インフィニット・ストラトス IS IGLOO   作:とんこつラーメン

1 / 110
妄想が止まらナッシング。

二人とも、マジで大好きです。

だからこそ、幸せにしてあげたい……!






転生 ~新たなる人生~
輪廻の果てに


 パイロットスーツに包まれた体が軋み、痛みで汗が噴き出る。

 ノイズが混じっているモニターには、青く輝く地球の半球が映っていた。

 

「中尉…そして、ヨーツンヘイム……聞こえるか…?」

 

 コクピットに紫電が走り、様々な場所から火花が散る。

 

「私は今…どのように嘲られようと、最早…少しも恥辱とは思わない…」

『少佐! 何をっ!?』

『………っ!?』

 

 私の事を『道化』といった女性士官の声が遠くに聞こえる。

 どこまでも真摯に技術と向き合っている青年の、息を飲む声が聞こえる。

 

「モビルスーツ・ヅダは、最早ゴーストファイターではない。この重大な戦局で、確かに戦っている。この独立戦争に、厳然として存在しているのだよ」

 

 眼前に真っ白な光が見える。

 これが太陽の光であると気が付くのに、一秒もいらなかった。

 

『暴走警報!! 少佐、今すぐに!!』

 

 先程から聞こえている機体の危機を知らせるアラーム。

 これが聞こえなくなった時が自分の死ぬ時だと分っているのに、不思議と私には微塵の恐怖も無かった。

 

『くそっ……! こいつは……バケモノかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!』

 

 MSに乗って此方を追跡していた連邦軍のパイロットの悲鳴を聞き、不謹慎だと分っていながらも自然と笑みを浮かべた。

 

「この歴史の真実は……何人たりとも消せはしない……」

 

 直後、凄まじい衝撃が全身を襲い、私は静かに己が運命を受け入れた。

 

(あぁ……生涯唯一の無念が…今ここに報われた……)

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

 車が止まる。

 目の前には、そこそこの大きさを誇る建物が立っていた。

 

「到着だよ。さ、降りて」

「はい」

 

 運転手である男性の声に従い、後部座席に乗っていた少女(・・)がドアを開けて降りてきた。

 

「ここがそうか……」

 

 降りてきた少女は、美しいブロンドの髪をポニーテールに纏めていて、青いリボンが付いた白い服と、青いロングスカートを履いていた。

 

「私は車を停めてくるから、君は先に行っててくれるかな? 荷物は後で持っていくから」

「自分の荷物ぐらいは自分で持ちます」

「君は真面目だね。でも、ここは大人の私に任せてくれないかな?」

「……そこまで仰るのならば……」

「ありがとう、というのは変かな?」

 

 男性は運転席から顔を覗かせながら少女と話し、その後、車を駐車場へと停めに行った。

 それを見送ってから、彼の言葉に従って、少女は堂々とした足取りで建物の扉まで向かっていく。

 少女が潜った門には、こんな文字が書いてあった。

 

【ヨーツンヘイム孤児院】と……。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 孤児院の扉を開けると、そこにはロビーのような場所があった。

 椅子やテーブルが幾つかある様子を見ると、普段はここで子供達が憩いの場としているのが容易に想像がつく。

 

「よぉ」

 

 声がする。

 誰かと思って振り向くと、二階に上がる階段の傍に一人の少女がいた。

 黒い髪を首の辺りで切り揃えていて、若干のツリ目。

 水色のロングTシャツとジーパンを履いているから、一瞬だけ男かとも思ったが、体の線の細さがそれを否定する。

 幾ら幼い子供であったとしても、よく観察すればすぐに分かる。

 容姿だけならば、間違いなく美しいと断言出来るだろう。

 だが、彼女の全身を見た時、私は少しだけ目を見開いた。

 

(車椅子……)

 

 少女は、車椅子に乗っていた。

 普通ならば、それだけで悲壮感を漂わせていても不思議ではないのに、彼女は『それがどうした』と言わんばかりに堂々としている。

 

「お前の事は院長から聞いてるぜ。今日から入る新人なんだろ?」

「そうだが……君は?」

「おっと。こういう時は、まずは自分から名乗るのが礼儀だったな」

 

 車椅子を動かして少女が近づいてくる。

 そして、ニヒルな笑みを浮かべながら、私に手を差し出してきた。

 

二重の意味で初めまして(・・・・・・・・・・・)。オレの名前は『デメジエール・ソンネン』だ。これからよろしく頼むぜ。ジャン・リュック・デュバル『元少佐』殿」

「デメジエール・ソンネン……だと……!?」

 

 私はその名前を知っていた。恐らく、この世界の誰よりも。

 何故なら、嘗てその名前と同じ人物と私は同じ場所にいて(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)その人物が消えた後に私が来たのだから(・・・・・・・・・・・・・・・・・・)

 

「その顔を見ると、やっぱりオレの事を知ってるみたいだな」

「そ…それは……」

「一応、言っておくけどよ。オレは決して同姓同名の別人ってわけじゃないからな。正真正銘の、ジオン公国軍戦車教導団教官にして、試作モビルタンク『ヒルドルブ』の運用を任されていた『デメジエール・ソンネン』少佐様だ」

「………っ!?」

 

 『この世界(・・・・)』において、普通ならば絶対に知る筈のない単語(・・・・・・・・・・・)

 自分しか知らない国の名前(・・・・・・・・・・・・)

 それを聞いた瞬間、自分の頭を固い物で殴られたかのような衝撃が走った。

 

