皆で小説を書こう配信 まとめ   作:二 貂理

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第七十二回 時刻表

 時刻表というモノを、めっきり見なくなったように思う。

 いや、広義で言えば見ているのかもしれないけど。こう、いわゆる時刻表というか。駅に置いてあるでっかいのとか、バス停においてある縦長のとかを、見なくなった。

 

 そらそうだろう。何せ、スマホで完結してしまうのだから。

 わざわざ駅に赴かずとも、持ち歩いている端末で完結する。

 乗る駅と降りる駅を検索ボックスに入れるだけで、時刻表に載っている「乗車時刻」だけでなく、時刻表からはえられない「到着時刻」までわかってしまう

 

 うん、あまりにも頼る意味がない。利便性・情報量ともに大敗である。

 

 が。

 そんな時刻表にも、スマホに負けない超優秀な利便性が1個存在する。

 

「おっ、あったあった。階段の逆側だったとは」

 

 ホームを歩くこと十数分。やっとこさ見つけた時刻表へ歩み寄る。物言わぬ板切れとなったスマホを手癖でもてあそびつつ、さて次の電車は何時にくるのか、

 

「スッカスカじゃねぇか」

 

 当面来ないことが確定した。

 

 

 

 =〇=

 

 

 

「マージかぁ」

 

 時刻表と腕時計を交互に見て、自分の認識に誤りがないか確認する。

 現在時刻を指す短針を読み、時刻表の縦軸からその時間を探す。

 そのまま横へ視線をずらし、直近の電車がない事を再確認する。

 1つ下へずらす。そこには、空欄があった。

 さらに1つ下へずらす。そこにも、空欄があった。

 さらに1つ下へずらす……ようやく、空欄ではなくなった。

 

 ふむ、都合2時間後である、と。

 

「マージかぁ」

 

 絶望を突き付けられた。これならいっそ、いつ電車が来るか分からないままの方が良かったかもしれない。

 

「スマホ無し、2時間か……」

 

 無益な時間が過ぎる。が、観光客の身としては、電車に乗らなければ宿へ帰ることも出来ない。

 こんなことなら来た時に時間見とけばよかった。ちょっとした後悔を抱きつつ、出来ることもないのでベンチへ向かう。

 

 座る。ちょっと固くて、ちょっと痛い。

 これに座って、2時間。スマホは充電切れで役に立たない、と。

 

 ホントにヤバいな、どうしよう。

 

「ねぇ、そこの兄ちゃん」

「あ、はい」

 

 悩んでいると、声をかけられた。

 

「次の電車って、何時ごろだい?」

 

 あまりの絶望具合に心配して声をかけられたのかと思ったが、そういうわけではないらしい。

 

「あーっと、次の電車は」

 

 聞かれたからには答えないとな、と。顔を上げて、声の主を見て。

 ヒョウ柄シャツにパンチパーマ、エコバッグから長ネギを飛び出させているおばちゃんが、そこにいた。

 

「?次の電車は?」

「あ、はい」

 

 おっといけない、あまりの情報量に固まってしまった。

 

「ざっくり2時間後、みたいっす」

「あらまぁ、ホントに?困っちゃうわね」

「ホントっすよね。でもまぁ、無い物はないんで」

「とはいっても、2時間もないってどうなのさ」

 

 それは、俺も思う。

 ただそれ以上に、このおばちゃんの格好にツッコミを入れたくて仕方ない。何だこのコッテコテの大阪のおばちゃんは。それがなんでエコバッグ持ってて、しかも長ネギ飛び出してるんだ。

 

ってか明らかに買い物帰りだろ。地元民だろ、なんで電車の時間知らないんだ。

 

「パッと出てきた辺り、この辺りに住んでるのかい?」

「あ、いえ。さっきあのあたりで時刻表を見て」

「まーた不便なところにあるんだねぇ」

 

 ふむ。

 時間はあるし、雑談相手になってもらうか。

 

「自分は大学の休み利用して旅行に来た感じなんすけど、そちらこそこの辺りに住んでるんですか?」

「ちゃうよ、アタシも見ての通り旅行客」

 

 見て分からないから聞いてるのだけど。

 ってか、なんで旅行客がエコバッグ肩に下げてでっけぇネギ入れてるんだ。地元民の買い物帰りじゃないと見ちゃいけない光景じゃないのか、これは。

 

「ま、のんびり待とうかねぇ。飴ちゃんいるかい?」

「あ、はい。頂きます」

 

 手だしな、と言われたので差し出すと、手のひら一杯の飴をくれた。やっぱ大阪のおばちゃんなんだな、この人。

 ホントにこんなファッションのおばちゃんがいるんだ、大阪。すごい都市だな。

 

「旅行って言ってたけど、何を見に来たんだい?」

「自分は、レポートのネタ探しでこの辺のお寺を見に」

「あー、確かにやたらと古い寺が並んでたっけか」

 

 まぁ、人が不在だったりして全然調べ物は出来なかったわけだけど。

 とことん運ないなー、今回の旅行。

 

「ちなみにアタシは、ねぎ買いに来た」

「ネギを」

「あぁ。この辺のねぎは美味しいからね。つい直接買いに来たくなって」

 

 刹那的に生きすぎじゃないか、このおばちゃん。

 

「そんなに美味しいんですか?」

「もう別物だね。せっかくの旅行なんだから、1度は食べて見な」

 

 まさかのネギを勧められてしまった。

 別に、ネギが有名な地域じゃないはずなんだけど……

 そこまで言うなら、1度は食べてみるか。そう心に決め、口に出そうとした時。目の前に、電車が止まった。

 

「2時間後、って言ってなかったかい?」

「そのはず、なんですけど……回送か何かですかね?」

「行先の表示があるし、そんあこたないんじゃないかい?」

 

 確かに、行先の表示が出ている。

 それも、行きたかった方向に。

 

「あっれ、ホントになんで」

「もしかして、だけど。時刻表、平日と休日見間違えたんじゃないのかい?」

 

 立ち上がりながらそう聞かれて、気付く。そういえば、全然気にしてなかったかもしれない。

 

 そっか。

 そういえば、休日ダイヤあったな。

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