皆で小説を書こう配信 まとめ 作:二 貂理
時刻表というモノを、めっきり見なくなったように思う。
いや、広義で言えば見ているのかもしれないけど。こう、いわゆる時刻表というか。駅に置いてあるでっかいのとか、バス停においてある縦長のとかを、見なくなった。
そらそうだろう。何せ、スマホで完結してしまうのだから。
わざわざ駅に赴かずとも、持ち歩いている端末で完結する。
乗る駅と降りる駅を検索ボックスに入れるだけで、時刻表に載っている「乗車時刻」だけでなく、時刻表からはえられない「到着時刻」までわかってしまう
うん、あまりにも頼る意味がない。利便性・情報量ともに大敗である。
が。
そんな時刻表にも、スマホに負けない超優秀な利便性が1個存在する。
「おっ、あったあった。階段の逆側だったとは」
ホームを歩くこと十数分。やっとこさ見つけた時刻表へ歩み寄る。物言わぬ板切れとなったスマホを手癖でもてあそびつつ、さて次の電車は何時にくるのか、
「スッカスカじゃねぇか」
当面来ないことが確定した。
=〇=
「マージかぁ」
時刻表と腕時計を交互に見て、自分の認識に誤りがないか確認する。
現在時刻を指す短針を読み、時刻表の縦軸からその時間を探す。
そのまま横へ視線をずらし、直近の電車がない事を再確認する。
1つ下へずらす。そこには、空欄があった。
さらに1つ下へずらす。そこにも、空欄があった。
さらに1つ下へずらす……ようやく、空欄ではなくなった。
ふむ、都合2時間後である、と。
「マージかぁ」
絶望を突き付けられた。これならいっそ、いつ電車が来るか分からないままの方が良かったかもしれない。
「スマホ無し、2時間か……」
無益な時間が過ぎる。が、観光客の身としては、電車に乗らなければ宿へ帰ることも出来ない。
こんなことなら来た時に時間見とけばよかった。ちょっとした後悔を抱きつつ、出来ることもないのでベンチへ向かう。
座る。ちょっと固くて、ちょっと痛い。
これに座って、2時間。スマホは充電切れで役に立たない、と。
ホントにヤバいな、どうしよう。
「ねぇ、そこの兄ちゃん」
「あ、はい」
悩んでいると、声をかけられた。
「次の電車って、何時ごろだい?」
あまりの絶望具合に心配して声をかけられたのかと思ったが、そういうわけではないらしい。
「あーっと、次の電車は」
聞かれたからには答えないとな、と。顔を上げて、声の主を見て。
ヒョウ柄シャツにパンチパーマ、エコバッグから長ネギを飛び出させているおばちゃんが、そこにいた。
「?次の電車は?」
「あ、はい」
おっといけない、あまりの情報量に固まってしまった。
「ざっくり2時間後、みたいっす」
「あらまぁ、ホントに?困っちゃうわね」
「ホントっすよね。でもまぁ、無い物はないんで」
「とはいっても、2時間もないってどうなのさ」
それは、俺も思う。
ただそれ以上に、このおばちゃんの格好にツッコミを入れたくて仕方ない。何だこのコッテコテの大阪のおばちゃんは。それがなんでエコバッグ持ってて、しかも長ネギ飛び出してるんだ。
ってか明らかに買い物帰りだろ。地元民だろ、なんで電車の時間知らないんだ。
「パッと出てきた辺り、この辺りに住んでるのかい?」
「あ、いえ。さっきあのあたりで時刻表を見て」
「まーた不便なところにあるんだねぇ」
ふむ。
時間はあるし、雑談相手になってもらうか。
「自分は大学の休み利用して旅行に来た感じなんすけど、そちらこそこの辺りに住んでるんですか?」
「ちゃうよ、アタシも見ての通り旅行客」
見て分からないから聞いてるのだけど。
ってか、なんで旅行客がエコバッグ肩に下げてでっけぇネギ入れてるんだ。地元民の買い物帰りじゃないと見ちゃいけない光景じゃないのか、これは。
「ま、のんびり待とうかねぇ。飴ちゃんいるかい?」
「あ、はい。頂きます」
手だしな、と言われたので差し出すと、手のひら一杯の飴をくれた。やっぱ大阪のおばちゃんなんだな、この人。
ホントにこんなファッションのおばちゃんがいるんだ、大阪。すごい都市だな。
「旅行って言ってたけど、何を見に来たんだい?」
「自分は、レポートのネタ探しでこの辺のお寺を見に」
「あー、確かにやたらと古い寺が並んでたっけか」
まぁ、人が不在だったりして全然調べ物は出来なかったわけだけど。
とことん運ないなー、今回の旅行。
「ちなみにアタシは、ねぎ買いに来た」
「ネギを」
「あぁ。この辺のねぎは美味しいからね。つい直接買いに来たくなって」
刹那的に生きすぎじゃないか、このおばちゃん。
「そんなに美味しいんですか?」
「もう別物だね。せっかくの旅行なんだから、1度は食べて見な」
まさかのネギを勧められてしまった。
別に、ネギが有名な地域じゃないはずなんだけど……
そこまで言うなら、1度は食べてみるか。そう心に決め、口に出そうとした時。目の前に、電車が止まった。
「2時間後、って言ってなかったかい?」
「そのはず、なんですけど……回送か何かですかね?」
「行先の表示があるし、そんあこたないんじゃないかい?」
確かに、行先の表示が出ている。
それも、行きたかった方向に。
「あっれ、ホントになんで」
「もしかして、だけど。時刻表、平日と休日見間違えたんじゃないのかい?」
立ち上がりながらそう聞かれて、気付く。そういえば、全然気にしてなかったかもしれない。
そっか。
そういえば、休日ダイヤあったな。