない」
そっか、オーナーだもんな、とか言い出した。だめかもしれん、コイツ。
「そもそもだ」
そして。
それと同時に、納得させないと終わらない雰囲気を感じる。ので、仕方なく。本当に仕方なく、話を合わせることにする。
えっと、なんだっけ。
「鬼の胃袋に入ったのに消化されてないのがおかしい、って話だったか?」
「何度もそう言ってるだろ」
「一回しか言ってねぇよ」
おっと、脱線。
「お前の胃袋は、入ってきた物を速攻で溶かしきるのかよ」
「そんなわけないだろう」
「それと同じなんじゃねぇの?溶けきるまでには猶予時間があったんだろ」
極々当たり前の事だが。
人間、食べた物が次の瞬間に消化されている、なんてことはない。
時間をかけて段々と溶かすし、なんなら各内臓毎に役割が違う。
胃袋に落ちた瞬間消化完了、なんて話にはならないのである。
「落ちてから溶けるまでに猶予時間があって、その隙にズタズタにしたんだろ」
「いやでも、鬼の胃袋だぜ?」
鬼を何だと思っているのだろうか。
「鬼ならほら、一瞬で溶かしきるくらい」
「出来てたまるか」
あーいえばこーいう。
納得する気がないのではなかろうか。
「じゃあほら、神様だし。そう簡単には溶けなかったんだろ」
「いやいや、それは神様贔屓でしょ」
鬼にはいいのに神はダメなのかよ。特別扱いしてくれよ、神の事も。
「んじゃ分からん、お手上げ」
無理である、諦めた。
というかコイツ、どれだけいい説明が返ってきても、納得してくれそうにないし。
飲み込んで消化してはくれないのだろう。
「そっか……じゃあやっぱり、本人に聞くしかないか……」
「どうやって神様に聞く気だよ」
「酒蔵だろ、頼んだ」
「ふざけんなぶっ飛ばすぞ、出来ねぇって言ってんだろうが」
あまりにも口が悪くなってしまった。
コイツ、俺が言ったこと何一つ聞いてなかったんだな。
自分の思った通りの事しか
……面倒だなぁ!