「やられたな……」
「…うん……」
俺と三玖は2人、街中で立ちすくんでいた。
「まさかこんな急に雨が降るとはな……」
「うん…天気予報は晴れだったのに……」
三玖が申し訳なさそうな顔をして、
「ごめん…」
「……なんでお前が謝る。」
「だって…私が街に行こうなんて言わなければ……」
「…はぁ……全然大丈夫だ。というより、お前のそういうネガティブ思考。治した方がいいぞ。」
「…ありがとう…頑張る……」
「……おう…ていうか普通に俺は楽しかったがな。」
「…ほんと?」
「ああ。買い食いしたり調理器具見たり服見たり本屋行ったり……普通に楽しかったぞ。」
「…よかった」
少し嬉しそうな顔をした。
「………お前は楽しかったか?」
三玖は一瞬鳩が豆鉄砲食らったような顔をして
「……うん…とっても楽しかった」
「それならよかった。」
そんな事を話してる間に、雨足は今さっきよりも強くなっていた。
「…これ……止むのか……?」
「ケータイで調べてみるね……」
「荷物は持っておく。」
「ありがとう。」
俺に荷物を渡した後、三玖がバッグから携帯を取り出し、ポチポチと操作を始めた。
俺は携帯とかには疎いんだよな……使う機能もメールと電話位だし……他のアプリなんて触れたことも無い。ゲームアプリなんてものは勉学の妨げだしな。
「……フータロー………」
三玖が何やら神妙そうな顔をしている
「どうした?三玖。」
「これ、普通にヤバい状況かも……」
「…マジか……具体的には…?」
「とりあえずこの雨は今日の深夜から明日の朝にかけてまで降るみたい。そして大雨洪水警報が発令されてる地域もある……タクシーアプリも見てみたけど…全部ダメ。埋まってる……」
「それは……まずい状況だな………」
俺たちの住む町からは電車で3駅程かかる。そしてここから1番近い駅まで2,3キロは離れている。体は物陰の下に入る前に少し濡れているし、更には両手には購入した荷物がある。
「これは……絶望じゃないか……?」
「うん……どうしよっか……」
「…………」
俺は辺りを見渡す。すると、
「三玖。あそこならいいんじゃないか?」
俺の目に、『HOTEL』の看板が入った。
「………えぇ!?フ、フータロー…あそこって……」
こんな事をしている合間に部屋が埋まってしまうかもしれない。
「三玖。いいか?」
「え!?良いって!?」
「あそこまで走るぞ!!」
「えぇ!?ちょ、ちょっと待ってフータロー!!」
「何時部屋が埋まるか分からない!!行くぞ!!」
「わ、分かった!!」
俺たちはHOTELの看板まで走った。
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──────────
─────
………そして俺たちは何とか部屋をとった。何故か2人でしか止まれないようだったので相部屋にすることにした。料金を選ぶのがあったが、休憩は泊まれる訳では無いようなので宿泊にした。ていうかホテルって泊まる以外になんかあるのか……?ていうか料金表が見にくかったな……よく分からなかった……まぁ泊まれたから良しとしよう。
「三玖、取り敢えず風呂入れ。」
「う、うん……」
「服は…」
「か、買ったのがあるからそれでいい」
「そうか…分かった…」
とりあえず雨でつま先までびしょ濡れの状態で居ると風邪をひいてしまうからな……先に風呂に入ってもらおう。
「ていうか大丈夫か?」
「ふぇ?」
「なんか顔赤いぞ。熱あるんじゃないか?」
「だ、大丈夫!!全然元気!!」
三玖がピョンピョンと跳ねる。
「そ、そうか……それじゃあ、ゆっくり浸かってこいよ」
「う、うん」
なんか様子がおかしかった気がするな……
「服…どうするかな……」
少し経った後に、ホテルを散策する。すると洗濯機があった。
「これなら大丈夫そうだな……おーい三玖ー」
「ど、どうしたの?フータロー?」
「服、洗っとくなー」
「あ、ありがとう……」
俺は三玖の服を洗濯機に入れていく。
「待ってフータロー!!!!」
「「あ」」
ちょうど俺が三玖の下着を持っている所でバスタオル姿の三玖が出てきた。
