インフィニット・ストラトス IS IGLOO 作:とんこつラーメン
二人とも、マジで大好きです。
だからこそ、幸せにしてあげたい……!
輪廻の果てに
パイロットスーツに包まれた体が軋み、痛みで汗が噴き出る。
ノイズが混じっているモニターには、青く輝く地球の半球が映っていた。
「中尉…そして、ヨーツンヘイム……聞こえるか…?」
コクピットに紫電が走り、様々な場所から火花が散る。
「私は今…どのように嘲られようと、最早…少しも恥辱とは思わない…」
『少佐! 何をっ!?』
『………っ!?』
私の事を『道化』といった女性士官の声が遠くに聞こえる。
どこまでも真摯に技術と向き合っている青年の、息を飲む声が聞こえる。
「モビルスーツ・ヅダは、最早ゴーストファイターではない。この重大な戦局で、確かに戦っている。この独立戦争に、厳然として存在しているのだよ」
眼前に真っ白な光が見える。
これが太陽の光であると気が付くのに、一秒もいらなかった。
『暴走警報!! 少佐、今すぐに!!』
先程から聞こえている機体の危機を知らせるアラーム。
これが聞こえなくなった時が自分の死ぬ時だと分っているのに、不思議と私には微塵の恐怖も無かった。
『くそっ……! こいつは……バケモノかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!』
MSに乗って此方を追跡していた連邦軍のパイロットの悲鳴を聞き、不謹慎だと分っていながらも自然と笑みを浮かべた。
「この歴史の真実は……何人たりとも消せはしない……」
直後、凄まじい衝撃が全身を襲い、私は静かに己が運命を受け入れた。
(あぁ……生涯唯一の無念が…今ここに報われた……)
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
車が止まる。
目の前には、そこそこの大きさを誇る建物が立っていた。
「到着だよ。さ、降りて」
「はい」
運転手である男性の声に従い、後部座席に乗っていた
「ここがそうか……」
降りてきた少女は、美しいブロンドの髪をポニーテールに纏めていて、青いリボンが付いた白い服と、青いロングスカートを履いていた。
「私は車を停めてくるから、君は先に行っててくれるかな? 荷物は後で持っていくから」
「自分の荷物ぐらいは自分で持ちます」
「君は真面目だね。でも、ここは大人の私に任せてくれないかな?」
「……そこまで仰るのならば……」
「ありがとう、というのは変かな?」
男性は運転席から顔を覗かせながら少女と話し、その後、車を駐車場へと停めに行った。
それを見送ってから、彼の言葉に従って、少女は堂々とした足取りで建物の扉まで向かっていく。
少女が潜った門には、こんな文字が書いてあった。
【ヨーツンヘイム孤児院】と……。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
孤児院の扉を開けると、そこにはロビーのような場所があった。
椅子やテーブルが幾つかある様子を見ると、普段はここで子供達が憩いの場としているのが容易に想像がつく。
「よぉ」
声がする。
誰かと思って振り向くと、二階に上がる階段の傍に一人の少女がいた。
黒い髪を首の辺りで切り揃えていて、若干のツリ目。
水色のロングTシャツとジーパンを履いているから、一瞬だけ男かとも思ったが、体の線の細さがそれを否定する。
幾ら幼い子供であったとしても、よく観察すればすぐに分かる。
容姿だけならば、間違いなく美しいと断言出来るだろう。
だが、彼女の全身を見た時、私は少しだけ目を見開いた。
(車椅子……)
少女は、車椅子に乗っていた。
普通ならば、それだけで悲壮感を漂わせていても不思議ではないのに、彼女は『それがどうした』と言わんばかりに堂々としている。
「お前の事は院長から聞いてるぜ。今日から入る新人なんだろ?」
「そうだが……君は?」
「おっと。こういう時は、まずは自分から名乗るのが礼儀だったな」
車椅子を動かして少女が近づいてくる。
そして、ニヒルな笑みを浮かべながら、私に手を差し出してきた。
「
「デメジエール・ソンネン……だと……!?」
私はその名前を知っていた。恐らく、この世界の誰よりも。
何故なら、嘗て
「その顔を見ると、やっぱりオレの事を知ってるみたいだな」
「そ…それは……」
「一応、言っておくけどよ。オレは決して同姓同名の別人ってわけじゃないからな。正真正銘の、ジオン公国軍戦車教導団教官にして、試作モビルタンク『ヒルドルブ』の運用を任されていた『デメジエール・ソンネン』少佐様だ」
「………っ!?」
『
それを聞いた瞬間、自分の頭を固い物で殴られたかのような衝撃が走った。
「そっちの事も知ってるぜ。ツィマッド社所属にして、同会社が開発したMS『ヅダ』のテストパイロットも勤めていた……だろ?」
「……………」
「黙るってことは正解って事だな」
「私は……」
「あぁ~…別に何も言わなくてもいいって。お前さんも
「ソンネン少佐……」
「お? オレをそう呼ぶって事は、こっちの言葉を信用したってことでいいんだよな?」
「……仕方あるまい。私だって信じられないし、安易には受け入れ難い。だが……」
「だが? なんだよ」
「『あの時代』を生きていた者しか知らない事を言われては…信じないわけにはいかないだろう……」
「だよな。その気持ち、よ~く分かるぜ」
うんうんと頷きながら、目の前の少女…ソンネン少佐は笑っていた。
何がおかしいのだろうか?
