皆で小説を書こう配信 まとめ   作:二 貂理

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第七十一回 人畜無害

 人畜無害。人にも、畜生(どうぶつ)にも害の無い存在。

 ここまで的確に彼らを表現する単語はないのではなかろうか。

 

 数十年前、彼らは宇宙から来訪した。少なくとも、来訪したと発表されている。実際にはもっと前にいたのではないか、いやはや歴史書の端々に彼らと思われる記載がある、はたまた神話伝承に語られるこれらは彼らの事ではないか……等々。

 まぁ方々様々な説が唱えられてはいるが、少なくとも公式には、数十年前。宇宙から飛来した彼らに、某国のお偉いさんはそれはそれは頭を悩ませたらしい。

 

 まぁ、うん。宇宙人が唐突に現れたら、悩むよね。胃が痛かったろうなぁ。

 

 とまぁ、話を戻して。

 彼らは人目につかないようひっそりと接触してきて、「争う気も、深く交流する気もない」と宣言したらしい。

 当然信じられなかったお偉いさんは、秘密裏に彼らを軟禁したわけだが。

 

 が、しかし。そんな扱いを受けても、彼らはマジで何もしなかったとか。救いを求めることも、交渉を持ちかける事もなく。不当な扱いにだけは抗議して。

 そうして時が過ぎ、お偉いさんが折れ。ずるずるずるとなし崩し的に、全世界にその存在が公表された。

 

 当然、全世界がパニックになった。

 フェイクだ、いやいや本物だ、ほにゃらら型宇宙人に違いない、地球を侵略しにきたんだ、各国上層部はもう洗脳されてる、いやいや成り代わられてる……

 人間の想像力って強いなぁ、と思うほどに様々な説が唱えられたらしい。

 

 が、そこは流石の彼らで。

 特に何かするでもなく、刺激するような場所に現れることもなく、自分たちを崇めるような宗教だけは否定して。

 段々と、ゆったりと、人類に受け入れられていった。

 

 どうやら、本当に害はないらしい。

 そうと分かってしまえば、好奇心が沸いてくるもので。様々な国が、彼らの来訪を受け入れるようになった。

 

 国のお偉いさんが、彼らの中でもリーダー寄りの方々と会談の場を設け。

 そこまで偉くない方は、町のあちこちで人間と交流を深め。

 

 互いに利益があるでもなく、被害が生じるわけでもない交流が、何十年と続き。今では、宇宙の彼方から旅行に来る方もいるほどになった。

 

 彼らは何も持ち込まない。見た目を除いて、彼ら独自の物は何一つ持ち込んでいない。

 彼らは何も及ぼさない。自分たちの文化も、言語も、常識も。何一つ押し付けることをせず、郷に入っては郷に従えを完璧に行っている。

 彼らは求め続ける。行く先々の文化を、食を、言語を、常識を。求め、教わり、実践することだけを求めている。

 

 だから、なのだろう。

 自分たちに害が及ぶこともなく、オーバーテクノロジーに押しつぶされることもなく、日常を汚染されることもない。

 自分たちへ何の影響も及ぼさない、そこにいるだけの存在。

 

 何の影響も及ぼさないのなら。いないのと変わらないのだから。

 誰も、何の抵抗もなく、受け入れるのだろう。

 

 

 

 =〇=

 

 

 

 この数年後。彼らの星は、そこに住まう生命は。一切の例外なく、絶滅を迎えることとなる。

 何もしてこなかった。何も求めてこなかった。無害だった。故に、受け入れてしまった。受け入れすぎてしまった。

 

 別の星から、旅行感覚で訪れられるだけの技術力を持った彼らにしてみれば。

 片手間に侵略できるだけの状況が、整ってしまったのだろう。

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