失念していた。俺は必死に弁明しようと
「みッ三玖!!違う!!これは不可効力だ!!許してくれ!!」
「………全然大丈夫だよ……服洗ってくれてありがとね……」
「…許してくれた……」
「だから…ソレ…早く洗濯機の中に入れちゃって……?」
「は……はい!!」
何とか許して貰えた。良かった……アイツには…出来れば嫌われたくはない……
「黒……か……」
俺は自分を思いっきり殴った。
「ふぅ……」
一段落して、ベッドに座り込む。
「凄いフカフカだな……これがベッドか……前にアイツらの家で寝た時以来だ……何故か1つしかないがな…」
こんな雨の日に一部屋だけ空いてたんだ。文句は言えない。
俺はとりあえず床で寝ればいいと考えつつ、部屋を見渡していた。
「──────────ん?」
次の瞬間、俺の目に飛び込んできたものは俺の思考をぶち壊した。
「……!?」
0.02mmと書かれた黒色の箱。所謂避妊具。そう。俗に言う「コンドーム」と言うやつだ。
「!?!?!?!?!?」
驚愕。とにかく驚愕。恐らく前の客が忘れていったのを従業員の人が取らなかったのだろう。
「忘れ物は電話した方が…いいのか……?」
俺は電話を探す。取り敢えず近くにあった引き出しをガラッと開けると…
「…………」
シリコン等で出来た男性器の形を模した悪魔的な禍々しいサムシング。そう。俗に言う「ディルド」というものだ。
「ここって……」
俺はここに入る時に料金表を見て、『泊まる以外に何をするんだ』と思った。今ならわかる。ここで泊まる以外に何をするのか、『ナニ』をするのだ。
……そう、ここは所謂……
「ラブホテルじゃねぇかァァァァ!!」
俺は久しぶりに大声で叫んだ。
《一方その頃中野三玖は》
「…………」ブクブクブク
ぶくぶくぶくぶくと泡を出しながら湯船に浸かる。
「ぷは……やっぱり…ここって……ラブホテル……だよ…ね………?」
謎に広い円形の浴槽。様々な灯りが着く浴室に、謎の中心が抉り取られたような形をしている椅子。プライバシーなんてクソ喰らえと言わんばかりのガラス張りの浴室。洗濯機があったのは扉を1枚隔てた所だったから良かったけれど……
「〜〜〜!!」
今さっきの事を思い返して見悶える。ラブホテルにいるという状態より……フータローに下着を見られたという現状が1番にマズイ。
なんでフータローに下着を見られたんだ!!それも今日はちょっと高めの…所謂勝負下着!!黒色でなんかちょっと際どい感じのヤツ!!
「………エッチな女だって思われたかな……?」
湯船の中、足をバタバタとさせる。飛び散った水が光に反射して綺麗に写った。
「…フータローはここをラブホテルって知ってて入ったのかな……」
フータローの行動を思い返す。
「でも…そんな素振り一切見せないし……」
また湯船に顔をつける。
「私……異性として見られてないのかな………」
でも……もしかしたら………
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
「…あ♡フータロー……ダメ……」
「何がダメなんだ?」
「私…これ…初めて……」
「そんなこと言ってもうグチョグチョだぞ?」
「あ♡そこ…いじらないで……♡」
「ダメだ……三玖…挿れるぞ……」
「あ♡フータロー…やめて……やっぱりやめないで………」
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
「…はッ!!!!」
妄想から覚醒した声が響き渡る。
「…声に出て……ない…よね…?」
大丈夫……な筈だ
「……一応体、もう1回念入りに洗っとこ………」
一応…そう、一応だ。
《side風太郎》
「…やらかした……」
俺は1人ソファに蹲っていた。
「俺はとんでもないことを……」
……雨の日に入った所がラブホテル。更にいえば半ば強引に入ったのだ。通報されてもおかしくないレベルだし、これがアイツらにバレたら吊るし上げられて五つ子裁判にかけられるのは……火を見るよりも明らかだ。
「いや…待てよ……?まだギリギリセーフ……じゃないか?」
