皆で小説を書こう配信 まとめ   作:二 貂理

81 / 81
第八十回 保存料

「ありがとうございました~。次の方~」

 

 そんな声を背に、コンビニを出る。

 手には、おにぎりが一つ。時間がないからと、お昼代わりに買ったものだ。似た考えの人が多かったのか、梅干ししか残っていなかった。

 

 ビニールを剥ぎ、一口。うん、酸っぱい。溢れてくる唾液を飲みこんで、もうひと口。

 

「おーっす!」

「ぐふっ」

 

 その瞬間、思いっきり背中を叩かれた。

 梅干しが変なところに入り、盛大に咽る。

 

「ったく、歩き食いなんかしてるからだぞ行儀が悪い」

「どう考えても背中ぶったたいてきたヤツの方が悪いだろうが…!」

 

 反射的に怒鳴り返しながら、最後の一口を放り込む。

 

「いやいや、お祭りの屋台でもないのに歩き食いしてる方が悪いって」

「寝坊して時間なかったんだよ、一限があの教授じゃなかったら家で食ってきたわ」

「寝坊したお前が悪い」

 

 それは、そう。何も言い返せない。

 

「それに、だからってコンビニおにぎりって。寝不足もだけど、体壊すぞ」

「添加物がどうこうって?そんなこと気にするやつだったっけ、お前。腐ってても平気で食う側だろ」

「食わんわ。量とか栄養とかだよ」

 

 昼夜は食うから、それでチャラってことにしといて欲しい。

 

「それに、添加物だなんだって腐らせないための物なんだから。添加物気にする奴らの方が平気で、何なら喜んで食うだろ、腐ったもの」

「……それは、なんか違くねぇか?」

 

 一瞬。ホントに一瞬、納得しかけたが。

 ああいう人たちは、腐る前にとか、新鮮な内に食べる感じなんじゃないだろうか。

 

「いやいや、きっといるって。腐ったってことは、添加物が入ってない証拠だ!って喜んで食うヤツ」

「ちょっといそうな言い回しにするのやめろ」

 

 添加物が入っていても腐らないわけじゃないのが、またポイント高いな。

 

「俺だったら、そこで腐らなかった方を食べたいけどなぁ」

「まぁ、その方が安心だよな」

 

 店頭に並んでる時間やら、家で実際に食べるまでの時間やら。どうしても買ってすぐに食べる、というわけにはいかないのだ。多少はもってくれないと、安心して食べられやしない。

 

「一ヶ月とか一年とかほっといても腐らないくらいのヤツ」

「ホントになに言ってるんだ、お前は」

 

 ちょっとスケールが違った。

 いや、保存食とかはそれくらいなのか?ちょっと、ほんのちょっとだけ、分からなくなってきた。

 

「だってさ」

「おう」

「それ食えば、自分も腐らなさそうじゃん?」

 

 本当に。本当に何を言ってるんだ、コイツは?

 

「いつから食材になったんだよ、お前は」

「友達の事食べ物扱いするの、よくないと思うぞ」

「しだしたのはお前だろうが」

 

 誰か、いつにもましておかしな言動しかしない阿呆を止めて欲しい。

 

「でも、そっか。そう思うと、添加物まみれの食事をとってる人は、肉食獣目線いい保存食だったりするのかな」

「急にグロテスクな話を始めるな」

「人類保存食計画!人類に添加物を普及させたのは、食料の長期間保存を企む高次元生命体だった!?」

「突拍子もない胡散臭いオカルト話、やめて頂けないでしょうか」

 

 コンビニのおにぎり食べてただけで巻き込まれるにしては、意味不明な話にも程があるだろうが。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。