「でもよ。信じるしかない」
「そう…だな。多数の共通点を持つ私と貴官が、同じ世界、同じ場所に同じような形で存在している事実は、偶然の一言で片づけていい事柄ではない」
「作為的な何かを感じるってか? 言いたいことは分かるけどよ……」
「私は基本的に無神論者だ。故に、超常的存在の介入など認めたくはないが……」
「こんな事、人間には絶対に不可能だろうよ」
「言わないでくれ……」
この体で生まれてから数年。
もう自分が女になった事は少しずつではあるが受け入れつつある。
だが、自分と同じ身の上で、しかも同じ国で同じ時代を生きた者が目の前に現れて、それをただ『偶然』の一言で片付けられるほど、私は楽観的な性格はしていない。
「おや? もうお友達が出来たのかい?」
「院長殿……」
彼…いや、今は彼女と言うべきか。
ソンネン少佐と話し込んでいる間に、院長殿が私の分の荷物を持って院内へと来ていた。
「デメちゃん? 君しかいないのかい?」
「デメちゃん言うな。今は、他の連中は揃って昼寝してるよ。オレはなんだか寝付けなくてな、こうしてここでボーっとしてたら、入ってきたこいつと出逢ってな、思わず話し込んでたって訳だ」
「そうかそうか。事情が事情だから、ちゃんとお友達が出来るか心配だったけど、どうやら私の杞憂だったみたいだね」
「そういうこった」
院長殿と気さくに話している様子から見ると、少佐はかなり彼から信頼されているようだ。
ジオンでの少佐の事はよく知らないが、とても尊敬されていたと風の噂で聞いたことがある。
その時の経験が成せる技なのだろう。
みすみす仲間を死なせた私とは大違いだな……。
「この荷物はジャンちゃんの部屋に運んでおくからね。後で中を案内してあげるから、その時にでも君の部屋に案内してあげよう」
「それならよ、案内はオレに任せてくれよ」
「いいのかい?」
「おう。もう少しコイツと話してたいしな」
「そうか…。それじゃあ、デメちゃんに任せようかな?」
「任されたぜ」
院長殿が階段を上がらずに廊下の奥へと消えて行った。
ということは、少なくとも私の部屋は一階にあるのだろう。
「ところで、どうして見ただけで私の事が分った?」
「名前自体は院長の旦那から聞かされてたからな。そんな特徴的な名前、オレが知る限りじゃアンタしか知らねぇよ」
「それだけでか? 同姓同名の別人の可能性だってあっただろうに」
「最初はオレだってそう思ったさ。でもな、こうして直に会って話して、オレの勘は間違ってなかったって確信した。どんだけ酷い境遇に遭ってもよ、其処ら辺にいる普通の小娘がそんな雰囲気を醸し出すかよ。一発でお前が『戦場帰り』だって分かった」
「これでも必死に隠していたつもりだったのだがな……」
「それが通用するのは平和な時代に生きてる一般人だけだろうよ。少なくとも、オレには通用しなかった。それはお前さんから見たオレも…だろ?」
「そうだな。私から見ても貴官からは獰猛な狼のような気配を感じた」
「狼……狼と来たか! ははは……狼か! いいねぇ……最高じゃねぇか…!」
今までの僅かにあった少女らしさはどこへやら。
完全に『男としてのソンネン少佐』が出てきている。
「そうだ。もうお互いに軍人じゃないんだからよ、階級とかで呼ぶのは止めにしねぇか?」
「では何と呼べば?」
「普通に呼び捨てでいいだろ」
「そ…そうか」
呼び捨て……呼び捨てか。
私に出来るだろうか……。
「そんじゃ、今から中を案内してやるよ。行こうぜ、デュバル」
「そ…そうだな。ソンネン」
車椅子を動かして先を行くソンネンの後ろからついていく形で、私も後を追った。
その時、ふと彼女が金属製の四角い箱を持って振り返り、こう言った。
「そうだ。お近づきの印にドロップいるかい?」
「………頂こうか」
彼女から貰ったドロップは、オレンジの甘い味がした。
TSしたデュバル少佐の容姿はFateのアルトリア(セイバー)で、
TSしたソンネン少佐の容姿は空の境界の両儀式です。
勿論、声も同じ。
次回、彼女らがいるのはどの国なのか、現在は何歳なのか等が判明していく予定です。
取り敢えず、幼女とだけ言っておきます。