三玖は確実にここがラブホテルだという事には気づいているだろう。だから俺の行為を止めたし、風呂に入ってもらう前に顔が真っ赤だった。様子がおかしかったのもそういう事だろう。
「……いや…だが……」
学年1位、全国模試3位の脳みそをフル回転させる。
「俺は今さっきまで、少なからず三玖が風呂に入る前まではここがラブホテルだとは気づいていなかった……ならば三玖は俺がここがラブホテルだと知らずに入ったと考える筈だ…よし、それならいける。」ブツブツ
俺は作戦を考えることにした。
「まず俺がすべき事は『コンドームを何処かにしまう事。』箱ごとコンドームが置いてあった為、色々入っている近くの引き出しには仕舞えない……他の引き出しに何が入ってるかわからない現状、荷物の中にこっそりと忍ばせて置くのが得策だろう。そして俺たちが部屋を出る時にサッと元の位置に戻す。そうすれば従業員さんにも『コイツらは何もヤらずに出てったんだな。』と思わせることが出来る…………三玖に見つかったら地獄だがな……」ブツブツ
ブツクサと考える。今は時間が無い。短時間で考えを纏めるために多少の独り言は許して欲しい。
「そしてその後にすべき事は『完全にシラを切る事。』まるでここが普通のホテルかのように振る舞うことによって『フータローはここがラブホテルだって気づいてない』と思わせると同時に『もしかしたらここは普通のホテルなのかも……』と思わせることも出来るかもしれない。」ブツブツブツ
穴が多い作戦だが、短時間でのクオリティーにしては中々に的を得ている気がする。
「作戦名は…『そもそも気づいてませんよ作戦』だ……!!」
実行に移すことにした。
────────────────────
──────────
─────
「フータロー……お風呂…上がったよ……」
三玖が湯気を上げながら歩いてきた。
「おう、そうか。それじゃあ俺も入るとするかな。」
「うん……それじゃあいってらっしゃい」
「おう。」
スタスタと風呂場まで歩き、服を脱ぐ。着替えの服はバスローブにする。
「なんだ……これ…?」
スケスケのプライバシーなんてクソ喰らえと言わんばかりの浴室。
「洗濯機が風呂場になくて本当に良かった……」
とりあえず体を洗い、湯船に浸かりながら今さっきまでの行動を振り返る。
「お世辞でも完璧とは言えないな……」
俺はあの後コンドームを、買った服の入った袋へ仕舞った。なぜ服の袋かというと、コンドームの箱を俺の買った服と服の間に隠せるからだ。万が一の為に少し包んでおいた。コレでバレることは無い。
引き出しを開けないかは正直運だ。鍵を閉めておいたが、普通に開けれる構造の為、開けられないことを祈るしかない。
「まぁ…正直シラは上手く切れた気がするな……」
このまま隠し通せば何とかなるだろう……
「よし……上がるか……」
俺は体を拭き、足早に浴場から出た。
スタスタと歩き、三玖の居る部屋に戻る。するとそこには……
「み、三玖!?どんな格好してるんだ!?」
謎に露出しているサンタのコスチュームを身に纏う三玖の姿があった。
「あ、フータロー……コレは…飲み物こぼしちゃって……」
「…そんなの買ってたか…?」
「うん…皆でクリスマスパーティーをやるとき用の服を買ってきてって言われてたから……」
「今日街に来たのもそれか?」
「ううん…街に来たのは……その…」
三玖がなんだかモジモジし始めた。
「何か言いにくい理由でもあるのか?」
「ううん……そういう訳じゃ……」
「なら正直に言ってくれ。大丈夫だ。俺に遠慮なんてしなくていいぞ。」
「遠慮してるわけじゃ……」
う〜〜っと三玖が頭を抱える。心做しかまた顔が赤い気がする……
「ほら、言ってみろ。」
「その……街に来たのは……フータローと……一緒にお買い物したかった…から……だよ……」
「〜〜!!そ、そうか……」
三玖の顔が真っ赤に染った。当の俺もどういう顔をしているか検討すらつかない。
「もう…!やっぱりそういう反応した……!!」
三玖が可愛らしく頬をふくらませる。
「悪かったって……」
「……すごく恥ずかしかった……」
また頬を膨らませる。破裂しちゃうんじゃないか……?
