皆で小説を書こう配信 まとめ 作:二 貂理
人畜無害。人にも、
ここまで的確に彼らを表現する単語はないのではなかろうか。
数十年前、彼らは宇宙から来訪した。少なくとも、来訪したと発表されている。実際にはもっと前にいたのではないか、いやはや歴史書の端々に彼らと思われる記載がある、はたまた神話伝承に語られるこれらは彼らの事ではないか……等々。
まぁ方々様々な説が唱えられてはいるが、少なくとも公式には、数十年前。宇宙から飛来した彼らに、某国のお偉いさんはそれはそれは頭を悩ませたらしい。
まぁ、うん。宇宙人が唐突に現れたら、悩むよね。胃が痛かったろうなぁ。
とまぁ、話を戻して。
彼らは人目につかないようひっそりと接触してきて、「争う気も、深く交流する気もない」と宣言したらしい。
当然信じられなかったお偉いさんは、秘密裏に彼らを軟禁したわけだが。
が、しかし。そんな扱いを受けても、彼らはマジで何もしなかったとか。救いを求めることも、交渉を持ちかける事もなく。不当な扱いにだけは抗議して。
そうして時が過ぎ、お偉いさんが折れ。ずるずるずるとなし崩し的に、全世界にその存在が公表された。
当然、全世界がパニックになった。
フェイクだ、いやいや本物だ、ほにゃらら型宇宙人に違いない、地球を侵略しにきたんだ、各国上層部はもう洗脳されてる、いやいや成り代わられてる……
人間の想像力って強いなぁ、と思うほどに様々な説が唱えられたらしい。
が、そこは流石の彼らで。
特に何かするでもなく、刺激するような場所に現れることもなく、自分たちを崇めるような宗教だけは否定して。
段々と、ゆったりと、人類に受け入れられていった。
どうやら、本当に害はないらしい。
そうと分かってしまえば、好奇心が沸いてくるもので。様々な国が、彼らの来訪を受け入れるようになった。
国のお偉いさんが、彼らの中でもリーダー寄りの方々と会談の場を設け。
そこまで偉くない方は、町のあちこちで人間と交流を深め。
互いに利益があるでもなく、被害が生じるわけでもない交流が、何十年と続き。今では、宇宙の彼方から旅行に来る方もいるほどになった。
彼らは何も持ち込まない。見た目を除いて、彼ら独自の物は何一つ持ち込んでいない。
彼らは何も及ぼさない。自分たちの文化も、言語も、常識も。何一つ押し付けることをせず、郷に入っては郷に従えを完璧に行っている。
彼らは求め続ける。行く先々の文化を、食を、言語を、常識を。求め、教わり、実践することだけを求めている。
だから、なのだろう。
自分たちに害が及ぶこともなく、オーバーテクノロジーに押しつぶされることもなく、日常を汚染されることもない。
自分たちへ何の影響も及ぼさない、そこにいるだけの存在。
何の影響も及ぼさないのなら。いないのと変わらないのだから。
誰も、何の抵抗もなく、受け入れるのだろう。
=〇=
この数年後。彼らの星は、そこに住まう生命は。一切の例外なく、絶滅を迎えることとなる。
何もしてこなかった。何も求めてこなかった。無害だった。故に、受け入れてしまった。受け入れすぎてしまった。
別の星から、旅行感覚で訪れられるだけの技術力を持った彼らにしてみれば。
片手間に侵略できるだけの状況が、整ってしまったのだろう。