「そっちの事も知ってるぜ。ツィマッド社所属にして、同会社が開発したMS『ヅダ』のテストパイロットも勤めていた……だろ?」

「……………」

「黙るってことは正解って事だな」

「私は……」

「あぁ~…別に何も言わなくてもいいって。お前さんもあっち(・・・)では碌な思い出が無かったんだろ? オレもさ……」

「ソンネン少佐……」

「お? オレをそう呼ぶって事は、こっちの言葉を信用したってことでいいんだよな?」

「……仕方あるまい。私だって信じられないし、安易には受け入れ難い。だが……」

「だが? なんだよ」

「『あの時代』を生きていた者しか知らない事を言われては…信じないわけにはいかないだろう……」

「だよな。その気持ち、よ~く分かるぜ」

 

 うんうんと頷きながら、目の前の少女…ソンネン少佐は笑っていた。

 何がおかしいのだろうか?

 

「でもよ。信じるしかない」

「そう…だな。多数の共通点を持つ私と貴官が、同じ世界、同じ場所に同じような形で存在している事実は、偶然の一言で片づけていい事柄ではない」

「作為的な何かを感じるってか? 言いたいことは分かるけどよ……」

「私は基本的に無神論者だ。故に、超常的存在の介入など認めたくはないが……」

「こんな事、人間には絶対に不可能だろうよ」

「言わないでくれ……」

 

 この体で生まれてから数年。

 もう自分が女になった事は少しずつではあるが受け入れつつある。

 だが、自分と同じ身の上で、しかも同じ国で同じ時代を生きた者が目の前に現れて、それをただ『偶然』の一言で片付けられるほど、私は楽観的な性格はしていない。

 

「おや? もうお友達が出来たのかい?」

「院長殿……」

 

 彼…いや、今は彼女と言うべきか。

 ソンネン少佐と話し込んでいる間に、院長殿が私の分の荷物を持って院内へと来ていた。

 

「デメちゃん? 君しかいないのかい?」

「デメちゃん言うな。今は、他の連中は揃って昼寝してるよ。オレはなんだか寝付けなくてな、こうしてここでボーっとしてたら、入ってきたこいつと出逢ってな、思わず話し込んでたって訳だ」

「そうかそうか。事情が事情だから、ちゃんとお友達が出来るか心配だったけど、どうやら私の杞憂だったみたいだね」

「そういうこった」

 

 院長殿と気さくに話している様子から見ると、少佐はかなり彼から信頼されているようだ。

 ジオンでの少佐の事はよく知らないが、とても尊敬されていたと風の噂で聞いたことがある。

 その時の経験が成せる技なのだろう。

 みすみす仲間を死なせた私とは大違いだな……。

 

「この荷物はジャンちゃんの部屋に運んでおくからね。後で中を案内してあげるから、その時にでも君の部屋に案内してあげよう」

「それならよ、案内はオレに任せてくれよ」

「いいのかい?」

「おう。もう少しコイツと話してたいしな」

「そうか…。それじゃあ、デメちゃんに任せようかな?」

「任されたぜ」

 

 院長殿が階段を上がらずに廊下の奥へと消えて行った。

 ということは、少なくとも私の部屋は一階にあるのだろう。

 

「ところで、どうして見ただけで私の事が分った?」

「名前自体は院長の旦那から聞かされてたからな。そんな特徴的な名前、オレが知る限りじゃアンタしか知らねぇよ」

「それだけでか? 同姓同名の別人の可能性だってあっただろうに」

「最初はオレだってそう思ったさ。でもな、こうして直に会って話して、オレの勘は間違ってなかったって確信した。どんだけ酷い境遇に遭ってもよ、其処ら辺にいる普通の小娘がそんな雰囲気を醸し出すかよ。一発でお前が『戦場帰り』だって分かった」

「これでも必死に隠していたつもりだったのだがな……」

「それが通用するのは平和な時代に生きてる一般人だけだろうよ。少なくとも、オレには通用しなかった。それはお前さんから見たオレも…だろ?」

「そうだな。私から見ても貴官からは獰猛な狼のような気配を感じた」

「狼……狼と来たか! ははは……狼か! いいねぇ……最高じゃねぇか…!」

 

 今までの僅かにあった少女らしさはどこへやら。

 完全に『男としてのソンネン少佐』が出てきている。

 

「そうだ。もうお互いに軍人じゃないんだからよ、階級とかで呼ぶのは止めにしねぇか?」

「では何と呼べば?」

「普通に呼び捨てでいいだろ」

「そ…そうか」

 

 呼び捨て……呼び捨てか。

 私に出来るだろうか……。

 

「そんじゃ、今から中を案内してやるよ。行こうぜ、デュバル」

「そ…そうだな。ソンネン」

 

 車椅子を動かして先を行くソンネンの後ろからついていく形で、私も後を追った。

 その時、ふと彼女が金属製の四角い箱を持って振り返り、こう言った。

 

「そうだ。お近づきの印にドロップいるかい?」

「………頂こうか」

 

 彼女から貰ったドロップは、オレンジの甘い味がした。

 

 

 

 

  

 

 




TSしたデュバル少佐の容姿はFateのアルトリア(セイバー)で、
TSしたソンネン少佐の容姿は空の境界の両儀式です。
勿論、声も同じ。

次回、彼女らがいるのはどの国なのか、現在は何歳なのか等が判明していく予定です。
取り敢えず、幼女とだけ言っておきます。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。