「本当に悪かった……」
「……いいよ」
「ありがとな」
「うん……」
何とか許しを貰うことが出来た。
「取り敢えず、これ着とけ」
濡れてないジャケットを渡した。
「…うん…ありがとう……」
三玖が俺のジャケットを羽織った。
「ていうか…腹減ったな……」
「確かに……もう20:00だし……あ」
「どうした?なにか見つけたか?」
「これ、多分ルームサービスってヤツ。」
三玖がメニューをパラパラとめくる。俺も横から覗いた。
「おお……結構豪華だな…」
「晩御飯はこれにしよっか。」
「ああ。そうしよう。」
「電話は……」
「あー!!大丈夫だ!!ここにある!!」
俺は人生で五本の指に入るのほどのスピードで近くの引き出しから電話を取りだした。
危なかった……受話器の場所を確認しとかなかったら詰んでいた……
「………フータローは何にする?」
「俺は……カレーライスでいい。お前は?」
「私は……このパンケーキと抹茶アイスとこのクッキーにしようかな……」
「腹減らないか?」
「大丈夫。私結構少食だから。」
「そうだったな。」
昼飯を抹茶ソーダとサンドイッチで済ませるヤツだ。まぁ大丈夫なのだろう。
「それじゃ私が注文するね。」
「おう、ありがとな。」
三玖が受話器をとる。
「すいません…ルームサービスで……カレーライスと…………」
三玖が注文をしてくれている中、考える。
取り敢えず家族には三玖と出かけるとは言っている為、家に帰れないから外泊することにしたと連絡しよう。流石に相部屋をしているとは思わないだろうしな……三玖は姉妹たちにどう連絡するのか……
なんて考えている内に注文が終わったようだ。
「注文終わったよ」
「ありがとな……というか三玖。他の姉妹たちには泊まることどうやって伝えるんだ?」
「普通に帰れないから泊まるって伝える」
「俺と泊まってるってバレたらマズイんじゃないか?」
「…私は勘違いされてもいいけど?」
「俺も別に嫌ではないが……アイツらの事だ。帰ったら何されるか……」
「嫌じゃないんだ……えへへ………」ボソッ
「?なんか言ったか?」
「ううん!!なんでもない!!…取り敢えず外に泊まるってだけ伝えとくね…流石に相部屋とは思わないハズ。」
「もし相部屋か?って聞かれたらどうするんだ?」
「うーん……それとなく返す。」
「そうか……まぁバレないことを祈ろうぜ」
「うん……」
そう話していると、ドアが『コンコン』と鳴った。
『ルームサービスです』
「はーい」
三玖がそう答えて扉へ向かった。ドアを開けて晩飯を受け取ったみたいだ。
「フータロー。ご飯。」
「分かった。ありがとな」
「全然大丈夫。早く食べよ。」
コトコトコトリとテーブルに料理が乗せられる。数は少ないとはいえ、とても美味そうな見た目をしているので中々鮮やかなテーブルになった。
「そうだな。それじゃあ「いただきます」」
カレーを口に運ぶ。
「美味いな。」
らいはのカレーほどではないがな。ホテルのルームサービスってもう少し不味いイメージがあったから予想外だった。
「三玖、パンケーキ美味いか?」
「うん。美味しいよ。こういうのってあんま美味しくないイメージが強いけど案外美味しいんだね。」
「そうだな。」
そんなことを話していると、三玖が提案をしてきた。
「…私のパンケーキ…食べてみる?」
「…ああ…くれるなら貰おう」
そう俺が答えると
「はい…あーん……」
「!?……パクッ…美味いな……」
…何してるんだコイツ……まぁ乗る俺も俺だが………そうだ……!!
