皆で小説を書こう配信 まとめ   作:二 貂理

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第七十回 消化器官

 一寸法師、という話をご存じだろうか。

 子供の出来ない老夫婦が神様に子宝を願ったところ、身長一寸の子供が生まれた。

 そんな一寸法師がお椀の船で京へ行き、そこで出会ったお姫様に恋をしたり、彼女を助けるために鬼と戦ったり。

 最後には、鬼の落としていった打出の小槌で大きくなり、お姫様と結ばれた……なんていう、分かりやすい英雄譚だ。

 

 では、ここで問題です。

 一寸法師は、どのようにして鬼を退治したでしょうか。

 シンキングタイムは、この文字を読むまでです。それは答え合わせ。

 

 一寸法師は、鬼の体内に入り。

 腹の中を持っていた針でグサグサ刺すことで、鬼を屈服させたのでした。

 めでたしめでたし。

 

「ってあるんだけどさ。一寸法師、なんで溶けてないんだろうな」

「知るか」

 

 昔話を何だとおもってるのだろう、コイツは。

 

 

 

 =〇=

 

 

 

「いやでもさ、おかしくないか?」

「暇だから聞いてやろう、どこが?」

「さっきも言った通り、溶けてないところ」

 

 この上なく真剣な顔で言ってくる。

 よろしい、ならばこう返そう。

 

「昔話に現実を持ちきこむな、重箱の隅をつついて何になるってんだ」

「でもさぁ、おかしいじゃん」

「それを言い出したら一寸の人がいる時点でおかしいだろ」

 

 一寸だぞ。

 三センチだ、三センチ。三センチの人間。

 しかも、しっかり頭が回るわけだ。

 いてたまるか、そんな生きもん。

 

「いや、そこは平気だろ」

「一応聞こうか、なんで?」

「だって、神様ならなんでもありだろ」

 

 マジで何を言っているのか、さっぱり分からない。神?

 

「どっから出てきたんだ、神」

「一寸法師」

「だから、どこが」

「スクナビコナだろ?一寸法師って」

 

 なんのこっちゃさっぱりだったので、調べることにした。スクナビコナ。

 ……よく分からんが、日本神話の神様らしい。ついでに、一寸法師の元ネタとかなんとか。

 

「神様が元ネタの昔話とかあるのか……」

「元ネタ?……本人だろ、それ」

「もしかして、昔話が史実だと思っていらっしゃる?」

「そんでさ」

 

 スルーされた。

 友人の衝撃の新事実について問いかけたら、がっつり無視された。ぶん殴ってやろうかな、コイツ。

 

「お前なら、知ってるんじゃないかっておもったんだけど」

「なんで?」

「だって、お前の実家酒蔵じゃん」

「……そうだけど、だからなんで???」

 

 理由を説明されてもなんにも分からなかった。

 

「いやだって、スクナビコナって酒造の神様じゃん」

「酒造の」

「だから、なんか聞いてないかな、って」

 

 もしかして、酒造を一軒一軒教えて回ったとでも思っているのだろうか。

 

「知らん、話したこともない」

「ちょっと聞いといてよ」

「オーケー、言い方を変えよう。話す事もできない」

 

 そっか、オーナーだもんな、とか言い出した。だめかもしれん、コイツ。

 

「そもそもだ」

 

 そして。

 それと同時に、納得させないと終わらない雰囲気を感じる。ので、仕方なく。本当に仕方なく、話を合わせることにする。

 えっと、なんだっけ。

 

「鬼の胃袋に入ったのに消化されてないのがおかしい、って話だったか?」

「何度もそう言ってるだろ」

「一回しか言ってねぇよ」

 

 おっと、脱線。

 

「お前の胃袋は、入ってきた物を速攻で溶かしきるのかよ」

「そんなわけないだろう」

「それと同じなんじゃねぇの?溶けきるまでには猶予時間があったんだろ」

 

 極々当たり前の事だが。

 人間、食べた物が次の瞬間に消化されている、なんてことはない。

 時間をかけて段々と溶かすし、なんなら各内臓毎に役割が違う。

 胃袋に落ちた瞬間消化完了、なんて話にはならないのである。

 

「落ちてから溶けるまでに猶予時間があって、その隙にズタズタにしたんだろ」

「いやでも、鬼の胃袋だぜ?」

 

 鬼を何だと思っているのだろうか。

 

「鬼ならほら、一瞬で溶かしきるくらい」

「出来てたまるか」

 

 あーいえばこーいう。

 納得する気がないのではなかろうか。

 

「じゃあほら、神様だし。そう簡単には溶けなかったんだろ」

「いやいや、それは神様贔屓でしょ」

 

 鬼にはいいのに神はダメなのかよ。特別扱いしてくれよ、神の事も。

 

「んじゃ分からん、お手上げ」

 

 無理である、諦めた。

 というかコイツ、どれだけいい説明が返ってきても、納得してくれそうにないし。

 飲み込んで消化してはくれないのだろう。

 

「そっか……じゃあやっぱり、本人に聞くしかないか……」 

「どうやって神様に聞く気だよ」

「酒蔵だろ、頼んだ」

「ふざけんなぶっ飛ばすぞ、出来ねぇって言ってんだろうが」

 

 あまりにも口が悪くなってしまった。

 コイツ、俺が言ったこと何一つ聞いてなかったんだな。

 

 自分の思った通りの事しか食べない(聞かない)消化しない(受け入れない)、と。

 ……面倒だなぁ!

 

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