「三玖、ほい、あーん」
「!?……フ、ータロー…?」
「俺のも1口やる。ほれ、あーん…」
ふふふ…仕返しだ。………ていうかコレ結構恥ずかしいな……
「あーん……パクッ……うん…美味しい……」
三玖の顔は耳まで真っ赤に染まっている。
「……フータローのイジワル……」
「先にやったのはお前だろ?」
「う……それはそうだけど………」
「ははは……」
そんな下らない話をしながら幸せな時間はどんどんと過ぎていってしまった。
「本でも読むか……」
俺は今日買った本を取りだし、あぐらをかきながらペラリとページをめくった。すると、
「……よいしょ」
三玖が俺の足の上にちょこんと座った。
「み、三玖?」
「フータロー…一緒に読も……?」
サクサクとクッキーを食べながらそう言ってきた。
「一緒に読むって……」
なんだか三玖の様子がおかしい。渡したジャケットを羽織らずに持っているし、頬は少しばかり紅潮しているように見える。
「えへへ……フータローいい匂いする……」
スンスンと鼻を利かせながら俺の体に擦り寄ってくる。やっぱりなんだか様子がおかしい。
「三玖、なんか変なものでも食ったか?」
「ううん。なーんも食べてないよ……?」
「……ちょっとメニュー取ってくれないか?」
「わかった……はい」
「ありがとな。」
三玖が頼んだものを調べることにした。
『パンケーキ』…普通だな……『抹茶アイス』……普通だ。
『ラム酒入りクッキー』……普通……じゃない!!
「三玖……」
「なぁに?フータロー……?」
キョトンとした目でこちらを見上げてくる。
「そのクッキー……なんで頼んだ?」
「なんでって……見た目が美味しそうだったから…」
コイツはアホなのだろうか。
「三玖……それを食うのをやめろ。」
「なんれ?欲しいの?あとちょっとしかないよ?」
「そういう訳じゃなくてな……」
「美味しいよ?はい。あーん」
差し出されたクッキーは見た目は普通だが、よーく鼻を利かせてみると薄らと酒の香りがする。
「ダメだ。取り敢えずコレは没収だ。」
「あと1個だけ……」
「ダメだ。」
「お願い……あと1個だけだから……」
小動物のような眼差しでこちらを見てくる。
「うっ……ダメなもんはダメだ」
すっとクッキーを取り上げる
「ああ〜……私のクッキー………」
「うっ……」
なんという罪悪感だろうか。だが、致し方がないのだ。コイツの身を守るためだ。
「ほら、これ飲め。」
水を差し出す。
「分かった……」コクコク
「美味しい!!スッキリしてる!!」
水だからな………
「フータロー…この本一緒に読も?」
「……分かった。一緒に読もう。」
俺が買った小説を読むことにした。
「なぁ…三玖……」
「どうしたの?」
「いや……そのな……なんで俺の足の上に乗る?」
「フータローは私に乗られるの……イヤ…?」
「嫌ではないが……」
胡座の上に乗り、俺の両腕に三玖が挟まれている為、三玖のシャンプーの甘くていい匂いがするのだ。更にいえばコイツは謎に露出度が高いサンタ服を着ているのだ。俺はバスローブ姿だし……その……色々とマズイのだ……
「それならこのままでいい?」
また小動物のような眼差しでこちらを見てくる。コレはずるいだろう……
「ああ……いいぞ……」
俺が耐えればいいだけの話だ……
「えへへ……やった……」
三玖がとてもいい笑顔をした。
「フータローの匂い……おちつく……」
「そうか……」
「フータロー……」
「どうした?三玖。」
「なんか……これ、夫婦みたいだね……」
「!?……そう………だな…」
「フータローは私と夫婦じゃイヤ?」
「!?………嫌…じゃないぞ……」
三玖の顔がぱあっと晴れる。
「ホント!?」
「……ああ」
「…嬉しいな………」
「そうか……」
…実際、今の状態は幸せだ。この幸せが永遠に続けばいいと思う。出来れば、次は三玖が酔ってない状態で。
「俺も嬉しいぞ。」
「ふぇ……?それって……」
「どういう事だろうな。」
「…フータローのイジワル……」
「ははは……」
取り敢えず、今の幸せを噛み締めておくことにした。
「フータロー……」
「どうした?」
「そろそろ寝よっか…」
「……そうだな…」
気づけば時刻は0:00を回っていた。
「それじゃあ俺は床で寝るから、三玖はベットで寝てくれ。」
「……え?」
「どうした?」
「……フータロー…一緒に寝ようよ……」
「いや、それは………」
「フータローと一緒に居るのに一人で寝たくないよ」
三玖が物凄いことを言い始めた。
「………ねぇ……フータローは…私と寝るの……イヤ………?」
また小動物のような眼差しでこちらを見てくる。今度は涙目のおまけ付きだ。
「うっ……」
そんなの……断れるわけ…ないだろ……
一緒に寝ることになった俺と三玖の長い長い夜が幕開けようとしていた。